ゴールドシップとの3年間   作:あぬびすびすこ

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 夢のオリジナルレースを書くわけなので、かなりドキドキしてます。


42、URAファイナルズ予選

 URAファイナルズ、中距離部門の予選。

 それぞれ短距離、マイル、中距離、長距離と4つの部門に分けられていて、ゴールドシップは中距離部門となった。

 菊花賞や天皇賞春と、長距離でもかなりの活躍をしている。しかし、今まで走ってきたレースの中では中距離レースの出走が多いことから、こちらの部門での出走に分けられている。

 

 ゴールドシップは阪神レース場での出走となった。

 得意のレース場で、芝2,200m。2連覇している宝塚記念と同じ距離だ。

 正直言うと、かなり運がいい。もちろんレースを見に来ている観客の方々もそれはわかっているようで、ゴールドシップは1番人気だ。

 

 人気を集めているそのウマ娘はというと、控室で必死な形相をしていた。

 

「ぬぐぐ……」

 

 ぷるぷる手を震わせながら、利き腕ではないほうの手を使って箸で小豆を摘み、隣の皿に置く。

 なんの遊びなのかと思われるかもしれないが、ゴールドシップは真剣だ。俺も真面目な顔でその姿を見ながら、作戦を書いたメモを確認する。

 

「……うっし、これでいいだろ!」

 

 全ての小豆を移し終え、ふぃーと額の汗を拭う。

 水を渡すと、機嫌よく一気に飲み干した。

 調子はよさそうだね。そう言うと、楽しげに笑った!

 

「今日もアツいレースができっからな。な、今日の作戦はどーすんだ?」

 

 作戦はバ場を見て決めてある。

 阪神レース場、そしてこのバ場ならこれが面白いと思う。

 そう言って説明すると、ゴールドシップはニヤリと笑った。

 

「へへっ、いいぜ。今回もおもしれーことになりそうだな!」

 

 拳を突き合わせ、ニッと互いに笑いあう。

 さあ、予選の始まりだ!

 

 

 

 

 

『晴れ晴れとした青空の下、始まりますURAファイナルズ予選、阪神レース場! 中距離部門最後のレースになります!』

 

 いつものようにゴール前で待機する。

 今日は隣で一緒に観戦するウマ娘たちがいる。阪神レース場で既に予選を終えた娘たちだ。

 

「いやー、ここから見るとやっぱりすごいですねぇ」

「走る時とはまた違った空気感があるよね」

「ターボはいつでも走りたい!」

 

 ナイスネイチャ、メジロパーマー、そしてツインターボだ。

 先輩は3人の走りを見た後すっ飛んで帰っていった。明日走るイクノディクタスやマチカネタンホイザと打ち合わせをするためだろう。

 みんなお疲れ様。そう言うと、ネイチャとパーマーはにこやかに笑い、ターボがぶすっとした顔をした。

 

「うー……ターボも勝ちたかった!」

「半バ身差で2着だったもんね。それでも凄いレースだったよ」

「うんうん、いい爆逃げだった! ウェーイって感じ!」

 

 ネイチャとパーマーはそれぞれ勝ち上がり、準決勝に進出。ターボだけは惜しくも2着だった。

 しかし、その相手はなんとビワハヤヒデ。あのハヤヒデ相手に大逃げで半バ身差での2着、手放しに褒めたいところだ。

 あの逃げ方で2着……先輩の教えはやっぱり相当なレベルだ。今回は先輩のチームメンバーとは当たっていないが、次に同じレースの時は警戒しないと。

 

『さあ、ウマ娘たちが続々と入場してきました!』

『このレースで注目されている2番人気フェミノーブル、今回は1枠1番です』

 

 まず初めにフェミノーブルが入ってきた。自身のパワーを存分に仕上げてきたようで、体がよりガッチリしている。

 気合も十分なようで、威風堂々と胸を張って歩いている。

 

『4番人気、トーセンジョーダン』

『ナリタブライアン、ビワハヤヒデが出走したレベルの高い有マ記念でも掲示板に入っています。あれからまた仕上がっているみたいですね』

 

 トーセンジョーダンは2枠4番。有マ記念より引き締まった印象だ。

 スタミナを高めつつ速度も維持できるようにしてきたらしく、スタミナ勝負でも負けないだろう。

 

『3番人気、ナカヤマフェスタ。5枠9番での出走です』

『切れ味のある末脚に勝負強さをもつウマ娘です。どんなバ場でも走れるので、期待は高いですね』

 

 ややうつむきがちに気持ちを高めているナカヤマフェスタ。

 トーセンジョーダンと同様にかなりの勝負強い走りに加えて差しウマ娘らしい末脚。前回はスタミナ勝負でこちらが有利だったが、それでも粘り続けたあの走りはかなり厄介だ。

 

『5番人気、エイシンフラッシュ。この評価は少し不満でしょうか』

『ペースを守って爆発させる末脚は素晴らしいものがあります。ダービーのような一瞬の攻防では彼女が有利でしょう』

 

 エイシンフラッシュは5枠10番。今日もいつも通り落ち着いている。

 解説の方が言う通り、フラッシュは一瞬の攻防に強い。今までは無理やりスタミナ勝負にしてきたが、作戦を見透かされて脚を溜められたら難しいレースになる。

 

『そして1番人気は勿論このウマ娘! ゴールドシップです! 8枠18番、大外枠ですがどうなるでしょうか!』

『彼女は枠順の有利をあてはめられない走りをしますからね。今日はどんな作戦を考えているのでしょう』

 

 機嫌がよさそうに側転しながら入場してきたゴールドシップ。

 1番外の枠ではあるが、特に関係はない。そういうものに縛られる走りをするウマ娘ではないのだ。

 

「みんな気合が入ってるね……」

「うん。凄い仕上がり……誰が勝つかわからないよ」

「ターボが出たらターボが勝つ!」

 

 胸を張って宣言するターボの頭をぽんぽん叩き、ターフにいるウマ娘たちを見る。

 注目されているウマ娘がいるとはいえ、全員実力者だ。頼んだぞ、ゴールドシップ。

 

 

 

 

 

 全員がゲートに向かい、準備運動で体を温める。

 やる気は十分。最強のウマ娘となるべく、気合を入れてゲートに入ってく。

 

『各ウマ娘、ゲートイン完了しました』

 

 ――ガタン!

 

『スタートしました! 全員好スタートです!』

 

 出遅れは無く、綺麗なスタートだ。

 今回のレース、逃げウマ娘がいない。誰が先頭でペースメイクしていくのだろうか。

 阪神特有のスタートから長めの直線。ゆるやかにポジション争いをしていく中、するすると前に出てきたのはこのウマ娘だ。

 

『先頭に躍り出たのはなんとエイシンフラッシュ! 彼女がリードしていくようです!』

『ペース配分が上手なウマ娘ですからね。自分の脚が活きるようなペースでの展開になるでしょう』

 

 エイシンフラッシュがスタートの下り坂で加速し、先頭を取った。外枠だというのにかなり攻めた作戦だ。

 おそらく、ゴールドシップによるペースの乱れを何度も経験したからだろう。自分が先頭に立ってペースを作ることで、スタミナ勝負に持ち込ませないということか。

 しかし、彼女の脚質は基本的に差し。大博打だが、この選択は正解か、それとも……。

 

『エイシンフラッシュから2バ身ほど開きましてフェミノーブル、その外並んでトーセンジョーダンです』

「いいとこつけてるね、2人とも。芝もURAファイナルズ用に変えたばっかりだから、内側もバ場がよくて走りやすいし」

「そうだね。今日はすごい逃げやすかった」

 

 フェミノーブルとトーセンジョーダンは自分の得意な先行策だ。しかも、先頭がペースメイクの上手いフラッシュだからか、かなり走りやすそうにしている。

 ジョーダンはフィジカルの強いフェミノーブルの外側というのを少し嫌がっているようだが、後半の展開に響くのかどうか。

 

『中団後ろにナカヤマフェスタ。そこから離れてコースの中央を走るのがゴールドシップです』

『内側に寄らないんですね。何か作戦があるのでしょうか』

 

 ナカヤマフェスタは中団後ろ、差しの体勢だ。そしてコースの中央を悠々と走るのはゴールドシップ。

 何故こんな外側を走っているのかみんな不思議そうにしているが、理由はたった一つだ。

 

「今日も勝てー! ゴールドシップー!」

「かっこいいところ見せてー!」

「黄金の不沈艦を見せてくれー!」

 

 この声援だ。阪神レース場は最初の直線でホームストレッチに入る。

 そこは観客たちがみんなウマ娘を見ている場所なわけで。声援が大好きなゴールドシップに、注目される中央を走ってもらう。

 するとどうなるか? 答えは簡単だ。

 チラッと視線を向けるゴールドシップに、親指をグッと立てる。

 

 ――行ってこい!

 

「……へへっ!」

 

 彼女の笑い声が聞こえた気がした。

 その直後、ターフから聞こえてきたのは慣れ親しんだ爆発音だった。

 

 

 

 

 

   ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

「いくぜぇーーーっ!」

 

 ドォン! という音が、響く阪神レース場。

 エイシンフラッシュが第1コーナーに入る前でのことだった。

 

(早いっ!)

 

 フラッシュはその音を聞きながらも、動揺を隠してペースを変えずに走っていく。

 ゴールドシップはロングスパートが持ち味とはいえ、明らかに速すぎる。

 

「またやる気ってわけねッ!」

「何回も何回も、ありえないから!」

 

 フェミノーブルとトーセンジョーダンは、この流れに覚えがあった。

 特にフェミノーブル。彼女は2度もこの展開で負けているのだ。

 チラッと後ろを確認すると、目をギラギラ光らせたゴールドシップが、大外からグングン順位を上げてきていた。

 宝塚記念で見た、先行の走りだ。

 

「くく……! 面白い勝負になってきたじゃないか……!」

 

 ナカヤマフェスタは今回、ゴールドシップにはついていかずに後方待機だ。

 有マ記念では同じ土俵で勝負にいったが、このレースでは自分の走りで勝ちにいくつもりだ。

 不敵な笑みを見せながら、しっかりと脚を溜めて走っていく。

 

 第1コーナーに差し掛かり、フラッシュは体を傾けて体勢を整える。

 後方から近づいてくる爆音を聞きながらも、ペースは速くせず、遅くもせず。一定の速度を保つ。

 フェミノーブル、ジョーダンも競り合いなどせず、コーナーを丁寧に回っていく。

 勝負は最終直線の前、お互いに無言で通じ合っていた。

 

 そんな中、第2コーナーを抜け、向こう正面にフラッシュが入ろうとしたところで、ゴールドシップが中団を追い抜かし、ジョーダンの後ろにまでやってきた。

 

(来たし! でも、このペースだったらまだまだいける!)

 

 ジョーダンはゴールドシップの姿を確認するが、ペースは乱れない。

 フェミノーブルもチラッと見て、マークしつつも脚色は変えず。

 

『1,000m通過時点で60.1! ほぼ平均タイムです!』

『ゴールドシップが上がってきていますが、ペースは変わりません。どの娘たちも冷静ですね!』

 

 今日は今まで以上に誰も崩れない。ゴールドシップはその様子を見て舌なめずりをした。

 

「面白くなってきたぜ……!」

 

 ニィっと笑った彼女は、フェミノーブル、ジョーダンたちのペースに合わせず、そのままゆっくりと進出しだす。

 それを見た2人はギョッとした。自分たちと同じペースで走って一息入れるのかと思っていたら、その様子もなくスパートをかけたままだ。

 これだとそのまま抜け出されてしまう。そう思ってペースを上げようとしたが、踏みとどまった。

 

「勝負はここじゃないし……!」

「自分の走りで、勝つわ……ッ」

 

 2人の勝負は最後の直線。ゴールドシップについていくのは悪手だ。

 ペースアップの誘いに乗らず、ぐっとこらえて我慢する。

 

『ゴールドシップが上がり続けています! ついにエイシンフラッシュと並んだぞ!』

『どこまでスピードを上げていくつもりなんでしょうか!』

 

 楽しそうに抜かしていくゴールドシップはフラッシュの隣に並ぶ。

 チラッと様子を窺うが、ペースを変えずそのまま走って行く。

 何度もゴールドシップにスタミナ勝負で負けてきたのだ、今回ばかりは誘いに乗らない。

 鋼の意志でプレッシャーを気にも留めず、ペースを守り続ける。

 

「へへっ」

 

 ゴールドシップは笑みを深くする。

 今までのようなゴールドシップ劇場では、誰もノってこなくなってしまった。

 それが楽しいのだ。だからこそ、アツいのだ。

 

『第3コーナー抜けて第4コーナーに入ります!』

『コーナーは下り坂! ここから加速していきますよ!』

 

 先頭にいるフラッシュとゴールドシップは、坂道の恩恵を受けてグンと加速する。

 その後ろにいたフェミノーブルたちも同様だ。特に、後方待機していたナカヤマはここがポイントだと感じ、一気に前に詰めていく。

 

『ナカヤマフェスタが上がってきました! 先頭集団に食らいついていきます!』

「くく……勝負といこうじゃないか!」

 

 コーナーからゴール前200mまでの下り坂。ここでいかにスピードを上げていけるかが阪神レース場のポイントだ。

 フラッシュ、フェミノーブル、ジョーダンは直線から仕掛けようと、ギリギリまで脚を溜めていく。

 

「……ッ!」

「う、ぐ!」

 

 直線まで残り50m。そこでフェミノーブル、は仕掛けた。

 外にいるジョーダンを弾き飛ばす勢いで加速しながら膨らみ、ジョーダンを妨害しながら一気にフラッシュたちとの距離を詰める。

 ジョーダンは外側に少しだけ弾かれるが、それを利用してわざと膨らみ、後ろからくるナカヤマをブロックしながらゴールドシップの外をとる。直線で良いバ場をとりにいったのだ。

 フェミノーブルは失敗したと歯噛みするが、脚を使わせた。こっちが有利だと切り替え、さらに加速していく。

 

『最終コーナー回って、最後の直線! 仁川の直線には坂がある!』

『先頭はエイシンフラッシュとゴールドシップ! しかし1バ身後ろにはフェミノーブルとトーセンジョーダン! さらに凄い勢いでナカヤマフェスタが上がってきた!』

「混ぜろよ、その勝負ッ」

 

 最終直線で坂を下っていく中、ナカヤマが一気に追い上げてきた。

 ジョーダンとフェミノーブルの間のスペースに入り、内から追い抜く算段だ。

 

「はあぁーーーっ!!!」

『エイシンフラッシュ、まさしく光速の末脚だ! エイシンフラッシュが抜け出した!』

 

 ナカヤマが猛追する中、閃光のような末脚で一気に前に出たのはエイシンフラッシュ。

 ゴールドシップとの併走から抜け出し、先頭へ躍り出た。

 

「負けるかッ!」

「あたしだって!」

「私を忘れてやがるなッ!」

 

 フェミノーブルとジョーダンも坂の加速を利用して一気に前に上がっていく。

 ゴールドシップの横に並び、フラッシュを捉えにかかる。

 しかし、その後ろから飛び込んできたナカヤマフェスタが3人を抜いてフラッシュと並ぶ。

 5人が混戦状態の中、残り200m。ここで下り坂が終わり、上り坂が待っている。

 

『残り200! ここから上り坂が待っているぞ!』

『エイシンフラッシュとナカヤマフェスタが抜け出していますが、その差はわずかですよ!』

 

 溜めていた脚を爆発させ、上り坂でも一気に駆け上がるフラッシュ。ナカヤマもその勝負強さでフラッシュと並走し、上っていく。

 しかし、どれだけ頑張っても上り坂では速度を上げられない。必死の形相でターフを踏みしめる。

 声援が5人を応援する中、ゴールドシップはゴール前からの声を聞いた。

 

 ――見せつけてやれー! ゴールドシップー!

 

 歯をむき出して笑ったゴールドシップは、上り坂でターフを思いきり踏みこんだ!

 

「おらあああぁぁーーーっ!!!」

「くうぅ! ま、けないし!」

「まだ、いけるッ!」

 

 ドゴォン! ドゴォン! 上り坂で併走していたジョーダンとフェミノーブルを置き去りに加速していく。

 2人も必死に追いすがるが、その加速にはついていけない。

 ほんの半バ身先で争っていたフラッシュとナカヤマをも抜き、坂を上り切ったところで先頭に躍り出た。

 

『坂を上り抜け出したのはゴールドシップだ! やはり坂で上がってきたぁ!』

「きやがったかッ!」

「まだ、脚は残ってます!」

 

 ゴールドシップに抜かされたが、ナカヤマとフラッシュはまだ脚を残していた。

 フラッシュが最後の力を出し、ぐっと前に出る。しかし、ゴールドシップも同じように伸びてくる。

 ナカヤマも根性でさらにスピードを上げるが、ほんの少し届かない。

 

「待てッ!」

「あたしが、勝つし!」

 

 後ろから突っこんできたフェミノーブル、ジョーダン。

 フラッシュたちに追いつき横に並ぶが、ゴールドシップまであと半バ身届かない。

 

「みんな、いっけー!」

「がんばれー!」

「逃げ切れ―!」

 

 ――いけぇ! 走れぇ!

 

 様々な声を聞き、ゴールドシップは顔から流れる汗も気にせず、ぐわっと目を見開いた。

 

「ッシャアーーッ!」

 

 ドゴォン! その大きなストライドと響く爆発音。全員伸びていく中、ゴールドシップはさらに1段階ギアが上がった。

 見ていた誰もがさらに熱狂した。ゴールドシップがスピードを上げた! 残り100mで、まだ速くなったのだ!

 

『ゴールドシップがさらに伸びた! ゴールドシップが伸びた! 凄い走りだ! 完全に抜け出した!』

「これがゴールドシップ様じゃあああぁぁーい!!!」

 

 ぐんぐん伸びていくゴールドシップ。共に走ってきていたジョーダンやナカヤマたちを離していき、そのままゴールまで突っ込んだ。

 

『ゴールドシップが先頭でゴールイン! 勝ったのはゴールドシップです!』

『先頭集団が全員強い走りをする中、さらに飛び出してきましたね!』

『勝負強さを見せつけました、ゴールドシップ! 次の準決勝も期待できる走りです!』

 

 汗を拭い、息を整えたゴールドシップは観客たちに拳を突き上げて見せた。

 大きな歓声が上がる中腕を降ろし、ゴール前で同じく息を整えていたライバルたちの元に歩いていく。

 

「ふぅー……よう、勝者サン」

「はぁ、はぁ……ゴールドシップ」

「うい! アツい勝負だったな!」

 

 手を上げながらニッと笑うゴールドシップを見て、ナカヤマとフェミノーブルは苦笑する。

 今回は自分の走りを全力でやった。結果としては1着をとれなかったが、悔しさと同時に満足感もあった。

 

「また、負けたし……」

「はぁ……ふぅ……ええ、ですが、次は……」

 

 ジョーダンとフラッシュも悔しさをにじませるが、次のレースでは、と気持ちを新たにした。

 そんな中、ゴールドシップがジョーダンの背中をバチっと叩く。

 

「いたっ!? な、何すんの!」

「へへ、おめーもいい根性してるよな。今日は前よりすごかったぜ!」

 

 にししと笑うゴールドシップ。ジョーダンは何を言われたのかわからず、ぽかんとしてしまう。

 

「またデカめのレースでやろーぜ! アタシはアツいレースしてーからよ!」

「……はぁ。それよりも、次の準決勝、勝ってよね!」

「ああ、私らに勝ったんだ。負けるなよ」

 

 次の準決勝の勝利を願われ、ゴールドシップはグッとガッツポーズをとる。

 

「うっし! おめーらの仇はとってやるからな!」

「仇はあんただし!」

 

 楽しくもアツいやり取りを見て、観客たちはさらに盛り上がるのだった。




 阪神芝2,200mといえばこれ! という走りです。
 つまり、先行で進み直線で駆け下り上りで一気に前に出て末脚爆発。

 大外を回りながらスタミナで潰すのもゴールドシップですが、先行から爆発するかのような末脚もまた持ち味ですよね。
 というかスタミナ自慢なのに末脚も凄いってどういうことなの……。

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