ゴールドシップとの3年間   作:あぬびすびすこ

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 ストーリーを見た上で、ゴールドシップに対しての個人的な見解がこちら。


22、絆

「……ミスターシービー先輩以外誰も為しえなかったタブーに、まさか君たちが挑むとは」

「うんうん! お姉さん感動しちゃった! はやく一緒にレースできないかしら?」

 

 ゴールドシップがウィナーズサークルへ歩いていったため、俺とルドルフたちもそちらへ向かう。

 ルドルフは驚きがまだ続いているのか、少し放心している。マルゼンは目を爛々と輝かせて、新たなスターとの戦いに期待しているようだ。

 上り坂からのロングスパート、決まれば必ず勝てると思っていたが、俺が想像していた以上に余力がある走りだった。

 まさか舌をペロペロしながらゴールとは恐れ入る……またSNSで何か言われそうだなぁ。

 

 三者三様の状態で到着する。俺はトレーナーなのでサークル内に入ることができる。

 行ってくると話して中に入ると、丁度同じようにコースから入ってきたゴールドシップが今までにないぐらいの満面の笑みで駆け寄ってきた。

 足に力を入れ、ぐっと構える。

 

「おっしぇーい!」

 

 ぐわああああと叫びながら転がり、勢いを殺す。宝塚記念以来のドロップキックだが、パワーが上がっている気がする……!

 勢いを殺しきってから体を起こすと、ゴールドシップが手を差し出してきた。

 

「ん!」

 

 手を掴むと、ぐっと引っ張られて立ち上がる。ものすごくニコニコしているため、思わずこちらも笑ってしまう。

 このドロップキックは既に3回目のやりとりなのでカメラマンやインタビュアーも慣れたもので、若干顔が引きつっているが普通に近づいてくる。

 

「ええと、菊花賞制覇おめでとうございます!」

「いやー、ゴルシちゃんの偉業がまた増えちまったな。こりゃウマ娘七不思議の1つになるのも近いか?」

 

 とても嬉しいそうです。

 

「あ、はい、ありがとうございます。菊花賞にむけて、何か特別な練習をしていましたか?」

「刺身の盛り合わせにたんぽぽを乗せるバイトが活きたな! あれ、すげー難しいんだぜ」

 

 とにかく坂路トレーニングを行ってました。食用菊のバイトは事実です。

 

「あ、事実なんだ……。えっと、その、今回上り坂からスパートをかけていきましたけれども。タブーとされている中で、何故この走りをしたのでしょうか」

「アタシとトレーナーが決めた作戦だったからな! 楽しかっただろ?」

 

 ゴールドシップが気持ちよく走るための作戦でした。

 

「奥歯に挟まったさきいかがすぽっと抜けた時みてーに気持ちよかったからな! 思わずフラダンスでも踊るところだったぜ!」

「気持ちよく走るため……ですが、上り坂は危険だったのではないですか? かなりスタミナを使ってしまうかと思うのですが」

「あん? 全然あぶなくねーだろ。ゴルシちゃんの心臓は4つあるんだぜ!」

 

 スタミナに関しての不安は全くありませんでした。長距離に強いのはわかってましたから。

 

「本当に、すごいスタミナでした。それでは次に、記者からの質疑応答とさせていただきます」

「はいっ!」

 

 勢いよく手を上げたのは乙名史さんだ。相変わらず最前列で目を輝かせている。

 

「今回のレース、トゥインクルシリーズの歴史に残る走りでした! それで、次回のレースはどこを目指しているのでしょうか!」

 

 次回のレースについてはまだ考えていなかった。菊花賞は長距離ということで体に負担がかかるレース。

 少し体を休ませたいと思っていたから、レース後の体調を鑑みて出走を考えようと話をしていたのだ。

 ゴールドシップは基本的にどのレースに出るかという執着がないため、わかったーと言っていた。

 

 まだ決めていませんと答えると、成程と言ってメモし始める。

 

「レースによる疲労を見て、ということですね。では、ファン投票で上位になりましたら、有マ記念は出走予定になるでしょうか?」

 

 有マ記念。トゥインクルシリーズで最も注目されるレースと言ってもいいほど、特別なレースだ。

 年末の中山で、ファンが投票したトゥインクルシリーズで最も強いと思われる16人のウマ娘たちが勝負するレース。

 疲労が無ければ提案するのもやぶさかではないが。

 

 ゴールドシップを見てみると、何それといった表情をしている。有マ記念がピンとこないらしい。

 トゥインクルシリーズで一番でかいレースだよ。そう言うと、おお! と手をポンと叩いた。

 

「でかめのレースだな! いいぜ! で、いつやんだ?」

 

 年末。

 

「ふーん」

 

 いまいち乗り気ではない様子。まあ、レース走ったばかりだから、気持ちが向いていないんだろう。

 そう思っていると、すっと手が上がる。

 

「有マ記念はウマ娘にとってかなり重要なレースだと思いますが、ご存じないんですか?」

「あん?」

 

 刺すような質問をしてきたのは、皐月賞でもいたあの記者だ。

 前に見せたあの記事書いた人。そう耳打ちすると、ほぉーんとニマニマした顔をし始めた。

 ……いや、変なことしないでくれよ?

 

「有マ記念だろ? 知ってる知ってる、すげーやつだよな」

「……本当に知ってるんでしょうか?」

「娘にくさーいって言われてそうなパピーよりはよーく知ってるぜ!」

「む、娘は関係ないだろ!」

「あん? 何オラついてんだ? 自分が入った風呂のお湯でも流されたか?」

 

 謎の攻防を記者と繰り広げるゴールドシップ。適当言ってるだけのはずだが、何故か攻撃が成立している。

 あの記者さん、娘に嫌われてるんだ……。そんな空気が漂い始め、顔が真っ赤になっていた。

 こちらにも非があるので、まあまあとゴールドシップの肩を叩く。

 

 レースの知識がないわけではありません。知識もないのに勝てないですから。

 言い方が悪くてすみません。そう言って頭を下げると、フン! と言いながらメモを書き出す。

 

「トレーナーの指導が未熟なのではないですか? 菊花賞の上り坂、あれはタブーでしょう。勝ったからいいものの……」

「あ?」

 

 ――急に空気が凍った。

 

「おめー、アタシとトレーナーの作戦を好き勝手言うなよな」

「ぐ、だ、だがあれはタブーで……」

「タブだかデブだか知らねーけど、誰が決めたんだ? 勝手にダメとかどうとか言うなよな」

 

 ゴールドシップが凄い怒っている。遠目でルドルフとマルゼンも驚いた顔をしているのが見えた。

 

「あの作戦だから勝ったんだ。馬鹿にすんのも大概にしとけよな! タイ米食えタイ米!」

 

 ふっとプレッシャーが消え、空気が戻った。インタビュアーの人や記者たちもホッと一息つく。さっき質問してきた記者は汗が吹き出していた。

 あとでルドルフたちに怒られそうだな……そう思いながら、次の質問を促すのだった。

 

 

 

 

 

   ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

「インタビューは気にしないでくれ」

 

 電車でトレセン学園に帰っているときに、ルドルフからこう言われた。

 

「そうね、トレーナーちゃん。お姉さんだってあんな事言われたら怒っちゃうもの!」

「うん、私も同意見だ。少し意外ではあったがな」

 

 そう言って、俺の隣でクロスワードパズルを真剣に解いているゴールドシップを見る。

 

「トレーナーとウマ娘は一蓮托生だ。ゴールドシップは気にしていないと思っていたが……ふふ、いいコンビじゃないか」

 

 ゴールドシップとの間に、確かな絆がある。それがわかった記者会見だった。

 なんというか、こそばゆい。俺はゴールドシップに楽しく走ってほしいと思って色々やってきたが、それが正解だったのかわからなかった。

 だが、少しは信頼してくれているというのが今回わかった。

 

 ちらっとゴールドシップを見る。真剣な表情の横顔だ。

 

「シャコパンチャー……いやニャルラトホテプか……? それともチャイコフスキーか?」

 

 トレーニングでは見ないレベルで集中しながら問題を解いている。

 こちらの声は全然聞こえていないようだ。

 

「しかしあの記者は皐月賞でもそうだったが、少し問題だな」

「でも、雑誌記者なんてヤな感じの人多いわよ? スターウマ娘になるなら、どんな状況でも対応できないとね」

 

 マルゼンの言う通りだ。これからゴールドシップはトゥインクルシリーズでも人気のスターウマ娘になっていくはずだ。クラシック二冠と宝塚記念でGⅠを3つも制覇しているわけだし。

 ただ、メディア対応についてはそんなに気にしていない。

 

「気にしていない? 君たちにとってかなり重要だと思うが」

 

 そう、重要だ。彼女のぶっとんだ言動が多くのメディアに取り上げられるわけだから。

 取り上げられていく奇行の数々。これはそもそも事実だ。嘘偽りもない。

 だったら、それを見てもらった方がファンは嬉しいだろう。そういった破天荒なところが人気だったりするのだから。

 ウマチューブでのチャンネルを見ても、そのキャラクター性で人気を博しているわけだし。

 

「そういえばゴルシちゃん、ウマチューブでも人気よね」

「そうだったな……もう手遅れだったか」

「あらあら♪」

 

 頭を抱えるルドルフをマルゼンが慰める。

 ルドルフの言う通り、もう手遅れなのだ。パドックやレース前でのパフォーマンスに加えて、ウィナーズサークルでのドロップキック。そしてぱかチューブ。

 ウマ娘奇行種として既に認知されているのだから、メディア関係者に迷惑をかけない程度にいったほうがいいだろうということだ。

 ルドルフたちには迷惑をかけてしまうが。よろしくな、と言って肩を叩くと、眉をハの字にして笑った。

 

「トレーナーさん、君も言うようになったね」

「ゴルシちゃんの影響ね。ふふ♪」

 

 今日はゴールドシップのトレーナーなのだと再確認した日だったな、と感じた。

 隣で真剣に遊ぶ彼女を見て、次のレースも楽しく走らせてあげよう、そう思うのだった。




 ゴールドシップのストーリーでは、トレーナーに対して愛着というか絆みたいなものはあまり描写がありませんでした。育成ストーリーだとグッドエンドの最後ぐらいでしょうか。
 ただ、メインストーリーではマックイーンのように気に入った人物にはとても構いに行きますし、ライスのライブでは物凄く怒ったりしています。そういった情に熱い部分をこの小説では採用しています。

 どういうことかというと、アプリ版(メイン、キャラ、育成)ストーリーを準拠して解釈しながら書いてますということです、はい。
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