side:三井寿
インターハイの全国大会行きを決めた俺達湘北だがまだ決勝リーグの試合は残っている。最後の翔陽戦に勝って神奈川1位で全国に行くぜ!
そう思い明日の翔陽戦に向けてミーティングをするべく体育館に集まると、不意に桜木の連れの水戸が一人で現れた。
「水戸君、桜木君はどうしたんですか?」
安西先生がそう問い掛けると水戸が頭を下げる。
「すいません安西先生。花道の奴、しばらくこれないかもしれないっす」
水戸が言うには桜木の親父さんが倒れたらしい。
幸いにも命に別状は無いらしいが、しばらくは桜木が親父さんに付くことになりそうなんだとか。
伸び盛りの桜木がしばらくバスケから離れるのは痛い。あいつは急激な成長をしてきている分、技術が身に付く前に練習が出来なくなれば技術が抜け落ちるのも相応に早い。
……まぁ、それも仕方ねぇか。色々な事情でスポーツを続けられない、出来ないなんて話は結構あるもんだからな。
それでもやっぱり……桜木の事は惜しいな。
◆
side:三人称
とある神奈川の病室で椅子に座り花道は俯いている。彼なりに父親の事が心配なのだろう。
「花道……」
「親父!大丈夫か!?今医者をよんでくる!」
「ナースコールを押せばくる。ここは病室なんだ、静かにしろ」
そう言ってナースコールのボタンを押す父親は流石に大人だけあって冷静だった。
そんな父親の姿に恥ずかしさを覚えたのか花道は少し顔を赤らめて椅子にドスンと座り直す。
「それで、俺の病気は何なんだ?」
「肺気球とかいうやつだ」
「……肺気胸か」
「ぬ?あぁ、それだ」
別に花道はボケをかましたわけではなく本気でそう思っていたのである。
それがわかった父親はため息を吐くが、胸の痛みに顔をしかめた。
「おい、大丈夫か?」
「大丈夫ならこうして寝てねぇよ」
「そ、そうか」
少しして看護師と医者が病室にやって来ると話を始めた。
「桜木さん、現在貴方は胸腔ドレナージをしている状態で……」
医者が話をしていくが花道はその内容がよくわからず首を傾げている。
そして医者と看護師が退室すると父親が話し掛ける。
「花道、俺の弟……叔父は覚えているか?」
「あぁ、それがどうした?」
「あいつの電話番号を教えるから、ここに来る様に言ってくれ」
「わかった」
病院にある公衆電話で叔父に連絡を取った花道は、病室に向かう途中肩を落として歩いていた。理由は自身の無力さを感じていたからだ。
父親が倒れているの発見した花道は病院が近いのもあって走って医者を呼びにいこうとした。だが、その途中をかつて喧嘩をした相手に邪魔をされた。
幸いにも花道を迎えに来ていた水戸達がその相手を抑えたことで花道は医者を呼びに行くことが出来たが、もしそうなっていなければ最悪の事態もありえただろう。
その事をわかっているからこそ花道は肩を落としているのだ。
病室に戻り椅子に座った花道を見た父親が不意に話し掛ける。
「花道、バスケットボールは楽しいか?」
「ぬ?急にどうした?」
「答えろ。楽しいか?」
「……あぁ、楽しい」
「そうか」
父親が笑みを浮かべると花道は首を傾げる。
「なら続けろ。俺の事は気にしなくていい」
「お、おい」
「お前が俺の心配をするなんざ10年早い。やっと夢中になれるもんを見付けたんだろ?なら思いっきり楽しんでこい」
そう言って身体を起こした父親は花道の頭をかき混ぜる様にして撫で回す。
「おい、止めろ親父!」
「スポーツをするならこのリーゼントもどうにかしないとなぁ。いっそ坊主にでもするか?」
「ふざけんなクソ親父!」
「何だとバカ息子!」
病室で口喧嘩を始めた二人は、看護師さんに止められるまで仲良くじゃれ合うのだった。
これで本日の投稿は終わりです。
また来週お会いしましょう。