ワールドトリガー・TheREDmanHERO   作:怪物怪人怪獣さん

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シークレットファイル②のマスター神父の幾つかの行動についてのお話。読み飛ばしてもオッケー。


そして三輪隊と風間隊のファンに申し訳ありません。どう戦っても相性の意味で勝てない相手でした。コンクリに生きたまま埋め立てて海に沈めても戻ってきます。


用語
怪物⋯⋯世界各地に散発的に現れる人を襲う怪人でも怪獣でもない存在。
モデルはユニバーサル・モンスターズの1920年代から50年代まで放映した怪奇モンスター達。(ノートルダムのせむし男、オペラ座の怪人、魔人ドラキュラ、フランケンシュタイン、倫敦の人狼、ミイラの復活、大アマゾンの半漁人)

モンスターハンター⋯
怪異や怪物達と戦う存在⋯⋯メンツは大体【リーグ・オブ・レジェンド時空を超えた戦い】と【ヴァン・ヘルシング】の登場しそうな人達でそのメンツの中にマスター神父と野良モンスターハンターのホッパーがいる。
初期設定だと神父の人物像は天然パーマにダサいサングラスを掛けた年季の入ったトレンチコートを纏う中年の年齢をした普通の人間。糸を主力に使った暗器使いで本気の戦いになると髑髏の仮面を装着した槍使い⋯⋯黒いコートを纏った石ノ森ヒーローのスカルマンみたいなキャラクターだった。
没キャラの1人である余命数ヶ月の拳法使いの人狼から狼要素を足して怪物と退治する為に吸血鬼と人間の混血児にして格好悪い服装や外見を減らして言動や行動で駄目な大人らしさを表現した今の人物像が完成した。

オリジナルキャラクター紹介
少年 ホッパーの通り名を持つ三門市で活動する情報屋。三門市立第一高等学校に通っており高校2年生の2ーDクラスの生徒。ボーダー隊員の三輪達の同級生で普段は学校に通いながら太陽倉庫という倉庫のアルバイトをしている。神父が信頼する情報屋であり過去に色々な事があって神父と神父の仲間と知り合いになってしまった不幸の少年。情報収集能力が高いがどうやってその情報を収集しているのか謎が多い一面を持つ。
近接格闘術も高く人間と飛蝗の昆虫人の混血児の為に飛蝗の昆虫人に近い姿に変身出来る。三門市に第一次大規模侵攻が起きる一年前に歴史の陰で数多の文明を破滅させた生物的な雰囲気を押し出した暗黒結社を1人で滅ぼしておりその反動で現在は面倒事が嫌いな捻くれた性格になっている。ボーダーの連中よりも『オーナー』が怖い。
今回のお話で剣持夢想の代わりにあちこち動き回った影のMVP。

地味な青年 神父の知り合いの情報屋。海外のオカルト好きな知り合いが多くその中にいるロンドンの情報屋から紅い怪物についての情報を神父に渡す。

ボートン
ホッパー情報屋仲間の1人で建築物オタク。鏡拓也も利用している。

レインベアー
ハッキング能力が高いホッパーの情報屋仲間だがその正体は不明。

オーナー
神父と交流を持つボーダーのスポンサーの1人で神父達の正体を知っている妖しい雰囲気を持つ黒髪長髪の美少女。情報屋ではない物の趣味の延長線上で情報を収集しており神父に黒い犬の情報と紅い怪物の潜伏先の情報を渡した。ホッパーに異常に怖がれている。

マスター神父が使う黒トリガー 影の狼(リュカーオーン)
バチカンの対怪物組織が所有する代々受け継がれてきた狼を模した仮面型の黒トリガーで被るとMARVELヒーロー ブラック・パンサーのような全身を覆う黒スーツのトリオン体になる。通常のトリオン体を優に超える異常な程の耐久力と強度をもち超人的な反射神経や俊敏性や跳躍力を持つトリオン体なのだが⋯⋯それがあっても中距離遠距離攻撃は一切無い。
硬い銀色のトリオン製の鉤爪や刃を両肩から両指先まで展開可能だが刃渡りが決まっている。
黒トリガーの特性から見て主に奇襲や夜襲や目立ない隠密行動専門。
通常とは違う特殊なトリオン体の為に磁力関係にも弱い。
ボーダー相手には勝てても近界民相手だと普通に苦戦する。
そして使っている本人はコレをトリガーと認識していない。
トリオン兵やトリガー使いではなく怪物や怪異相手に使っている。
全体的な評価はシールド無しで問題ない程の耐久力と強度は優れ過ぎているが近接格闘術と近接攻撃しか使えない限定的に強い黒トリガー。
今回のレッドバットはシークレットファイル②で文字数制限で表現出来なかった様々な形態に変化します。モチーフの幾つかにデビルマン第1話に登場したデーモン族の妖怪ヘンゲ。このキャラは名前の通りに本当にあらゆる物に姿を変わります。動きの表現の幾つかモンスターハンターのティガレックスを参考にしています。


幕間 影の狼

〔推奨BGM お好きな御経〕

何処かの銀河系の惑星

???「⋯⋯⋯。」

静寂が周囲を支配し足音と共に1人の異形のシルエットがある場所に歩みを進める⋯⋯その異形の行動を阻止しようと、頭の先から爪先までハイテクな重装備を装着しレーザーライフルを持った集団が異形を待ち構える⋯⋯

???「⋯⋯。」

異形の怪物はハイテク重装備の集団に向かって行き一瞬で1人のライフルを持った手首を血飛沫と共に千切り飛ばされ悲鳴も上げる暇もなく次の瞬間、鋭利な刺によって身体中を穴だらけされる。異形の怪物の前では用意した重装備の装甲は気休め程度にもならない。

反応が遅れた集団は異形の怪物に向かって容赦も手加減も無い一斉射撃を敢行する。レーザーライフルの銃口から放たれる眩しい光弾に合わせて次々と落ちる薬莢、壁や床や天井には集団の流れる銀色の血が撒き散らされ集団の相手を次々と殺した異形の怪物は避ける動きをせずに悠々自適に前に歩み⋯⋯歩む次いでに近くにいる相手の息の根を次々と奪っては倒れた相手の死骸を踏み越えて進む。

止まらない怪物の歩みに更に銃撃の勢いは増すも怪物は止まらない。その不死身同然の怪物に集団の中には恐怖を覚える者も現れるも相手は止まる事はない。

ある者は下半身が切断され、ある者は鋭利な刺突状の尾に装甲易々と突き破られては胸や腹を貫かれ、ある者は触手による刺突による股下から脳天を串刺しされて、ある者はバイザーメットごと触手の餌食となり絶命、飛び散る銀色の返り血が異形の怪物の染め上げる。

???「⋯⋯。」

無数の物言わぬ骸達の上に静かに立つ異形の怪物は自分の腕に付着した銀色の血を舌で舐めて悍ましい笑みを浮かべてその場を後にする。

 

【レッドバット逃亡 至急逮捕せよ 生死は問わぬ】

実力派揃いの宇宙刑事機動隊を文字通り全滅させた連続殺人犯は追跡の手を逃れて地球へ逃亡。被害の拡大に宇宙を股にかけるバウンティハンター達に依頼を考える宇宙警察上層部達を他所に殺人犯を追って一匹の黒い犬も地球へ向かった。

 

 

 

 

 

満月が満ちたある深夜⋯⋯霧に包まれた街ロンドン

「ワン!ワン!ワン!ワン!!」

人通りの少ない暗いの路地裏から痩せた犬達が激しく何かに対して吠える。犬達の鋭い視線の先には霧が立ち込めていた。

【⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯】

やがて霧の奥から何かが駆け出す音と何かが羽ばたく音と共に霧を切り裂き姿を見せるのは、生体電気を迸りながらアスファルトを高速で駆ける一匹の黒い狼の姿形をした不定形生物。そしてその高速移動に匹敵する空を低く飛ぶ凶悪な悪鬼の形相した紅い悪魔の姿であった。

その普通の生物にかけ離れた異形の姿を見た犬達は一斉に吠えるのを辞めて怯えるようにその場から一目散に逃げる。

血のように紅い巨大な両翼を羽ばたかせて低く飛ぶ紅い悪魔は地上を走る黒い狼に空中から爪を生やした両足を蹴りを放つ。その蹴りの連続攻撃を黒い狼は全て躱し反撃を仕掛けるも、悪魔は後部に生やした尻尾を鞭のように振るい黒い狼の顔を殴打する。

その一撃で建物の壁まで吹き飛ばされる黒い狼。壁に叩きつけられ犬の悲鳴を上げる。黒い狼に向かって紅い悪魔は急降下のドロップキックを叩き込む。

体勢を立て直す暇も無く鋭利な爪が生えた蹴りを腹部に直撃して爪が黒い狼の肉体に食い込み狼は悲鳴を上げる。そのまま紅い悪魔は邪魔な黒い狼にトドメの攻撃を放とうと鋭い牙が幾重に並んだ口を開く。

「「ッ!?」」

黒い狼は自身の生体電気を最大限に放出し赤い悪魔は全身を感電させて攻撃動作を封じて無理やり紅い悪魔から一度距離を離しては助走をつけて跳び掛かり相手の喉元目掛けて噛みつく。しかし紅い悪魔は背中の両翼をその場で羽ばたかせて突風を吹き放つ。その突風をモロに受けた黒い狼はロンドンの建物の上に着地し其れに続いて羽ばたく音と共に紅い悪魔も所々身体に煙を上げながら向かいの建物の上に着地。

「「グルルルルゥゥゥ!!」」

互いに唸り声を上げて向かい合い夜の闇を照らす美しい満月をバックに睨み合う両者は互いの一挙手一投足を見逃さない。

両者3分にも満たない間、彫刻された石像のように膠着状態になるも

【カーーン!カーーーン!!カーーン!!】

やがて近くにあるロンドンの教会の鐘の音が大きく鳴る。その鐘の音を合図に同時に動き出し翼を悪魔の如く大きく羽ばたかせて先端に刃がついた触手を全身から生やした悪魔は黒い狼に一気に飛び掛かる。

「「っ!?」」

対する黒い狼は反撃せずに敢えて建物からアスファルトのある床に跳び降りて何処かへ駆け出す。忌々しい相手である狼を悪魔は急ぎ追い掛ける。

背後から次々と放たれる悪魔の追撃を躱しながら黒い狼は方向転換し周囲の建物の壁を足場にして瞬時に連続跳躍し紅い悪魔の喉笛に鋭い牙を食い込ませて生体電気の電撃を浴びせる。

「「っ!?」」

電撃で肉体にダメージを与えられながら紅い悪魔は黒い狼を無理難題引き離しアスファルトに投げ飛ばし何処かへ飛んで行く。投げ飛ばされた黒い狼は空中で体勢を整えて着地して直ぐに飛んでいった紅い悪魔を追跡する。

「⋯⋯っ!?」

此処まで来るまで相棒を始め多くの犠牲者を出した敵を今日こそケリをつけようと考えていた黒い狼は紅い悪魔を執拗に追う。だがその望みも虚しく両者の戦いの場はロンドンから日本の三門市に移るのであった。

 

 

 

 

それから数日間が経過した日本の三門市。

マスター神父「⋯⋯。」

客席がそれなりに埋まった時間帯、店の店長であるマスター神父はお客に出すコーヒーの準備をしている時だった。店に備え付けられたテレビにあるニュースが流れて神父は軽く視線を向ける。

《昨日の深夜、◯◯県の三門市鈴鳴の7丁目の歩道でミゲル・アズナブルさん(39歳)が身体をバラバラになった状態で発見されました。》

マスター神父「え?⋯⋯」

お昼のニュース番組に聞こえてきた名前と写った証明写真を見た俺は一瞬、頭が空っぽになり呼吸を忘れて戸惑う表情を見せるも持っていたコーヒーをキチンと淹れて注文したお客様に提供する。

マスター神父(死んだ⋯⋯ミゲルが⋯⋯嘘だろ⋯⋯)

内心どうしようのない感情の渦が生まれる中で俺は其れを表には出さずに喫茶店のマスターとして動き回る。

これは後に⋯⋯謎の三門市連続バラバラ殺人事件と呼ばれる未解決事件でその事件の最初の犠牲者は俺の良き友人であるミゲルだった。

 

 

 

マスター神父「⋯⋯⋯。」

その後ミゲルの葬儀と告別式を終えて俺は1人臨時休業した店に戻ると店の前に知り合いの神父の姿があった。目の前にいるのは三門市の教会の知り合いの牧師ではなくバチカン市国の法皇に仕える影の秘密結社の知り合いだ。

マスター神父「ん?」

ジョナサン神父「おや?これはこれは丁度良いタイミングでしたね。」

マスター神父「⋯⋯ジョナサン神父。遥々バチカンから日本に何の用ですか?」

ジョナサン神父「久しぶりだな。影の狼。」

神父は嬉しそうに小さな笑みを浮かべて言うと封筒を俺に見せる。

ジョナサン神父「折角の再会に色々と互いに近況を伝えたいが、

結社から指令書だ。読んだら手筈通りに燃やしてくれ。」

 

そう言うとジョナサン神父は俺に封筒を手渡し静かに俺の前から立ち去る。

 

誰も居ない店の中に戻り封筒の封を切り中身を確認する。

【数週間前ルーマニアのトランシルバニア地方に謎の隕石が落下⋯⋯その数日後⋯⋯トランシルバニア地方に住む住民が全身の血が抜かれて状態で身体がバラバラになった不審な猟奇殺人事件が発生。暫くしてその噂はピタリと収まるも次はロンドンから日本へ移動するように断続的に似たような連続バラバラ殺人事件が発生。この状況を見てバチカンの我が組織は事態の解決する為に組織の精鋭であるモンスターハンター影の狼を出動する事を決定。】

マスター神父「殺害された人間に共通点は無し⋯⋯事件の発生時刻は全て夜から深夜に掛けて⋯⋯神の名に於いて神敵を滅せよ⋯⋯バチカンめ⋯⋯何処の怪人連盟だよ。」

神父の脳裏に過ぎる鋭い眼光が特徴の退魔師の僧に最年少の素顔が全く分からない仮面の忍者の少年と現在アメリカのネバダにいる戦う大学教授、果ては透明人間の泥棒に海賊と曲者科学者達。冒険家の爺も含めたモンスターハンター達を思い出す。彼らは国家権力に属せず世界各国の宗教間の対立関係を全て捨てて超常現象の調査や怪異の討伐を行なう太古から続く対怪物組織に属する。その内の何人かは過去に国家に属した事もあったようだが、大国同士のゴタゴタに自分の持つ力を利用されるのを恐れて此方に来たらしい。

文句をタレタレと流しながら有無を言わせずにコンロの火を点けて指令書を燃やす。

マスター神父(連続バラバラ殺人⋯⋯恐らくミゲルの奴を殺したのはソイツの仕業だろ。しかも犯人は今、三門市にいる。)

 

犯人の能力も外見は不明⋯⋯だが俺が動く必要があると言う事は少なくても普通の人間じゃない。

マスター神父(犯人の情報を集める必要があるな⋯⋯手始めにホッパーの奴に相談するか。)

指令書の封筒の一欠片も残らずに燃え尽きるのを確認した店長は店の奥の部屋の前に立て掛けられた灰色よジャケットに袖を通し日の光を遮る黒いサングラスを掛ける。

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《お掛けになった電話をお呼びしましたが、お出になりません。》

マスター神父「⋯⋯ホッパーの奴、スマホの電源をオフにしてやがるな。」

背中に黒い狼の紋章が縫われた灰色ジャケットを纏った神父は不機嫌な表情で店内の電話を切る。

 

マスター神父「ソッチがその気になら会いに行っちゃうもんねぇ!?」

バイクのヘルメットとバイクのキーを持ち神父は店を閉めてブラックスターの裏口の従業員用の駐車場に停めてある車中泊用のキャンピングカーハイエースの横にあるバイクに跨る。

バイクにキーを挿してエンジン音を鳴らしつつエンジンを動かし神父はブラックスターを後にする。

 

 

 

 

三門市のある個人店のダイナーレストラン「ガルム」内そのテーブル席の一つに店員に注文したフライドポテトを頬張る1人の少年がいた。

少年の年齢は17才で剣持夢想も通う三門市立第一高等学校の学生だった。

店員「いらっしゃいませ⋯⋯お好きな席へどうぞ。」

少年「⋯⋯。」

新聞紙を持ったお客は少年の真後ろのテーブル席に座り少年はその客と目を合わせる事なく持参したロビンソン漂流記の小説を読みながら

少年「⋯⋯お久しぶりですね。アウトロー神父様。」

後ろに振り向く事なく少年は神父に話し掛ける。

マスター神父「本当にお久しぶりだな。アウトロー少年。お前に電話したのにスマホの電源オフのせいで此方は直接お前を探さないと行けなくなったんだぞ。」

少年「あっ、」

少年は俺に言われて思い出したようにスマホの電源をオンにすると不在着信がある事に気付く。

少年「良く此処にいると分かりましたね。」

マスター神父「お前は此処のダイナーの常連さんだからな。」

少年「ダイナー以外も色々と通っているんですけど⋯⋯まぁ、何の用ですか?近況報告する程俺達、仲は良くないでしょ。」

マスター神父「お前に仕事を頼みたい。ルーマニアのトランシルバニア地方からイギリスロンドンを経由して現在日本の三門市に活動し始めた謎の連続バラバラ殺人鬼。ソイツについてのあらゆる情報が欲しい。」

少年「また突然ですね。でも貴方からの仕事の依頼だからやりますけど⋯⋯報酬は何時も所に振り込んで下さいね。」

マスター神父「危ない目に遭いそうになったら直ぐにスマホに電話しろ。」

少年は小説を片手に残りのポテトを頬張りながら言う。

少年「危ない目にね⋯⋯⋯そうなる前に仕事を終わらせますよ。」

マスター神父「信用しているぜ。情報屋。」

少年「アウトロー神父め。」

少年はそう言うとポテトを食べ終えてオレンジジュースを飲みきりテーブル席を後にする。

少年と入れ替わるように店員がやってきて

店員「ご注文はお決まりになりましたか?」

マスター神父「アイスコーヒーを御一つお願いします。」

俺は店に入店した為にアイスコーヒーを注文する。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

さっきのホッパーを始めツテのある情報屋達に情報収集をお願いし俺は余裕のある時に店の営業を終えた後、深夜の三門市を巡回パトロールする。出来るだけロンドンやトランシルバニアで起きた事件の被害者達と同じように深夜の灯りが少ない暗い道を1人で動く。

だが1人無防備に深夜の道をわざと歩いても犯人と遭遇する事もなく有益な情報が集まるまでそれなりの日数が経過してその間、謎の連続バラバラ殺人事件の被害者達は刻々と増えていった。

 

事態が変わったのは、三門カトリック教会の外の駐車場で連続バラバラ殺人事件が発生した日。その翌日の雨が降りそうな曇り空⋯⋯ホッパーを始め信頼出来る情報屋から一定の情報が集め終わった事を電話で貰い更に従業員達の安全を考えて店を臨時休業に決めた日。

マスター神父「悪いな。野島。ホンの数日事情があって店を閉める事になった。」俺はぶっきらぼうな口調でバイトの1人に電話をする。

野島《ちょっとお父さん。勝手だよ。》

マスター神父「其れについては本当に悪いと思っているよ。だからこそこうして予め電話している。後、何度も言うが店長と呼べ。」

自分より年下の年頃の娘への接し方や言い方にもう少し色々とある筈なのに、野島に対しては何故か変に言葉足らずになってしまう。

野島《⋯⋯⋯もしかして、最近起きている殺人事件について心配しているの?》

マスター神父(母親譲りの勘の鋭さ⋯⋯けどその勘の良さのせいで物理法則を超えた超常現象や怪異の類に巻き込まれてしまったんだが)十数年前の過去の出来事を思い出すも直ぐに頭を切り替えて

マスター神父「そう言うんじゃねぇよ。でも神出鬼没の連続バラバラ殺人事件が街で発生しているんだ。従業員の安全を考えるのも店長の仕事なんだよ。分かってくれ。」

野島《もう!勝手なんだから!?今度のお母さんの誕生日プレゼント一緒に選んでね。》

マスター神父「真心のお気持ちも込めて謹んで選ばせて貰いますよ。」

野島《約束だからね。》

そう言うと電話は切れて俺は受話器を置き店のカウンター席にダラっとした体勢で座り込み

マスター神父「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯はぁ~〜〜〜すっごくっ緊張した〜〜」俺は複雑な気持ちを顔に出しながら緊張を解く為にゆっくりと溜め息を吐く。

マスター神父(女との約束事は苦手だ⋯⋯守らないと泣かしちまうからな。)

ダラっとした体勢で店の雰囲気を良くする為に飾ってある写真立てに写る親友二人と共に三人が集まった写真を俺は見る。

マスター神父「⋯⋯。」

その写真には自分以外は満面な笑みを浮かべている親友二人の姿があった。こんな自分を人間らしくしてくれたかけがえのない奴ら⋯⋯でもその二人は三門市で起きた異次元から侵略者が起こした大規模侵攻で巻き込まれて亡くなった。

マスター神父「動くとするか⋯⋯」

此処でじっと感傷に浸っても仕方がない。気持ちを切り替えて俺は立ち上がり臨時休業の知らせの紙を店の前に貼り⋯⋯

マスター神父「黒野の方にも電話しよう。」

そそくさと次の行動に移る。

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黒野真琴に俺は数日間、店を閉める事を電話で言い了承を無事貰い外出する準備を完了し情報を集めた情報屋に会う為に外出する。

バイクで待ち合わせ場所に向かう途中、事件現場の一つの近くのを通る。

生駒「⋯⋯⋯。」

マスター神父「⋯⋯。」

マスター神父(あの青年。目力強いな。)

その途中、信号でバイクの動きを止め信号が変わるのを待つ間、俺は視線を事件現場の方に移すと事件現場を疲れた様子の割に目力が強く硬派な堅物な印象を持つソース顔の青年が現場を凝視していた様子を俺は目撃しヤケに記憶の中に残る。

 

昼の時間

待ち合わせの情報屋の1人と三門市の名の知れた映画通も余り知らない程の場末の映画館で合流する為に寂れた外見の映画館に行き上映している映画の券と安物のポップコーンを販売コーナーで購入しチケットに記載された指定された座席に座る。客の人数は俺を足しても10人程度⋯⋯しかも大体俺より年上が多い⋯⋯まぁ話題沸騰の最新映画ばかりを上映する大手の映画館と違い変な内容の映画ばかりピックアップして上映ローカル映画館はこんな物だと俺は勝手に納得する。

座った俺が数分待っているとやがて隣の席に印象に残り難い地味な服装をした十代後半から二十代前半のソバカス青年が座り込み互いに視線を軽く向けながら映画が上映し始める。

1962年のフランスのSFコミックを実写映画化された作品1968年に公開したSF/コメディ映画【バーバレラ】

主演女優は女性関係にグダグダした映画監督の奥さん。人にお勧めはしない方が良い映画が流れる。噂では1977年のペルーの出身の人が描き直した再公開用のポスターアートの主役の女性の左側に描かれた黒衛兵(ブラックガード)の整列のイラストを左右反転させるとあら不思議、機動戦士ガンダムの有名なザクの立ち絵にそっくりになるという変な噂がある。ザクの準備稿デザインが心無しかイラスト黒衛兵に似てなくもない。黒衛兵が右手に持ってる鞭なんてグフのヒートロッドのモチーフなのではと変な噂が小さな界隈でまことしやかにある。

ポルノ映画を観ている訳ではないのに、何とも言えないヤバい内容のシーンが流れる中。沈黙を切るように隣に座る地味な青年は小さく言う。

地味な青年「ナポレオンの切り札は?」

マスター神父「ダイヤの15。」

用心して情報屋と互いに決めた合言葉を口にして青年は俺を信用し俺が予め購入したポップコーンを片手で食べ始める。

地味な青年「神父様。集まった例の情報を報告します。」

 

マスター神父「頼むわ。」

地味の青年「⋯⋯ロンドンの知り合いの情報屋から貰った情報によりますと殺害された被害者は全て血を抜かれ失血死してから身体をバラバラにされている模様です。」

マスター神父「失血死?」

地味な青年「噂では吸血鬼の仕業では無いかと疑われているようです。」

マスター神父「⋯⋯違うな。吸血鬼の仕業じゃない⋯⋯」

地味な青年「というと?」

マスター神父「仮に奴らなら生き血を吸う事はあってもわざわざ肉体を無駄に損壊させる利点が無い。血を吸う習性はあるが全くの別の怪物の仕業だよ。」

地味な青年「良くご存知ですね?」

マスター神父「過去に色々とあってな⋯⋯吸血鬼の生態にそれなりに詳しいんだ。」

地味な青年「なら紅い怪物の事はご存知ですか?」

マスター神父「⋯⋯詳しく話してくれ。」

地味な青年「ロンドンで起きたバラバラ殺人の事件現場近くの酒場で酔っ払った人間がキリスト教がイメージした悪魔にとても良く似た怪物を見たとロンドン警察に言っていたらしいですよ。」

マスター神父「キリスト教がイメージした悪魔に似た紅い怪物ね〜」

地味な青年「警察も目撃者が酔っ払った状態の為に信憑性が難しいと判断してます。誰にも信じて貰えなかった酔っ払いは教会の牧師に相談にしたようですよ。」

マスター神父「ふぅ〜ん。」

(吸血鬼の生態に近く夜から深夜に掛けて行動する悪魔に似た外見をした紅い怪物⋯⋯俺が動く事は確実みたいだ。)

マスター神父「大した情報収集能力だな。」

地味な青年「海外のオカルト好きな知り合いが人より少し多いだけですよ。」

マスター神父「ほら報酬。」

地味の青年「どうも。」

情報収集の依頼の成功報酬が入った封筒を青年に手渡し青年は受け取る。

地味の青年「⋯⋯。」

報酬を受けとった青年は上映中の映画を他所に座席から立ち上がり出て行こうとする。

マスター神父「(映画を)観ないのか?」

地味の青年「この後、用事があるんで」

マスター神父「そうかよ。」

マスター神父(つれない奴だな⋯⋯金剛の奴と同じか。)

俺は日本出身の鋭い眼光の印象が強い坊主頭の退魔師を思い出す。

映画を最後まで観て終えて俺は次の情報収集を依頼した探偵がいる合流場所へ向かう為にバイクでローカル映画館から移動する。

バイクを付近の駐車場に駐車させて三門市のとある路地裏の奥に歩き進めると見えてくる大衆酒場「ディアーナ」

準備中と書かれた看板に視線を一度向けて慣れたように扉を開き中に入るとカウンターの奥で店の営業準備を黙々とする壮年の男性と目が合う。

酒場のマスター「来たか。不良神父。」

マスター神父「どうも山さん。店の準備中にすまないね。オーナーは?」此処のマスターとは旧知の知り合いで俺が今より荒れていた頃に何度か世話になった事のある人物⋯⋯

店の客に出すグラスを丁寧に綺麗な布巾で拭きながら答える。

酒場のマスターの山「⋯⋯奥の部屋にいるよ。入りな。」

マスター神父「サンキュー。山さん。」

店のマスターから許可を貰い奥の部屋に俺は入る。

??「⋯⋯御機嫌よう。ダンピールの神父さん。」

部屋の中には幽霊と見間違う程の雪のような白い肌に漆黒の闇を印象付ける程の黒いセーラー服とタイツを纏い長いセミロングヘアにハイライトの無い黒の瞳を持つ美貌の女子高生がシャーロック・ホームズの初版を片手にお洒落な帽子を被ってパイプ椅子に座って待っていた。女性は小説を読むの辞めて入室してきた俺に視線を合わせ不気味で妖しい雰囲気の笑顔を浮かべて言う。

マスター神父「御機嫌よう。麗しき闇を愛するオーナー。」

オーナー「⋯⋯最後に会ったのは確かパリのオペラ座の怪人の騒ぎ時以来ですね。」

マスター神父「そうなるな⋯⋯でもわざわざ直接来なくても遣いの者に資料を店に届けるとか色々とあるのに⋯⋯」

様々な交流関係を持つこの店のオーナー。見た目が美貌の女子高生だけでなく卓越した情報収集能力の高さもあるが謎や秘密も多い。古の妖や黒魔術の力を借りているのと噂もある。

オーナー「お気になさらず⋯⋯私は金持ちの道楽で様々な物や情報を収集する変わり者⋯今日はボーダーの外務・営業部長と色々と話し合いをする次いでに此処に足を運んだだけですわ⋯⋯コレが頼まれていた情報です。」

 

マスター神父(こういう怪異の情報に関しては頼りになるんだが深入りは厳禁なタイプの美少女だな。危険な香りがする⋯⋯サディストの類の香りが⋯⋯)

娘とそんなに歳が変わらないのに所作の一つ一つが絵になる。そんな印象を強くし所々に育ちの良さが出ており⋯⋯へたすると見惚れてしまいそうになる俺に資料を手渡すオーナー。その資料を目を通して俺は首を傾げる。

マスター神父「⋯⋯⋯イギリスの魔犬?オーナー。俺が依頼したのはトランシルバニアから始まりロンドンそして三門市で発生している謎の連続バラバラ殺人事件についての情報だが⋯」

資料の一つにあるロンドンの新聞の記事にイギリスの全土に出没する不吉の黒い犬の姿が目撃させる内容が載っていた。

 

オーナー「それが連続バラバラ殺人事件の現場周辺に姿が目撃されているらしいわ。首輪をしていない黒い犬が、事件現場近くからは狼の遠吠えのような物も聞こえたようですし。もしかしたら狼かも知れない。」嬉しそうに探るように俺に呟くオーナー。

マスター神父「ブラックドックねぇ⋯⋯俺の追ってる奴と関係があるのか?⋯⋯紅い怪物の情報は?」

オーナー「勿論、集まっていますよ。日中は光が入らない場所に居て日が沈んでから活動する模様です。潜伏先のリストです。」

マスター神父「良く調べてくれたな。⋯⋯⋯随分あるな。」

連続バラバラ殺人鬼の潜伏先の可能性のある建物候補の名前な住所に目を通しながら俺はオーナーに言う。

オーナー「界境防衛機関ボーダーが指定した警戒区域は関係者以外原則的に立ち入り禁止の為、警察もおいそれと巡回出来てません。異次元から現れる近界民さえ気を付ければ指名手配の犯罪者達の潜伏先としては警戒区域は持ってこいな場所なんですわ。」

マスター神父「地元の悪い所をつつくなよ。⋯⋯その通りだけどさ⋯⋯場所の絞り込みは出来ているのか?」

オーナー「確定的ではありませんが⋯⋯幾つか。」

マスター神父「教えてくれ。」

オーナー「今から相手の根城に行く気ですか?」

マスター神父「早いに越した事はないだろう⋯⋯⋯既に犠牲者は出ているんだ。犠牲者を増やされるの避ける為に討滅する必要がある。」

オーナー「ならトランシルバニアやロンドンに目撃されている黒い犬にも注意を⋯⋯情報屋として見て紅い怪物とソレは無関係じゃないわ。」

マスター神父「⋯⋯トランシルバニアにもそのイギリスの魔犬が現れているのか?」

資料を目を通しながら俺はオーナーに聞く。

オーナー「えぇ。目撃証言を知る限りブラックドックは神父さんと同じ獲物を執念深く追っている。まるで狙った獲物は何処までも追い詰めて必ず仕留める狩人ね。」

マスター神父「天から地上に堕ちてきた謎の悪魔にそれを追う謎の不吉な黒い犬の妖精⋯⋯科学が世界中に行き渡るこの現代に随分と科学で説明出来ないオカルトな話を聞いている気がするぜ。」

オーナー「神と言う現実に存在するかしないを信仰する宗教に入っている人間が其れを言いますか?」

 

マスター神父「⋯⋯俺は仕事柄の必要以外は祈りはしない。何故なら⋯⋯必要以上に有り金全てを捧げる程に祈り続けてもいざ何か起きても神はソイツを絶対に救ってくれる保証は無い。」

実際、何かに祈り縋ってもその分だけ得をするというのは一種の願掛けを始めとしたゲン担ぎや思い込みやプラシーボ効果に過ぎん。

オーナー「身も蓋も無いですね。」

マスター神父「こちとら生臭坊主と変わらない不良神父なんだからな。何よりも⋯⋯」俺は軽口を叩くように一度笑うも自分自身の今の境遇を思い浮かべ諦観を持った暗い表情になりオーナーに言う。

マスター神父「⋯⋯人混みに紛れ人の真似事をして生きるヒトモドキの俺達に普通の人間の幸せは見つけられない⋯⋯オーナー。貴方も分かるだろ。」もう一つの姿を持つオーナーに俺はそう問う。

オーナー「⋯⋯⋯言われなくても⋯⋯」

オーナーは思い当たるのか一度顔を黒い帽子で隠すように俯き俺の問いに答える。その言葉には彼女自身の半生の中でこれまで経験した一言では表せない物の重さがあった。

マスター神父「⋯⋯。」

しかし振り払うように俯くのを辞めてオーナーは俺に向き合いながら言う。

オーナー「⋯犯人であろう奴の場所の絞り込み候補を教えましょう。」

マスター神父「頼む。」

バチカンの手先或いは下僕⋯⋯神が人に仇なす怪物や怪異を殺す為に放つ刺客⋯⋯自身の立ち位置等、怪物達から見たらその程度でしかない。

其れでも人の世を守る為に俺達のような奴は必要なんだ⋯⋯周りに恐れられて本当の意味で受け入れられなかろうと⋯⋯

 

 

オーナーから必要な情報を貰い俺は大衆酒場の「ディアーナ」を後にする。路地裏を少し歩き

鏡「⋯⋯。」

マスター神父「⋯⋯。」

途中、日の光が余り入らない路地裏の雰囲気に場違いな学生服を着た何か呆れるようなジト目をする二枚目半の少年とすれ違いも俺は次の目的地、ホッパーがいるであろうダイナーに向かおうと路地裏を出る。

古寺「あっ、ごめんなさい!」

出るタイミングが悪かったのか眼鏡掛けた少年と俺はぶつかってしまう。

マスター神父「いや、此方こそ。怪我はないかい?」

古寺「はい。すいません。」

マスター神父「いや、大丈夫なら問題ない。」

俺と眼鏡を掛けた少年は互い謝罪の言葉を言い合い俺は少年の横を通り過ぎる。通り過ぎるながら眼鏡を掛けた少年とその少年の同級生達の姿を目で軽く流し見る。

染井「⋯⋯。」

マスター神父(あの眼鏡の子。たまに店に来る子だ。)

その同級生の中にいる顔見知りの客⋯⋯⋯染井華の姿に気付き眼鏡の少年とぶつかる前にすれ違った同じ学生服の少年に彼らは用があるのかと考えるも俺は自分の用事を優先する為にバイクを駐車している駐車場に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

ダイナー「ガルム」のテーブル席にて

仁礼「チクショウ〜〜問題が分からん!!」

机の前に並べられた課題に頭を両手で左右から挟みオーバーアクションをする光。

三輪「仁礼。そこは1週間前授業で習っただろ。」いの一番に課題を片付けて光の勉強を教えている三輪と三浦。

三浦「仁礼さん。此処はね⋯⋯」

米屋「にしても街が物騒な事になっているのにこんなファミレスで呑気に勉強やって良いのかねぇ。」

少年「犯罪者や不審者が出没していようと市役所に用がある人間は市役所に行くしスーパーやコンビニにも買い物に行く。」

小佐野「市民の安全は警察や警察に協力するヒーロー達に委ねられたんだねぇ。」

少年「小佐野さん。陽介。課題の手が止まっているぞ⋯⋯っ!!」

何気なくホッパーと呼ばれた少年は店の窓に視線を向けると直ぐ近くの交差点に黒いリムジンが通り過ぎようとしていた。問題は黒いリムジンの後部座席に座っている存在だ。その存在は距離があるのも関わらずに店の中にいる少年に気付き

オーナー「⋯⋯。」

リムジンの窓からサングラス越しに小さく微笑むのだ。

少年「っ!!」

ホンの1秒に満たないがその瞬間、周囲の同級生達の存在を忘れてしまいホッパーは顔色を真っ青にして全身が震え確実な死を覚悟してしまう。

リムジンは店を何事もなく通り過ぎる。確実な死が遠ざかった為に冷や汗をダラっと出して客席に力なく座り込む。

仁礼「どうした?凄い冷や汗だぞ!!」

少年「⋯⋯⋯気にするな。それより勉強を続けなさい。」

仁礼「ちぇ〜〜。折角人が親切に心配してやっているのに、そんな言い方ないじゃないかよ〜」

少年「今度のテストの補習を受けない為に危険な殺人鬼が出没する中で事前に勉強会を開いているんだからな。」

三輪「そうだぞ。コイツの言う通り先生や親に心配掛けたくないだろ。」

米屋「異次元からの侵略者と戦っている時点で家族には心配されているけどな。」

小佐野「店員さん。アップルパイをお願いします。」

少年「食べたら勉強しろよ。」

少年(何であの女が三門市に来てやがる!!)

座り込みぐったりしながらホッパーは見掛けた女に警戒心を隠さない。

 

リムジン内部にて

運転手「如何しましたか?主。」

オーナー「何、少し知り合いの姿を見掛けて⋯⋯⋯暇潰しにからかってやったわ。」

主と呼ばれた女子高生は三門市内にいる人成らざる者達の気配を把握し嬉しそうに微笑み視線を白いボーダー本部に移して彼女は言う。

オーナー「やはり面白い物が集まるわね。⋯⋯この街は。」

オーナー(もう暫くしたら日は完全に沈み闇夜の時間となる。人ならぬ者を始め怪異や魔の物達が人知れずに動く時間だ。)

そう言うと再び彼女は手に持ったシャーロック・ホームズの本を読み進める。

彼女は夕焼けがやや暗くやったの薄暗い夕闇と闇夜が好きな時間であった⋯⋯理由は得体の知れない者と出会えるからだ。其れ故に彼女の中で一つ残念なのは⋯⋯コレから起きるであろう人知れず起きる戦いを観覧席から高見の見物が出来ない事だ。

 

 

 

少年「⋯⋯⋯。」

さっき目撃した女は気になるが、今日は知り合いの神父に頼まれた巷を騒がせる連続バラバラ殺人事件の犯人について情報を渡す日だ。気持ち切り替えて注文したフライドポテトを食べ終えて筆記用具や課題のノートをリュックにしまう。

米屋「おっ。どうした?」帰る準備をしている事に陽介達は気付く。

少年「折角の勉強会をしている所で悪いが俺はこの後、人と待ち合わせがあるから一足お先に帰って良いか?」

仁礼「そうなのか?」

少年「そうだよ。代わりといって何だが店の注文の代金は払っておくから。」

仁礼「おっ!サンキュー!?」

小佐野「ありがとう。心の友よ〜」

米屋「ラッキー!?」

三浦「良いの?」

少年「勉強会を一番早く抜けるから⋯⋯せめてものお詫びだよ。気にするな。」

三輪「すまんな。」

少年「皆も暗くなる前に早く帰宅するように。」

三浦「うん。此方もある程度勉強したら僕らも帰るから良いよ。」

小佐野「仕方ない。帰り道に気を付けて帰るが良い。」

少年「また来週、学校で会おう。」

三輪「あぁ。校長先生や担任も言っていたが夜間の外出は辞めておけよ。」

少年「誰が進んで危ない所に行きますかよ。でも忠告はしっかりと聞いておきますよ。」

米屋、仁礼、「またな〜。」

ホッパーと呼ばれた少年はそう同級生達に言うとレジでお会計をして1人ダイナー「ガルム」を後にする。

 

 

 

マスター神父「⋯⋯うん?」

少年「⋯⋯。」

ダイナーに向かう途中、花屋オカマ堂と言う花屋をバイクで通り過ぎようとする俺は花屋の前に立つホッパーの姿を気付きバイクを彼の前に停車させる。

彼も此方に気付きその格好は学校の学生服の上に緑色の季節外れのニット帽を頭に被り髪を隠し赤いレンズの年季の入った丸眼鏡タイプのゴーグルを装着し目を緑色の飛蝗の口⋯⋯ホッパー曰くクラッシャーがイラストされたマスクで口元を隠し首には飛蝗の羽根の色に似た白いマフラーを首に巻いた情報屋としての出で立ちをしていた。

マスター神父「ホッパー。」

少年「よっ。神父のおっさん。」

マスター神父「珍しいな。どうしてこんな所に?」

少年「⋯⋯特に別に⋯⋯神父のおっさんがあのダイナーを行くルートの中で最短のルートが此処のルートだからな。通り道でおっさんを待っていたんだよ。」

マスター神父(使う道を特定されちまっている⋯⋯)

少年「この先を少し進むと個人が経営する売店がある。頼まれた物は其処で渡す。」

マスター神父「わかった。後ろに乗ってくれ。」

伝えたい事が何か理解し俺は少年をバイクの後ろに乗せて走る。

マスター神父(何かあったな⋯⋯)

少年「⋯⋯。」

何時もならダイナーのテーブル席にいて俺が来るのを待っているのに今回は俺が通る道に敢えて迎えに来た。⋯⋯らしくない。そんな印象を俺はホッパーに覚える。

 

少年「⋯⋯此処だ。」

バイクを少し走らせホッパーが教えてくれた個人経営の売店前に到着するも肝心の売店はシャッターで閉じており店は完全に閉まっていた。

マスター神父「シャッター閉じてるぞ。」

てっきり店が開いていると考えていた俺は閉まっている店の様子を見てホッパーに店が閉じている事を呆れながら言う。

少年「⋯⋯此処の店長は現在、息子家族を連れて宮崎県に旅行中だ。つまり現在此処は無人の店と言う訳だ。」

情報屋らしく売店の店長達の行動を既に把握しており情報を渡す事に問題は無いらしい。良く見るとシャッターには白い紙が貼られており内容は旅行に行ってくるので店を休業させていただきますと書かれていた。

二人は無言はバイクを降りてシャッターに背中をもたれかける。

少年「ほれ。頼まれていた情報。」

隣に立つ俺にホッパーは自身のリュックからそれなりの厚さを持つ茶封筒を取り出し俺に手渡す。

俺は封筒を貰い封を開けて中身の情報に目を通す。内容は他の情報屋がくれた情報とそんなに変わらないが、各情報に補強の意味の深みや信憑性が増している。

映画館の情報屋は紅い怪物の存在。謎多きオーナーは黒い犬の存在と紅い怪物の三門市での潜伏場所。そしてホッパーは殺された被害者達の行動パターンの共通点に街灯が少ない暗い夜道といった場所で一人になった所を殺害されている事が記載されていた。オーナーの集めた潜伏場所の候補から街灯が少ない歩道や人気の少ない場所を目撃者を限りなく少なく自由に行動する場所は⋯⋯

マスター神父(恐らく⋯⋯日の光が極力入らない地下の下水道を利用して紅い怪物は人を襲っている。肝心の資料には犯人の特徴は無いが。うん?この青年は?)

資料を順番に目を通していると映画館へ向かう途中に目撃した青年の写真が資料に記載されていた。

マスター神父「ホッパー?この資料に載っている目力がヤケに強い硬派で堅物な青年は?」

少年「トランシルバニアやロンドンの件とは関係が無いのですが、三門市で起きている連続バラバラ殺人事件の各事件現場で野次馬に必ず混じっている特徴的なソース顔の青年です。写真の青年の名前は生駒達人。19歳。三門市大学の大学生で界境防衛機関ボーダーのスカウトで遥々京都から三門市にやってきた青年です。身長は173cm血液型はB型で誕生日は4月29日。星座はねこ座。渾名はイコさん。趣味はギターで最近はコソコソと料理も趣味にしている模様。好きな好物はナスカレー。噂では第4の壁を認識出来る能力を持っている⋯⋯」

マスター神父「ストップストップ!!怖い怖い怖い!!知らない青年の個人情報を赤裸々に教えるなよ。」情報屋の怖さを味わいながら俺はホッパーに注意する。

少年「交友関係は勿論、銀行の暗証番号から預金通帳の中身まで把握済みですが聞くか?」

マスター神父「連続バラバラ殺人鬼の情報が欲しいのに、何で関係無いボーダーの青年の身辺情報を集めてやがる。」

少年「⋯⋯怪しい人物だからだよ。」

俺の疑問に間髪入れずにホッパーは集めた理由を言う。ホッパーは俺に言われた通りに殺人鬼のあらゆる情報を集めた。そしてその情報を収集する過程でボーダーに所属する青年が関わっている可能性が出てきたのだ。

マスター神父「⋯⋯。」

少年「この生駒達人。ボーダーに所属の際にボーダーの寮に暮らしているようだが、最近、帰宅した形跡が暫くないんだ。」

マスター神父「⋯⋯どういう事だ?」

少年「大学生で有りながらここ暫く大学に通ってなくバイトをしている様子もない。かといってボーダーで仕事をする訳ではない。」

マスター神父「⋯⋯。」

少年「知り合いの家に泊まっている情報もない。行動が不規則でおかし過ぎる。」

マスター神父「⋯⋯⋯連続バラバラ殺人鬼なのか?」

少年「最初は俺もそう思ったのだが、殺人鬼と彼は別人物の可能性が高い。」

マスター神父「その理由は?」

少年「其処の資料にも載っている通り、バラバラ殺人事件が発生した時、暫くは何処で誰と何をしていたか分かっているからだ。

けど事件とは別の噂が広がると共に行方が分からなくなった⋯⋯」

マスター神父「別の噂?」

少年「警戒区域に現れるとされる黒い狼男の噂だ。」

マスター神父「黒い狼男?」

少年「その噂が出始めた瞬間に生駒達人の姿が神隠しにあったように消えたんだよ。」

マスター神父「⋯⋯言っておくが俺じゃないぞ。」

少年「知ってるよ。アンタのは肉眼で映る事はあっても視覚カメラに残らないだろ。」

 

 

マスター神父「俺、その噂知らないんだが⋯⋯」

少年「三門市にはまだ小さな噂程度だからな⋯⋯でもカルト界隈の掲示板では割と話題になっているぜ。現代に蘇る狼男だとかでな。」

マスター神父「黒い犬は?」

少年「トランシルバニアやロンドンに目撃されたブラックドックか?その噂も三門市の黒い狼男と入れ替わるようにパッタリと止んだ⋯⋯⋯黒い狼男と殺人鬼を追う謎の黒い犬⋯⋯この二つ無関係だと思うか?」

マスター神父(二つの国に目撃された謎の黒い犬が三門市に来てからは目撃されなくなり、代わりに謎の黒い狼男の噂が広がると同時にボーダーの一人の青年が行方不明になる。⋯⋯否、今日俺は彼を目撃した。⋯⋯行方不明じゃない⋯⋯なら一体。)

マスター神父「点と点が繋がる以前に無駄に謎が増えるばかり⋯⋯黒い狼男は殺人鬼と関係があるのか?」

オーナー『情報屋として見て黒い犬は紅い怪物と無関係じゃないわ。』俺はオーナーの言葉を思い出す。

マスター神父「殺人鬼と黒い犬の繋がりについては分かるか?」

少年「ソッチの方はまだ何も⋯⋯でもトランシルバニアやロンドンで人知れず暗闘していたらしいな。両者が敵対関係と見て間違いないだろ。」

マスター神父「なら三門市でも暗闘している可能性はあるな。」

マスター神父「生駒って奴が何処に居るか分かるのか?」

少年「路地裏⋯⋯肉体的にも精神的にも疲労して服が汚れるのも構わずに休んでいるよ。」

そう言いながらホッパーは額に指を当てて目を閉じ説明する。

マスター神父「⋯⋯お前、ソイツに発信機でも付けてるのか?」

少年「付けてませんよ。でも何処にいるかは分かります。」

マスター神父「⋯⋯あんまりヤバい事をするなよ。」

少年「人間から見たら俺達は充分ヤバい存在でしょ。」

互いに顔を背けながら言い合う二人。俺はホッパーを含めた情報屋から貰った情報を精査し⋯⋯ソロソロ此方から紅い怪物を討伐しに行こうか考える。

行方不明になったボーダーの青年が生きているのは今日この目で確認した。謎はまだ多く残っているが⋯⋯動くべきタイミングだろ。

マスター神父「おい。ホッパー。」

少年「うん?」

俺はホッパーの方に声を掛けホッパーは閉じていた瞼を開き反応する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

烏「ッ!?」

黒い烏達が動物的本能で何かに反応し空高く一斉に飛び去る。

夕陽に染まる三門市の警戒区域のとある廃ビルの屋上にて

マスター神父「⋯⋯あの地下下水道に例の紅い怪物が潜んでいるらしい。」

俺は飛び去る烏達に興味も無く静かに廃墟のビルの屋上から警戒区域内の下水道出入り口をサングラスを掛けた真剣な表情で眺める。

少年「らしいじゃねぇよ!?何で俺をそんな危険な場所に連れてきた!?俺は情報屋だぞ!?必要な情報提供したら用済みな筈だろ!?」

マスター神父「お前も一応、妖な存在と戦うモンスターハンターだろ。」

少年「俺はこの姿だと戦闘力たったの53万しかねぇんだよ!?」

マスター神父「戦闘力5じゃないなら⋯⋯充分じゃねぇか。」

少年「おい!?本当に俺、常人の15倍の身体能力を持つガイラット拳法を使うウズマキング達をバッタバッタを薙ぎ倒す程度しかないんだよ。」

マスター神父「⋯装備は?」

少年「えっ?⋯⋯あるよ。」

マスター神父「⋯⋯準備良いな。」

テンポ良い会話をホッパーとすると俺は屋上から下水道へ向かう。

少年「おい!クソ神父!?ったく」

自分を勝手に戦力に数えた神父に不満を覚えるも自分の住む街に怪異や怪物の影があるなら動く必要があると考えてホッパーは文句を垂れるも神父の後についていく。

光の入らない暗闇が続く下水道の出入り口の前に並び立つ二人。

マスター神父「此処に入る前に伝える事がある。」

真剣な表情で俺はホッパーに言う。

少年「何だよ。ヤブから棒に⋯⋯」

マスター神父「⋯⋯何時もの仮面を俺の店に置いてきてしまった。」バイク用の手袋から暗器を内蔵された黒いグローブにはめ替えながら正直に答える。

少年「巫山戯るな。店に今すぐ引き返せ!」

他力本願満々だったホッパーは怒り吠えるように叫ぶ。

マスター神父「入るぞ。」 

少年「あっ、おい!」

二人は光が通らない下水道へ足を踏み入れる。

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二人は会話をせずに黙々と暗い通路を歩く。暗闇の地下下水道に自分達の足音が響き渡る中でホッパーは歩きながら顔を隠す物を外し飛蝗の口模様のマスクを外した瞬間、地下下水道の臭いにゲッと顔を歪めながら神父に問う。

少年「⋯⋯⋯実際神父。どう思うよ。今回の件。」

 

マスター神父「何がだ?」

少年「三門市には現在、連続バラバラ殺人事件も騒がれているが吸血鬼によって失血死したって言う吸血鬼事件も世間で騒がれている。夜中、変な茶色い蝙蝠の怪物を目撃したっていう噂もある。」汚れるの嫌って白いマフラーも首から外してリュックにしまいながら吸血鬼事件についての話をするホッパー。

マスター神父「吸血鬼事件の詳細はまだ掴めていないが連続バラバラ殺人事件の方は俺が所属するバチカンの組織は怪異の仕業だと考えているようだ。」

少年「でも具体的な怪物の姿は誰も見ていない。殆どが姿を捉えられずに殺されて死体に変わるからだ。結果、噂が一人歩きする。」

マスター神父「怪物や怪異の仕業ではないと?」

少年「その可能性もある⋯⋯最近はレッドマンを始め怪獣だののデカイ未確認生物の目撃情報も増えてきたからな。」

マスター神父「小型の怪獣の仕業ってパターンか。其れなら『お化け屋敷』の案件になるな。」

少年「怪異による怪奇案件とかも最近は『お化け屋敷』の専門だろう。益々俺がヤバい所に行く理由が無くなるじゃないか。」

マスター神父「人がいる所に業や欲望は自ずと集まる⋯⋯俺達のような人モドキが怪異や魔の類と関わらない事は不可能だと思うぞ。魔や妖の存在は互いに引き寄せ合うとか200年前の酒好きの司祭の奴が良く言っていた。」

少年「人の欲望や願いにきりが無いと同じか⋯⋯此方は好奇心で廃墟の建物で肝試しをして本物と遭遇したって知らないのに⋯⋯」

マスター神父「どうかな?お前なら面倒臭いや文句の言葉を言いながら助けに動きそうなタイプだと思うな。」

少年「人をゲゲゲの鬼太郎と一緒にするな。本気で行いを振り返り心を入れ替えるならな。人間は自分達の想像以上に馬鹿だから極力人と関わりたくないんだよ⋯⋯⋯。」

マスター神父「ボッチまっしぐらだな。学校で話友達はいるか?」

少年「心配せんでも友達はいるし学校生活は充実しているよ。」

マスター神父「ソイツは良かった⋯」

少年「止まれ。」

後ろを歩いていたホッパーは真剣な表情で神父の横に通り過ぎて前に立つ。其れに習い俺は足を止め下水道の雰囲気が変化した事に気付く。

マスター神父(コレは⋯⋯血の臭い。)

下水道特有の酷い臭いに混ざって血の臭いと重苦しい空気が奥から漂い始める。身体の中の吸血鬼の細胞が血の臭いに煩く反応するのを無理やり抑えつけながらホッパーに神父は問う。

マスター神父「近いか?」

少年「⋯⋯あぁ。」

短いやり取りをしてホッパーの両目は黒い瞳から昆虫のバッタ目に変わり静かに言う。

少年「⋯⋯食事中のようだ。」

視界不良な暗闇の奥を索敵する為に苦虫を噛み潰したような顔で人間としての単眼の能力とバッタ目として複眼の能力を合わせた目で奥にいる存在の姿を捉えて神父に伝えるホッパー。

マスター神父「⋯⋯。」

その言葉を聞き神父は無言で灰色のジャケットの長袖の内側から黒い柄に両先端の穂が銀色の鋭利なニードル状になっている収縮されたスピアを利き手の袖口から手慣れたように掴み歩を静かに進める。

 

最初に見えたのは光が入らない暗い下水道で真っ赤な悪魔の如き蝙蝠のような折り畳まれた皮膜状の両翼と鋭利な先端を持つ尾を生やした怪物の後ろ姿であった。ローカル映画館で情報提供してくれた地味な青年が言った情報通りキリスト教がイメージした西洋の悪魔の外見をしていた。

マスター神父(凄く濃い血の臭いだ⋯⋯)

臭いの原因元を想像しつつ其れを最初に見た印象は真っ赤な蝙蝠や吸血鬼の要素を反映された悍ましい悪魔のような外見をした怪物だった。

レッドバット「⋯⋯」

10代後半から20代前半の茶髪のセミロングヘアの女性の喉笛に鋭利な牙を突き立てて人一人分を軽々と顎の力で持ち上げて怪物は此方へ振り返る。

「「っ!?」」

怪物が振り返った事で女性は既に絶命している事を知る二人。二人の姿を見て餌が来たと考えた怪物は喜び目の前で女性の血を一気に吸い尽くし見る見ると干からびて怪物は口から投げ捨てる。

瞳無き黄色い目で少年と神父を見て今にも攻撃してくる気配だ。

紅い怪物は二人に向けて尋常じゃない殺気を放出。

少年「⋯⋯⋯今の気持ちを伝えて良いか?」

マスター神父「何だ?」

少年「⋯⋯神父(アンタ)に同行した事を今凄く後悔してる。」

凄まじい程の容赦のない殺気の塊をまともに受けたのに恐怖に呑み込まれる事なく険しい表情で両目を元の黒い瞳に戻してホッパーは神父に今の気持ちを素直に言う。

マスター神父「本物の狼男と妖魔や妖獣相手の時も同じ事言っていたな。」

少年「あの時は、忍者と退魔師の坊さんと戦う大学教授の人達がいたからまだ心に余裕があったんだよ。」

 

レッドバット「⋯⋯。」

レッドバットは猫や犬のように身体の体勢を低くして跳び掛かる動作をする。

少年「来るぞ!?」

マスター神父「お前の割り切りと切り替えの速さは立派な武器だな。」

少年「誰のせいでこうなったと思う!?」

逆ギレ気味に神父の褒め言葉に反応しつつホッパーは手早く赤いマフラーを首に巻いて神父と共に一気に駆け出す。

レッドバット「っ!!」

マスター神父(狼男に引けを取らない程の瞬発力!!)

俺はすぐに短槍を両手に持ち水平に前に差し出して伸縮式の黒い柄のリーチを伸ばして獣ように跳び掛かりながら口を大きく開けた怪物の噛み付き攻撃を正面から受け止める。硬い材質の黒い柄に鋭利な牙が直撃し火花が飛び散る下水道を一瞬照らし互いの姿を露わにする。

少年「っ!?」

必然的に至近距離から睨み合う力比べの押し合いになる俺と怪物を他所に忍者の如く下水道の床から壁に走り跳び掛かった怪物の跳躍からの飛び掛かりを回避したホッパーは神父をフォローする為に踏み込むと共にホッパーは拳を握り締めて紅い怪物の横っ腹目掛けて拳を打ち放つ。打撃による衝撃が相手の肉に拡がるのを確認するもその感じた手応えにホッパーは思わず

少年「硬っ!」

2.8㌧の威力を持つパンチを放ったのに関わらずに拳の方に痛みを覚えて一度、怪物から距離を取るホッパー。距離を取る際に命知らずにも恐ろしい形相をする怪物の顔に鋭い蹴りの一撃を叩き込む。

ホッパーの不意の一撃をモロに貰い怪物と神父の力比べの均衡が崩れる。蹴り其の物にダメージを負った訳ではなく神父を噛み殺そうと集中していたのにホッパーの攻撃で集中が乱れその隙を神父は逃さずに怪物から間合いを取り先端が両刃のスピアを素早く連続で振り回す。

対する紅い怪物は両手の形状を禍々しい両刃剣状に形を変えて狂ったように剣状の両手を振るい神父が持つスピアと剣が火花を散らした剣戟を繰り広げる。

マスター神父(瞬発力だけじゃない⋯⋯反射神経がかなり高い上に身体の一部を変えられるのか!!)

両手に握り締めたスピアで相手の身体を刺し貫こうと振るうも躱されて逆に下から斬り上げるように刃状の腕部の切っ先を躱す。

俺自身の攻撃の間合いを維持しながら相手の腕部の変化に驚きを隠せない。数度の互いの得物が火花を散らしてはぶつかり合い互いに距離を取ってから再び詰めては相手との刃物同士の鍔迫り合いをする両者。

力の均衡を崩し互いの刃の部分が火花を散らして受け流されると

レッドバット「っ!!」

紅い怪物は両手の形状を五本指の手の形に戻して両爪で薙ぎ払うように腕を振るい更に先端が鋭利な形状となった尻尾も振るい攻撃の手数を増やす。

俺はその攻撃を連続バックステップで躱し続けて攻撃の動作が一瞬止まった好機を逃さずに一気に踏み込みスピアで強烈な斬り上げを放つ。

身体を真下から真上に斬り裂かれ背中の両翼を羽ばたかせて下がり相手が距離を離した分、前方へ踏み込んだのちスピアによる横振り攻撃を放ちスピアの先端は爪で弾かれて相手の空中から跳び掛かりをバックステップで一度躱し再度横振り攻撃を放つ。

レッドバット「っ!!」

紅い怪物は二度めのスピアによる横振り攻撃を鋭い牙が並んだ歯で噛み挟んで俺のスピアの動きを止める。

マスター神父「っ!?」

少年「待ってろ神父!?危なっ!!」

俺と怪物の攻防戦を離れて見ていたホッパーが攻撃を止められたのを見てフォローしようと怪物に接近するも怪物は鋭利な先端を持つ尻尾を蠍にようにしてホッパーに向けて放ちその一撃をギリギリで躱し怪物に向けて力を溜めた拳を引き抜くも其れより早く怪物は空いた両手を使い二人の首を掴み締め上げる。

マスター神父「ちっ!」

両手に水平に持ったスピアで怪物の噛み付き攻撃を防御しながら呼吸が段々と苦しくなり俺は急ぎ黒いグローブの内側に仕込まれた暗器を起動する。

マスター神父「ふん!!」

命綱であるスピアを敢えて手放し黒いグローブをした両手で構えるように振るい

レッドバット「っ!!」

両腕に幾重の"何か"が通り過ぎると一瞬で紅い怪物の両腕が豆腐のように賽の目状にバラバラに切断される。

レッドバットはどうして切断されたのか驚きながら二人から一度離れる。

俺も手放したスピアを拾いホッパーと共に怪物から今度こそ距離を取る。互い距離を離した状態で相手の追撃に意識を向けながら俺はスピア短く伸縮させて袖口の中に戻す。

少年「其れ持っているなら最初から使えよ!?」

マスター神父「⋯⋯この歳で厨二病の糸使いなんて誰得だよ。」

ホッパーは両の瞳を再びバッタ目になりながら辛うじてあるであろう俺の暗器⋯⋯バチカン市国の影の組織が開発した1/1000ミクロンの特殊超硬合金製の糸を見ながら叫ぶ。

騒ぐホッパーに対して羞恥心を感じながら呟く俺は両手の指で無数の不可視の糸を操り手足のように使い熟しながら紅い怪物の動きを観察する。そして⋯⋯

マスター神父「っ!?」

レッドバット「⋯⋯⋯⋯。」

紅い怪物の両腕の切断面から赤い繊維が次々と出て賽の目状にバラバラになった両腕の欠片同士くっつくと共に復元して両腕にくっつく。紅い怪物は目の前で手で空を握っては開く動作を数回し二人を激しく睨みつけ唸り声を上げると共に両手の爪を鋭く伸ばし更に両肘先から赤い繊維を束ねて鎌状の刃に形成する。

マスター神父「そりゃあ怒って当然か。」

マスター神父(くっつくか。幾ら糸で身体を切り裂いても無駄って事か?)

少年「あらら、向こうさんもやる気になったようだ。」

純銀製のナックルダスターが縫われ軍用ナイフを折り銃弾を弾く特殊金属繊維製グローブをホッパーが両手に装着し自称少林寺拳法の構えをした次の瞬間、紅い怪物と二人の姿が忽然と消えて無人の下水道に複数の音が鳴ると共に互いに後ろ向きの状態で姿を現すと共に着地する。

マスター神父、レッドバット、少年「っ!!?」

俊敏な動きで近くにいたホッパーに向かって跳び掛かった紅い怪物に対してホッパーは右拳を引いた状態で走り出し急スピードの突進からの右ストレートを放つ。腹部にナックルダスターの拳による打撃を直撃した紅い怪物はその身体を浮かばさせ一瞬怯むも鎌状の刃を生やした右腕を素早く突き上げるように振るい

少年「のわっ!?」

左のナックルダスターで右から来た斬撃を受け止めるもその衝撃で後方へ吹き飛ばされる。

身体をゴロゴロと転がりながら直ぐに起き上がるホッパーに怪物は空中へ跳躍し下水道の天井部分を蹴り弾かれたように追撃のドロップキックを放ち激突寸前にホッパーは後ろへ跳躍しキックを躱す。

マスター神父「下がれ!!」

俺の声を聞きホッパーは怪物から離れる。離れるホッパーを追撃しようする紅い怪物に対して怪物を拘束しようと幾つもの糸を絡ませる俺はすかさず両手を振るい。

下水道内部の空気を切り裂き紅い怪物の周囲に高速の速さでこの世の万物を切り裂くと錯覚する不可視の糸が死神の鎌の如く迫り俺が両手を引っ張ると紅い怪物は一瞬で拘束される。

マスター神父「⋯⋯。」

拘束した怪物を遠心力をフルに使い引っ張り上げてホッパーから突き放し逆に自分の方向へ引っ張った怪物の顔に向けて最寄りの教会から採った聖水の入った瓶を放り投げる。

瓶は怪物の顔に直撃すると割れて中に入った聖水を怪物はコレでもかと言う程に満遍なく浴びる。吸血鬼なら聖水を浴びれば硫酸を掛けられたように蒸気を放ちながら皮膚が焼け爛れるが紅い怪物は何事もなかったように顔を左右に振る。その顔は聖水を浴びた吸血鬼のように焼け爛れるドコロか全く無傷の顔で此方を睨みつけられその相手の反応に俺は目を大きく開く。

マスター神父「っ!?」

マスター神父(聖水が効かないのか!!)

レッドバット「何しやがる!!?」

突然、変な水が入った瓶を浴びせられて叫び声を上げると共にブチブチと筋繊維が斬れる音を鳴らしながら紅い怪物は一瞬で人型の体形から大蛇やミミズのような細長い体形にして糸の拘束の隙間を詰めて肉体を削りながら無理やり脱出する。

マスター神父「っ!?」

骨の無い細長い身体でとぐろを巻く蛇の如く顎を大きく開き俺の喉を食い千切ろうと迫る。蛇のような身体となった怪物と跳び掛かりを俺は下水道の床をステップを踏むように跳び右の壁側に躱し急ぎ振り返る。相手も躱されてから着地と共に直ぐに身体の向きを変えて激しく身体を蛇行させながら再度俺に向けて迫る。

マスター神父「⋯⋯⋯。」

俺は目の前の壁と下水道内の反対側の壁面に交互に視線を向けながら目の前の壁を蹴り身体を縦にクルクルと高速回転させて紅い怪物の二撃めの突進を躱し両手を空中で振るい空中で足場があるように"着地"する。

マスター神父「⋯⋯。」

空中に糸による足場を形成し其れに着地すると共に三度迫る紅い怪物に向けて袖口からスピアを左右に伸ばして一気に迫る真下に這うように蛇行する怪物の頭目掛けてにスピアで真上から突き刺す。

レッドバット「っ!!」

頭をスピアに突き刺された怪物はギロリと瞳無き黄色い目を鋭くさせ背鰭のように頭頂部から尾に流れるように紅い筋繊維の刃を形成して真上にいる俺を切り裂こうと蛇行する。目前に激しく迫る紅い脈動する刃を両手にある糸を操作し糸と糸の間の面積のとても狭い蜘蛛の巣状に広げ前面に展開し火花を散らしながら斬撃を防ぐ俺。

怪物の頭頂部を後ろに下がるように蹴りを入れて跳躍し怪物の顔近くに踊り出る俺に対して口を大きく開かせる紅い怪物に向けて両手を振りかざし糸で怪物の身体を下から突き刺す。突き刺さった位置の糸から紅い怪物の身体が十本線状に左右に引き裂かれていく。しかし紅い怪物は身体を神父の糸で細く引き裂かれながら前面からコレでもかと赤い刺を下水道を埋め尽くす勢いで放出し

少年「っ!?」

モンスターハンターの神父と紅い怪物の激闘を見ていたホッパーが俺を担ぎ高速で走り赤い刺が届かない下水道の奥までもう退避する。

レッドバット「逃がさんぞっ!!?」

敵を串刺しにし損ねた紅い怪物は糸を避けつつ蛇のような細長い体形から元の悪魔の姿に戻りスピアが身体に刺さった状態で下水道の奥に向かった二人を睨みつける。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

少年「ハァ⋯ハァハァ⋯⋯あの紅い怪物⋯⋯【アナコンダ】に【ジョーズ】に【ザ・グリード】や【トレマーズ】って変幻自在過ぎるだろ!?」

息を整えながら怪物の生態に文句を言うホッパー。

マスター神父「ふっ、或いは⋯⋯地獄の悪魔か⋯⋯この街には相応しい。」俺は持参した煙草を口に咥えて怪物の型に囚われない戦いの光景をニヒルに笑みを浮かべながら皮肉を言う。

少年「詩的な事を言っている場合かよ!?三門市は何時から菊池秀行の世界観になった!?」

マスター神父「ノートルダムで戦った背蟲男やパリのオペラ座で対峙した髑髏の合成怪人と然程変わらないだろ。」咥えた煙草にライターで火を点けてゆっくりと煙草を味わう。

マスター神父「にしてもあの紅い怪物⋯⋯身体に骨が無いのか?聖水も効いていなかったようだし⋯」

スピアで頭部を突き刺した際に頭蓋骨に当たる部分の手応えがまるで無かった。最初に糸で両腕をバラバラにした際にも断面図に見えたのは赤い光のみで切断された骨らしい部位は見え無かった。

二人が持つ人間より優れた感覚が敵の接近を感じとる。

少年「⋯⋯⋯向こうも中々に獲物を探す事に長けているようだ⋯⋯見つかった。」

マスター神父「一服する暇もくれないなんてせっかちさんだ事⋯⋯」

少年「⋯⋯神父。その煙草吸い終わってから動いて良いから⋯⋯俺が奴に挑むからその間、奴の弱点を把握してくれ⋯⋯」

マスター神父「ホッパー。」

少年「勘違いするなよ。俺をあんな怪物と関わらせた面倒事に巻き込んだ事について許していないんだからな。」

マスター神父「悪かった⋯⋯」

少年「この状況で互いに生き残る為にはアイツをどうにかするしかない。殺せなくてもどうにか弱らせてから一旦撤退する事を前提に動くぞ。弱点が分からない状態であの怪物に挑むのは無謀その物だが⋯⋯やるしかないな。」

ナックルダスターを装着した両拳を力強く握りしめて少年は言い追ってくる怪物を迎え撃つ。

 

下水道の通路に少年が姿を見せると紅い怪物が脅威の瞬発力で跳躍。

レッドバット「死にさらせ!!」

空中で身体を回しながら右肘先に生やした赤い鎌状の刃を振るいその一閃をホッパーは身体の姿勢を低くして紙一重に躱して互いに背中合わせになるも

少年「危なっ!!」

安心する暇も無く前に飛び込むように跳躍し敵の背中から針鼠のように無数の赤い刺が飛び出てくる。

少年「身体の何処からでも攻撃可能とか俺と相性最悪じゃねぇのか⋯⋯」

床に前に転ぶように倒れ込む事で刺の攻撃をやり過ごしホッパーは匍匐前進し刺の範囲外から起き上がり怪物も背中から生やした無数の赤い刺を身体の中に戻し両者向き合う。

少年「勝負してやるぜ!?化け物!?」

無数に迫る鋭利な刃を先端に生やした赤い触手の波状攻撃を驚異の反射神経で躱しながら一気に怪物に接近しホッパーが床を踏み込み引いたナックルダスターを装着した拳をすかさず振るう。怪物もホッパーの顔目掛けて鋭利に伸ばした爪で貫手を抜き放つ。瞬きも忘れる速さで迫る高速の貫手を顔や首を動かして次々と躱しナックルダスターで怪物の顔を拳の跡が残る程に力強くめり込ませその衝撃は後頭部まで貫く。しかし赤い怪物の内側から先端に刃が付いた触手を無数に放出されて迫る刃付きの触手をバックステップで下がりながら刃の赤い刀身部分を連続拳打で駆使して弾き続けてホッパーは相手から距離を取る。呼吸を整えながら追撃で放たれた尻尾の連続刺突攻撃をナックルダスターで弾く。

少年(肉迫して相対するだけで全身がバラバラになると錯覚させる程の凄い殺意と殺気だ⋯⋯この怪物⋯⋯どんだけの大勢の人を殺して来たんだ!!)

この手の悪魔みたいな怪物に比較的有効な純銀を使った武器で既に多数の部位を攻撃したのに純銀製のナックルダスターで受けた箇所は打撃の跡は残る物の直ぐに再生していく。銀による効果が薄いとか相手が特に銀の耐性が強力という訳じゃない⋯⋯

少年(銀の武器が効かないのか!?コイツ!?)

驚愕の表情を上げる暇もなく一瞬でホッパーに距離を詰めた怪物は両肘先から生やした鎌状の鋭利な刃を振り下ろしその迫りくる鋭い斬撃に対してナックルダスターを装着した拳で下から突き上げるように放ち互いの攻撃が火花を散らしながら弾かれるのも構わず息を付かせぬ怒涛の連撃の嵐を放つ。

レッドバット「っ!!」

紅い怪物は両肘先の刃でホッパーを連続攻撃しつつ赤い身体の各部より生やした筋繊維状の触手の先端を様々な刃状に形成しては相手の行動を観察する神父に向けて狙いを定めて一斉に放つ。

マスター神父「⋯⋯。」

両手をX状に振るい迫る無数の触手を全て糸で引き裂き触手に飽き足らず紅い怪物の背中を背後から斬り裂く。

レッドバット「っ!?」

マスター神父(獲物の生き血を干からびさせるまで吸う習性を見て体質的には吸血鬼達と同じ筈だ⋯⋯聖水は効かない⋯⋯ホッパーがさっきから放つ銀製のナックルダスターも効果は無い。ニンニクは手元にない。なら試していない残りの吸血鬼の弱点は⋯⋯)

俺は下水道内を宙を糸で足場にしてホッパーと激闘を繰り広げる怪物に接近する。

紅い怪物は俺を迎撃しようと身体の各部から触手を再び生やそうとするも

少年「お前の相手は俺だ!!」

迫る紅の死神の鎌を次々と躱してから連打のジャブとフックを素早く腹にワン・ツーのテンポで叩き込むように放ち、その後一気に間合いを詰めて追撃の右ストレートを怪物の顔面目掛けて深々と放つ。

レッドバット「っ!!」

(この餓鬼、さっきに比べて威力も速度も増してやがる!!)

少年「っ!」

ホッパーは右ストレートを放ち終えると紅い怪物の身体に突き刺さったままのスピアの柄を左手で掴み一気に引っ張りスピアを取り返す。

少年「神父!?」

マスター神父「⋯⋯。」

自分を呼ぶ声に答えるようにジャケット内にあるバチカンの影の組織製の携帯式十字架を垂直状態からカシャンと十字架状態に展開し軽くない打撃を貰った紅い怪物をすれ違い様に相手の眼に十字架を見せる。

レッドバット「っ!!」

瞳無き黄色い眼孔で十字架を捉えた時、怪物の脳裏に忌むべき存在の姿が通り過ぎて怒りの形相に変わり叫ぶ。

レッドバット「そんな十字架でこの俺を滅ぼせると思っているのか!!見ていろ!!」

マスター神父(思っていた反応と違う!!)

かつてない程に怒りの声を上げた怪物は己の黄色い眼孔を一瞬光らせ床を一踏みすると十字架が説明できない超常の力によって在らぬ方向へ折れ曲がると共に燃え上がる。

マスター神父「ヤベッ!!」

俺は思わぬ相手の逆鱗に触れてしまい直ぐに十字架を投げ捨てるも首を再び怪物の片手に掴まれて遠心力に振り回されると共に後方へ放り投げられる。

少年「神父!!」

ホッパーは怪物への打撃の攻撃を辞めて怪物の反撃を防ぎながら放り投げられた俺を助けに動く。

マスター神父「俺に構うな!!」

糸を使い足場を作り壁の激突を避ける事に成功した俺にホッパーが駆け寄る。

少年「っ!?⋯⋯此処って⋯⋯」

駆け寄った際に周囲の通路の構造を見て少年は何かに気付く。

マスター神父「どうした?」

少年「⋯⋯神父。俺についてきてくれ。」

取り返したスピアを神父に手渡してホッパーは怒り状態の紅い怪物を無視して下水道の道を走っていく。

マスター神父「おい!?何処に行く⋯⋯」

紅い怪物が両腕を両刃の斧状に変えて恐ろしい形相で此方に迫っていくのと此方から離れていくホッパーの後ろ姿を交互に見た俺はスピアを持ったままホッパーの後を追い掛けていく。先を走るホッパーに並走しながら俺は疑問を口にする。

マスター神父「突然、どうした!?」

少年「銀の武器も偉大な神の力を秘めた十字架でも奴には効果が無い⋯⋯奴を日の光がある場所に誘い込む。」

マスター神父「誘い込むって俺達が来た道とは逆方向だぞ。道わかるのか?」

少年「こういう古い地下下水道は俺達のような普通じゃない連中の逃走経路として未だに活用されている⋯⋯そこの右に曲がれ。」

マスター神父「っ!」

情報屋の頭の中では下水道内の現在位置と目的地までの精密な下水道内部の地図が浮かび上がっていた。

レッドバット「逃がさんぞ!!」

二人は普通の人間よりも速い速度で全力で走り続けながら下水道内部を縦横無尽に走る。普通なら撒かれておかしくないが紅い怪物は背中の赤い筋繊維の出来た両翼を狭い下水道内部で羽ばたかせて二人の後を確実に殺す為に追跡する。後方から此方を串刺しにしようとする触手を走る度に方向を次々と変えて躱し続けて遂に直線の道に変わり目的の梯子を見つける。

少年「見えた!?あの梯子を先に登れ!?」

マスター神父「っ!?」

梯子の先が何処へ通じているのか気になるも情報屋のホッパーの言葉を信じ俺は後ろから迫る紅い怪物に足止めの罠を糸で次々と作りながら走る速度をホッパーより上げてホッパーを追い越して高く跳躍し梯子に手を掛けて上に登る。

少年「急げ!?」

上に登りマンホールの蓋を押し出そうとするも蓋の上に何かあるのか蓋を押し出せない。

マスター神父(ちっ、上に何か塞いでやがる!!)

俺はすかさず糸を使い蓋に向かって切り裂くように右手を振るいマンホールの鋳鉄製の蓋を一瞬で紙のように切り裂き俺は上へ跳躍する。

少年「っ!?」

俺が登り終えるとホッパーも続くように自分を超える高い跳躍力で梯子に手を掛ける事なく跳び込み紅い怪物のギリギリの攻撃を躱す。

 

両刃の斧状に形を変えた腕部が下水道の壁を砕き破片は飛び散り梯子をひしゃげさせてながら紅い怪物はマンホールの外へ逃げた二人の姿を見上げて急いで追う。

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マスター神父「⋯⋯此処は?」

マンホールの外を出ると埃があちこちに舞い掃除もロクにされていない建物内に姿を見せる。周囲には中身も分からない段ボール箱やドラム缶が疎らに置かれている。

少年「警戒区域の廃倉庫だ。俺達の情報屋の元密談場所の一つだよ。たまに不良達の溜まり場になっていたんだ。」

ホッパーの言う通り周囲には不良の私物らしき物が見える。

マスター神父「どうした?」

少年「此処を使っていたその不良達が話題の吸血鬼事件で全員失血死して俺らは安全の為に情報屋仲間達と相談して此処を密談場所から省いたんだよ。」

少年は怪物に追われている状況の為に手短に神父に説明し終えると此処に来た理由を口にするよりも早く身体から無数の赤い触手を生やした紅い怪物がマンホールから這い出ようとする。

マスター神父「っ!?」

マスター神父(出てくるな!?)

対する神父は両手で振るい網猟の要領で出てこようとする紅い怪物を真上から包囲する為に糸の檻を作り紅い怪物をマンホールから出さないようにする。

レッドバット「っ!!」

紅い怪物も真上から自分を捕らえようとする糸の檻に気付き赤い触手の先端を刃物状にして次々と真上から迫る檻に向けて触手を打ち放つ。

網猟状にした糸と刃物付きの触手が次々と激突し力と力の押し合いになる。

マスター神父「此処でコイツにどうやって日の光を照らすんだ!?」

少年「この後は⋯⋯」

レッドバット「っ!!」

ホッパーが神父に作戦を伝えようとする前に更に刃物付きの触手の数を増やし細かい糸の檻を押し上げて紅い怪物はゆっくり廃倉庫内に出てくる。そして⋯⋯

周囲に何があろうと関係なく紅い怪物は身体から生やした先端を刃物にした触手を全方向に向けて薙ぎ払うように振るう。

少年、マスター神父「「ちっ!?」」

凄まじい殺気を感じ取ると共に全方向に触手が鞭のように振るわれて周囲を全てを薙ぎ払う。

神父とホッパーは並外れた身体能力で薙ぎ払う触手を次々と躱し続けるも刃物付きの触手で破壊された廃材に段ボール箱やドラム缶の破片で視線が防がれたホッパーの腹部の触手が叩きつけられる。

少年「がはっ!」

その一撃をホッパーはモロに貰い後方の壁側まで大きく吹き飛ぶ。

少年(クソッ!なんつう威力だよ⋯⋯たまたま直撃したのが刺や刃物を出していない触手でもこの威力。何発もこの姿で貰う訳にはいかないな⋯⋯)

口から赤い血を溢しながら壁側から倉庫内部の上方向に見上げて何枚の廃材の板が割れ窓に打ちつけられているのに気付く。

少年(外で動くボーダーの連中に気付かれないように室内の明かりを漏らさない工夫だな。厄介だな⋯⋯)

続いて上の窓の光が当たる位置を確認し神父と怪物の現在位置を確認してゆっくりと立ち上がる。

少年「神父っ!?」

マスター神父「何だ!?」

少年「奴が攻撃する瞬間に倉庫内の窓を糸で開けろ!?」

マスター神父「⋯⋯⋯⋯⋯あれか!」

神父に伝える事を伝えたホッパーは血を片手で拭い捨て追撃の触手の攻撃をナックルダスターで受け流しながら弾き飛ばすとそのまま相手の方に跳び掛かる。

少年「⋯⋯。」

紅い怪物も再度両腕を両刃の斧状にしてホッパーに跳び掛かる。ホッパーは怪物の斧状の両腕の一撃を躱しては両刃の斧の腕部の一撃が床を砕き次の攻撃をされるより早くホッパーは怪物の背中を足場として利用して強く蹴り更に高く跳躍し天井を支える支柱の一つを足場に着地し怪物の真上を取る。

レッドバット「っ!?」

紅い怪物はホッパーの行動に意識を向いている間に神父はホッパーに言われた通り倉庫内の窓を開けようと動く。

マスター神父「っ!?」

だがホッパーの会話を聞いた怪物はホッパーより神父の方を優先して排除しよう動き出し両者並走しつつ攻防戦を繰り広げる。

神父は自分を切り裂こうとする鋭利な刃物を生やした触手を糸で空間を斬るように切り裂くも斬った僅かな瞬間に切断面同士の筋繊維が再結合し再び巨大な悪魔の如き両翼を背中から生やして加速し先回りされる。

神父は進む足を素早く止めて怪物の急降下ドロップキックをバク転して躱し目的の廃材の板で閉じられた窓を開ける為に禍々しい怪物に接近する。

両刃の斧状にした左右の両腕で薙ぎ払うように振るわれてその重い一撃を糸で火花を散らしながら受け流して追撃の攻撃を躱しながら相手の股下をスライディングして後ろに回り込む。

怪物が両手を両刃斧から元の五本指の形状に戻し両肘先から鎌状の刃を生やして後ろに回った神父の方に向き跳躍をすると共に両腕を高く振り上げて神父に向かって振り下ろす。

マスター神父「っ!?」

すかさず両手を振るい不可視の糸は空気を切り裂き窓を遮る廃材の板を引っ掛けてから切り裂き夕陽の光が倉庫内に差し込み紅い怪物の全身を糸で拘束し引っ張り上げる。

レッドバット「っ!!」

身動きを糸で封じられた状態の紅い怪物は踏ん張ろうとするも引っ張られる。

少年「さっきの一撃のお返しだ!?」

ホッパーも勢い良く足場の柱を蹴りつけて急降下しその反動で柱がひしゃげる。

身動きを封じられた怪物の背中を急降下キックを叩きこみその一撃で紅い怪物は押されて割れ窓から漏れる日の光に晒された怪物の身体が独りでに燃え上がる。

レッドバット「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

尋常じゃない悲鳴と共に日に晒された箇所が眩しい太陽の熱に焼かれ焦げていく様子をホッパーと神父は逃げるチャンスと捉えて

少年「今がチャンスだ。神父!とっととずらかるぞ!?」

マスター神父「あぁ。」

跳躍し倉庫上部の割れ窓から二人は脱出する。

レッドバット「ッ!!!?」

筋繊維の肉体を走る血が目に見えずとも蒸発し身体に尋常じゃない激痛で苦しみ叫びながら紅い怪物は自身の赤い巨大な両翼と無数の触手で全身を繭のように覆い窓から漏れる日の光からズルズルと独り離れようとする。

レッドバット(血がいる!!血が!!血が!!)

無理やりマンホールの方に跳躍し内部へ落ちるように落下する。

 

 

 

警戒区域内

廃倉庫を後にした神父とホッパーはボーダーの連中に見つからないようにバイクを駐車した場所を目指して走る。その途中、ホッパーは慌てながら再びゴーグルやマスクやニット帽を被り素顔を隠す。

少年「この神父!?ホントに俺をこういう危ない目に巻き込むなよ!?」

マスター神父「でも色々と助かったぞ。」

敵の注意を引く役目に怪物に日の光に晒す際の倉庫内に繋がっているマンホールがあるルートまでの案内と色々と助かった感謝の気持ちをホッパーに伝える。今走っている逃走経路もホッパーが用意した一つだ。

少年「今日は普通に学校帰りだから携帯火器のフィストガンもスタンガン仕込みのブーツも用意出来なかった⋯⋯」

自分が着ている黒い学生服に破れた箇所は無いかあちこち見ながら今回の戦いの反省点の一つ装備品の不足を口にするホッパー。

マスター神父「銀製のナックルダスターだけで良く立ち回れたよ。」ホッパーが愛用する様々な種類の弾丸用の火薬を装填出来るメリケンサック状のフィストガンの存在を思い出す神父。

少年「立ち回り悪かったら犠牲者の仲間入りになっているんだからな!!アンタから注意を引く為に怪物とサシで対峙した時、全身穴だらけになると本気で思ったからな!?」

マスター神父「悪かったよ!?本当に!?」

走りながら不満の声を出すホッパーに本気で悪いと感じた俺は謝罪の言葉を走りながら言う。

少年「ちっ!取り敢えず、奴が太陽に弱いのは今回の遭遇戦で分かった。」

マスター神父「奴も馬鹿じゃない。俺達と下水道で戦ったんだ。潜伏先を変えてる可能性がある。」

少年「潜伏先はまた特定しないといけないのか。」

マスター神父「特定は任せた。」

少年「まだ俺を巻き込むつもりかよ!?もう降りても良いだろ!?」

マスター神父「次の待ち合わせ場所はどうする?」

少年「⋯⋯明日の昼、カトリック三門教会で落ち合うぞ。アウトロー神父。」

相手の目的は不明だが脅威は充分過ぎる程分かった二人。ホッパーはそのまま合流先の場所を言うと警戒区域の暗い路地裏に一人飛び込み姿を消す。

一人残った俺は店に置いていった仮面を取りにバイクに跨り警戒区域を後にする。

 

 

 

一方、日の光が入ってこない下水道内で危機的状況から脱出した紅い怪物は光の入らない地下下水道の壁伝いに片手でゆっくりと歩き続けやがて近くの壁に背もたれする。背もたれをすると日の光で焼け爛れ損傷が酷い触手や両翼部分がボロボロと崩壊していく。

レッドバット(⋯⋯⋯⋯)

自分の中に休みなく湧き出続ける殺意の衝動を無理やり抑えつけ思考する。

 

他の沢山殺してきた連中達に比べて何か普通の人間とは違う気配をする神父達二人をこの星に来てから自分をしつこく追い掛け続けている黒い犬の仲間と考えた紅い怪物は下水道内部で全身の焼け爛れた傷の再生を始めて再生を続けながら失った血を補給する為に日が完全に沈んでから動こうと考え怪物は消耗を抑える為に紅い悪魔の姿から人間大の大きさに変え姿を紅い筋繊維状の鎧騎士に変えて怪物は軽く仮眠をする。

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さっきの戦いから数時間が経過した。

マスター神父(時刻は既に夜⋯⋯太陽が弱点の紅い怪物にとっては最も全力を出せる時間だ。そしてそれは⋯⋯俺にとっても⋯)

店に戻って仮面をつけた俺は⋯⋯敵が潜伏しているだろう警戒区域にバイクを走らせる。

夕方での戦闘は互いに全力を出せていない所謂"小手調べ"である⋯⋯だが今は夜、互い手加減なしで戦える。

俺はバイクを加速させて警戒区域を目指す。目的の場所は地下下水道だ。

マスター神父「??」

そんな途中、通る場所で散発的に水色の風車が置かれていた事に疑問を覚える。

 

神父の想像通り紅い怪物は既に仮眠から目を覚まし日の光で焼け爛れた傷は完治しエネルギーを補給する為に下水道から移動していた。

 

 

そしてそれは⋯⋯

男性「っ!?」

一気に獲物に接近し片手で相手の口と鼻を塞ぎ紅い怪物は鋭利な牙を血管の中で最も太い頸動脈が流れる喉元に突き立て一気に吸血する。

男性「っ!!⋯⋯⋯⋯⋯。」

助けを呼ぼうと叫ぼうにも相手の尋常じゃない力で呼吸が封じられて抵抗も虚しく瞬く間に全身がミイラのように干からびて失血死する。

レッドバット「30年物⋯⋯丁度飲み頃だ⋯⋯」

そう独り言を呟く全身から赤い触手を生やした刃物でミイラ状態になった死体をバラバラに切断する。

怪物の猟奇的な死体の損壊行動には意味がある。怪物の知る生物の中には全身の血を抜いても自分を追い詰めるタイプが存在する為に、肉体をバラバラにする事で相手の不意打ちを防ぐ利点になるのだ。

レッドバット「⋯⋯⋯。」

無駄に光がある市街地に行き無差別に本能の赴くまま殺戮の限りに人を襲うのも悪くないが、焦る事は無い。

レッドバット「少しずつ⋯数を減らせば良い⋯⋯」

背中の赤い悪魔の如き翼を羽ばたかせて紅い怪物は男性の死体の首を何処かへ放り投げて次の獲物を求めて狩りを続ける。

紅い怪物は人が反応出来ない速さで飛翔し警戒区域から市街地へ向かう。

 

紅い怪物が市街地上空を通る瞬間、街にばら撒かれた水色の風車が独りでに回り始める。

 

 

 

 

「っ!!」

神父も怪物とは別に1人の少年が拾った水色の風車が回る理由に気付き独り動き出す。

 

 

レッドバット「っ!!」

紅い怪物は高速飛行する自分を追う存在に気付く。自分に比べて速度がずっと遅い物の⋯⋯確実に自分がいる方向に追跡していた。

 

紅い怪物は空中で方向を変えて自分と距離のある追跡者の顔を見る。

レッドバット(十代前半⋯⋯美味そうだ⋯⋯)

水色の風車を回転させ無表情で自転車を漕ぐ少年の姿を見て紅い怪物は長い舌で舌舐めずりをする。

 

怪物は敢えて街灯の少ない暗い十字路に追う存在を誘導する。

【カラカラカラカラカラカラカラカラカラカラ】

回転の勢いが凄まじい水色の風車を頼りに十字路の中心に自転車を停車させた少年はあちこち見て探す。

「何処だ!?」

周囲を見回して少年の視線を正面に向いた瞬間、視界の死角に潜んでいた紅い怪物が動き出す。

レッドバット(貰った!!)

気配を完全に殺して背後から少年に襲いかかろうとしていた紅い怪物は翼を羽ばたかせて一気に跳び掛かる。その余りの速さに一瞬で喉元に鋭利な牙を突き立てられると考えていた怪物。

だが少年は反射的に自身の自転車から降りて怪物の跳び掛かりを躱す。

レッドバット「っ!?」

跳び掛かりを躱された事実に驚きながらも空中で旋回し少年と向き合う。少年は自身の姿を見ても表情を変えない事に不気味さを覚えるも再度少年に正面から襲いかかろうとその身を滑空させる。

「っ!?」

紅い怪物の二度目の跳び掛かりを少年はクルッと身体を横転して躱しその無駄の無い回避の動きで怪物は少年が只の人間じゃないと考え始める。

レッドバット(この少年⋯⋯其処らの餌の奴らと違う⋯⋯)

視線を見下ろす少年に対して小さく警戒心を上げた紅い怪物は背中の翼を羽ばたかせてながら3度目の飛び掛かりを考えようとした時⋯⋯

レッドバット(ん?美味そうな血の気配。)

少年以外の気配を感じとり視線を少年から⋯⋯少年の後ろの方向へ向けると⋯⋯自販機横のベンチで走り疲れてグッタリしたオヤジの体勢でいる女の姿を捉える。

怪しい獲物を無理して血を吸うよりも仕留め易い弱い獲物を狙った方が良い⋯⋯そう考えた紅い怪物は少年を無視して女性がいる方へ翼を羽ばたかせてその場から去る。

「っ?⋯⋯⋯⋯⋯⋯まさか!?」

少年は数秒間、考え込み怪物の狙いが何か理解し焦った表情で自転車に跨る。

(国近先輩が危ない!!)

焦った表情で自転車で移動中、怪物に効果がある無し問わずに少年は道端にある様々なサイズの石ころを所構わずに自転車のカゴに入れて怪物相手に丸腰で挑むよりマシにする為である。

少年は自転車の漕ぐ速度を上げて来た道を急いで戻る。

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マスター神父「⋯⋯何してるんだよ。アイツ。」

夜空を見上げていると店に良く来る天使騒ぎでフルネームを知った少年⋯⋯剣持夢想が知り合い達と共に紅い怪物に空中で連れ去れている事に気付き仮面の奥で思わず呆れてしまう。

マスター神父(何で俺が追う怪物と遭遇しちゃっているのかな〜)

バイトの知り合いが怪異に遭遇する確率は狙われる特徴を持っていない限り稀である。

マスター神父(とはいえ見捨てる訳にはいかないな。)

怪物に気付かれるが最初の攻撃で此方の存在を気付かせてから、剣持夢想達を助けようとする。

マスター神父(俺の今の外見を見ても最悪、噂の黒い狼男で誤魔化せる。)

バイクを降りて両手の指から鋭利な斬れ味を持つ爪を伸ばしていざ行動に移そうとした時、

マスター神父「何だ?」

警戒区域の方向から"何か"が凄まじい速度で移動している事に俺は気付く。両手の爪を収納させて仮面にある狼の耳が何かが地を駆ける音を拾い俺は警戒を上げながらバイクに跨り上空を飛ぶ紅い怪物を追う。

マスター神父(本当にこの三門市には次から次へと変なのが現れやがる。)

バイクの速度を上げて紅い怪物の方を暫く追跡していると怪物は何故か連れ去っていた人間を地上目掛けて投げ捨てられる。

マスター神父「ちっ!」

俺は紅い怪物を無視して落ちていく急ぎ人間の方に向かう。普通に考えてあの高さから落とされては助かる筈は無い。

マスター神父「⋯⋯。」

剣持少年と常日頃、親しいバイトの真琴が哀しむ表情を想像してしまい気が重くなるも俺は落とされた場所に向かう。被った仮面には嗅覚強化能力があり、紅い怪物には濃い血の臭いがしており密着していた剣持少年達にもその臭いがついているお陰で彼らがどの位置にいるのか手に取るように分かる。⋯⋯⋯次いでに言うとあの地下下水道の嫌な臭いも剣持少年達からする筈。

 

マスター神父「っ!?」

ガロ「っ!?」

俺が気配を殺して剣持少年達落ちたであろう場所に近付いた時、自分に勝るとも劣らない凄まじい速さで俺の真横を黒い何かが通り過ぎる。

1秒も満たない僅かな時間だが互いが互いの存在を視認し姿を交差して互いに通り過ぎる相手の姿を流し目で目撃し俺は仮面の奥で目を見開く。

マスター神父(ホッパーが言っていた黒い狼男!!)

人には無い特徴的な獣脚にフサフサの毛並みといった無駄な物を削いだスタイリッシュな外見をして顔を辛うじて狼らしい特徴を持つも自分の知る毛皮に覆われた狼男とはまるで違う姿をしたソイツは何処かへ向かっていった。

噂の存在とされた黒い狼男が気になるも俺は直ぐに剣持少年の元へ向かう。

 

 

結果的に言うなら剣持少年達は何故か無事だった⋯⋯彼らは路地裏に置かれた廃車のぺしゃんこになった上部にいて茫然自失な様子だった。

謎の少年「⋯⋯。」

剣持少年と連れの女性とは別に小学生くらいの年齢の銀髪の少年はショックで座り込む二人に気付かれる事なく立ち上がり彼らの元を立ち去る。

マスター神父(あの銀髪の少年⋯⋯随分、立ち直りが早いな。)

普通の子供なら高い所から落とされてどうやって助かったのか知らないが⋯⋯あの二人みたいにショックで座り込んでもおかしくない筈だ。なのに年不相応に直ぐ次の行動に即決に動き出す。

マスター神父(⋯⋯最近の子供は俺の想像以上に行動力や判断力があるのか?)

 

 

 

謎の少年「2代目。目標の対象を見失った。今から索敵する。」

2代目《ううん。ナイト君。一度、フレイムさん達と合流しよう。》

謎の少年「⋯⋯分かりました。」

 

暗闇の奥から少年が誰かと連絡するのを盗み聞きし俺は剣持少年達の方に視線を向けるも紅い怪物の追跡に戻る。

マスター神父「さて⋯⋯何処へ奴は行ったのか?」

俺はバイクに跨り黒い狼の仮面の持つ力の一つを使い紅い怪物から出す一番濃い血の臭いを嗅覚で辿る。遮蔽物を全て無視して臭いを追い続けると非常に離れた距離にいる物の獲物の存在を俺は把握しバイクのエンジンを起動させる。

マスター神父(見つけた⋯⋯)

 

「ふぇ。」

国近「どしたの?」

「⋯⋯直ぐ近くでバイクのエンジン音が聞こえた。」

座り込んだ少年は視線をその方向に向けるも其処にはバイクの姿なんてなかった。

 

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一番濃い血の臭いを追い紅い怪物がいるであろう警戒区域の私有地の稼働を停止した工場に到着した俺が見た最初の光景はさっきすれ違った黒い狼男と紅い怪物の激しい争う様子だった。

黒い狼男「八つ裂きにしてやる!?」

レッドバット「それは、どうかな?」

マスター神父(情報屋の言う両者が敵対関係という線は間違っていなかったな。⋯⋯てか両方とも言葉を喋るんだな。)

俺は乱入する事を考えた物の⋯⋯敢えて気配を消して両者の戦闘の様子を呼吸を抑え静かに観察する。

獰猛な獣同士の命の奪い合いと何も変わらない死闘はトラックを破壊しては周囲の建物の壁の外壁に互いの背中を叩きつけ合い互いの爪で互いの皮膚?肉体を傷つけ合っては紅い怪物は黒い狼男の腹部を己の足の爪を鷹や鷲のような鉤爪状にして突き刺すように食い込ませて空中高く持ち上げて身体を垂直一回転して空中から地上へ勢い良く放り投げ落とす様子を見る。

紅い怪物は手慣れたように黒い狼男を適当にあしらってはその場を離脱する。

黒い狼男は工場のトタンの屋根を砕き落ちて急ぎ壁を破壊して紅い怪物を探すも既に上空で小さくなった紅い怪物の後ろ姿を悔しそうに見て騒ぎが大きくなる前に工場から離脱する。

 

 

マスター神父(⋯⋯仕掛けるなら⋯⋯今だな。)

両者の戦いを静かに観察していた俺は本来の目的の紅い怪物の討滅の為、仮面の細いV字型バイザーラインアイを静かに紅く光らせる。

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紅い怪物は目障りな邪魔者を適当にあしらい深夜の空を高高度から飛ぶ。白い四角い建物を悠々と通り過ぎ建物の反対側の市街地を目指していた。

つい数日前までは、深夜の市街地に単独で歩く人間達の姿を空から簡単に探せたのに、ここ最近はその数がスッキリ減った。

【ーーッ!!!】

レッドバット「っ!?」

高度上空、通常ならあの邪魔者は追い付く筈も無い高さで感じた危険を察知する反応に怪物は警戒心を上げようとする僅かな瞬間、空気を切り裂き紅い怪物の身体が何かによって股下から頭を垂直に通り過ぎて身体が真っ二つに斬り裂かれる。

レッドバット「ッ!!」

自身の身体が一瞬で真っ二つに両断された事実に警戒を隠せない。

レッドバット(誰だ!!後ろから俺様の身体を!?)

背中から生やした両翼を大きく羽ばたかせている状態で真っ二つにされて紅い怪物は重力に従い再び警戒区域に落下する。

 

 

 

 

両断された肉体の半分は幸い近くにあった為に怪物は自身の身体から無数の筋繊維を糸のように伸ばして半身の断面図に接着させて無理やり此方側に引き摺る。引き摺った身体の断面を自身の断面と接着させ再生する紅い怪物はゆっくりと状況確認の為に立ち上がる。

 

目の前にある年季が入った教会に嫌な印象を受ける怪物。

レッドバット「⋯⋯⋯。」

風に乗って自分目掛けて投擲されてきた物を紅い怪物は視線を向けずに反射神経で片手で受け止める。

レッドバット(キャンドルスタンド?)

飛来してきた物は自分が知る蝋燭を立てるのに使われるスタンドで怪物はそれを地面に投げ捨てる。

レッドバットはキャンドルスタンドが投げられた方向に視線を向ける。

レッドバット「貴様は誰だぁ〜〜」

旧カトリック三門教会⋯⋯市街地にある新カトリック三門教会が出来るまでキリスト教の関係者が利用していた教会の屋根の上に

黒い存在が立っていた。紅い怪物は最初はしつこい邪魔者と考えていたが、各細部の知っている奴と違い過ぎる為に別人と考える。

影牙「⋯神は⋯⋯愚かなる過ちを犯した⋯⋯お前のような怪物を在らしめた過ち⋯⋯影の狼が正す。」

レッドバット「夜の俺に勝てると思っているのか!!?」

影牙「それは俺の台詞だ⋯⋯」

そう言うと黒い存在は一瞬で姿を消し紅い怪物は全身から攻撃用の刃物を展開して周囲を警戒する。だが⋯⋯気が付いたら黒い存在に首を掴まれて地を引き摺りられて放り投げられる。

レッドバット(馬鹿な!!)

周囲を警戒していた筈なのにその警戒を超えて自身の首を掴んできた事実に怪物は驚愕する。放り投げられながら紅い怪物は投げられた方向に向けて触手による刺突を直線状に放つも最初から其処にいなかったように黒い奴の姿はなかった。

地を滑らせながら体勢を立て直し紅い怪物は直ぐ気配を探る能力を使い周囲を索敵する。

レッドバット(⋯⋯どうなっている。あのワンころと同じで姿を消せるのか!?)

唸り声を上げながら索敵していると背後から狼が跳び掛かるような突撃を後頭部に貰い横に勢い良く転がる。

怪物は直ぐに起き上がり前に居るであろう存在に視線を向けるも其処には誰の姿もなく怪物は四肢を這いつくばらせて相手の姿を探す。

レッドバット「何処だ!!何処に!!?」

視界を別の方向に向けた瞬間、視界外から顔を黒い拳に殴打される。

レッドバット「っ!!」

怪物は顔を殴られめり込ませながら殴った方向に反撃の触手を振るうも既にその姿は無く再び全くの別方向に相手の蹴りの一撃を横腹に貰う。

レッドバット「コイツ!?」

攻撃をする方向に反撃の一撃を放っても捉えられない。次々と別方向から攻撃も貰う度にすかさず反撃を返すも霧や霞を相手にしているように掠りもせずに捉えられない。その攻撃に次第に苛つきが蓄積された紅い怪物は全方向に刃物や刺やらを生やして全方向に対応する。その瞬間、火花が散る音と何かに自身が生やした刺や刃物が接触した手応えを覚えるも普段感じる本命の手応えが一切無い事に違和感を覚える⋯⋯その違和感とは⋯⋯

レッドバット(何故、刺さった感触が無い!!)

紅い怪物はこれまで硬い物を突き破り皮膚を⋯肉を⋯⋯臓物を⋯⋯切り裂く手応え貫く手応えを攻撃をしながら感じていた。

 

 

影牙「⋯⋯。」

相手の全方向攻撃を察知して素早く下がったは良いが、攻撃の一部に激突して地面に転がるもこの仮面を付けた状態のお陰でダメージは無い。直ぐに起き上がり相手に向けて無言で俺は両手部分の指先から銀色に格納されたエネルギー(超硬度トリオン)状の鉤爪を展開し構える。

レッドバット「グルルゥゥゥゥゥゥ!!」

唸りながら身体から生やした刃物や刺を一度戻して紅い怪物は四肢を這いつくばった状態で漸く姿を現した黒い存在と睨み合う。

 

【⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯】

駆け出す俺に対して四肢を含めて更に身体から手脚を生やして昆虫な体付きで激しく脚を動かして迫る紅い怪物。

先端が刺突状になった触手を次々と放ちながら迫る紅い怪物に向かって黒い存在は巧みな近接格闘術の連続蹴りを放ち触手の先端を次々と蹴り弾き怪物に接近、噛み付き攻撃をする怪物の顔と首を順番に重い蹴りの連撃を放ち

レッドバット「っ!?」

手の形状を長剣状にして怪物は俺に向かって薙ぎ払うように振るうも、俺は身体の姿勢を下げて薙ぎ払いの斬撃を躱しすかさず怪物の喉目掛けて跳躍からの膝蹴りを叩き込む。

怪物は蹴りを貰い苛つきを更に募らせるも距離が近い黒い存在に向けて直線状に刺突状の触手を無数に放つ。

影牙「っ!!」

黒い存在は鉤爪を展開した両腕で身体を回るように振るい刺突状の赤い触手を斬り裂く。

レッドバット「っ!?」

自身の触手が簡単に斬り裂かれる事に紅い怪物は驚くも直ぐにあの鉤爪に脅威を覚えて相手から素早くバックステップしながら身体から鋭利な触手を放ちその攻撃を黒い存在は躱す。

影牙(この攻撃⋯⋯。)

黒い存在は迫る触手の刺突攻撃を次々と躱しながら相手の狙いが俺を接近させない為の足止めと気付く。

相手の動きを妨害する刺突攻撃をしながら紅い怪物は身体の両肩から赤い針を刺を無数に生やす。

影牙「っ!」

相手の意図に気付いた俺は刺突攻撃を放つ触手を両手の鉤爪で切り裂いて紅い怪物に目掛けては迫る。

レッドバット「風通しを良くしてやるぜぇ〜!!」

紅い怪物は無数の手足を踏ん張らせて接近してくる黒い存在に向けて刺を機銃掃射のように放つ。

相手は躱す動きをせずに接近し刺は黒い存在にほぼ全て命中するのにしつこい黒いワンころの奴と違い黒い身体に刺が刺さる事なく刺の先端が異常に硬い物に接触したかのようにひしゃげては全て弾かれる。

レッドバット「なっ!!」

影牙「⋯⋯。」

黒い存在が換装した姿が持つ優れた耐久性と強度の前に紅い怪物の攻撃が通じなかったのだ。

【ーーッ!!】

レッドバット(⋯⋯⋯コイツ、ヤバい!!)

身の危険を感じた紅い怪物は直ぐに身軽な人型に戻ろうとするも黒い存在は一瞬で間合いを詰めて鉤爪を高速で振るい怪物は他の手足を肉盾代わりにして攻撃が迫るの少しでも押さえようする。

他の手足が次々と切り裂かれるも紅い怪物はギリギリで人型の姿に戻る。

戻った瞬間、紅い怪物は両手の爪を鋭利に伸ばして俺に応戦する。

素早く互いに蹴りを打ち合っては両爪を生やした両手を素早く振るい互いに優れた反射神経を駆使し躱しては両爪を絶え間なく振るう。

身軽な両者は立ち位置を素早く変えては爪を振るい戦い続けるも

俺は跳び掛かると共に相手の背中を掴み相手を地に倒し真上を取った俺は素早く両手の爪を頭部目掛けて振り下ろす。

レッドバット「っ!!」

怪物は鋭利な尻尾を縦横無尽に動かし俺の首と両手首を縛り付け俺の両爪は尻尾の途中で勢いを殺される。

影牙「っ!!」

攻撃を止められた俺は両手で指パッチンをして相手の尻尾を切り裂き拘束から脱出し再び俺は両手を振り下ろそうとするも怪物は自身の両手を使い俺の両手首を掴み勢いを再び止める。振り下ろそうとする者と其れを阻止する者の力の均衡状態が短くも続く中

で至近距離から赤い様々な形状の刃を一斉に針ネズミのように黒い存在に向けて放つも刃が身体に刺さる事なく黒い存在は鉤爪を振り下ろす力を上げる。

レッドバット「何だよ!?貴様は!!」

今まで様々な生き物の身体を切り裂き貫いてきた自慢の能力が通用しない事実に勝手な文句を言いながら両手首を必死に掴み押さえようとする黒い存在の両手の銀色の鉤爪が少しずつ目前に迫っていき相手の攻撃を止め続けているその隙に怪物は片膝に複数の刺を生やした膝蹴りを俺の胸部に向けて放ちその一撃を思わず貰い怯むも怪物を自由にしてしまう。怪物は起き上がりながら触手を次々と放ち斬り裂かれた尻尾の再生させてバックステップをしながら距離を離そうとする怪物に対して俺は距離を詰める為に跳躍からのアクロバットな三連続後ろ回し蹴りを放つ。怪物は後方バックステップの途中で腹、胸、顔に旋風ソバットの連撃を貰い後方に勢い良く吹き飛ばされて地に何度も転がりながら怪物は四つん這いになる。

レッドバット(斬撃や刺突では殺せない⋯⋯なら!!)

【怪物が次に選んだ選択肢は⋯⋯】

四つん這いの状態で背中の翼を身体の中に戻した紅い怪物は両腕を両足に比べて極端に肥大化させ先端の爪を鋭利に伸ばし次いでと言わんばかりに首も少し伸ばして顔の形状をイグアナに似た顔に変わった動物の象並みな大きな四足歩行の形態に形状を変えて俺に迫る。

影牙「⋯⋯まるで怪獣だな。」

地下下水道で見た大蛇のような姿、旧教会前で昆虫のように手足を身体に無数に生やした姿、そして次は恐竜や物語に登場する竜に似たような姿となりその変幻自在の姿の変わり様にそう感想を言う。

【怪物は自身に向けて駆け出す俺に迫り⋯⋯⋯攻撃もせずに俺の真上を肥大化した前脚を利用した跳躍で跳び超えて超人的なスピードで俺から離れて行く⋯⋯⋯】

影牙「っ!?」

【怪物が選んだ次の選択肢は⋯⋯⋯まさかの逃走である。】

四足歩行で形状を変えた前脚をフルに使い俺から逃げようとする相手に対して逃がすつもりの無い俺は直ぐに追跡を開始する。互いに常人を余裕で超えた超人的なスピードで走り壁や障害物を物ともしない。

レッドバット「っ!!」

先頭を全力で走る紅い怪物に追い付く為に警戒区域の建物の壁や住宅の塀を利用して距離を徐々に縮める。廃ビルの壁面を足場にして俺は壁面を蹴りつけて怪物に跳び乗り爆走する怪物の無防備な背中に鉤爪を振るう。

レッドバット「っ!!」

紅い怪物は背中から象牙状な赤い触手を突き出すように生やして

背中に向けて鉤爪を振るう俺と激突。象牙状の触手を鉤爪の一閃で切り裂くも目標の背中を傷つける事は出来ずに怪物から距離を離される。

爆走する怪物の背中から無数の先端が刺突状の触手が直線状に放たれて身体に触手が突き刺される事は無くても後ろに少しづつ押し出される。

影牙「っ!?」

迫る触手を躱しつつ俺は近くに見えた電柱に向けて跳躍し電柱の柱部分に横をクルッと横回転すると側面を足場にすると共に跳び蹴り再び怪物の背中に向けて両手の鉤爪を振るう。

右手の爪をアスファルトに突き立てて急ブレーキを掛けて迫る俺に向かって肥大化した左腕を振るい左手が鉤爪で切り裂かれるのも構わずに左手で俺の首を掴み肥大化させた右手で全力で俺を殴り飛ばす。

影牙「っ!?」

殴り飛ばされるも直ぐに空中で体勢を整えて俺は着地し先を爆走する紅い怪物に再接近する為に走る。

レッドバット「⋯⋯⋯。」

怪獣のような姿になった紅い怪物は再び接近しようとする俺に向けて肥大化した前脚を振るうもその一撃を今度は躱し相手の顔に跳び乗る。

跳び乗った俺は怪物の顔目掛けて素早く鉤爪を振るおうとするも

レッドバット「っ!!」

爆走しながら怪物は鋭利な牙を生え揃えた口を鰐のように大きく開き俺に噛み付こうとする。

噛み付かれるもその牙が今の俺の身体に食い込む事は無い。怪物は首を動かして噛み付いた俺を周囲の建物の壁や塀に叩き付けるも壁や塀が耐久力に負けて壁の方が砂で作られたように砕けてしまう。

影牙「っ!?」

俺は噛み付きによる上下に押さえつけられた中で無事の右手を振るい怪物の顎部分を切り裂き噛み付きの拘束から脱出する。相手の真下にゴロゴロと落ちてその際に怪物の後脚に思いっきり身体が踏みつけられるもダメージらしいダメージを負う事なく立ち上がり逃げる怪物の後を走って追う。

一方、紅い怪物は斬撃ではなく質量を持った打撃に攻撃を変えて黒い存在を攻撃するもダメージを負った様子がまるで無く何事もなかったかのように自分を追う黒い存在に攻撃する考えその物辞める。

影牙「⋯⋯。」

レッドバット「っ!!」

相手に効かぬと分かっていても先端が鋭利な形状をした尻尾を振るい相手の接近を少しでも遅らせる。相手の右手の一振りで先端が斬り裂かれて尻尾を引っ込めて裂かれた部位を再接合をして振るうを繰り返す。

自身の能力と相手の特性の悪さに怒りを覚える紅い怪物。寧ろ今の自身の体格が相手より上なのがまるで有利に動いていない。逆に体格が大きくなった為に相手にとっては攻撃が良く当たるのだ。

レッドバット「「っ!!」」

途中、進行方向にある物に気付いた紅い怪物は相手から完全に逃げきる為に自身の姿を四足歩行の怪獣の姿から巨大な蛇の怪物に形状を変える。アスファルトを蛇行しながら前脚を蛇の口状にして身体を幾つも分かれた蛇の姿となって背後から追尾する相手を振り切ろうとするも相手は跳躍と共に背中に跳び乗り鉤爪を振るおうと両手を振り上げる。腕を振り上げたタイミングで怪物は蛇の口状にした両腕を長く伸ばして相手の両手首に絡みつき身動きを封じる。

影牙「っ!?」

鉤爪を展開させた両手首を封じられて目前に迫る鋭利な先端を持つ尻尾を仮面の前方に大きく湾曲させた牛の形状に似た両角を使った頭突きで火花を散らしながら弾き返す。頭突きで弾き返した尻尾は再び俺に向かって戻ってくる。

影牙「⋯⋯っ!?。」

別の攻撃手段を実行しようとした俺は進行方向からかなり離れた先に静かに立つ和服を身に纏った黒い長髪の鋭い眼光の男の存在に気付く。

太刀風「⋯⋯。」

進行方向の先に立ったその青年の刃のような瞳は水色に光り静かに両腰に差した黒い刀身の刀を抜刀。

影牙「っ!!」

男の正体や疑問が次々と膨れ上がる中で男の纏う闘気と無駄が一切ない熟練の動作に危機感を覚えた俺は両手で素早く指パッチンをして絡みつく怪物の蛇の口状の両腕を瞬時に切り裂き拘束から脱出、紅い怪物から離れる為に後方へ高く跳躍する。

太刀風「⋯⋯刃旋風斬(ダストデビルスラッシュ)」

男は上段で握り締めた二刀の黒い刀を同時に振り下ろす。振り下ろした瞬間、水色の竜巻が螺旋状に突進して行き蛇の姿と化した紅い怪物に激突する。

レッドバット「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

水色の竜巻に飲み込まれた怪物の身体全体が水色のエネルギーの刃に瞬く間に削られていく。

太刀風「⋯炎太郎。」

そう青年が小さく呟くと後ろから聞こえてくる足音と共に刃の竜巻に包まれた怪物に向かって右拳を激しく燃やした青年が和服を着た青年の前を駆け出して高く跳躍し竜巻目掛けて拳を一気に振り下ろす。

春日「グレンファイヤーブロウ!!!」

炎を纏った拳が竜巻に接触すると火災旋風と見間違う姿に変えて

中に包まれた怪物を高温で焼き尽くす。

右拳にメラメラと炎を燃やしていた青年が着地すると共に竜巻が消えて紅い怪物は黒焦げの姿と化す。

 

黒焦げの姿と化した紅い怪物に近付く二人の横に狙撃銃を持った黒いトレンチコートと帽子にサングラスを掛けた男が音も無く姿を現す。

 

俺は気配を限界まで消して三人の顔を見る。サングラスを掛けた奴の顔が分からないが、他の二人の方は見覚えがある。

影牙(⋯⋯あの三人。店に来た事ある客だ⋯⋯)

金属の怪獣が空から三門市に現れた日に俺が避難を促したのに避難しなかった奴らだ⋯⋯それに俺が試すように出した敵意にあの長髪の方は過剰に反応していたから良く覚えている。

 

長髪の青年が刀を使い黒焦げとなった怪物を真っ二つに斬り裂く。斬り裂かれた半身が力無く倒れて内部を見て俺は仮面越しに目を見開く。

春日「なっ!?」

太刀風「⋯⋯⋯逃げられたで御座る。」

幾つ物を分かれた蛇の中身は空洞になっており炎を出していた少年は悔しそうな表情を見せる。

謎の少年「奴を探すか?」

先ほど目撃した少年と少女の姿を見掛ける。

影牙(何者だ⋯⋯コイツら⋯⋯⋯)

正体不明の彼ら達を俺は静かに見続ける。パット見て人間と変わらないのに、普通の人間では出せない能力に疑問は尽きる事がない。

成川「それをしたい所だが⋯⋯さっきの目立つ合わせ技のせいでボーダーの連中が此処に来るかも知れない。直ぐにこの場を離れた方が賢明だ。」

太刀風「確かに⋯⋯ボーダー達の足音が少しずつだが近付いているで御座る。」

春日「成川先輩は?」

成川「俺はコレを別の所に処分する。」

そう言うと黒焦げの二つの半身に触れて最初から其処にいなかったように姿を消す。

青年達もボーダーに見つからないように離脱していく。

俺も怪物から逃げられた為に仕切り直す為にバイクを停車させた場所に戻る。

影牙「⋯⋯⋯。」

その街灯も光らない暗闇の道へ足音を立てずに戻る⋯⋯その途中、円形に風穴が空いたマンホールを発見し相手がどうやって離脱したのか理解する。

 

身体を幾つもの蛇に分かれた怪物に姿を変えて背中に跳び乗った俺の両手首の動き別の蛇の口状になった前脚で絡みつくように封じてそのまま直進していた。

相手の背中に跳び乗り両腕の動きを封じられた為に俺は腕の拘束解除の方に意識を割っていた。その間に怪物の本体は真下を通るマンホールを破壊して地下下水道に逃げ込んだのだ。

後は分身を使って少しでも自分が逃げる時間を稼がせれば良い⋯⋯

あの怪物の分身を仕留めた謎の連中が気になるも、今は警戒区域からの離脱を優先する。

 

【こうして⋯⋯人知れず起きた深夜の暗闘は敵の逃亡で終わる。】

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

翌日 三門市⋯⋯カトリック三門教会内

優しく眩しい太陽が色とりどりのステンドグラスを美しく照らしパイプオルガンから流れる雄大な美しいクラシックを演奏する名も知らぬ新入りシスターを他所に教会の長椅子に距離を置いてそれぞれ座りたい長椅子に座る二人の男。

少年「おい。⋯⋯流石に呆れたぞ⋯⋯アウトロー神父。」

マスター神父「情報屋のお前に呆れられる謂れはないぜ。」

火を点けていない煙草を口に咥えた俺は先に待ち合わせ場所にいた私服姿のホッパーに呆れられていた。

マスター神父「てかお前のポケットに見える風車は何だ?」

長椅子に座るホッパーのポケットには見慣れない水色の風車が入っていた。

少年「此処に来る道の途中で落ちていたから拾ったんだ。」

マスター神父「道に落ちてる変な物を拾うんじゃねぇよ。仮に爆弾だったらどうすんだよ?」

少年「その時は仮面被った神父のおっさんが持つエネルギーや振動の吸収・蓄積・放出機能で何とかしてくれ。」

マスター神父「その機能は基本必要以外は切ってるよ。」

長い間、仮面を被り様々な怪異達と対峙していたが、基本の能力が高過ぎる為に必要になった時が無い⋯⋯

マスター神父「⋯⋯⋯お前が言っていた黒い狼男を見たぞ。」

少年「っ!?⋯⋯⋯⋯⋯。」

俺は此処に来た目的の一つを口にする。その一言を聞いたホッパーは静かに呆れた表情を引っ込めて情報屋としての顔に変わる。

少年「⋯⋯どんなんだった?」

マスター神父「俺の知っている狼男に比べて結構違っていた。」

少年「どう違っていた?」

マスター神父「動物特有の全身に狼のフサフサの毛並みなんて欠片もない【スパイダーマン3】に出てくるヴェノムって言うネバネバした宇宙生物が狼男の形状になった感じだよ。」

少年「何だソレ?真面目に教えろ。」俺の説明に疑問を覚えるホッパー。その気持ちは滅茶苦茶分かる。

マスター神父「真面目に姿を見て俺はそんな印象を覚えたんだよ。」疑問の顔を向けられながら俺はぶっきらぼうに第一印象を説明する。

少年「⋯ヴェノムみたいな狼男ねぇ⋯⋯」疑問の表情から胡散臭い物を見る目に変わるホッパー。

マスター神父「残念だが目撃した黒い狼男の正体は分からなかったよ。」

少年「何だよ〜〜肝心な部分だろ〜〜」

マスター神父「此方は噂の狼男より本命の怪物の討滅を優先したんだよ。」

少年「で仕留めたか?」

マスター神父「否、途中で逃げられた。」

少年「今度は紅い怪物の方が逃げたのか。」

マスター神父「あぁ。滅茶苦茶必死に逃げていたぞ。」

少年「そりゃあ良い知らせだぜ。ざまあみろ。」

嬉しい笑みを浮かべるホッパーと俺。

会話をしているとホッパーの右肩に普通のサイズより少し大きめサイズの飛蝗が乗る。

少年「神父。少し静かにしてくれ。」

マスター神父(ミュータントバッタ?)

飛蝗に気付いたホッパーは俺との会話を一度中断し右肩に乗っている飛蝗に対してホッパーは静かに飛蝗を凝視する。

少年「⋯⋯そうか。教えてくれてありがとう。そのまま彼に気付かれないように尾行を続けてくれ。」

飛蝗はホッパーの言葉を理解したかのように会釈しホッパーの右肩から離れて空中から素早く飛び去っていく。

その一部始終を見た俺は前からあった疑問を口にする。

マスター神父「お前って⋯⋯動物や昆虫と話せるのか?」

少年「そんな事出来るか。何処の【ドクター・ドリトル】だ。」

俺の疑問にホッパーは心底興味なさそうな顔で答える。

マスター神父「いやだって⋯⋯」

少年「そんな虫や動物の声が聞こえていたら四六時中聞こえてきてノイローゼになっちゃうぜ。」

そう言うと片手に持ったスマホを見て神父の方にある情報を伝える。

少年「⋯⋯知り合いの情報屋からの情報だ。昨日の深夜、ホンの十数分だけ怪しい人物と睨んでいた生駒達人が路地裏から姿を消していたらしい。」

マスター神父「関係あるか?その情報⋯⋯」

空腹で何処かで食事を購入したりとか公衆トイレに行ったりとか路地裏から移動する理由なんて幾らでもある。

少年「その十数分が紅い怪物や黒い狼男が目撃された前後の時間なら無関係じゃないだろ。」

マスター神父「⋯⋯⋯。」

少年「知り合いの情報屋がくれた情報曰く路地裏で眠っていた生駒達人は何かを察知したように突然、目を覚まして何処かへ走り出したらしい。」

マスター神父「その情報屋。まるで⋯⋯見てきたように言うな。」俺は会話しつつ昨日の各情報屋に渡された情報を読み直し始める。

少年「疑うだけ無駄だ。その情報屋には生駒達人関係で色々と調べて貰っていた。彼の情報は情報屋ホッパーとして信用出来るぜ。」

マスター神父「お前の見解を聞きたい。」

少年「⋯⋯⋯⋯生駒達人は黒い狼男だと思う。」

俺の質問を聞き少しの間を置いてホッパーは自身の見解を言う。

マスター神父「⋯⋯物的証拠も状況証拠も無いぞ。」

少年「証拠は確かに無いが⋯⋯この仮説なら生駒達人の事件が発生してからの妙な不審な動きに色々と納得がつくんだよ。」

マスター神父「でも決定的な証拠の情報をGETした訳じゃないだろ。」

少年「なら本人に接触して話せば答え分かる筈だ。」

【⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯】

マスター神父(⋯⋯生駒達人か⋯。)

黒い狼男の噂と同時に行方が分からなくなった怪しいボーダーの人間。

紅い怪物と敵対関係だった黒い狼男。

マスター神父(ホッパーの情報屋の腕はしっかりしている。そのホッパーが此処まで言うんだ⋯⋯)

マスター神父「ホッパー。」

少年「うん?」

マスター神父「紅い怪物の今の居場所を調べておいてくれないか?」

少年「⋯⋯また無茶な頼み事しているって気付いているのか?」

俺の頼み事を聞いて露骨に嫌そうな表情になるホッパー。俺に対してそんな表情になっても仕方がないだろう。何せ昨日は本当に危険な目にあったのだから⋯⋯

マスター神父「勿論。」

だが俺はホッパーを何だかんだ有りながら信用しているのだ。コイツは危険だが重要なこの頼み事を引き受けてくれると⋯⋯

少年「⋯⋯引き受けた。」嫌そうな表情を辞めてジト目で引き受けてくれた。素直に感謝したい。

マスター神父「追加報酬は用意しておく。」

少年「他に何か頼み事はあるか?」

次いでのように他の頼み事が増やされる事を危惧したホッパーが事前に俺に釘を刺しておく。

マスター神父「なら⋯⋯もし生駒達人の現在の所在の情報が分かったのなら俺に売ってくれ。」

少年「分かった。神父も漸く生駒達人に興味をもったか。調べるとコイツ割と面白いぞ。」

マスター神父「そういう事じゃないよ。」

俺は的外れな言葉を言うホッパーに呆れながらそう言うとホッパーは背筋を一度伸ばして身体をほぐしながら教会の長椅子から立ち上がり

少年「さぁ~て、御飯を為に動くとしますか。」

俺は昨日渡された情報を読み直している間にホッパーは教会を後にする。

マスター神父「⋯⋯。」

昨夜の2回の戦闘で相手の戦闘スタイルはある程度絞り込めた。

次に遭遇した時は怪物を日陰に逃さないように立ち回り陽光で怪物を焼こうと考える。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

情報を読み直し終えた俺はクラシックから場違いなデスメタルに曲調を変えて本物の悪魔がドン引くレベルで凄くヤバい顔芸で演奏をするシスターにお礼の言葉を伝えてカトリック三門教会を後にする。

マスター神父(あのシスターもストレスが溜まっているんだな。)

神に仕える者でありながら備品のパイプオルガンでヘビィメタルやデスメタルやロックな演奏をする見た目が美少女なのに言動や行動で残念美人なシスターに憐れみを覚えるも⋯⋯⋯俺は、生駒達人と接触する為に動き出す。

 

 

 

 

 

マスター神父「⋯⋯さて、本人について聞くなら本人に直接会って聞くのが最善何だがな⋯」

カトリック三門教会の駐車場に停めたバイクの前で思考する俺。

現在の所在は分からない。ホッパーの奴が何か知っているようだが報告には無し⋯⋯この貰った情報から見ている限り実家は京都だからご両親に話を伺っても分からないだろ。

マスター神父(なら交友関係に当たってみるか。)

俺はバイクに跨り生駒達人の交友関係のある友達に当たってみようとする。

 

彼が通う三門市立大学の前に到着して最初に思った事は⋯⋯

マスター神父(今日は大学は休みだったか。)

交友関係の学生達は其処には居なくてなら大学の講師達に生駒達人について聞こう俺は動くも

周囲の大学の警備員にヒソヒソしている様子を他所に近くにいた大学の講師達に軽く尋ねるも逆に生駒達人の知り合いかどうか疑いの目で見られる。

マスター神父(こういう目にあうのは昔も今も慣れないな。)

バイクのヘルメットを外しサングラスを付けた怪しい出で立ちをしているのは自覚しているけど流石に職質されるのは面倒くさい。

長いは無用と考えて講師の生駒の話を早く切り上げて俺は大学を後にする。

 

マスター神父(考えなくても分かる事だが⋯⋯俺は別に警察関係の人間でも探偵でも無い。神父で喫茶店のマスター。大学関係者が学生の個人情報を進んで教える立場じゃないんだな。)

 

マスター神父(やっぱり本人を探すしかない。)

バイクを走らせながら俺は生駒達人の姿を探す。彼は今回の連続バラバラ殺人事件現場の野次馬に紛れている事が多いとホッパーの情報に載っていた。次は順番に現場近くを通って生駒が来ていないか近くの人に聞き込みをしよう。

そう言う面では情報屋をしている彼ら彼女らは本当に巧い。

 

 

普通のサイズより大きめサイズの飛蝗が路地裏の壁に座り込んだ生駒達人の姿を観察する。

生駒「もう食べられないやん⋯⋯zzZZZzzZZ⋯」

疲れ果てて眠っている様子の生駒達人に何の感情も抱く事なく飛蝗は静かに眺めていた。

 

警戒区域 地下下水道内

【⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯】

少年「⋯⋯流石に怪物の奴も移動しているな。」

神父と別れてからホッパーは怪物の潜伏先である光が殆ど入らない地下下水道の通路を1人歩きながら怪物の気配を辿るも既に相手が下水道から移動した事を悟る。

少年(神父のおっさんの言う通り無駄な戦闘を避けて自分の命を脅かす連中がいるなら、そいつらにまた見つかる前に此処を捨てても問題は何もない。)

黒い狼男に神父、更に現れた謎の連中達⋯⋯三門市で紅い怪物を狙う連中が何故か多いんだ。

少年(まっ、化け物相手は化け物並みに強い連中に任せて俺は潜伏先を見つける事に集中しよう。)

地下下水道は潜伏場所としては悪くはない⋯⋯しかし仮に俺が怪物ならその潜伏場所が把握された場合、次は何処を潜伏先にするか考えるホッパー。

少年(市街地⋯⋯狙う獲物は多いが同時に自分を追う連中に見つかる可能性も高くなる。日中の白昼堂々で行動を起こせない以上相手は日が沈みのを待ってから動く筈だ。となると日を遮るの森や届かない路地裏⋯⋯または⋯)

視線を上に向けて下水道の天井部分⋯⋯その先の地上の景色を想像し

少年「⋯⋯獲物も追う人も殆どいない警戒区域⋯」

その考えを口にして思い立ったホッパーは地上に戻る為に来た道を引き返す。

少年(奴は地下を移動している。警戒区域内の何処にいるのか探さないと⋯⋯)

 

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昼過ぎの時刻 市街地と警戒区域の境界線上近くのマンホール

【カラカラカラカラカラカラカラカラ】

少年「っ!?」

マンホールを開けて地下下水道から地上に出たホッパーのポケットに入った水色の風車が突然独りでに回り始める。

少年(どうして急に⋯⋯)

何故急に回るのかホッパーは疑問を覚えながら風車を凝視する。

風車はやがてピタリと止み疑問が増えるもホッパーは周囲を確認しては移動する。

周辺の住宅や建物から見て此処は警戒区域に近い町内と気付くホッパー。

少年「うん?」

暫く住宅街を歩いていると3本の土管が奥に並べられた空き地にいる子供達と子供達の前で扇子を持って正座をする高校生の姿を目撃する。

少年(あのモサモサ頭の高校生は⋯⋯確か水上敏志。俺と同じ高校に通う3年生だな。)

謎の少年「⋯⋯。」

謎の少女「⋯⋯。」

水上敏志の前にいた子供達の中でキラキラした目にワクワクした表情をした茶色に一部が緑が混ざったフード付きコートの少女と見慣れない紫色の学ランを着たMの字口をした三白眼が特徴の寡黙な雰囲気の銀髪の少年がヤケに印象に残った。

正幸「おっ!誰かと思ったら噂好きのあんちゃんじゃん。」

ゴウ「ワン!?」

少年「⋯誰かと思ったら門倉さんとこの正幸じゃん。ゴウの散歩か?」

自分の事に気付き名前を呼ぶ知り合いの子供にホッパーも視線を印象に残った謎の二人から呼んだ子供に移す。

少年「で正幸君。あのブロッコリーヘアーの兄さんの前に皆集まってあの兄さんは何やっているんだ?」

正幸「俺達、お兄ちゃんの落語を聞いているんだよ。」

少年「落語って⋯⋯」

子供に目線を合わせてホッパーは水上の方に視線を向ける。落語の存在を知ってはいたが、何気に聞くのは今回が始めてだ。題材はある殿様が目黒へ鷹狩りに出掛ける途中でお腹を空かせた殿様が庶民が炭火で焼いたさんまを食べてその美味さに大喜びするも城に戻って暫く経ってもさんまの味を忘れられなくて家来にご飯にさんまを出すように申し付ける。しかし家来は日本橋魚河岸で買い求めたさんまを殿様に出す為にさんまの油と骨を抜いて仕方がなく椀物として出した。その椀物に浮かぶさんまを見た殿様は目黒で食べたさんまに比べられない違いに驚きながら家来に問う。

水上「コレ、このさんまは何れで求めて参った?」

少年「⋯。」

水上「はは、日本橋魚河岸で御座います。」

正幸「⋯。」

水上「何!?日本橋!?其れはイカン。さんまは目黒に限る。」

 

殿様のさんま通ぶった一言を言うと水上先輩は子供達に頭を下げる。

子供達は無言で敏志に拍手をする。⋯⋯否、謎の銀髪の少年だけ全くの真顔である。隣のフードの子が拍手するから余計銀髪の少年が子供達の中で浮いている。

 

少年(途中、ツッコミする言い回しとかあったけも普通に水上先輩の落語に惹き込まれてしまった!?落語殆ど聞かないの俺でも分かる。普通にこの人、落語上手い。)

正幸「はい。お兄ちゃん。」

感心している俺の横で正幸は水上先輩に近付き何かを手渡している。

水上「おおきにありがとさん。」

正幸「俺、生での落語。始めて聞いたよ。面白かった!?」

水上「それはきばった甲斐があったわ。うん?」

少年「⋯⋯⋯こんにちは。」

水上「こんにちは。」

互い挨拶の言葉を言いながら会釈する二人。その時の俺は水上先輩に比べてぎこちなく会釈を返した気がする。

少年「それじゃ、俺は此処で」

ホッパーは潜伏先を調べている途中の為にもこの場から離れる。

水上「兄ちゃんも少し旧弓手駅に用があるんや。」

聞こえてきた会話の単語に一度足を止めて振り返るホッパー。

少年(旧弓手駅?⋯⋯警戒区域内にある使われる事が無くなった駅じゃないか。)

水上敏志の事が気になるも自分の用事を思い出してホッパーは水上とは反対側の市街地方向へ移動する。

 

 

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ケバブ屋の店長「すまん⋯⋯見てないな。」

マスター神父「⋯そうか。ヨーグルトソースのケバブサンドのチキンとビーフを。」

ケバブ屋の店長「ハイよ。ミックスですか?」

マスター神父「いえ、別々でお願いします。」

ケバブ屋の店長「ハイよ。」

事件現場近くに停まっていたケバブ屋のキッチンカーに生駒について聞いてみるも空振りと知った俺は昼食のケバブサンドを購入する為に先に代金を支払いケバブサンドが出来上がる間、行き交う人の往来を眺めながら怪物について考える。

マスター神父(さて⋯⋯日が出ている内に生駒達人を見つけるのと怪物の討滅をしたいが⋯⋯)

ケバブ屋の店長「お待たせしました。ヨーグルトソースのケバブサンドのチキンとビーフです。」

マスター神父「はい。」

二つのケバブサンドを貰い俺は無意識に怪物によって殺された友人のミゲル神父の事を思い出す。

マスター神父(あの時の俺はチキンのケバブでミゲル神父はビーフのケバブを注文していたな。)

ケバブのソースは辛口だった気がする。食べ慣れていないケバブサンドに好奇心を隠せず齧りついて辛口ソースの餌食になっていたな。

マスター神父(其れでも始めて食べるトルコ料理のケバブを美味しそうに食べていたな。)

バチカンの影の秘密結社は古の頃から人知れず怪異の類と戦ってきた組織⋯⋯⋯この世の理から外れて人を超える力を持つ悪しき存在と戦いを繰り広げる為に結社の者達は世の平和と安寧の為に人知れず戦い⋯⋯命懸けで勝ち⋯⋯または力及ばずに殺され⋯⋯そして世間に褒め讃えられる事なく静かに死ぬ⋯⋯

其れでも親から子をへ⋯⋯子から孫へ⋯⋯師から弟子へ⋯⋯怪異達と戦う術を受け継がれていた。

ミゲルは実の両親を怪異の存在に殺されて結社の牧師の弟子になった子だ。

怪異の類の吸血鬼と人の混血児の俺に数少なく人間みたいに接する変わった人間だった。

⋯⋯⋯どんなに望んでも生まれた境遇は変えれない⋯⋯普通の人にはない吸血鬼特有の五感の鋭さや常人以上の身体能力の反射神経⋯⋯⋯不死と見間違う程の細胞全体の異常な程の再生速度⋯⋯そして他の生物の血を飲まないと発生する危険な吸血衝動と戦う日々。

ミゲル『生きて居れば沢山、困難な事が必ずあります。でも生きて貴方と言う友人と出会えた。例え私達が普通の人にはなれない人生をコレからも送る事があっても私達なりの普通の人のような自由の生き方は出来ますよ。こうして美味しいケバブサンドを食べるくらいは⋯⋯』

購入したケバブサンドを齧りつきながら晴れ渡る空を見上げて

マスター神父(人のような自由な生き方か⋯⋯確かにこんな俺でも普段は喫茶店の店長なんてやっているんだ。)

マスター神父「⋯⋯ヨーグルトソースも結構イケるな。」

マスター神父(敵を討つ⋯⋯⋯そういう気持ちが無い訳ではない。だが例えあの紅い怪物を討滅してもミゲルはもういない⋯⋯コレまで顔見知りや知り合いを怪異や怪物に殺されて戦った事はある⋯⋯自分勝手な怪物達に対しての怒りの感情だってあった。其れでも⋯⋯其れでも⋯⋯)

目に映る美しい青空を眺めながら俺はケバブサンドを更に食べる。

ミゲル『貴方は怪物や怪異を倒す為にこの世界に存在している訳じゃない。人を人知れず怪異達から守る貴方も幸せになって良いんです。嫌な光景や辛い光景を私以上に見て心が張り裂けるそうになるのは貴方が血が通った1人の人間だから⋯⋯もっと自分を大事にして下さい。貴方のその流れる人で無き血も力も他でもない貴方自身の物なのですから。)

マスター神父(俺がやる事は⋯⋯変わらん。変わるのは⋯⋯戦う理由だ⋯⋯)

三門市で出来た知り合い達の姿⋯⋯大切な人達と過ごした日々が俺の脳裏に過ぎらせる。

マスター神父「こっちにも守る物が沢山出来たんだ⋯⋯うむ⋯」

空を眺める俺はつまらない独り言を言いつつケバブサンドのチキンを食べ終えてビーフの方を食べ始める。

マスター神父「⋯⋯喉渇いたな⋯⋯」

飲み物無しでサンドを食べている為に喉が渇き始めてベンチから立ち上がりケバブサンドのキッチンカーの方に行き注文表を見て

マスター神父「ドリンクのオレンジジュースを。」

ケバブ屋の店長「ハイよ。」

ドリンクを購入してベンチに戻る。

 

南沢「隠岐先輩!?マリオ先輩!?あんな所に美味しそうなケバブサンドのキッチンカーがありますよ。」

隠岐「ほな丁度お昼ご飯の時間やし此処で食べていきましょうか。」

細井「すいませ〜ん!?注文良いですか。」

ケバブ屋の店長「いらっしゃいませ。」

南沢「俺、ビーフとチキンのミックスのケバブサンド。ソースは中辛で!?」

細井、隠岐「「注文早っ!」」

マスター神父(うん?お昼ご飯の時間だから人が集まってきたな。コレ食べたら聞き込みに戻るとするか⋯⋯)

後ろのケバブ屋のキッチンカーから聞こえてきた他のお客さん達の既視感を感じる声を他所に俺はドリンクとケバブサンドを交互に口に運ぶ。サンドを食べ終えた俺はバイクを停めた場所に戻りその場から次の事件現場へ向かう為に移動する。

南沢「うん?」

細井「どうしたんや?海。」

南沢「さっきの通り過ぎたバイクに乗っていた人、剣持が通う喫茶店のマスターに似ていた気がしましたッス。」

隠岐「珍しいなぁ⋯⋯」

南沢「でも一瞬過ぎて本人だったか良く分かりませんでした!?」

細井「本人じゃないんかい!?そして分からないんかい!?」

南沢「ハイ!?」

隠岐「清々しい笑顔と返事やわ⋯」

 

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三門市のとある電話ボックス内

少年「⋯⋯⋯。」

硬貨を入れた黄緑色の公衆電話の受話器を片手にホッパーはある情報屋仲間に連絡しようとしていた。

少年「もしもし。俺だ。ホッパーだ。」

??《あら〜ん。誰かと思ったらホッパー。どうしたん?わざわざ電話なんて?》

少年「何、お前の力を借りたい。ボートン。」

ボートン《⋯⋯⋯先ずは要件を言っちゃってよ。力を貸す貸さないは聞いてから決めるからさ。》

ボートンと呼ばれた人物はホッパーの話す内容⋯⋯三門市に潜む恐るべき紅い怪物の今の潜伏先の調べるのに力を貸して欲しいと頼まれる。

ボートン《⋯⋯良いよ。怪物の潜伏先を調べるのに協力しちゃうよ。》

少年「ありがとう。今度、旨い飯を奢るよ。」

ボートン《では動きますから電話を切りますね。》

少年「さて次は⋯⋯」

通話を終えたホッパーは電話ボックスから離れて人通りが少ない路地に移動し日陰に建ち並ぶ貸しビルの一つの前に足を止める。

少年「⋯⋯⋯。」

ビルの中に入りそのビルの階段をひたすら降りて途中情報屋の姿に着替えて地下にある一つの部屋の扉の前に立ち慣れたようにリュックからダークブルーのゴム手袋をはめて持っていた鍵で高圧電流が流れる扉の解錠し部屋の中にある不自然に置かれた紫色の公衆電話ボックスの受話器を取り別の知り合いの電話番号に連絡するホッパー。

??《もしもし?誰?》機械で変換された音声が受話器から聞こえてくる。

少年「もしもし。」

??《その声⋯ホッパー?》

少年「仕事の依頼だ。レインベアー。」

レインベアー《面倒くさいなぁ⋯⋯⋯何のデータを届けて欲しいの?》

少年「⋯⋯今から俺が言う場所周辺の監視カメラをハッキングして時間は今から日没まで⋯⋯監視カメラに映った映像データが欲しい。」

レインベアー《特定の監視カメラ群のハッキングに映像データか⋯⋯分かっていると思うけど証拠は残さないでね。私も捕まりたくないんだから。》

少年「分かってるよ。そっちこそ警察達に足つかないようにしてくれよ。」

レインベアー《報酬はしっかり用意してくれるのよね。》

少年「あぁ。」

レインベアー《なら良い。場所を言って⋯》

少年「結構多いぞ。《良いから!?》⋯⋯先ずは⋯」

ホッパーは順番に監視カメラのある場所をレインベアーと呼ばれたハッカーに伝える。

レインベアー《中間報告や結果報告は貴方の持つスマホにハッキングして連絡するわ。》

少年「いや⋯⋯普通にアドレス交換しないか?」

レインベアー《⋯⋯》

そう聞くとブツンと音と共に公衆電話が切れる。

少年(切れちゃったよ⋯⋯まぁ、謎のハッカーと名乗っているんだから自分の正体に繋がる証拠を進んで残す筈がないな。でも⋯⋯確信はないが性別は女の子だと思う。)

この貸しビルの地下の連絡用の部屋も情報屋のホッパーを信頼して教えたんだと思うし⋯⋯用心深い性格なんだろう。

 

少年「まぁ、今は紅い怪物の事を考えるか⋯⋯」

ホッパーは公衆電話だけ用意された部屋を後にする。

少年(取り敢えずレインベアーに協力を要請して三門市の目は確保した。コレで市街地の何処に怪物の姿の一部でも捉えられたのならその方向に怪物の潜伏先に繋がる情報がある。)

【ぐぅ~〜っ】

少年「腹⋯減ったな⋯⋯何処かで飯でも食べるか⋯⋯」

外へと続く階段を登りながらホッパーは昼飯の事を考えていた。

 

その十数分後に市街地を走り回る未来があるとはホッパーはこの時は知らなかった。

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マスター神父「っ!?」

事態が急変したのは俺が事件現場をバイクで移動している最中だった⋯⋯家電を扱う電気屋に置かれたテレビに生駒達人の映像が突然流れて俺はその店の前に急ブレーキをかける。

マスター神父「どういう事だ⋯⋯」

俺は流れたニュース速報は生駒達人が連絡バラバラ殺人事件の最重要容疑者として扱われる内容で其れを見た俺はニュースの内容に余りにも突然過ぎて怪しいと感じていた。

 

マスター神父「一体、何が起きてやがる⋯⋯っ!?」

生駒に関するニュースに戸惑いを隠せない俺は突然妙な気配を感じて気配を感じた方向に視線を向けると建物の屋上から建物の屋上へ跳躍移動するホッパーから貰った資料に写っていた生駒達人らしき姿を目撃する。

生駒「⋯。」

俺は急ぎその生駒達人が移動した方向へバイクを走らせる。そしてその光景はホッパーの仲間⋯⋯レインベアーがハッキングした監視カメラにも映っていた。

マスター神父「⋯⋯見つけた。」

俺は搭乗するバイクの速度を制限速度ギリギリまで上げながら事件の鍵を握る生駒達人の姿を追跡する。

生駒「っ!」

しかし向こうも俺が追跡する事に気付いたのか移動速度を上げて俺の追跡を撒こうと動く。

生駒は左の角に曲がり俺もその角に曲がると

マスター神父「何っ!?」

まるで最初からいなかったように目の前の歩道には生駒達人の姿は何処にもなかった。

マスター神父(どうなってる⋯⋯姿と気配が忽然と消えやがった。)

人より気配を探る事に優れた吸血鬼の能力を使って相手を追跡していたのに霧や霞のように空に消えた。

マスター神父(幻⋯なわけないか⋯⋯向こうも俺が追っているのは気付いていた。俺を撒く為にこの辺りに隠れたならまだ良いのに⋯⋯否、)

マスター神父「そもそもさっきのは本当に本人だったのか?」

姿を消した生駒に対して俺は追跡を諦めてこの場から移動していく。

真犯人であろう怪物の存在を知るからこそ接点は殆ど無いが、生駒達人が無実と分かるし⋯⋯さっきのニュースもだが生駒達人の周囲に何が起きているようだ。

マスター神父(にしてもさっきのニュースは⋯⋯怪物の策略か?⋯⋯否、戦ったからこそ分かるがこういう策略的な手を使うタイプには見えない。とにかく今は生駒本人を探す必要がある。)

俺はバイクの速度を上げる。

 

 

 

 

そして神父が見失った生駒達人は隠岐孝二、細井真織、南沢海の背後から忽然と出現する。

三人は生駒達人が連続バラバラ殺人事件の最重要容疑者にされた事を仲間の水上敏志に連絡した後に待ち合わせ場所へ向かっていた。

南沢「そんでブチギレて樫尾の頬にチュロスをグリグリと押し付けたッス!?」

細井「断れるんやったら大人しく引かんか!?」

隠岐「ブホッ!?」

歩きながら会話している三人に生駒は静かに接近する。

生駒「⋯。」

隠岐「⋯⋯何か用ですか?」

近付く足音と気配に三人は足を止めて同時に後ろを振り返る。

【⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯】

しかし其処には誰の姿も無く三人は確実に感じた足音と気配に警戒しながら顔を見合わせる。彼らはさっきの気配についての意見を言う為に口を開く瞬間、三人の背後に"三人の生駒達人"が忽然と姿を現し

生駒隊「「っ!?」」

一瞬、それぞれの背後に姿を現した生駒達人に意識を向けた為にそれぞれ背後からの一撃をモロに受けて三人の意識は飛ぶ。

生駒「⋯⋯。」

三人の生駒達人は生駒隊の三人を担ぎ上げて何処かへ姿を消してしまう。

 

そしてその一部始終は⋯⋯

少年「⋯⋯。」

お昼ご飯を食べる為にドーナツ屋で購入したドーナツを片手にゲンナリした表情をしたホッパーも屋上から見ていた。

 

複数人の生駒達人が生駒隊を誘拐する一部始終を目撃してしまったホッパーは状況が混沌と感じてゲンナリした表情から溜息を吐くと共に面倒くさい表情に変わるも意を決してドーナツを食べると急ぎ屋上を後にする。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

マスター神父「ホッパー?」

スマホが突然鳴り出し俺はバイクを歩道近くに停車させて知り合いからの連絡に応じる。

少年《もしもし!?》走る足音と焦ったような声がスマホから聞こえてくる。

マスター神父「もしもし。突然どうした?怪物の潜伏先でも見つけたのか?」

少年《ハァハァ⋯⋯生駒に関するニュースは見たか?》俺からの返事を聞いたのか走る足音がピタリと止み息を切らした状態でホッパーは俺に生駒に関するニュースについてきいてくる。

マスター神父「見た。ソレがどうかしたか?」

少年《生駒達人じゃない生駒そっくりの外見をした偽者が生駒達人の知り合いを連れ去った。》

マスター神父「何!?ホッパーもか!?」

少年《神父のおっさんの方も目撃したのか?》

マスター神父「あぁ。本人かと思って接触する為に追跡したが途中で消えるように撒かれちまった。」

少年《神父のおっさん。落ち着いて聞いてくれ。その消えるようにの表現は間違いじゃない。》

マスター神父「うん?」

少年《俺は消える一部始終を見た!?アイツら超能力の類の瞬間移動したんだよ!?》

マスター神父「⋯マジかよ⋯⋯」

情報屋からの報告に小さく驚きの顔を見せる俺。

少年《俺はコレから怪物の潜伏先の特定に戻る。おっさんは生駒達人本人と接触してくれ!》

マスター神父「接触してくれって何処にいるかも分からないんだぞ!?」

少年《道案内人を用意した!?ソイツの行く先に生駒達人がいる!?》

そう言いたい事だけ言うとホッパーからの連絡が切れる。

マスター神父「道案内人って⋯⋯」

連絡が切れたスマホを呆れながら見詰めるも渋々ポケットに戻し周囲を軽く見渡す俺の近くに風が吹く音が聞こえて次に小さな羽音が聞こえてくる。

マスター神父「?」

羽音の原因は俺の方に近付き勝手に俺の右肩に乗る。乗った生き物⋯普通のサイズより大きめサイズの飛蝗と視線が合い何とも言えない複雑な表情で俺は飛蝗に見詰めながら尋ねる。

マスター神父「⋯⋯⋯もしかして⋯道案内人か?」

その一言を言うと飛蝗はフワっと肩から離れて俺の先へ飛んで行く。

マスター神父「⋯⋯⋯しょうがねぇな。」

先頭を飛ぶ飛蝗やホッパーに対して思う事は沢山あるが俺は道案内人を見失わないように疑問の数々を頭の片隅に放り投げてバイクを走らせる。

 

一方、

少年「っ!?」

走るホッパーが持つスマホの電話が鳴り出して見てみると全く知らない番号がスマホ画面に映っていた。

少年「知らない番号は無視する!?」

知らない番号のスマホを一度無視して再び走ろうとすると着信音は思った以上にしつこく鳴り続けて再びスマホ画面を凝視するホッパー。

少年「⋯⋯⋯。」

応答ボタンをタップすると

レインベアー《⋯中間報告⋯真っ直ぐ直進に走って右の角に回った所にあるホットドック屋のキッチンカーの店長に電話を貸して下さいと伝えて。》

聞こえてきた機械音声にホッパーは目を見開き急ぎホットドック屋へ駆け込む。

言われた通りに真っ直ぐに直進して右の角に回るとホットドック屋のキッチンカーを見つけて

ホットドック屋の店長「いらっしゃい。」

少年「あの!⋯⋯すいません。電話を貸してくれませんか?」

ホットドック屋の店長「ご注文は何になさいます?お勧めは⋯」

少年「でっ、電話を貸して下さい!?」

レインベアーが指定した言葉に言い直すと店長は目を少し見開きホッパーを確かめるように見て

ホットドック屋の店長「此方のを使って下さい。」

見覚えのある紫色の電話を借りる。

少年「もしもし。」

レインベアー《指定した区域にハッキングした監視カメラに鮮紅色の光の尾を引く紅い筋繊維の西洋騎士の姿が映った映像データをソッチのスマホに送る。》

少年「っ!?」

ホッパーのスマホに差出人不明で映像データのメールが送られる。

少年「⋯⋯。」

ホッパーは無言でスマホのメールで送られた映像データを確認する日の光が入らない路地裏から別の路地裏へ鮮紅色の異形の西洋騎士が移動している様子が其処には映っていた。

レインベアー《お気に召したかな。》

少年「外見に多少の違いはあるが身体の各部から生やした赤い触手を見た限り連続バラバラ殺人事件の犯人と見て間違いない。」

レインベアー《ほぅ⋯⋯コイツが世間を騒がしている連続殺人犯か⋯⋯現在、対象は警戒区域がある方向へ移動している。》

少年「警戒区域⋯⋯監視カメラで奴を追えるか?」

レインベアー《⋯⋯残念だけど警戒区域内の監視カメラは殆どが大規模侵攻の際に破壊されたかまたはカメラ機能が停止している。今の所は後を追えるけど直に私の方からの監視カメラの追跡は駄目になるよ。何よりも夜になる前には監視カメラ達のハッキングは辞める依頼でしょ。》

少年(⋯⋯⋯潜伏場所の特定は無理か⋯⋯)

少年「分かった⋯⋯なら怪物の奴を捉えた方面の情報だけ教えてくれ。それが終わったら監視カメラのハッキングを辞めて良いし⋯⋯約束の報酬を口座に振り込んでおくから。」

レインベアー《まさか⋯⋯警戒区域に入った怪物を直接追い掛けるつもり?》

少年「警戒区域でも相手を追うドローンとかが無い現状、直接足で追うしか潜伏先を特定する事は出来ない。其れになりよりも⋯⋯」

レインベアー《⋯⋯》

少年「これが俺の仕事だ。」

レインベアー《⋯ダサ。》

少年「うるせぇっ!?怪物の向かった方向の情報を教えろっ!?」

レインベアー《⋯⋯⋯》

メールで送られた目撃した怪物の向かった方向の情報を貰い

少年「サンキュー。レインベアー。」

レインベアー《それが私の仕事だからね。》

互いに伝えたい事を言い電話が切れてホッパーはレインベアーに約束の報酬を払う為に最寄りのATMへ手数料を払いたくないから急ぎ向かう。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

日は完全に沈み暗い夜の時間帯に変わった三門市のある人通りの少ない場所をバイクで到着する。

【ホッパーの知り合いの飛蝗の⋯⋯何を言っているんだ俺は⋯⋯道案内人の案内により俺は無事生駒本人と何故か先に生駒を見つけたバイトの知り合いの剣持少年を発見する。】

道案内人の飛蝗は俺を生駒の所へ案内すると何処へ飛んでいきその後ろ姿を軽く眺めるも気持ちを切り替えて俺はバイクから降りて直ぐに二人に会いに行かず二人の会話が終わるのを待つ。会話の内容は聞こえなかったが⋯⋯生駒のオーバーなリアクションの数々で大体の話の内容は想像つく。

マスター神父(そりゃあ何も悪い事をしてないのに勝手に連続殺人犯の犯人にされて警察に追われているんだ。そんな時に知り合いが助けに来てくれて涙ながらに安堵しているんだろう。)

此処に来るまで生駒達人に話し掛けてどう事情を聞くか色々考えた⋯⋯だが知り合いと会話する光景を見て俺は二人に自分の事情を説明しない方針に決めた。物事を円滑に進めるには此方の事情を説明した方が一番早いのだが⋯⋯

マスター神父(何か⋯⋯直接話を聞く雰囲気じゃないな。)

小さな紙袋を持って何かを期待した表情をする生駒は剣持少年の何かの一言で凄いショックな表情になっており紙袋を指で穴をプスプスと開けながら色々と話していた。俺はその二人の日常らしきやり取りを見て自然と笑みがこぼれる。

マスター神父(ヤベっ、移動しようとしてる。)

マスター神父「おい?」

「「っ!!」」

突然、後ろから声を掛けられて瞬時に臨戦態勢になる辺りこの子達は人を守る為に戦う組織に所属する人間なんだな〜とこの時は感心した。個人的に言うとこういう自分よりもずっと年下の子供達が率先して戦う界境防衛機関ボーダーはあんまり好きじゃない⋯⋯理由も各メディアを見て理解は出来るのだが⋯自分に近い物を感じてしまい市民としても大人としても申し訳なくなってしまうのだ。

マスター神父(まっ、そういう個人的な気持ちは後回しにして⋯⋯)

マスター神父「漸く見つけたぞ。」

俺は顔を紙袋で隠した生駒に視線を向けながら言う。

「カフェのマスター⋯⋯」

マスター神父(人を忍んで行動しようとしたら知り合いに見つかった顔をしているな。)

剣持少年は俺の顔を見て軽く驚いた意味で小さく目を見開かせながら至って平静な様子でこの場を乗り切るつもりだ。

「すいません。何の用か知りませんが今、俺はこのペーパーバックマンと外食する予定です。」

生駒「どうも、ペーパーバックマンです⋯⋯紙袋男って何や?もっとマシなあだ名無いんかい?」

マスター神父(恐らく事情を知らない剣持少年も生駒の詳しい事情を知りたいんだろう。ホッパーの情報で暫く大学やらボーダーやらにも顔を出していないんだ。同じ組織に所属しているなら募る話は部外者の俺より尚更多い筈だ⋯⋯)

 

マスター神父(取り敢えず⋯⋯もう晩御飯の時間だから⋯)

マスター神父「ふ〜ん。一番美味い外食店を教えようか?」

生駒「何処や?」

「ちょっと!?ペーパーバックマン!!」

マスター神父「俺の店」

淡々とした顔で俺は二人の質問に答える。

マスター神父(美味い物を食べながら事情を聞こうや。)

二人は互いの顔を見合わせて悩む表情を俺に見せるも最終的に俺の提案を飲んできてくれた。

 

 

 

 

 

マスター神父「じゃあ予備のヘルメットが無いから二人はバスで店に来てくれ。」俺は二人に向けて淡々と事実を真顔で言う。

生駒「「えっ?」」俺の言葉を聞き驚いて目を見開かせる二人

「後ろに乗せてくれないんですか!?」間髪入れずに剣持少年は意見を言うも

マスター神父「どう考えたって三人も乗るようにバイクは出来ていないんだよ。⋯⋯諦めろ。」俺は其れをバッサリと両断する。

「今度は車にして下さい!?」

マスター神父「似たような事があったらな。」

「⋯⋯っ!?ペーパーバックマン!?バス停まで向かいますよ!?」

生駒「嘘やん!バス停まで走るのか!?此方はお昼ご飯もロクに食べてなくて空腹なのに⋯⋯」

マスター神父「じゃあ、先にカフェブラックスター2号店に向かっているからな。」

生駒「本当にあの人、俺達を置いていったぞ⋯⋯」

「⋯⋯。」

生駒「⋯⋯。」

 

何とも言えない視線を背中に感じるも俺は先にカフェブラックスターに向かうのだ。

 

 

 

 

一方、レインベアーの情報で怪物が向かった警戒区域にいたホッパーは⋯⋯

少年「もしもし。」

今日は何時もよりも良く鳴るスマホを取るホッパー。

ボートン《もしもし。ホッパー。今何処?》

電話をしてきたのは怪物の潜伏先の情報を調べるようにお願いした情報屋仲間のボートンだ。

少年「警戒区域近くの廃墟のビルの屋上にいるよ。」

ボートン《そうか。頼まれた怪物の潜伏先に目星がついた場所が幾つか出てきた。》

少年「教えてくれ。ボートン。」

ボートン《先ずは⋯》

ボートンが有力候補を順番に口にしてその候補の建物が何処に建っているかで候補から選別するホッパー。

ボートン《⋯⋯最後が旧カトリック三門教会。》

少年「旧カトリック三門教会?ソレって老朽化した廃教会だろ。」

ボートン《あぁ。だが取り壊した記録は無く建物自体はまだ残っている。怪物がどの潜伏先に選ぶかは怪物自身が決める事だがな。》

少年「⋯結局、ソレだな。」

ボートン《この情報らは君のお役に立てたかな?》

少年「あぁ。約束の旨い中華料理を楽しみにしてくれ。」

ボートン《ソイツは良かった⋯⋯君から聞いた怪物の特徴から三門市内の潜伏先を絞り込んだ甲斐があったよ。》

少年「話しが出来て嬉しかったぜ。また連絡するからな。」

ボートン《応っ!》

通話を辞めてスマホをしまい考え込むホッパー。

少年(さて⋯⋯この候補の建物の中から怪物を特定させる良い方法は⋯⋯⋯全部を行くには時間が足りない。)

建築物オタクの建物の構造に詳しいボートンの情報を思い出しながら四方を順番に見渡すホッパー。

少年(となるとやっぱりアレしかないか。)

 

全神経を集中させたホッパーは躊躇無く両手のひらを自身の爪で無理やり食い込ませて皮膚を突き破り手から血を流す。

少年(敵の特性から怪物は鮫と同じで血の臭いに敏感な可能性が高い⋯⋯なら必ずコレで奴は⋯⋯)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

旧カトリック三門教会内にいて気を失っている赤い筋繊維で蓑虫状に包まれる生駒隊の面々を紅い怪物は喉が渇いた為に吸血しようとゆっくりと牙を鋭くさせ生駒隊の面々に近付くもその怪物の肩を掴む者に怪物は意識を割り視線を向ける。

ドラキュラス「よせ、ソイツらは此処に来る奴らを誘き寄せる為の人質だ。勝手な事はこの俺が許さんぞ!?」

レッドバット「何をしようと俺の勝手だ!?貴様とてコイツの身体に脈打つ赤い血が見える筈だ!?」

肩を掴む吸血宇宙人の腕を怪物は振り払い互いにピリピリと向き合いながら一触即発の雰囲気になる両者。

両者目的は違う物の一時的に共闘に近い関係を持つ。だが紅い怪物は目先の欲望を優先ばかりにしてその度に注意をする吸血宇宙人。上司に命令されて仕方なく共闘している為に内心紅い怪物に対して辟易していた。

怪物から見てもお目付け役のように一々行動を注意する吸血宇宙人には心底うんざりしていた。

両者の相性は⋯⋯はっきりいって最悪だった⋯⋯互いが互いの命を奪う事が頭に過ぎる始末だ。

そんな両者の緊迫した状態に変化を与えたのは⋯⋯流れる空気に混じった血の臭いである。

ドラキュラス、レッドバット「「ッ!!」」

新鮮な血の臭いを嗅いだ紅い怪物はこの場にいる生駒隊の面々を無視して本能のまま血の臭いがする方向へ背中の両翼を羽ばたかせて先に飛び立ち吸血宇宙人は怪物を止める為に追う。

 

 

【カラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラ】

警戒区域にいる我が物顔の烏達が紅い怪物の気配を感じ取り生存本能に従い散り散り逃走する。

少年「ッ!?」

一斉に飛び立つ烏達に紛れて夜空に映える紅い西洋悪魔が飛び上がる様子のを目撃したホッパーは煩く回り鳴くポケットの風車を他所に小さく目を向けて言う。

少年「そこか。」

両手の皮膚の自傷による傷口を自己再生能力で塞ぎ飛び立った獲物である紅い怪物の出現した方角に視線を向けてから廃ビルの屋上から一気に飛び降りる。

少年(後はあの怖い怪物に見つからないように怪物の潜伏先へ移動するだけだ⋯⋯⋯滅茶苦茶厳しいな。)

着地とともに駆け出す情報屋ホッパー。空中から此方を探す怪物の視界と前の戦いで感じた相手の感知能力と防衛任務をしているボーダーの連中に警戒しながら走る。

 

少年(この方角⋯⋯⋯⋯ボートンの奴が調べてくれた旧カトリック三門教会がある方角だ。)

相手が潜伏先から離れて潜伏先に戻るまでの時間が車よりも速い空中飛行⋯⋯此方が潜伏先を特定させる時間が通常よりも遥かに短い上に厳しい。

少年(だが情報屋ホッパーをなめるなよ!?この辺りの地理はとっくの昔に調べ尽くしているんだよ!?近道の数々だってな!?)

近道を使い走る速度を上げてホッパーは怪物の潜伏先である方角へ直進する。俺を探す怪物が探すのを諦めて潜伏先に帰還する所を特定出来れば尚良い。

 

 

 

 

 

紅い怪物と吸血宇宙人はホッパーが流した血の臭い辿り飛び降りた廃ビルに着地する。

屋上の床に付着したホッパーの血に紅い怪物は飢えた犬のように四肢を這いつくばらせて顔を近づけ血の臭いを嗅いでは本能に従い長い舌で躊躇無く血を舐め取り舌鼓を打つ。

レッドバット「⋯⋯旨い⋯十代半を過ぎた味だ。」

ドラキュラス「⋯⋯俺はこのビルの周囲を軽く飛んでから教会に戻る。貴様も生き血を求めて人間を襲いに市街地に向かわずに潜伏先の廃教会に大人しく戻れ。」

レッドバット「良いだろ⋯⋯⋯俺様も良い加減にしつこいワンころをグチャグチャにしてやる。」

旨い血を舐めて機嫌を良くした怪物はお目付け役の宇宙人の言葉を素直に聞き入れて教会に戻る為にビルから飛び降りるその状態から一気に飛び上がる。

教会内には白いローブで身体を隠した存在が用意した旧型通信機があり黒いワンころの通信機に繋がっているらしく紅い怪物は教会に忌々しい邪魔者を呼ぶ準備をする為に急ぐ。

 

 

ドラキュラス「⋯⋯。」

紅い怪物が飛び立つ姿を見届けたドラキュラスも空から索敵をする為に飛び立とうと左右の両翼を羽ばたかせる。

?「珍しいな⋯⋯カーミラ星人がこんな所で何をしているんだ?」

ドラキュラス「ッ!!」

聞こえた声に反応したドラキュラスは羽ばたく動作を辞めて声がした方向に視線を向ける。

向けた瞬間、紫色のダメージロングコートを身に纏い紫色のサングラスを掛けた銀髪の男の片手が一瞬で自身の顔を掴み持ち上げて屋上の床にそのまま叩きつける。その一撃で床に蜘蛛の巣状の亀裂が走りドラキュラスは自身を片手で押さえつけている存在を睨みつける。

ドラキュラス「貴様は、イノセンスマン!!」

間「さっきの濃い血の臭いを持つレッドサンダーエネルギーを持つ異形の存在は何だ?連続殺人犯を利用して一体、何を企んでいる。星間連合?」

ドラキュラス「貴様に話す事等何もない!?」

押さえつけられたドラキュラスは床に向けて自由の片手を振るい打撃を加えて屋上の床を崩落させてイノセンスマンの拘束から自由になる。

下の室内に着地した間 罪無は空中を滞空するドラキュラスを見上げる。

間「⋯⋯話す気が無いなら話させるようにするだけだ。」

ドラキュラス「やってみろ!?俺を其処らのカーミラ星人の奴らと一緒にしていると後悔するぞ!?」

ドラキュラス(アイツを守る事にはムカつくがコイツと遭遇させる訳にはイカン!?)

思わぬ強敵の遭遇だがドラキュラスはこの場を離脱せずに攻撃を仕掛けるつもりで行動する。相手の実力が自分の主であるガバンを追い詰める程の実力と知っていてレッドバットと無闇に戦わせない為に時間稼ぎの足止めを買って出る。

間「掛かってこい!?」

間(奴のこの動き⋯⋯さっきの存在が逃げる時間を稼ぐつもりか?)

両手に紫色の強大なエネルギーを廃ビル内に放出させると共に空中高く跳躍する罪無。

ドラキュラス「死ねぇ!!イノセンスマン!?」

間「っ!?」

ドラキュラスも罪無目掛けて空中高く急降下して両者の拳がぶつかり合う。空中で互いの顔目掛けて上下に蹴りを振るいぶつかり合っては

間「逃がさん。」

短く呟く罪無は素早く相手の肩を足場にして跳躍し距離を離した紅い怪物の方向に視線を向けて右手から紫色のエネルギー光弾を光輪状を形成して飛行しているレッドバットに向けて手裏剣の要領で投擲する。

 

 

【ーーーーッ!?】

レッドバット「ッ!!」

空中で大きく飛ぶレッドバットは危険を察知する能力を駆使して後ろから飛来した光輪を高く飛び上がりその光輪を一度躱す。

 

廃ビル内では常人の眼に捉えられない超高速の戦闘を繰り広げる両者は互いに猛撃を躱して反撃を放ち躱して交互に戦いの主導権を奪い合う。鋭い罪無の拳と蹴りの同時攻撃をドラキュラスは素早く両腕で防御しドラキュラスの口から赤い光弾を連射して罪無はバックステップをして距離を離して迫る光弾を次々と躱しては罪無はドラキュラスと向き合う。

【⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯】

ドラキュラスの空中から爪による連続引っ掻き攻撃を捌きながらすかさずコート内に入れたショットガンを取り出してドラキュラスに向けて発砲。

ドラキュラス「甘いぞ!?」

ショットガンから放たれたエネルギー散弾を躱し罪無に急接近する。

ドラキュラスの鋭い拳の一撃を片手で掴みショットガンの銃身部分による打撃攻撃を顔面に叩きつけて殴打させてからヘッドショットを放つ。

ドラキュラス「っ!?」

銃口からエネルギー弾が放たれる直前に銃身を蹴りつけて射線の軌道をずらしてヘッドショットを免れるも息つく暇もなく罪無の拳や蹴りの連続攻撃を捌くドラキュラス。捌くだけでなく罪無に対して反撃の攻撃も放つ。

間「刻む。」

ドラキュラスとショットガンを撃ちつつ白熱する接近戦を繰り広げる合間に念力を利用しレッドバットに向けて放った光輪が意思を持ったように動きレッドバットを追尾する。

 

レッドバット「ッ!!」

躱した筈の光輪が再び自分に向かって追いかける事に気がつくレッドバットは再び背中の両翼を羽ばたかせてその光輪を躱すも光輪は直線状に直進せずにレッドバットを囲むように飛び回る。

レッドバット「猪口才な!?」

両肘先から鰭のように刃を生やして追尾してくる紫色の光輪に向けてレッドバットは両腕をX状にクロスさせてから振り下ろし真紅の三日月状の光刃を放つ。放たれた光刃と光輪が激突し互いに弾かれる。

レッドバット「分かったぞ!?そういう事か!?」

弾かれた光輪が念力操作で動かしている事に気付いたレッドバットは額から鍬形状の角をせり出し大きく攻撃的なエネルギーの気配を持ち念力を使っている元凶に向けてフルチャージする。

 

 

相手へ急接近から大地を斬り裂くように振り下ろされ手刀が纏った紫色エネルギーの光刃の一閃を両翼を羽ばたかせて上空へ飛行する事で躱したドラキュラスの急降下から渾身の蹴り放つ。その蹴りの一撃をまともに貰い後方に引き摺るように下がって笑み浮かべる罪無。

間「この威力⋯⋯確かに其処らのカーミラ星人とは違うみたいだな。」

ドラキュラス「今更命乞いか!?」

間「まさか?」

ドラキュラスは両翼を羽ばたかせて追撃の回し蹴り放つもその蹴りを不敵な笑みをした罪無は顔を反らしてやり過ごして相手の片足を掴み一気に引っ張ると共にすかさず腹部にエネルギーを込めた拳を叩きつけ呻くドラキュラスを室内の付近の壁に無理やり押さえつける。

 

間(流石に気付かれたか⋯⋯)

位置を特定された事に気付いた罪無は攻撃が放たれる前に急ぎ仕留めようと光輪の回転数を上げてレッドバットを狙う。

レッドバット「ッ!!」

レッドバットも念力を使い光刃を操作して光輪の相手をさせる間にチャージを完了させる。

間「ちっ!」

ドラキュラス「馬鹿が!?俺もいるんだぞ!?」

相手を押さえつける者と押さえつけられる者の両者は自身に迫る危機を感じとる。

 

レッドバット「⋯終わりだ。」

鍬形状の角から真紅の熱線が放たれて罪無とドラキュラスがいる廃ビルに直撃すると共に廃ビルの上部は粉々に吹き飛び。

光輪の念力操作が無くなり自身の目前で霧散していく様子に満足したレッドバットは念力操作をする相手が死んだと考えて両翼を羽ばたかせて旧カトリック三門教会へ戻る。

 

 

 

 

 

 

警戒区域の廃ビル室内

熱線によって半壊した室内に充満した煙を奥から現れた腕の一振りで煙を全て吹き飛ばし姿を現す人影。

間「⋯⋯逃がしたか⋯」

熱線を退けた無傷の罪無は紫色のロングコートに付着した埃や瓦礫のセメントを払い落としながら逃げた相手がいた方向に視線を向ける。

 

 

警戒区域のとある住宅内

ドラキュラス「⋯⋯⋯あの連続殺人犯め!?」

家主のいない住宅の広間に大の字になって身体の各部の傷を再生させながら悪態をつくドラキュラス。

 

迫る真紅の熱線に対して罪無は自身のエネルギーで熱線を相殺させその隙にドラキュラスは押さえつけられていた壁を破壊してビルから付近の住宅へ飛び降りる形でそれぞれレッドバットの熱線攻撃を回避したのだ。

 

【この5分にも満たない戦闘だが罪無は廃ビルの上部が熱線破壊された事実にボーダーの連中が来ると考えてこの場から急ぎ離脱しドラキュラスは傷を完治した後に旧カトリック三門教会へ帰還すると共にコセイダー達と激闘を繰り広げる事になる。】

 

 

旧カトリック三門教会付近の住宅の庭に気配を殺していたホッパーは教会内に入らずに何かを待っていた。

少年(来た。)

空から紅い怪物が旧カトリック三門教会へ入っていく様子をホッパーはスマホを片手に写真を撮り潜伏先を特定する。

少年(さてこの画像をメールに貼って神父のおっさんに送信と⋯⋯)

 

 

 

 

 

マスター神父(うん?)

カフェブラックスター2号店を目指しバイクを走っているとメールの着信音を聞き近くの道に停めてスマホの開きメールを見る。

メールには旧カトリック三門教会に入ろうとする紅い怪物の姿を捉えた画像が貼り付けてあった。

マスター神父「旧カトリック三門教会⋯⋯流石、頼りになる情報屋だな。ホッパー。」

俺は情報屋としての仕事をやり遂げたホッパーを賞賛する

写真と共に送られたメール内容は至って簡潔だった。

少年《俺はやる事はやったからな。後は任せたぞ。》

 

マスター神父「サンキュー。ホッパーっと⋯⋯」

俺はホッパーに対して返事のメールを打ち込み送信しバイクを再び自分の聖域⋯⋯店を目指して走らせる。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

結果を言うと二人は無事にカフェブラックスターに到着した。剣持少年が気を利かせてタクシー会社に連絡しタクシーを呼んで店の前まで移動したのだ。

電気の点いていない店に明かりを点けて冷蔵庫の中にある食材を確認し俺は厨房に立ちカウンター席に座った二人にお冷を出してから黙々と調理をする。

調理をしている他所に剣持少年が生駒から色々と事情を聞き色々な事実が分かった⋯⋯

マスター神父(あの紅い怪物が宇宙から来た恐ろしい存在と言う事⋯⋯そしてホッパーの読み通り黒い狼男は善の存在だったと言う事⋯⋯)

「⋯⋯ボンドさんは、どうして1人で地球へ?」

剣持少年の質問を聞いた黒いネバネバした宇宙生物は暫く考え込むやがて俺達に事情を説明する。

ボンド「レッドバットに苦楽を共にした相棒を殺された⋯⋯」

マスター神父(⋯⋯コイツも⋯⋯喪った奴なのか⋯⋯)

ボンドの口から教えられた理由を聞き調理をする俺の手が一瞬、止まるも直ぐに再び調理を続ける。

 

マスター神父(相棒の仇を追い遥々地球へか⋯⋯)

 

個人的に仲の良い友人を紅い怪物レッドバットに殺された事が切っ掛けでバチカンの影の組織が出す怪物退治の指令でモンスターハンターの俺が動く事態となった。ネバネバ君の事情と俺の事情に多少の違いはある物の根本的な部分は似ている。

 

マスター神父(ミゲル神父の奴がこの場にいるならネバネバの奴に協力するんだろうな。)

 

カウンター席に座る二人と一匹は俺の出自も事情も何も知らない奴らだ。俺達の共通点は人に危害を加える存在から人を守る組織に所属する事⋯⋯

 

何も知らないなら彼らに気付かれないように人知れず紅い怪物を仕留めるように動けば良いと頭の中で思い浮かぶ。

マスター神父(これ以上彼らに危険な目に合わせない事を考えたらこれが正しい判断な筈なのに⋯⋯⋯何故、俺は迷う⋯⋯)

「イコさん。1人で何とかしようと思わないんで下さい。僕達が居ます。」

生駒「さっきも言ったが剣持。今回ばかりは⋯⋯お前もボーダーも巻き込む気はないで。」

「決心は固いようですね。」

マスター神父(どうやら生駒の奴はあの怪物と戦うつもりらしい⋯⋯)

生駒「スマンな。でも正直に言うと不安なのも理由なんや。」

「僕達ボーダーを信じられないからですか?」

生駒「そうやな。何時もなら仲間達を無類の信頼が出来るのに⋯⋯」

「⋯⋯無理ありませんよ⋯⋯怖かったですか?」

調理を進めながら生駒と剣持少年の話を聞いている俺。

生駒「あぁ。凄く怖かった。」

その時の事を思い出しているのか震えながら答える生駒を申し訳なさそうに見るボンドと剣持少年。

生駒「でも其れ以上に怖かったのは苦楽を共にした仲間達を信じられないと一瞬でも考えた自分自身や。」

 

生駒「そんな仲間達を疑った⋯⋯どの面下げて皆に協力してくれって言えばいいんや?」

「その罪悪感で泣きそうな面でしょ。」

マスター神父、ボンド(この少年、容赦ないな。)

生駒「⋯⋯。」

慰めの欠片も無い正論マシマシの剣持の言葉を聞いて悲しみに打ち震える生駒の様子を見て色々な意味で心配する俺。

「イコさん。あの紅い奴と本気で戦うつもりですか?」

生駒「おん。本気や。アイツ何とかしないと三門市に住む人間が危ない目に遭う。今、アイツを止められるのは俺とボンドだけなんや。」

 

 

マスター神父(⋯⋯無理か⋯⋯戦う理由と力を持つ生駒を止める権利は⋯⋯俺には無い。彼は俺の言葉を素直に聞いて注意されても紅い怪物の元へ行くつもりだ。)

俺は覚悟を決めただろう生駒の発する言葉と纏う雰囲気に軽弾みな気持ちも無いのもあって監禁紛いな事でもしない生駒本人をどうあっても止められないと理解しその覚悟を見て俺自身生駒に任せて見ても良いと心無しか感じ始めてきた。

「⋯⋯はぁ⋯。」

そんな揺るぎなき真っ直ぐな瞳をした生駒の隣に座る剣持少年も生駒を止められないと諦めた表情で生駒を見詰めて軽く溜息を吐き静かにお冷を持ってお冷を凝視しながら誰に対する訳でもなく

「やらきゃいけない事でやるべき事なんですね。」

そう静かに剣持は言う。

マスター神父、生駒、ボンド「⋯⋯⋯。」

その言葉を聞き俺は生駒とボンドの方を見て⋯⋯

マスター神父(⋯⋯決めた。)

自分の中である決断を決める。それは⋯⋯生駒達に怪物の退治を任せる事⋯⋯ボンドは元から紅い怪物を追い地球へ来てその途中で生駒と接触し生駒自身も怪物から親しい人達を守る為にボンドに協力して戦うつもりだ。話を聞く限り自分の筋を通す彼らに任せるのが

マスター神父(確かに大人として見たら危険な目にあわせない事も正しい判断だろう⋯⋯でも危険な目に遭わせるが⋯⋯此れだって正しい判断な筈だ。)

 

恐ろしい奴から誰かの笑顔や命や尊厳を守る為に大人の警告や注意や説得を聞いて尚も安全とは無縁な危険な場所に飛び込み戦う。

マスター神父(⋯そうか⋯⋯この子達を見て俺が感じる事⋯⋯⋯この子達は大人が守るべき子供である同時にその大人達をも守る戦士なんだ⋯⋯)

俺はマグロカツの調理を無事終わらせて丼ぶりに盛り付ける。その際にご飯は大盛りにする事も忘れない。

マスター神父「はいよ。マグロカツ丼。」

用意された二つの出来立てのマグロカツ丼を見て二人の顔は無意識に笑顔になる。

生駒「頂きます。」

「⋯頂きます。」

手を合わせ終えた二人が美味しそうにマグロカツ丼を食べる様子を厨房で眺めながら

マスター神父(なら俺が出来るのは⋯⋯⋯そんな彼らを腹一杯して送り出すくらいしか出来ねぇじゃねえか⋯⋯うん?)

黒い犬の形をしたネバネバ⋯⋯ボンドは食事をしている二人を興味深そうに眺めているのを見て

マスター神父「⋯⋯ネバネバ君も何か頼むかい?」

マスター神父(この宇宙刑事さん。普段何を食べるんだ?)

聞いておいてこの黒い不定形生物は何を食べるのか知らない為に少し興味を持った俺がいた。

ボンド「なら水をお願いするよ。」

マスター神父「はいよ。」

俺はボンド刑事の前にお冷が入ったポットを置き彼は口を開き舌を伸ばしてストロー状に形を変化させて水を吸う。

マスター神父(⋯⋯遠慮している⋯⋯風には見えないな。にしても凄い光景⋯⋯俺が普通の一般人ならビックリしているんだろうな。)

生駒「⋯⋯そんな飲み方も可能なんやな⋯」

マグロカツを頬張りながら驚いた顔でボンドが水を吸う姿の感想を言う生駒。その驚いた様子から見て生駒にはこの水の吸う姿を殆ど見せなかったようだ。

ボンド「まぁな⋯⋯マスターも俺を見て驚かないのか?」

生駒の疑問に答えつつボンドは俺の方に見て俺の慣れたような対応に疑問を覚えるのか聞いてくる。

マスター神父「⋯⋯うな訳無いだろう⋯⋯普通にビックリしているよ。まぁ⋯過去に色々とな」

その疑問に対して俺は先に思った驚きの気持ちを口にするも生まれて始めて遭遇したこの世の物とは思えない怪物の存在を思い出し

マスター神父(ずっと昔に経験した事の方がもっとビックリしたからな。)

ボンド「⋯⋯そうか。」

やがて俺の目の前にいる彼ら達は食事を無事に終え剣持少年は財布を取り出すも俺は片手を前に出して其れを止める。

マスター神父「金はいい⋯其れよりもお前らが言う紅い怪物の潜伏先に心当たりがある。」

生駒「っ?」

マスター神父(怪物と因縁を持つ刑事さんら任せてみたいと思うのは俺個人の勝手な感情だ。昨日のように紅い怪物が逃げる可能性だってある。⋯⋯もしもの事を考えてやっぱり俺も参戦するか。)

神父は三門市の地図を店のテーブルを開き一同は地図に顔を見合わせる。

 

マスター神父「信頼出来るとある筋の情報で現在警戒区域内にあるこの老朽化した旧カトリック三門教会に紅い悪魔みたいな怪物が入ったという連絡があった。」

「「⋯⋯⋯。」」

俺はボンド達に視線を向けながら指で現在位置の店と旧カトリック三門教会の位置の場所を地図を使って教える。

彼らは俺がどうしてそんな事を知っているのか疑いの目で見詰めていた。その視線に対して何とも言えない表情になる俺。

マスター神父(まぁ、そんな顔しても仕方ないよな⋯⋯逆の立場なら俺がするし⋯⋯)

マスター神父「昨日たまたま、紅い奴と対峙しているのを目撃した。俺は伝える事を伝えた。」

下手に色々と聞かれるのは面倒くさいからぶっきらぼうに理由を言い話を続けようとするも

その時、俺の店の電話が突鳴り響き。その電話に一同は視線を向ける。

マスター神父(誰だ?)

店の電話の一番近くにいた生駒は恐る恐るに電話の受話器を取る。

生駒「もしもし⋯」

マスター神父(あっ君が取るの?まぁ良いけど⋯⋯)

 

 

電話の相手は俺達が話していた紅い怪物本人で生駒の知り合い達を人質に取り旧カトリック三門教会で来るように伝える内容だった。

連続殺人犯の電話を切れると

「⋯⋯イコさんの言う通り僕は帰ります。」

生駒君はこめかみに血管を浮き出させる程の怒りを露わにした状態で

生駒「おん!行くで!ボンド!?」

「待て!?出るなら店の表口より従業員用の裏口を使え。」

敵陣にカチコミに行く勢いで正面口から出ようとした生駒達を俺は止める。

生駒「何でや!?」

マスター神父「ボーダーの連中が店に近付いてきているからだ。」

人間以上の五感を持つマスター神父とボンドと剣持少年は視線を険しくさせて正面の入り口の方を凝視する。

 

(もしかして僕とイコさんを店まで連れていったあのタクシー運転手が⋯⋯)

剣持の想像通り⋯生駒の行方を付近で聞き込みしていた風間隊と三輪隊が偶然剣持達を乗せたタクシー運転手に聞き込みをして運転手は顔を紙袋で隠した男を乗せてカフェブラックスター2号店まで運んだ事を世間話のように教えたのだ。

勿論、紙袋で顔を隠した男が生駒とは思っていない物の怪しい人物には違いない為に風間隊と三輪隊は顔を紙袋で隠した男の正体を知る為にブラックスター2号店へ向かうのであるとは剣持も予想だにしなかった。

マスター神父「⋯⋯お前らが出たなら問題は無くなる。分かったら早く出ろ。」

「分かりました。イコさん。また生きて会いましょう。」

マスター神父(否、ボーダー隊員のトリオン体の身体能力は普通の人間より高い⋯⋯例え生駒を裏口から出して目的地の教会に到着する前に接触させられる可能性が高い。若しくは剣持少年を捕まえて生駒の居所を聞きに来るだろう。何より⋯⋯⋯)

 

カフェブラックスター2号店の姿を遠目で確認し店に向かって駆け出すボーダーA級部隊。その中には当然ながら菊地原士郎の姿もあった。

マスター神父(⋯⋯聴覚が常人よりも優れた奴が混じっているな⋯⋯如何にもタカ派の猟犬部隊って感じだ⋯⋯)

マスター神父「こっちだ。」

マスター神父(⋯⋯個人的にあんまりボーダーの奴らと戦いたくないが⋯⋯無視するにはリスクが高い⋯⋯⋯)

「「⋯⋯⋯。」」

俺は裏口の扉の方へ二人を案内しながら自分がすべき最善の手を考える。

やがて俺は裏口の扉を開けて剣持少年が一足先に出ていく。

生駒達人は体内にボンドを戻して裏口の扉から外に出てから達人はふと足を止める。

マスター神父「?」

マスター神父(どうしたんだ?)

生駒「待ってや!マスターって一体何者や?」

マスター神父(知り合いが人質に取られている状況でそんな答える時間が掛かりそうな質問するなよ⋯⋯)

俺に対して色々と気になる事が多いのは分かるけど今は互いに時間がない。

マスター神父「見て分からないか?何処にでもいる只のカフェの店長をしている神父だよ。」

達人の質問に俺は煙草を口に咥えて不敵な笑みを浮かべて答えるのだ。

生駒(嘘っ!?渋カッコいい⋯⋯)

何故か感激したような反応で此方を見る生駒を面白い奴と感じながら

マスター神父「ドア閉めるからな⋯⋯」

この質問の答えは現在警戒区域にあるカフェブラックスター1号店を経営した時に来てくれた友人のミゲル神父が予め考えてくれた答えだった。尚当時の俺はミゲル神父が考えたこの返答で大丈夫なのかと半信半疑だったが⋯⋯それなりに通用している。

 

カッコいいと感じた生駒に構わずに俺は裏口の扉を閉める。

剣持達を外に出して1人になった店内で俺は店の電気を消して俺は聖域ともいえる店に迫ろうとする不埒者のボーダー隊員達の対処に動く。

マスター神父「さて⋯⋯俺の聖域を汚そうとする子供達には⋯」

そう呟きながら特徴的な赤い細いバイザーラインがある黒い狼を模した仮面を頭から被り漆黒のボディースーツ型トリオンの換装体に姿を変えて

影牙「怖い狼に喰われても仕方ないだろ⋯⋯」

その姿を一瞬で店内から消す。

 

俺の中で許せない事は沢山あるが⋯⋯その中の一つが店に対する攻撃である。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

風間隊と三輪隊は市街地で散発的に目撃されてボーダー隊員に向かって訳も言わずに攻撃を仕掛ける生駒達人に事情を知る為に、他の部隊と連絡しつつ生駒達人の足取りを追っていた。市民に聞き込みをしていると奇妙な目撃情報を貰った。

 

頭に紙袋を被った怪しい男性と高校1年生くらいの少年の二人連れを市外と市内の境目にあるカフェブラックスター2号店前までタクシーで連れていった内容だった。少年の顔は分かんなかった物の紙袋を被った男性の方は生駒達人と同じ背丈の上に関西弁だったらしい。

聞き込みをしたタクシー運転手が言うには紙袋を被った男性は少年に菱形三色ゼリーを三門市で食べたいなぁと話していると少年は戸惑う表情で初めて聞く食べ物の名前ですね。と言われて大層驚いていたらしい。

菊地原がスマホで検索して調べてみると京都でしか食べられないお菓子の類らしい。

風間と三輪達はもしや生駒なんじゃないか訝しむ。更にタクシー内で紙袋を被った男は劇場版銀河鉄道999を初めて見た時、激しく感動し京都の市民病院で機械の身体にして貰おうと思っていたらしい。

本部の上層部に許可を貰いタクシー運転手に教えられた場所カフェブラックスター2号店へ向かう。

 

 

風間「止まれ。」

歌川「店の電気が消えてますね。風間さん。」

さっきまでついていた店の電気が消えた事にA級部隊の面々は気付かれたと考えて一度足を止める部隊の面々。

三輪「生駒先輩達が気付いたんでしょうか?古寺。奈良坂。聞こえるか?」

風間隊と同行した三輪は狙撃手の二人に通信連絡する。

古寺《此方古寺。聞こえます。》

奈良坂《此方奈良坂。どうしたんですか?隊長?》

三輪「そこから店内の様子は確認出来ないか?」

 

奈良坂《了解。ッ!?》

《戦闘体 活動限界 緊急脱出》

店の様子が眺める高い位置に狙撃銃イーグレットと持ちバックワームを纏い暗闇に紛れて潜み内部通信で三輪隊長と連絡を取る最中気配も音も無く背後から奈良坂の喉元に鋭利な爪が音も無く通り過ぎ奈良坂が気付いた瞬間、奈良坂のトリオン体が破壊され爆発し光が上空へ打ち上がり軌跡を描き高速へボーダー本部に戻る光景を店の方を見ていた風間隊と三輪隊の面々も気付き振り返る。

古寺「奈良坂さん!?」

反射的に奈良坂がいた方向に狙撃銃イーグレットのスコープを向ける古寺。奈良坂を倒しただろう存在がいたスコープで探すも奈良坂がさっきまでいた場所には誰の姿もいなく。

古寺(いったい何処に⋯⋯)

執拗に奈良坂がいた場所周辺をスコープを使い探している事に集中したいると音も無く暗闇の奥から赤い細いバイザーラインが背後から迫る。

古寺「っ!?」

狙撃手の経験か古寺は自分の背後に向けてイーグレットを向けるも

古寺「⋯⋯。」

だがそこには誰の姿ない。深い暗闇が何処までも続くのみ

三輪《どうした?古寺。》

聞こえてきた部隊の通信に対して

古寺「隊長⋯⋯暗闇の中に何か潜んでます。」

そう自分が感じた見解を口にすると同時に

《戦闘体 活動限界 緊急脱出》

古寺「っ!?」

古寺の背中が古寺が認識するよりも速く鋭利な爪によって斬り裂かれて古寺は緊急脱出する前にせめて相手の姿を捉えようと振り返るもそこには誰の姿も確認されずただ1人古寺の戦闘体は爆発し光が上空へ飛んでいく。

 

 

三輪「古寺っ!?」

1分も経たずに落とされた古寺がいる位置に視線を向けながら連絡する三輪。

古寺《すいません。隊長。落とされてしまいました。》

本部からきた古寺の連絡に三輪は単刀直入に尋ねる。

三輪「相手の姿は見たか?」

古寺《すいません。見えませんでした。》

三輪「そうか⋯⋯」

奈良坂《ですが警戒して下さい。古寺の言う通り何かいます。》

三輪「分かった。」

風間は三輪と古寺達の連絡をしている横で狙撃手達を襲撃した存在について考える。

風間(生駒達人のやり方にしては妙だ。何故生駒旋空を使わない⋯⋯否、襲撃者した奴が仮に生駒達人でない場合⋯⋯最初に狙撃手達を落としたら⋯⋯次は必然的に⋯)

最初の襲撃から見て相手の狙いは自分達と考える風間と三輪。

菊地原《風間さん。上から何か来ます。》

風間「っ!!」

菊地原の通信を聞き視線を上空に向ける。両手の指先に鋭利な銀色の鉤爪を生やした黒い狼の仮面を被った謎の存在が上空から此方に迫る。

影牙「⋯⋯。」

合図もなく風間隊と三輪隊は散らばり急降下から先に着地した黒い狼の仮面を被った存在は目の前で後方に跳び上がった米屋と目が合う。

米屋「っ!?」

自分の方へ顔を見上げる無駄な装飾を省いた細く赤いVバイザーラインの謎の存在と跳躍しながら無表情同然の赤いV字型バイザーラインアイと目が合ってしまった米屋はトリオン体に関わらず何故か何時も戦いの高揚感ではなく得体の知れない者に対しての恐怖心と威圧感を感じて冷や汗をかく。その汗をかいた理由を直ぐに理解する。

影牙「⋯⋯。」

米屋(速えぇ⋯)

先に着地した黒い狼の襲撃者は無言で米屋が跳躍から後方の地面に着地するより速いスピードで地を蹴り獲物に餓えて跳び掛かる獰猛な狼のように米屋の真上に再跳躍し米屋に迫る。

米屋「ヒィッ!?」

振り下ろされる両手の鉤爪の攻撃を米屋は槍型孤月を片手に緑色の半透明で六角形のシールドを展開するも

影牙「⋯。」

まるでガラスを引っ掻くように簡単にシールドに引っ掻く傷を作ると同時に破壊し反射的に米屋は持っていた槍型に改造した孤月を水平にして柄で防ごうとするも振り下ろされた両爪の一閃は柄を細かく切り刻むと一瞬で米屋の戦闘体を引っ掻くように斬り裂く。

マスター神父(残り4人。)

《戦闘体 活動限界 緊急脱出》

米屋「一撃かよ!?」

三輪「陽介!?くっ!」

目の前で一瞬で倒され打ち上げられた陽介の緊急脱出を合図に出現した襲撃者に鋭い眼孔を向けた三輪は拳銃型トリガーをホルスターから引き抜き相手の素性も関係なく脅威と判断し通常弾を連射するも襲撃者の方が初動が早く素早く四肢を使い跳躍離脱し銃撃をする三輪から距離を離し銃撃を地を駆け抜ける狼のように高速で掻い潜りながら距離を詰めて三輪を狙うも三輪を守るように風間隊が前に出て影牙は駆ける速度を上げて風間隊に迫る。

迫った影牙に対して風間隊は両手から攻撃手トリガースコーピオンを出現させ迎撃する。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

振るわれるスコーピオンの刃をしゃがんで躱し片手を地面に置いてから薙ぎ払うように足払いを放ち跳躍して躱す菊地原と風間。

歌川「くっ!」

足払いの出の速さに躱し切れずに足を蹴られて体勢が崩れて顎を掌底打ちで打撃音と共に上方向に殴り飛ばされてから右横フックを顔に貰いアスファルトに殴り倒れ伏す歌川に入れ替わるように風間と菊地原のスコーピオンを躱す狼の仮面を被った襲撃者。

躱し続ける謎の襲撃者に対して素早くスコーピオンを連続で振るうも襲撃者はスコーピオンの剣先を蝿を叩く要領で叩いて軌道をズラされてから風間に向けて飛び後ろ回し蹴りを叩き込む。

その一撃に後方に吹き飛ばされて起き上がろうとする歌川と激突する風間。

菊地原「っ!?」

激突する風間隊の姿を見て攻撃の苛烈さと動きのスピードが増す菊地原。

菊地原のスピードに対応しながら交互に足を入れ替えて放つ連続ハイキックを叩き込み菊地原のスコーピオンを持った両手首を両手で掴み一気に力を入れて風間隊の方へ菊地原を放り投げ飛ばす。

歌川「大丈夫か!?」

放り投げ飛ばされた菊地原を歌川が受け止めて風間隊三人は三輪と対峙する襲撃者を見ながら体勢を整える。襲撃者の跳躍からの膝蹴りをシールドで防ぎ反撃に拳銃型トリガーを発砲するも三輪のシールドを蹴り後方へ空中回転から四肢を這うような体勢で着地して拳銃型トリガーの銃撃を四肢を使った狼のように跳び回りながら三輪の周囲を翻弄しタイミングを見て三輪に向かって襲撃者は跳び掛かる。

三輪「ぐっ!?」

交互に地面を転がり真上を取られた三輪は至近距離から拳銃型トリガーを発砲しようするも襲撃者は三輪が持つ拳銃型トリガーの銃身を片手でズラさせて銃撃を躱し逆に三輪に向けて鉤爪を引っ掻くように振り上げるも振り下ろす事なく三輪から急いで距離を取る。さっきまで襲撃者が居た位置に風間隊が集まる。

風間「立てるか?三輪。」

三輪「⋯⋯風間さん。」

 

静かに此方に向けて静かにファイティングポーズを構える黒い狼の仮面の襲撃者。

三輪《米屋達のトリオン体を破壊したって事は目の前のコイツは⋯⋯》

風間《トリガー使いと見て間違いないだろう。外見から見て仮面の怪人の仲間の可能性もある。》

菊地原《どっちにしても此方に攻撃を仕掛けてくるのなら敵でしょ。》

三上《皆さん。さっきから誰と戦っているんですか?》

此方の出方を待つ相手の目の前でオペレーターの三上から連絡が来る。

菊地原《誰って⋯⋯パソコン見て分からない?そっちのモニター画面にも映ってるトリオン反応の奴だよ。》

三上《えっ!?⋯⋯⋯⋯⋯パソコンのモニター画面には皆さんの反応しか出ていませんよ。》

風間隊「「っ!?」」

オペレーターの報告に三人の目は目に見えて驚きの色を出す。

影牙「⋯⋯⋯。」

風間《何?三上。それは本当か?》襲撃者の方をジッと睨みながら三上に連絡する風間。

三上《はい⋯⋯部隊周囲には生体反応もトリオン反応もありません。》

【実体の無い影は人、動物、木々と言った生きた生物だけになく石や建物と言った無機質な物にも存在する。何処にでも居て何処にも居ない存在。】

風間「⋯⋯。」

三上の報告を聞き正体不明なトリガー使いに警戒心を上げる風間。

菊地原《相手の両手の鉤爪を攻撃手トリガーで受け止めないで下さい。スコーピオンより耐久性が高い米屋の孤月の柄は勿論、米屋のシールドすら簡単に斬り裂ける鋭さです。》

風間《了解だ。そのまま分析を続けろ。》

歌川《分析が終わるまで俺が囮をします。》

身軽な動きで迫る軽そうな黄色い半透明の両刃剣(スコーピオン)の斬撃の数々を次々と躱しながら応戦する俺。

素早く動き回り攻撃を振るう青いボーダーの隊服を着た連中の立ち回りから見て自分と同じ白兵戦に長けた連中と知り正直安心する。

マスター神父(コイツら⋯⋯普通の人間より充分過ぎる程機動力は高いんだろうが⋯⋯その動きや反応速度が俺より幾分か遅い。それに見ている限り近距離特化過ぎる。バランス悪いなぁ⋯⋯俺や"影丸の奴"と同じで奇襲や隠密専門なのか?)

歌川「っ!?」

近付いてスコーピオンの斬撃を連続で振るいつつ歌川は後方へ跳躍すると同時に射手トリガーの通常弾を襲撃者に向けて放ち直線的な通常弾を首だけ最小限に動かして躱しその先で奇襲を狙っていた菊地原のスコーピオンの一閃を刀身を片手で掴む事で勢いを止める。

菊地原「っ!」

足の立ち位置をすかさず変えて地面の下から潜行して生えてきたもぐら爪(モールクロー)を避けてから俺は空き手で刀身を掴み菊地原と顔を至近距離で向かい合う。

菊地原(コレで奴の両手は封じた。後は⋯⋯)

歌川「風間さん!?三輪隊長!?」

影牙「⋯⋯。」

俺の首目掛けて跳躍から大きく振り被ってスコーピオンを振るう風間の腹部に俺は強烈な蹴りの一撃を叩き込み怯ませている間に両手で握り締めた菊地原のスコーピオンの刀身を途中でへし折り駆け出しながら発砲しようとする三輪に向かってそれぞれ投擲する。一本は風間に向かって猛スピードで飛来するスコーピオンの刃の破片に対して風間は一度足を止めて持っていたスコーピオンで破片を弾かせて牽制しもう一本は拳銃型トリガーの銃口に突き刺さると共に拳銃型トリガーは暴発し三輪の左手を吹き飛ばして使えなくする。

三輪「ぐっ!」

トリオンを消費し再び両手のスコーピオンを形成した菊地原の至近距離から振るう斬撃を躱し俊敏性をフルに使いボーダーA級部隊を翻弄する。

 

歌川が囮となって菊地原が奇襲をして奇襲を躱した先に風間が仕留めようとするも似た戦術を使う相手と過去に何度か対峙した事ある俺はバックステップして距離を取られた分間合いを詰める為に踏み込んだ背の低い男が切り裂こうと横薙ぎに黄色い半透明の両刃剣を振るいその斬撃を上へ跳躍して躱しそのまま青いボーダー隊服ではない鋭い眼孔をした少年に狙いを定めて遮蔽物を利用して跳躍し

三輪は迫る襲撃者に対して素早く孤月を振るうも刀身が直撃する直前に闇夜に消えるように背後に回り込み後頭部から背後を鉤爪で引っ掻くように斬り裂かれて

《戦闘体 活動限界 緊急脱出》

三輪「っ!?」

驚愕の表情を最後に爆発と共に夜空に打ち上げられ光で漆黒の姿が照らされ素早く迫る風間隊の斬撃をそれ以上の素早さで躱して風間隊の真上を軽々と忍者のように跳び超える。着地と共に振り返りスコーピオンを振るう腕を振るわれるより早くに歌川の手首を片手で掴み動きを抑え急接近から歌川の腹部に向けて強烈なニーブロウを叩き込み打撃を受けた歌川は怯みながら再び射手トリガーの通常弾を襲撃者に向けて放つ。

影牙「⋯。」

素早く歌川のスコーピオンを持った手首を離し闇夜に溶け込むように黒い襲撃者の姿は歌川の目の前で消えて射手トリガーの通常弾は躱される。

歌川「消えた!?」

影牙「⋯。」

菊地原「っ!?」

驚く歌川の背後にまるで最初から居たように襲撃者は歌川の背後に音も気配も消して紛れるように潜んでいた。当たり前過ぎて誰も日常で意識しない影みたいに⋯⋯歌川は背後にいる襲撃者にまるで気付いていなかった。気付かない歌川の代わりに菊地原と風間が連携してスコーピオンを振るうも襲撃者は相手の次に置く足の位置を先回りして瞬時に足払いして風間と歌川と菊地原を同時に身体のバランスを崩し体勢を整えるより襲撃者の連続蹴りを身体の各部に叩き込まれて後ろに転倒する風間隊。

風間隊「「っ!?」」

風間(この襲撃者⋯⋯立ち回りの動きが速い。)

連携精度ではボーダートップの練度を持つ自分の部隊が攻め切れない事実に相手の脅威度が上がる。

風間「菊地原。ステルス戦闘を準備しろ。」

菊地原「了解。ステルスON。」

倒れながら三人の内二人の姿が風景と紛れるように消えていく。

マスター神父(消えた?だが確実に近くにいる⋯⋯なら消えていない奴から倒す。)

三人の中で体勢を持ち直すのが早かった歌川は襲撃者と向き合う。

歌川(コイツ⋯⋯多人数での戦闘が慣れている!?)

襲撃者は歌川の通常弾を超人的な反射神経で躱しながら素早く距離を詰めて歌川に向けて鉤爪を振るう。

歌川「グッ!」

影牙「⋯⋯。」

素早く連続で迫る鋭利な鉤爪をギリギリ躱すも躱した先から連続蹴りと掌底打ちを始め様々な種類の連続打撃を顔面や顎に貰い顔を仰け反らせてしまった歌川に黒い狼の仮面を被った襲撃者は姿勢を低くして片足で歌川の腹部を勢い良く蹴り上げて歌川が宙に打ち上がり地面に叩き落ちた直後に

影牙「っ!?」

姿を風景と同化させるカメレオンで死角に回り込んだ風間と菊地原の奇襲を数多の怪物達との戦闘経験で培った勘の鋭さで掻い潜り姿を現してスコーピオンを振るう二人の手首を両手で掴んでそのまま手の力で捻り枝刀(ブランチブレード)を同時に出そうとした瞬間、襲撃者は瞬時に手を離すと二人の手首からブランチブレードが出現し襲撃者の首筋を狙うも襲撃者は跳び掛かるように前方に跳躍しブレードを躱し二人の首を掴んで地面に頭を叩き落とす。

 

起き上がったばかりの歌川に対して狼のように跳び掛かり歌川の片腕を掴み持ったまま一緒に風間達二人から反対側に一回転に転がる起き上がり歌川の片腕を離すと一歩深く踏み込み身体全体を横回転させながら両手の鉤爪を薙ぎ払うように振るい。

歌川「シ、シールド!!」

咄嗟に六角形の半透明なバリアを自分の前面に展開させるも米屋の時と違いシールドが展開されるより既に歌川の戦闘体が襲撃者の爪で横薙ぎに引っ掻くように輪切りに斬り裂かれる。緊急脱出直前、影牙に向かって炸裂弾の置き弾を幾つも置く。

歌川「っ!?」

歌川(シールドが展開されるより速く⋯⋯斬り裂かれた⋯⋯)

《戦闘体 活動限界 緊急脱出》

歌川《すいません。落ちます。》

歌川の緊急脱出を見向きもせずに菊地原と風間は襲撃者に斬り掛かるも奇襲や不意打ちを躱し続けて逆に拳打による連続打撃を叩き込み二人を殴り飛ばされる。

 

風間「⋯⋯。」

置かれた歌川の炸裂弾が時間差で起動し無防備な襲撃者の背中に全て直撃して炸裂するもダメージらしいダメージを負う事なく無傷であった。

影牙「⋯。」

寧ろ全て貰ってから後ろを振り返って何があったのか確かめている始末である。

菊地原《アイツ何で炸裂弾をあんな至近距離で食らって無傷なんですか?》

風間《⋯⋯⋯まだ可能性の話だが聞くか?》

菊地原《⋯⋯聞きたくないですけど聞きます。》

風間《奴のトリオン体が歌川の炸裂弾を受けて損傷が無い理由は奴のトリオン体が俺達のトリオン体よりも耐久力や強度が此方の想定以上に高い可能性だ⋯⋯》

菊地原《⋯そんな馬鹿な⋯装甲が硬いトリオン兵ならともかく⋯遠征先で戦うブラックトリガー使いですらトリオン体その物の性能は僕らと変わらないんですよ。》

風間《あくまで可能性の話だ⋯⋯自動で発動する見えないシールドを全身に覆って可能性もある。》

菊地原《⋯⋯その可能性が本当なら此方の攻撃が殆ど通じない可能性が高いんですけど⋯⋯》

ほんの5分も満たない単時間で三輪隊四人と風間隊1人を緊急脱出させた正体不明で相手の狙いが分からない以上⋯⋯撤退も視野に入れようとしたが⋯⋯素早く距離を詰められて飛び後ろ蹴りを躱し

風間《どうやら相手は俺達を簡単に逃がしてくれそうにないようだ。》

菊地原《面倒くさいな⋯⋯やっぱり倒すしかないじゃないですか。》

影牙「⋯⋯」

菊地原(コイツ⋯⋯やっぱり音が聞こえない。)

スコーピオンの攻撃を仕掛け続けながら強化聴覚を使い相手の分析をするも呼吸音も心音すら拾えない。外見や動きから見て人間だと言うのは分かるのだがそれでも材質や重量と言った基本情報を音で入手出来ない相手に対して警戒心を上げる菊地原。

風間「貴様は生駒ではないな⋯⋯何者だ?」

戦っていて生駒達人と戦闘スタイルが違い過ぎる。生駒達人と素手で戦った事ないが構えや動きの端々に自分と同じで使い慣れた物を使って戦っている印象を覚える風間。

両手にスコーピオンを持った残った二人は迎撃の意思を正面に立つ俺に向けて少しでも情報を手に入れようと話し掛ける。

影牙「⋯⋯」

マスター神父(思ったよりもずっと早く片付けそうで安心した。)

それに対して俺は何も言わず二人に鉤爪を向けて駆け出す体勢になる。

風間《何も情報は残さないか⋯⋯》

菊地原《少なくても絶対に生駒隊の隊長じゃないですよ。》

【⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯】

周囲の音が止み不気味な沈黙が辺りを包む中で俺は終わらせる為に二人に向けて駆け出す。

風間、菊地原「⋯⋯。」

風間《次で決めるぞ。》

菊地原《了解。》

其れに合わせるかのように二人もスコーピオンを両手に持ち走り出す。

影牙「⋯⋯。」

両者合図も無く同時に前方に跳び掛かるように跳躍し複数の刃が一瞬で両者に交差すると共に二人の間を通り過ぎて後方へ狼のように着地する。

影牙「⋯⋯。」

二人と同時に着地し相手の方に振り返った瞬間、風間と菊地原が宙に斬り飛ばされる。

《戦闘体 活動限界 緊急脱出》

影牙「⋯⋯。」

背中を向け合った二人の戦闘体がその場で爆発し光が夜空に打ち上がっていく。それを勝利である漆黒のスーツを全身に纏った狼の仮面を被った存在は静かに軌跡と描きながらボーダー本部の方へ向かった光を見届けるのであった。

 

影牙「⋯⋯⋯。」

生駒達を追うボーダー隊員達を撃退し誰も居なくなったカフェブラックスター2号店から俺は1人離れて人気が無い市外の森へ行き其処で銀色の鉤爪を収納し両肩、両肘先、両手首、指先ではなく両指の関節部分から銀色の爪状の刃を一斉に展開する。

影牙「⋯⋯⋯。」

ボーダー隊員相手に使う必要がなかった展開された刃を全てスーツに収納し生駒達が戦っているであろう警戒区域の方へ視線を移し俺は仮面を外して生身に戻り煙草を口に咥えて火を点けて一服する。

マスター神父「⋯⋯。」

静かな暗く深い森の中で俺は煙草の煙を味わいながら吸い。さっきまで戦ったボーダー隊員達の姿を思い出しているとふと

マスター神父「⋯⋯思い出した。あの背の低い男⋯⋯夜遅い時間帯で酔っ払ってポストに戦ったりしていた奴だ。」

ボーダー隊員風間蒼也の抜けてる一面の一つを過去に俺は偶然目撃して何とも言えない表情になる。

マスター神父(戦い方や互いを補う連携はとても優れていたが⋯⋯俺とは相性は悪かったな。)

マスター神父「⋯⋯腹減った。ラーメンでも食べにいくか。」

血のように赤くなった瞳の色を持っている黒いサングラスを掛けて隠し二人の分のマグロカツ丼を作っていたが自分の分の食事を作っていなかったから晩御飯を食べる為に市街地の飲食店を目指す為に暗闇から1人姿を消していく。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

数日後 三門市ダイナー「ガルム」のテーブル席にて

一つのテーブルを向かい合いながらTボーンステーキを食べる影の功績者達。

マスター神父「やっぱり此処のステーキは旨い。」

少年「違いないな。」

【紅い怪物と黒い狼男の戦いの決着は旧カトリック三門教会近くにいたホッパーが偶然見届けたようだ。】

世間を騒がせた紅い怪物がボンド達によって人知れず逮捕されて地球から去った一部始終をホッパーは目撃し三門市に束の間の平和が戻ったが怪物によって殺された罪の無い被害者達がいた事を忘れてはならない。

 

それでも一仕事終わった為に協力者に労いの意味を込めて飯を食べる。悲しみ続ける事を故人は望んでいないから⋯⋯前を見て進む為に俺達は生きる為に糧を食う。

マスター神父「⋯⋯。」

目の前の肉をナイフで切り分けてフォークに突き刺して口に運び

味わう。

少年「飯食べていると生きているって実感するな⋯⋯」

マスター神父「まぁな⋯」

少年「そうだ。神父。」

マスター神父「何だ?」

少年「知り合いのおっさんと今度旨い中華料理店で飯食べる予定何だけど⋯⋯お勧めの店とか知らないか?」

マスター神父「そうだなぁ⋯⋯個人経営の中華料理店で幾つか知ってるぞ。」

少年「例えば?」

マスター神父「梅見屋橋2丁目18番地にある中華料理の菜香楼と夢町にあるラーメンが美味いとんとん亭とかもお勧めだな。」

少年「あれ?他には?」

マスター神父「どうせ今回の仕事であちこちにお金を使ったんだろ。暫くは無駄な金は使わずに普通に生活しろ。」

少年「⋯⋯分かっているよ。そういや生駒達人は?」

マスター神父「誘ったけど⋯⋯「お気持ちは誠に嬉しいですが今回の件で多大な迷惑を掛けた人達へお詫びを兼ねた食事会をしますから謹んでお断りさせていただきます。って言っていたぞ。」

少年「そうか⋯⋯なら仕方ないな。」生駒の返事に納得してホッパーはとんとん亭か菜香楼の何方でボートンと食事会をするか考える前で神父は怪物騒動が一段落した為に

マスター神父(近い内にアイツの誕生日プレゼントを選ばないといけないな⋯⋯アイツって今何が欲しいんだ?)

熱々のTボーンステーキを食べながら娘との約束について考えていた神父であった。

 

その姿はとても恐ろしい怪物やボーダー隊員達と人知れず戦っていた男ではなく何処にでもいる父親の姿をしていた




風間隊と三輪隊の解像度が低過ぎて申し訳ありません。単純に素早い者同士の戦いがイメージし辛かった。でもスコーピオンを黒スーツの何処に直撃させてもどの道、スコーピオンの刃がへし折れるか刃毀れするかの二択しかないんだよな。

全身硬くて柔らかい部位がまるでない相手と戦わせてすいません。
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