ワールドトリガー・TheREDmanHERO 作:怪物怪人怪獣さん
青い星地球の周囲には無数の人工衛星が様々な目的で地球周回軌道で回り続けている。その数は約1万1700機で宇宙開発事業の影響で毎年新しい人工衛星が1000機が地球から宇宙へ打ち上げられています。
宇宙 地球の周回軌道の決められた軌道で回るある人工衛星にまるで風に流れるタンポポの綿毛のように黄色い風船がゆっくりと付着し、人工衛星の姿勢制御や軌道修正に使われる推進スラスターのロケットエンジンの燃料がみるみる減っていく。そして燃料がゼロとなり推進スラスターの燃料が無くなった為に推進力が無くなり軌道が維持出来なくなり人工衛星は突然軌道から外れて地球へと落下して行く⋯
〔推奨BGM ウルトラQのテーマ〕
ファイル17 フロンガ
浮遊怪獣フロンガ
登場
⋯大気圏の熱で形が崩壊し燃え上がり始めながら赤い流れ星は日本の方向に落ちていく。
ナレーション【地球の周回を軌道する人工衛星に起きた突然の事故⋯⋯宇宙空間にはスペースデブリを始めとした星間物質が漂っています。大きさも大小様々⋯⋯宇宙空間に漂うあの黄色い風船状の存在は一体⋯⋯】
三門市
高齢の男性がふと自宅の書斎の窓から夜の空を眺め流れ星が通り過ぎるのを目撃する。
???「?。」
高齢の男性は暫く星空を眺めていた物の視線を窓から書斎の机に飾られた写真立てに移す。写る写真に色々な感情を思いながら見ているもやがて途中まで黙読していたSF作家になった知り合いの人が執筆したノンフィクションノベル『ウルトラQ』に視線を戻す。
ナレーション【地球上の空はいつ何処で何が降ってくるか分からない⋯⋯目には見えない無数の宇宙線、流れ星に変わった隕石、雨だって立派な空からの贈り物である⋯⋯中にはとんでもない贈り物を地球に贈る事があります。しかし、これら全ては空からの贈り物である。】
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翌日、市外の森⋯⋯
ジャージ姿の染井華は日課のジョギングをしている為に森に来ると知り合いの姿を見掛ける。
鏡「うん?えっ?染井さん!?」
向こうも華の姿に気付き驚きの表情を見せる。
染井「鏡君?どうして此処に?」
鏡「えぇ〜〜と俺は⋯⋯トレーニングする為に⋯」
ぎこちなく答える拓也を見る華は自分が此処に来た理由を言おうとしたら森の奥から大きな打撃音が鳴り響く。
鏡、染井「ッ!?」
二人はその音に驚き音の鳴った森の奥に視線を向ける。
拓也と華が向けた生い茂る市外の森の奥の方では無数の斬撃音、銃撃音、エネルギーの放出音、打撃音の数々の音がオーケストラのように奏でて森の奥の中で次々と響き渡り音が鳴る度に生い茂る木々の葉がざわめき揺れる。森を駆け抜けて姿を現す水色と虹色と赤色と橙色の4つの色とりどりの光エネルギーの軌跡が森の中を人間の肉眼で捕捉出来ない速さで駆け抜けて激しくエネルギーと闘志がぶつかり合う。4つの光は真っ白いキャンバスに線を描くように交差し続けて先頭を走る水色の光と虹色の光が音を立ててぶつかり合っては離れるのを繰り返し其れに続く赤い光と橙色の光も激しくぶつかり合う。
春日「フレイムホーミングレイ!!」
ワザと走る速度を落とし三人から距離を取り橙色の発光を消し姿を現し両拳を力の限り握り締めて身体の内側に流れる太陽顔負けの熱エネルギーを放出するイメージと共に一気に突き出すと両拳から橙色のエネルギーの熱光線を大量に放つ春日炎太郎。熱光線ら意思を持つように弧を描き木々を躱しながら先を走る三人の背後をしつこく追い掛ける。
続けて風が追い付かない超高速移動で森の中の木々を駆け抜け人の目で追えない打撃戦を展開する水色と虹色の発光をそれぞれ消し姿を現す太刀風皇虎と成川ジョージは五月雨の如き音速打撃のラッシュ攻撃を辞めて一度距離を取りお互いの鋭い肘鉄や飛び蹴りをぶつけ合いながら迫る炎太郎の攻撃を察知しそれぞれで対処する為に素早く別々の方向に移動する。
「チェストーー!!」
そして最後に赤い発光を消して姿を現すジャージ服を着た剣持夢想は大地を高速で駆け出し森の中を蛇や蜂のように変幻自在に追尾する橙色の無数のレーザー光線を次々と木々を遮蔽物代わりにして躱しながら攻撃対象のいる方向に走り空中高く跳躍し剣持は目の前に見えるジョージに向けて回し蹴りを放つ。
成川「⋯⋯。」
走っていたジョージは剣持の方に足を止めて振り返り黒いサングラス越しに剣持の姿を見据え片手を素早く振るい回し蹴りを弾き剣持に向けて虹色のエネルギーの纏った拳を放ち剣持は素早く空中で宙返りその一撃を躱し近くの木々を蹴り跳び再びジョージに向けて赤く発光させた拳を高速で振るう。
成川「甘い。」
しかしジョージは身体を低姿勢にして一気に踏み込み剣持の拳目掛けて拳を振るい互いの空気が圧となりエネルギーを纏った拳がぶつかり合い打撃音と衝撃波が周囲の木々と地面を揺らして拮抗する事なく剣持は拳はジョージの拳に打ち負かされて後方に吹き飛ばされる。
【ーーッ!!】
「っ!?」
(不味い!?)
後方に勢い良く吹き飛ぶ後ろに視線を向けると視線の先にいつの間にか皇虎が駆け出しながら右手で握り締めた黒刃裂刀を音も無く静かに抜刀し吹き飛ぶ剣持の首を斬り裂こうと黒刀を躊躇無く振るう。
(レッドマン超能力〜〜ワープ!!)
背筋がゾクゾクと寒気が走り刃が迫る直前剣持は身体を赤く発光させワープし皇虎の斬撃を掻い潜り動作が終わった直後に出現して正拳突きを抜き放つも皇虎は空いた手で鞘を持ち剣持の打撃を受け止めて互いに視線をぶつけ合いながら激しく睨み合う両者。
「普通に危ないぜ!?ハリケーン先輩!!」
太刀風「実戦同然の稽古だからな。手加減は無しの方が稽古になるで御座る。違うで御座るか?」
「勿論だ!!」
皇虎は剣持に向かって無数の超高速斬撃を放ち剣持はその斬撃をギリギリに躱しつつ反撃の打撃を放つ。互いに相手と自分の攻撃の間合いと立ち回りを常に意識して剣持は鋭利な刃を持つ黒刃裂刀の斬撃の間合いを意識しながら躱し続けては赤く発光させた拳や蹴りを連続で放つも皇虎は鞘を打撃武器として振るい応戦する。鞘と拳と何度もぶつかり合っては互いに弾かれる剣持は更に速度と威力を上げて拳や蹴りを放ち続ける。
(くっ、先輩め!的確に俺の全ての攻撃軌道に合わせて鞘を放ってきやがる!!何時までも鞘を攻撃していたら此方の手足が痛んじゃうぜ!)
其処らの猫や怪獣達の爪を余裕で上回る鋭い切れ味の刃に映る己の姿⋯⋯全てを断ち切ると錯覚してしまう黒い刀身の刀と視線だけ自分の身体をバラバラに斬り裂くと感じてしまう太刀風皇虎の放つ刃のような殺気と闘気に恐れを抱かないかと聞かれたらNOと答える夢想とベム。実際に放たれた殺気に本能が反応して身体は震えるし背筋は冷や汗まみれだ。其れでもこの先、武器を持った相手に素手で対峙しないといけない場合を想定してこの打ち合いに挑んでいるんだ。
(命を懸けて大切な人達とその人達の大切な物を守る為に!!)
太刀風「どうした?もう終いで御座るか?此方はまだまだ余力があるで御座るぞ。」
「なっ!?そんな訳ないだろ!?」
太刀風「そうこなくては!?」
反骨精神を露わにするベムの言葉に皇虎は嬉しそうに怖い笑みを浮かべ笑い自分より強い実力の相手に挑む剣持達の気概を感じとった皇虎は容赦なく刀を振るいその皇虎の攻撃の一撃一撃を攻撃しつつ見切ろうとする剣持。両者並走しつつ打撃と斬撃を放っては躱して攻撃を繰り返し剣持は斬撃を躱し深く踏み込み皇虎に接近。皇虎が刀を握り締めた右手首を片手で掴み宙に向かって高く放り投げる。空中放り投げられて落下地点に攻撃を加える為に迫る剣持に対して足場の無い空中から皇虎は風を操り不安定な体勢を直し逆に上段の構えから迫る剣持を唐竹割りにしようと刀を振り下ろす。
【ーーーーッ!!】
唐竹割りにされる嫌な想像をした剣持は攻撃をやめて側転し唐竹割りをやり過ごす。直撃は回避出来た物の振り下ろされた剣圧と風圧の余波に怯む剣持。
(駄目だ!飛行能力があるのも勿論だが、そもそも風を自由自在に操作出来るからどんなに空中高くに放り投げても落下してこない。)
(其れだけじゃない!逆に地形を無視した音速の空中戦が最も得意なハリケーン先輩にとっては寧ろ得意な戦い方を生かせるだけだ!!)
(なら地上で泥臭く戦うしかない!!)
このまま空中飛行やホバー移動が可能なのに稽古を理由に地面に着地する皇虎に再接近して途中、放たれた高速斬撃をギリギリ躱し猪突猛進に高速攻撃を放つ剣持。速度も威力も手数も仲間達の中で圧倒的に劣ると分かっているもワザと遅くすれば命中する訳ではないから常に相手の隙を逃さずに怒涛の攻撃を放ち続ける剣持夢想の気概に対し皇虎も闘気を爆発させ全身全霊で応じる。やがて両者の速度は高速から音速に変化して始めて更に両者の移動速度と攻撃速度を上げるとその周囲には軽い台風のような赤と水色のエネルギーの嵐が発生する。その嵐の激闘は勢いを増す中で自ら突っ込むのは春日炎太郎。
春日「二人とも俺も忘れて貰っては困るぜ!?」
拳に炎状のエネルギーを込めて熱血漢の言葉と共に熱気が皇虎と剣持の周囲に一気に立ち込める。
【ーーーーッ!!】
危険察知能力が発動し剣持は皇虎への攻撃を辞めて離脱行動に移る。
太刀風「っ!?」
皇虎と剣持は直ぐに別々の後方に跳び真上から台風の目を穿つように急降下で来た炎熱拳を避ける。地面を拳で焼き砕きエネルギーの嵐を中心から吹き飛ばして姿を見せた炎太郎は左右に視線を向けて直ぐに一気に踏み込み自分から距離を取った皇虎に向かって跳躍し炎を纏わせた豪快な飛び膝蹴りを放つ。皇虎はその膝蹴りをヒラリと躱し背後に回った炎太郎に向けて刀を振るう。
春日「エナジーセイバー。」
振り返りながら叫び炎太郎は手の平から自身の橙色のエネルギーを菱形の光の両刃長剣状にして握り締めて迫る鋭利な斬撃を光の火花を散らして物理的に受け止め踏ん張り皇虎と鍔迫り合いをする。橙色の光剣の暖色系の光が向き合う両者の姿を照らし出す。
太刀風「ほぅ⋯⋯拙者相手に剣で挑むか!?」
春日「そういう訳じゃないんですけどね。」
「あれは!?」
炎太郎が出したエナジーセイバーを見て驚く夢想。
成川「エナジーセイバー。自分の体内に流れるエネルギーを操作し体外から物理的に硬質化形成させて出す宇宙人の近接攻撃手段の一種だ。」
エナジーセイバーを知らない夢想に成川ジョージが簡単な概要を説明する。
「エナジーセイバー⋯⋯」
皇虎の素早い袈裟斬りの一閃を弾き腹部目掛け横一文字斬りを放つ炎太郎だが皇虎は黒刃裂刀で火花と共に受け流し反撃の真っ向斬りを放つ。刃と刃が激突し相手の真っ向斬りを弾き返しては踏み込む炎太郎。袈裟斬りを放つも皇虎は立ち位置を変えて躱し反撃の黒刀を振るい炎太郎も跳躍からエナジーセイバーを振るう。
互いの剣を数度打ち合い火花が舞い散るながら炎太郎は皇虎から距離を離し皇虎は離した分の間合いを詰めようとする。
春日「伸びろっ!?」
両刃剣状のエナジーセイバーの刀身のリーチを瞬時に伸ばして横薙ぎに振るう炎太郎。
(エナジーセイバーの刀身が長くなった!?)
太刀風「甘い!?」
横薙ぎの一閃を黒刀で受け止めようと動く皇虎。熱い眼光で皇虎の行動を凝視する炎太郎。
互いの刀身同士が接触する直前、無言で炎太郎はエネルギー刀身のリーチを戻し皇虎の刀身が空振らせる。
(エナジーセイバーの刀身をボーダーのスコーピオンみたいに伸縮自在に変化させる事が出来るのか!!)
太刀風「ぬっ!」
成川「エナジーセイバーは使い手の使いたい武器の想像力が変化の影響をモロに与える。実際の物や実物の武器の構造を知っているなら想像力をより精密に再現出来るし膨らませやすい。」
炎太郎は皇虎の動きの僅かな隙を狙い一気に接近しながら残った片手からも別のエナジーセイバーを出して二刀流のエナジーセイバーを皇虎目掛けて振り下ろすも、皇虎にその斬撃を全て受け止め激しく火花と光の火花を散らして再び両者の剣同士がぶつかり合う。
太刀風「小細工を使って拙者を出し抜こうとはまだまだだな。フレイム!?」
左右の手に持ったエナジーセイバーを交互に振るい其れに応じる皇虎。そして剣の純粋な腕ではやはり皇虎の方が上なのか繰り広がれる剣戟では斬り掛かった炎太郎が徐々に押される。
部が悪いと察した炎太郎は皇虎から一気に間合いを離そうとするも皇虎は高速移動で炎太郎に詰め寄り炎太郎の袈裟斬りを風のようにアッサリと下がって躱し炎太郎に向け下がった距離を一気に詰めた踏み込みによる連続斬りを放つ。
春日「っ!?」
左手に持つエナジーセイバーを全体的肥大化させ右手のエネルギーセイバーに比べて厚さが三倍もある無骨な大剣に形状を変え盾代わりにして無数の剣閃を受け止めた直後、皇虎から距離を取る為に右手に持ったエナジーセイバーの先端の形状を鉤爪状の釣り針を持つ釣り竿に変えさせてエナジーセイバーを素早く振るい釣り糸の先端にある鉤爪状の釣り針は皇虎の後方にある木の枝にフックのように引っ掛けて左手の大剣状のエナジーセイバーを今度はサバイバルナイフ状にして一気に木の上に向けて跳ぶ。
太刀風「逃がすか!?」
皇虎は炎太郎を捕まえようと手を伸ばすも、橙色のエネルギー熱光弾が炎太郎の背後から次々と放たれて皇虎はその全てを剣技で全て弾く。
その間に木の上に着地した炎太郎は更に高く600mの高さに上空へ跳躍する。
【シュピピピピッ!】
空中を飛び上がった炎太郎は数回宙返りし地上にいる皇虎に向かって強烈な飛び蹴りを放つ。
(スワローキック!?)
その強烈な飛び蹴りを平たい刀身で受け止め皇虎の足元の地面をめり込ませる。
太刀風「やるなっ!?」
炎太郎の強烈な蹴りの一撃で両腕が軽く痺れるも、初撃を防がれても二撃目の攻撃をする為に左右のエナジーセイバーを元の両刃長剣状に形成し直して皇虎目掛けて振り下ろす。追撃のエナジーセイバーの縦斬りが迫るより早くバットでボールを打つように攻撃動作の体勢をした炎太郎を皇虎は一気に振り払い。滑るように着地する炎太郎は直ぐに正面にいる皇虎に視線を向けるも皇虎は
炎太郎の視界から一瞬で視界外へ捉えられるより速く高速移動し再び炎太郎の背後に回り込む。
(正面の相手に対しての視界の索敵外から相手の背後に回り込むのが上手い!?)
周囲をキョロキョロせずに本能的に皇虎が自分の背後の回ったと感じ取る炎太郎。
春日「っ!?」
春日(この人相手に剣で挑むのは、時期尚早だったか!?)
剣の相手を想定して軍隊式の剣の訓練をしていたが、相手が剣術関係無く色々な意味で悪い。
春日「フレイムバーニングファイヤー!!」
両手に持ったエナジーセイバーを一瞬で消して炎太郎は唸るように熱く叫ぶと自身の右腕に高温の熱エネルギーを螺旋状に纏わせ振り向かずに背後に迫る皇虎に右拳を向けて拳から橙色の螺旋状の超高熱火炎を放射し
太刀風、成川「っ!?」
皇虎は攻撃を直ぐに辞めて周囲の空気を焼く超高熱火炎を躱す為に木々の上に急ぎ高く跳び乗る。皇虎と入れ替わるようにジョージは直ぐ様片手を紅蓮の炎に向けてかざし自身の能力を使い高熱火炎を瞬時に結晶化させて森の火災を未然に阻止し瞬間移動で炎太郎の正面に飛び相手の顔面を鞭の如く蹴りつけて吹き飛ばす。
春日「あがっ!」
木々の間を通り過ぎて途中の木に背中をぶつける炎太郎にジョージは言う。
成川「森での稽古で超高熱火炎放射は辞めろ。堅気に迷惑掛けるな。」本気で怒った顔をして森に被害を与えようとした炎太郎を叱るジョージ。
春日「すいません。」
太刀風「余所見してる場合で御座るか?剣持の攻撃が来るで御座るぞ!!」
「テイヤ!!」
剣持の放つ拳が空と地面を文字通り切り裂きその衝撃波が三人に向かって迫る。
成川「ふっ、確かに地球人にして随分と速い拳のようだが⋯⋯それよりも速い拳を幾つも知る俺にとってはスローに見えるわ!!」
無数の拳の衝撃波をジョージは躱しもせずに鼻で笑い片手で全てさばく。
「なっ!」
(さばかれた!?)
自分の全力の速度で放った音速の拳が簡単にさばかれた事実に驚愕する夢想。そしてジョージは逆に剣持に向かって踏み込み一気に間合いを詰めて
(消え!)
【ーッ!?】
「がっ!!?」
危機察知能力が反応すると同時に深々と剣持の腹部にジョージの音速の拳が入りその一撃で衝撃波が背中から貫き時間差で後方の地を砕きと共に後ろへ勢い良く吹き飛び後方にある樹木に背中を強く打ち付けて更に呻き声を上げるよりも早く顎に追撃のアッパーカットを貰う。アッパーカットを貰い宙に高く打ち上がり激痛に顔を歪ませるも直ぐに闘志に満ちた目をジョージに向けて
「⋯⋯。」
宙に舞い上がったその体勢から瞬時に剣持は自分の片足を頭上まで上げて急降下する。瞬時に躱す動きをするジョージ相手に剣持は右手の平を向け超能力の念力を放ちジョージ身動きを一瞬でも封じ込め
成川「ぬっ!」
「チェストーーー!!?」
気合いの入った雄叫びと共にジョージの左肩に向かって剣持は勢い良く踵落としを決めてその打撃音が森に大きく響き渡る。
成川「っ!!」
思わぬ反撃を貰い攻撃によって足元の地面がめり込み両膝をつきそうになるも踏ん張り剣持の渾身の一撃を見事耐えきり反撃する為に剣持の方にジョージは視線を向けるとジョージは驚愕な表情を見せる。
数十分後
「⋯⋯うぅ⋯⋯」
真っ暗闇の中、気絶から目を覚ました剣持が見たのは顔がメッチャ近い染井華の姿であった。
「わぁっ!?」
染井「あっ。起きたのね⋯⋯大丈夫?」
染井(剣持君⋯⋯身体に重りでも付けているのかな?)
気を失った剣持を此処まで運んで休ませるのに一苦労があった事を剣持は知らない。
「アレ?染井さん。どうして此処に?」
思わず顔を真っ赤にして驚きの声を上げて状況の確認をする為にあちこちに視線を向ける剣持の様子を見て華は安心した表情になり簡単な状況の説明をする。
染井「レッドマンのお仲間の人達との乱戦による激しい実戦稽古をしている途中で踵落としの体勢で目を見開いた状態で意識を失っていたらしいわ。」
「そうか⋯⋯稽古中で気絶するなんて⋯⋯情けないな⋯⋯」
少しずつ意識が飛ぶ前の記憶を思い出して剣持は何事も無かったように乱戦稽古に再び参加する為に起き上がろうとするが、染井は素早く両手を使って剣持の顔をガシッと掴み固定させる。
染井「太刀風さんから剣持君は安静の為に実戦稽古は休んでも良いって言付かっているわ。」
「でも染井さん。せっかくの本格的な稽古が「私は剣持君を休ませるように言われているから休むように⋯⋯」ちょっ!染井さん!?」
(うん?この俺の今の体勢と染井さんの体勢⋯⋯⋯⋯⋯⋯まさかの膝枕!!?)
何気なく自分の体勢と染井さんの体勢を良く見ていると、膝枕だと気付きさっきとは別の意味で顔を一瞬でレッドマン並みに真っ赤にする剣持夢想。
(否、染井さんのこの蛋白な反応⋯⋯僕の方が単に意識し過ぎているだけか。でもソレはソレで普通に恥ずかしい⋯⋯)
案外僕の知らない所で香取さんとかに良く膝枕しているのかも知れない⋯⋯それはソレで想像つかないけど⋯⋯考える事が多過ぎて疲れてグッタリする剣持を他所に
染井(⋯⋯剣持君の顔が当たり前なんだけど⋯⋯凄く近い⋯)
華の顔は剣持と違い赤くなっていない物の⋯⋯内心では結構動揺していた。
「⋯⋯。」
華の視線の先を追うと剣持の代わりに来た鏡拓也が超人同士の乱戦稽古に参加していた。
飛び交う色とりどりのエネルギーの軌跡に振り回されて数多の罵詈雑言と悲鳴の1人オーケストラに涙チョチョ切らせてコミカルに逃げ惑う様子で端から見たら戦争映画やSF映画の一般市民の恐怖で逃げ惑うシーンその物だ。
染井「⋯⋯鏡君に君の秘密を話したの?」
拓也の様子を見ながら華は夢想に聞く。
「話したのは確かなんだけど⋯⋯直接会った際に僕の事を何故か色々と知っていたし⋯東京で起きた昆虫怪獣災害の時になし崩しに共闘する際に互いの秘密の事を偶然知った感じです。」
拓也が光エネルギーを使ってジェリコに一撃当てた光景を思い出しながは言う剣持。
染井「⋯そう⋯」
「拓也君⋯⋯学校ではどんな感じなんですか?」
ゲンブ百貨店で華と一緒に店から帰る途中、剣持が見た拓也に華は同じ高校の同じクラスの同級生と剣持に教えてくれた内容を思い出す。
拓也は必死な顔で炎太郎に向けて連続ストレートパンチのラッシュ攻撃を放つも炎太郎はその連続打撃を両腕で的確に防御し逆にボディーブロウを放つ。拓也は炎太郎の動きに合わせて後方にバックステップしてその一撃をやり過ごし、炎太郎に打撃戦で挑む。
染井「進学校として有名な六頴館で遅刻、早退、サボりの常習犯。同じクラスの三輪隊の古寺君と良くつるんでいるわ。」
「うへ〜〜思ったより自由気まま奴なんだな。学校の問題児なのか?」
ミラーマンRBと一度共闘して未熟な所が多いお調子者な印象は持っていたが、同級生の染井さんから見ても似たような印象なのかと剣持は思うも
染井「そう思うかも知れないけど⋯⋯⋯学校の成績は優秀なのよ⋯⋯」
「隠れて勉強するタイプなのか?」
染井「でも普通に問題ばかり起こして先生達に叱られたり心配されたりしているわ。」
「成績は良いのに⋯⋯何だかウチの三門市立第一高等学校の米谷先輩みたいな感じなんだな⋯⋯」
ボーダーには戦闘能力やオペレーターの処理能力と比例して学力が滅茶苦茶悪い隊員達がいる。文武両道の人間なんて稀な存在で大半は短所と長所がわかり易く分かれている物だ。
染井「その分、誰とでも仲良くなれるからコミュニケーション能力は私よりあると思うわ。」
「⋯⋯友達作りが僕より上手い奴なんだな⋯」
春日「ふん!?」
「オボロブシャー〜〜!!」
そうこう話していると炎太郎のハイキックが拓也の顔に直撃し拓也は面白い悲鳴を上げつつ顎が完全に上を向いた状態で上空へ高々と吹き飛ばされていった。その時、目の錯覚か上空へ高々と吹き飛ばされていった背景イメージは何故か銀河が表現されていて目が疲れているのだろうと剣持と染井は勝手に解釈した。俗に言う車田飛びである。
????「来ていたのか。剣持夢想。」
剣持は後ろから声を掛けられて視線を拓也達から声を掛けた方に向けると
謎の少年「⋯⋯。」
銀髪のショートカットの髪型をした特徴的な三白眼の瞳に紫色の炎の模様が入った三門市では見たことない紺色の学ランを着た剣持の前に度々姿を見せる謎の少年が立っていた。
染井「っ!」
「っ!?君がどうして此処に?」
剣持達は少年が此処に来た事に驚きを隠せずに来た理由を尋ねる。
謎の少年「アイツらに戦い方を教えて貰っている。」
少年は乱戦稽古をしている銀河連邦の超人達を視線を向けて淡々と⋯⋯其れこそ剣持みたいに答える。
「えっ?⋯⋯君は一体何者なんだ?名前は?」
来た理由を教えてくれた少年に剣持は新しい疑問が増えて質問する。身体能力も普通の人とは違うし⋯⋯そもそも普通の人間じゃない⋯⋯でもベムから少年を見て宇宙人のような気配はしない。正体が謎で少し警戒する。
謎の少年「俺か?俺は「いやああああああ!!」⋯⋯。」
少年の名前を聞くタイミングが悪かったのか空から大きな情けない悲鳴と共に急降下してではなく落下してくる拓也が頭から車田落ちの体勢で地面に激突する直前、ジョージが瞬間移動で拓也を救出する。
太刀風「⋯⋯御主、また来たので御座るか?」
謎の少年「あぁ。また俺に戦い方を教えてくれ。2代目も直に来る。」
染井(2代目?)
謎の少女「うぇっへっへっへ⋯⋯お待たせ〜。」
「うっ!」
風に混じってきた独特な臭い体臭に剣持と華は目を見開きねっとりした独特な声が聞こえてきて華と夢想は視線を向けると茶色に一部緑が混じったフード付きのコートを纏い背中にランドセルを背負っている褐色肌で黒髪おさげの小学生位の見た目の子供が来た。あの謎の少年同様に以前この市外の森で会った事のある子だ。
「君は⋯⋯」
2代目「お久しぶり〜〜レッドマンの人。」
染井「っ!?」
染井(この子!剣持君の秘密を知っているの!?)
「どうも⋯お久しぶりです⋯⋯えっと⋯⋯」
剣持が名前を聞きそびれた謎の少年と2代目と呼ばれた謎の少女に気になる事を質問しようとしていると
鏡「もうヤダーーー!!」
再び聞こえてくる情けない悲鳴と共に此方に向かってボロボロの拓也が逃げてくる。しかし剣持達の目前に瞬間移動したジョージにアッサリと捕まり片手で軽々と持ち上げられる。
成川「逃げる元気と弱音を吐く元気があるならまだ大丈夫だ。」
鏡「いやああああああァァァァァァ!!このままだと弱音を吐く元気も逃げる元気も無くなっちゃう!!死ぬ〜〜俺絶対に死んじゃう〜〜!!」
成川「死なない。簡単に死なないようにお前達を鍛えているんだ。」
謎の少年「さっさと始めよう⋯」
準備満タンそうに臨戦態勢を完了している謎の少年。
鏡「逃げろぉう!見知らぬ少年よ!?此処は地獄より酷い修行場所だ!?こんな所で鍛えていたら俺達全員、ワンピースの最悪の世代かドラゴンボールのZ戦士か鬼滅の刃の隊士かHUNTERXHUNTERのハンターか聖闘士星矢の聖闘士になっちゃうぞ!!」ムンクの叫びのような表情で汚い声で現状の厳しさを口にする拓也。
太刀風「今日はフレイムと手合わせして貰う。フレイム。」
春日「宜しくだ。少年。」
謎の少年「何処からでも掛かってこい!」
鏡「誰も聞いちゃいないぜ!?あああああああああ〜〜〜チキショー!!?皆、バーカ!バーカ!バーカ!!?」
成川「夢想。拓也。丁度全員揃ったからギアナ高地に場所を変えて鍛練するぞ。」
「ギアナ高地?南アメリカ大陸の?」
成川「そうだ。彼処なら元の姿に巨大化して鍛練しても三門市より目立たない。ある意味全力の状態で自分の身体能力や特殊能力を引き伸ばす事が出来る。」
皇虎、炎太郎、そして謎の少年と鏡拓也と剣持夢想は無意識に感じた森のある方向に感じる視線に意識を感じながらジョージの話を聞いて
(また"片目だけの視線"が⋯⋯"2つ"⋯⋯)
(でも人の気配はしないよ?)
何時も自分が特訓とかトレーニングする時に限ってその視線は感じる。
気配はまるで感じないんだが⋯⋯何か其処にいそうな妙な感覚はある。まるで其処に幽霊でもいるみたいに⋯⋯試しに何度か手で視線の感覚がした方向に伸ばすも何かに当たったような感触はなく保護色とか光学迷彩の類ではない。ワザと隙だらけになって相手の出方を伺った事もあるけど、特に何か困った事をされた事はなく、只此方をじぃーっと視線が感じるだけだ。周囲の気配を読む空間把握能力の高い先輩達や怪しい視線に敏感な拓也も既に視線がある事に気付いているも、視線の大元が此方に何もしないから反撃や特定もせずに無視しているのが俺達の今の現状だ。先輩達曰く対策は幾つか用意しているが、実行してはいないらしい。
鏡「ギアナ高地で巨人同士の乱戦稽古をするつもりですか!?ギアナ高地の生態系が滅茶苦茶になる!?」
成川「心配するな。寧ろ喜べ!乱戦稽古は本日はもうしない。ハリケーンマスクはレッドマン。少年はフレイム仮面。そして拓也。お前はこのプリズムファイターがマンツーマンで個別指導する時間だ。」
鏡「えっ!そうなの!?」
太刀風「個別指導と言っても全員が巨大化する訳では無いからその辺りは安心するで御座る。」
謎の少年「⋯⋯⋯⋯俺もした方が良いか?」
春日「否、今回はあの汚い悲鳴ばかり上げる少年と眼鏡を掛けた女の子に膝枕された少年を鍛える事に集中したいから、君は二人とは別で色々と強くなる為に僕らから学んだ方が良いよ。」
謎の少年「わかった。」
成川「なら先にコイツを高地に連れていくぞ。」
ジョージは持ち上げている拓也共に森から一度姿を消し再び姿を現して謎の少年と炎太郎と謎の少年に付き添いたいと言う2代目と呼ばれた本名不明な謎の少女を連れて再び消えて
染井「今日は帰った方が良いかもね。」
聞いた限り、帰ってきた剣持君が今より疲れた状態になるのは明白でとてもじゃないが、私とマンツーマンにトレーニングする体力は残ってなさそうと考える。
「すいません。染井さん。せっかく森までジョギングで来てくれたのに⋯⋯」
染井「うんん。剣持君の人知れず1人で頑張っている所を前から知っていたけど⋯⋯レッドマンの先輩達との乱戦稽古を見て改めて剣持君の凄い所を見たわ。」
「⋯⋯僕、さっきの所で何か凄い所を見せましったけ?情けない所は見せた記憶はあるんだけど⋯⋯」
染井「うん。見せた。」
先輩達と稽古している間の貴方は、何時もの無表情ではなく必死な表情で先輩達の動きの一つ一つを意識しそして先輩達の隙を逃さずに攻撃を仕掛ける。ボーダーの皆には殆ど見せない本気の剣持の姿を見た華は剣持を休ませる為に今回はトレーニング中止を提案する。
染井「じゃあ、私はこのまま帰るわね。⋯⋯鍛練頑張ってね。」
「はい!?」
華の静かな応援の言葉に剣持は気の抜けた顔から真面目な表情になり力強く返事を返してその二人のやり取りを見ている皇虎は静かに⋯今のベムの性格に影響を与え始めている剣持夢想本人とその友人の姿を感慨深く見る。
太刀風(必要な事だとは言え⋯⋯ベムが剣持夢想にした事は決して許されない物⋯⋯眼鏡を掛けた女友達とのやり取りを見て余計にそう思うで御座る。)
友人とのやり取りを感慨深く見るからこそ後輩がしてしまった事がどんなにその人とその人の周りの人間関係に多大な迷惑を掛けてしまっている事を理解してしまう。
原生生物に変身する能力を持たないタイプ故に地球で活動する際にどうしても地球人の"宿り木"が必要だった。40㍍のレッドマンサイズが当たり前の星だったのならまた違う選択肢があったが、
太刀風(眼鏡の友は今の剣持を受け入れられているが、逆の存在の方が圧倒的に多いだろう⋯⋯違う星の人間と共存する受け皿などこの星の世界中何処にもないのだから⋯⋯もしもに備えて妻達に相談すべきか?)
成川「待たせたな。」
太刀風「⋯⋯あぁ。剣持。」
仲間の声に考え事から意識を戻し皇虎は夢想を呼ぶ。
「はい!ではまた今度!」
華と別れてジョージ達の元へ剣持は行き剣持達の姿は市外の森からまるで最初からいないように消えるのだった。
染井「⋯⋯さて⋯⋯私も私に出来る事をしないと⋯⋯⋯この時間ならそろそろ三門市図書館が開く時間ね。」
本音を言うなら剣持君達が心配なのだが、剣持達も努力しているを理解して華は気持ちを切り替え帰宅を一度考えるも、持参した腕時計で時刻を確認すると図書館が開く時間に近いと分かりせっかくなら図書館に寄り何冊か本でも読もうかと考え始め市外の森を後にする。
誰の姿も無くなった市外の森にある剣持達に視線を送った2つの存在が別々の方向へ引き返して行く⋯⋯一つは三門市の住宅街にある"オペレーターの自宅"⋯⋯もう一つは住宅街に向かった存在に比べて超光速で移動し森を抜けて"黒野の館"にと⋯⋯
森から場面は変わり南アメリカ大陸 ギアナ高地 垂直に切り立ったテーブルマウンテンが数多くある点在する楯状地が特徴的なこの高地に特訓に来ていた者達がいた。
「「オリョッ!?」」
「「イヤッ!!」」
40㍍サイズの二人の巨人がギアナ高地の別々の場所で鍛練をしていた。
「「イヤッ!?」」
手刀を多方向から連続で振るってから素早く右足左足を交互に高く蹴り上げて宇宙空手の構えをしたレッドマンはその場で連続正拳突きやハイキックを始めストレートキックや回し蹴りと様々な種類の蹴り技を空に向けて放ち打撃技の膝蹴りや肘打ちを連続で繰り出して身体を絶えず動かし両拳を握り締めて一気に前に向けて諸手突きを突きだす。力強く諸手突きを放つその姿をテーブルマウンテンから眺めているのは皇虎。
太刀風(ベムの奴は⋯⋯問題無いな⋯⋯)
地球産の怪獣やゾークロン細菌怪獣達と激闘を繰り広げている合間でも特訓は欠かせない後輩で地球で剣持夢想の死体に憑依してからは色々と新しい技を増やしているみたいだ。
太刀風「⋯⋯。」
無言で皇虎は黒刃裂刀を抜刀し刀の周囲にギアナ高地に流れる風を操作し刀に集結させ風とエネルギーを圧縮させながらレッドマンに向けて巨大な球体状にした台風の砲弾を放つ。
【ーーーーッ!?】
「「ッ!?レッドパンチ!!」」
突然放たれた台風の砲弾より早く危機察知能力が発動したレッドマンは振り返り迫る砲弾に対して一歩前に踏み込み右拳を赤く発光させて抜き放ち砲弾と拳が激突し突風が吹き荒れてギアナ高地の周囲の森が激しく揺れる。激突の末⋯⋯台風の砲弾は掻き消えるもレッドマンも数㍍後退する。後退したレッドマンは皇虎の方に鍛練を邪魔されたと感じて意味深な視線を向けるも皇虎は真面目な表情で向き合い呟く。
太刀風「⋯⋯どうだ?久しぶりに拙者と手合わせでもするで御座るか?」
「「⋯⋯っ!?」」
皇虎の言葉に驚きの態度を見せるレッドマン。その反応を皇虎は見終えると
太刀風「ハリケーンコンバージョン!!」
レッドマンが返事をするよりも早く皇虎は素振りの練習をする謎の少年を他所にテーブルマウンテンから身を投げるように飛び降りて落下しながら変身の掛け声と共に水色の風状のエネルギーを吹き荒らしながら皇虎の姿が光輝き本来の姿に戻りレッドマンの前に着地する。
(コレが⋯⋯太刀風皇虎さんの本来の姿⋯⋯)
ハリケーンマスクの目と目が合った瞬間⋯⋯人間態を超えた凄まじいプレッシャーを感じ取り全身が鋭い敵意の刃に切り刻まれる感覚に襲われる夢想。
(ッ!!)
(⋯⋯夢想⋯⋯全力を出さないとゴメルやガバンみたいに負けるぞ。)
目の前に立つのはレッドマンに比べて普通の人と同じ等身大サイズの宇宙人。しかし自分より遥かに巨大な虎を思わせる闘気とエネルギーを感じ取り⋯⋯吹き荒れる水色の台風の奥に微かに見える鋭角なトサカが特徴の銀と水色の台風超人に対して戸惑う夢想と警戒心を露わにするベム。本能的に構えるレッドマン。
(ハリケーンマスク先輩は⋯⋯速いぞ。)
ハリケーンマスク「ハリケーン二段変身!!」
ハリケーンマスクも巨大化用の掛け声と共に素早くキレッキレの動きで両腕の胸元にX状に合わせてから下から上に両腕を水平に伸ばしトサカの上に両手の平を重ねてから再び上から下に両腕を水平に伸ばしてから両拳を胸元前に組み合わせると胸元の黄色い風車が激しく回り始め両腕で風を斬るように右腕を右斜めに伸ばし鋭く伸ばした左腕は腹部の前に置いてから勢い良く手刀の構えをした右腕を喉元に、左腕を左斜め上に鋭く伸ばすとより激しく水色の風状のエネルギーが吹き荒れ台風超人はレッドマンと同じ身長に巨大化し水色の全てを破壊する暴風が宇宙空手の構えで構えるレッドマンに一気に迫る。
レッドマンとハリケーンマスクが手合わせを始めると同じ頃⋯⋯
謎の少年「っ!?」
春日「⋯⋯。」
別のテーブルマウンテンの頂上では春日炎太郎と謎の少年が模擬戦をしていた。忍者の如く低く駆け出す謎の少年の拳の一撃を炎太郎は軽く捌きカウンターの一撃を放つも謎の少年は両腕をX状に組み受け止めて後方に一度下がってから反撃の蹴りを放つ。
春日(太刀風先輩程じゃないが、充分普通の人間以上に速い。でもこの少年。ベムが憑依している夢想同様動きに無駄が多い⋯⋯効率的に戦う知識は余り無いようだ⋯)
炎太郎は放たれた少年の蹴りを正拳突きで打ち負かして追撃する為に間合いを詰めてラッシュ攻撃を放つ。
謎の少年「ガッ!!」
炎太郎が拳の速度と手数を急に増やした為に謎の少年は回避も間に合わずに拳打の数発貰い吹き飛ぶ。
子供相手の為に勿論、炎太郎は威力を加減したが⋯⋯直ぐに少年に間合いを詰める。
春日「フレイムバーニングファイヤー!!」
謎の少年「っ!?」
詰められて高熱火炎の放射技を放たれる前に、謎の少年は炎太郎の片腕を全力でサッカーボールを蹴る要領で蹴り上げて攻撃の軌道を上空に逸らす事にする。テーブルマウンテンの上から全てを焼き尽さんとする巨大な赤い火柱が立ち昇り火の粉が舞い散る中で炎太郎の技は失敗する。
春日「まだまだ行くぜ!!フレイムスピア!!」
謎の少年「っ!?」
しかし炎太郎は嬉しそうに笑みを浮かべて両手から橙色の炎状エネルギーの鋭利な炎熱槍を作り出し少年に向かって連続で振るい、少年は炎熱槍を紙一重に躱し続けながら炎太郎に打撃攻撃を加える。
一方ミラーマンRBは⋯⋯手頃なサイズの岩を見つけてある距離まで置きその岩を目標に固有技の練習をしていた。
「ミラーナイフ!!」
投げナイフを投擲するように手を素早く振るうとナイフ状の光線が放たれて目標の岩とは全く関係ない場所のテーブルマウンテンの岩肌に直撃し岩肌が砕け⋯⋯るどころか何故か反射してミラーナイフは真っ直ぐミラーマンRB目掛けて返ってくる。
「「オリョッ!?」」
鏡(何で!?どひゃ~〜!!)
驚愕し咄嗟の判断で頭を下げて躱すもミラーマンRBの背後のテーブルマウンテンに直撃してまた反射して背後からミラーナイフが迫り反射音に慌ててミラーマンRBはコミカルに躱しミラーナイフが自分の周囲のテーブルマウンテンに反射し続けてそれを躱し続けるも遂に後頭部に直撃し頭部から炎が勢い良く燃え上がり慌てるミラーマンRB。
鏡(うん?ああああああ〜〜!!俺の頭燃えてる!!あっちあち、熱い!水水、水!!)
成川(落ち着け⋯⋯川の水で鎮火しろ。)
凄く慌てる様子のミラーマンRBにジョージはそう思念波を送り、ミラーマンRBは近くの川へ急いで行き川の水を両手で汲み上げて後頭部にバシャバシャと掛けて鎮火する。
鏡(⋯⋯た、助かった⋯⋯⋯何で岩肌が反射するんだよ!?)
熱が引いて安堵の気持ちで空を見上げながらふとこの行動の原因となった事象を思い出して良く考えなくても普通におかしくない?と疑問を浮かべる。再び目標の岩目掛けてミラーマンRBはミラーナイフを放ち。岩は反射する事なく両断される。当たり前の事象を見てさっきまでの一連のおかしなやり取りは一体何だったのか?腑に落ちない気持ちを込めながら顔を読者の方に向けて首を傾げるミラーマンRB。
「「ッ!!」」
レッドマンのいる方向に凄まじいプレッシャーが感じてミラーマンRBは慌てて振り返りその方向に視線を向ける。全てを切り刻むと錯覚する程の超巨大な水色の竜巻が下から上に吹き荒れて一瞬で掻き消える。
鏡(今のは⋯⋯)
成川(ハリケーンマスクの最大の必殺技⋯⋯サイクロンフラッシュだ⋯⋯フーガの奴め⋯久しぶりにベムと本気の手合わせが出来るから本気を出しているな⋯⋯)
ミラーマンは恐る恐るレッドマンの方向に歩くと⋯⋯大の字に倒れたレッドマンとその倒れたレッドマンの胸に乗り立つ皇虎の姿があった。
(⋯⋯つ、⋯強い⋯⋯)
夢想の中に浮かぶ言葉はこの一点のみである⋯⋯基礎能力を始め何もかも自分よりも上の存在に敗北した事実を噛み締めながら夢想は息を整える。傲る天狗になったつもりはないが、それでも少しくらいは良い勝負は出来ると内心考えていたらコレだ⋯
太刀風「まだまだ精進が足りないな⋯⋯世界は⋯⋯宇宙は広いんだ⋯⋯狭いと思ってたで御座るか?」
(⋯⋯知ってますよ。)
逆にベムは前の手合わせしたより戦えたと感じていた。それでも死を覚悟したが⋯⋯
皇虎は小山を降りるようにレッドマンから飛び降りて⋯⋯日本の現在時間を確認し
太刀風「もうこんな時間か⋯⋯そろそろ日本に戻るで御座るぞ。」
「「イヤッ⋯」」
レッドマンは全身を赤く発光させると共に剣持夢想の姿に戻り、ワープでギアナ高地から日本に帰国する。
鏡(ちょっと待って下さいよ!)
成川(心配せずとも俺も残るから⋯⋯お前はもう少し自分の能力を把握しろ。)
「「オリョッ!」」
鏡(なっ!?)
二人が去った後ジョージは拓也の様子を見て残る事をする。
成川「さて俺達も手合わせするか。」
「「オリョッ!?」」
成川「本来なら元の姿に戻って手合わせしたいが⋯⋯生憎俺は本部に変身許可証を出して返事がないと元の姿になれない⋯⋯」
鏡(⋯⋯もしかしてその本部ってネビュラ71って名前じゃないですよね?)
拓也の脳裏にスペクトルマン〜♪のテーマソングが鳴りながらジョージに質問する。
成川「全然違う⋯⋯仕方ないからこの姿でお前の相手をしてやる。」
鏡(へ?)
成川「心配するな。俺はハリケーンマスクより強い⋯⋯良い経験になるぞ。」
鏡(いえ、俺は能力の把握⋯⋯又は基礎能力向上の訓練を先ずすべきと進言します。)
成川「お前に合わせたトレーニングメニューを組むにしても此方はお前の身体能力の限界がまだ分からないんだ⋯⋯安心しろ。手加減はする⋯⋯」
鏡(畜生〜〜しっかりした理由があるから断れない⋯⋯ああああああああああああああああああああああ!!)
こうして手合わせ開始の合図も鳴らさずにジョージはミラーマンRBに超高速で迫る。
鏡(大丈夫!!幾ら成川さんが強くても体格差と密度では此方が圧倒的に有利の筈だぁああああ!!)
周囲の空気と地面が爆ぜた凄い打撃音と衝撃波と共にその日、テーブルマウンテンの上で自身の橙色の熱エネルギーを精密操作して様々な種類の遠距離中距離近距離の銃火器を形成し続ける炎太郎の横で木刀を逆手持ちで素振りをする謎の少年と牧歌的な音楽をヘッドホンで聞いている謎の少女とギアナ高地に住む動物達は空が飛べないミラーマンRBが空中高く吹き飛ぶ姿を目撃する。
春日「うん?」
謎の少女「わぁ〜ミラーマンが飛んでるよ。ナイト君。」
謎の少年「本当ですね。2代目。」
謎の少女「あれ?でも先代から聞いた話だとミラーマンは飛べないって聞いたんだけど⋯⋯」
鏡(あっ!知らない鳥だ⋯⋯綺麗な鳥だな⋯⋯なんていう学名だろう⋯⋯)
そして空高く吹き飛ぶ肝心のミラーマンRBは現実逃避していた。
怪獣が現れない合間合間の時間⋯⋯たった1人の孤独の中でゾークロン細菌怪獣達と戦う為に人知れず市外の森で訓練していた日常からブラックワン達の出現と共に新しい仲間達が剣持夢想の周りに現れて少しずつ孤独だった日々が変わっていく。
黒野の館の地下ガレージの黒野専用ワークショップ。
世界各地から黒野が趣味で購入した複数の高級車達が並ぶガレージの最奥にある専用ラボ。黒野曰く通称ワークショップ。此処のワークショップでは主にトリオン工学についての色々と独自な研究をボーダーにも報告せずにしていた。
黒野「⋯⋯⋯。」
数台のモニターとバーチャルキーボード、3Dホログラムを真上に展開するモニターテーブルなどの高性能の最先端設備に備えられたワークショップで黒野は新型オリジナルトリオン兵を開発をしていた。モニターテーブルから映される3Dホログラムは獣脚を持つリュコラノスやラゴスに比べてより人の姿に特化した外見をしたトリオン兵が映っていた。
黒野(追加外装イメージは襟を高くした白色の長い学ラン。)
既に開発した狼の特徴を持つリュコラノスにした追加外装イメージは短ラン・ボンタン型で兎の特徴を持つラゴスは赤いフードとマフラーにスカート型の追加外装を装備させている。追加外装には装備した各トリガーの性能を向上させる機能が付与されており只見た目を整えた訳じゃない。前回のインセクトタワーでの初の実戦投入にしたおかげで色々とリュコラノスとラゴスの改良点が見えてきた。両個体には種類と用途は違うも銃型の武器を持たせて火力と臨機応変に対応する為に飛行能力を増やす予定だ。
そんな時、モニターの片隅にワークショップの来客が来る知らせが届き視線を向ける黒野。
黒野は後ろを振り返り限られた者しか教えていない専用ラボのパスワードと普通の人間では開かれない認証式のパスワードの特殊金属とトリオンの複合素材の分厚く重々しい装甲隔壁が開かれるのを見る。此処まで来るまで約七つの装甲隔壁があり、その隔壁の数だけこのラボは『お化け屋敷』とボーダーに隠さないといけない最高機密でありセキュリティも他と比べ物にならない位に高く設定している。
やがて七つ目の閉鎖隔壁がゆっくり開きラボに姿を見せる男に黒野はラボにある冷蔵庫を開き冷えた麦茶を近くの片付いたセラミック製のテーブルに置いて来客に視線を向ける。
黒野「どうだった?剣持"達"がしていた森での戦闘訓練の様子は?」
刃「そんな野暮な事は聞くんじゃあねぇよ。黒野。」
まるで歌舞伎のような見栄を切りながら山吹色より濃い赤の蘇比色の外出用の着流しを纏いその上に鮮やかな桜が舞うように刺繍された煌びやかな印象を持つ黄色い羽織りを普通に羽織らず片肌脱ぎで羽織りを着込んだ派手な出で立ちをして特殊金属製の日傘代わりの鉄傘を軽々と持つ細身で有りながら筋骨隆々の長身の若侍、刃はお洒落用の赤い星型のサングラスを掛けた状態で黒野賢人の前に姿を見せて気さくでニンマリと人懐っこい笑みを見せて黒野の質問に心の底から嬉しそうに答える。
黒野(この反応、コイツにとってやっぱりボーダーの中で"剣持夢想"は特別なんだな。)
目の前の若侍の出自と境遇を知る黒野にとっては目の前の若侍は、忍者部署の面々も認める最強の実力を持つヒーローなのだが基本自由奔放、喧嘩や祭りや遊びが好きな子供を大人にしたような色男だが黒野同様に色々と特殊な出自の男でもある。通常は一つなのに複数のサイドエフェクトを持つ刃はモニターテーブルに映る黒野が開発したトリオン兵達に視線を向けてこう言う。
刃「そっちは相変わらずの愉快痛快なトリオン兵開発に勤しんでいるな。不良の狼に赤ずきんの兎、開発しているのは真面目な生徒会長?」
黒野「人の開発しているトリオン兵に変な渾名を付けるなよ。このお祭り伊達男。」
刃「どうせ不良を再現するなら外装に棘付きスパイクやら追加武装にチェーンとかナイフやらメイスやら付けたらどうだ?」
リュコラノスの外見を見て派手な祭りと喧嘩が好きな伊達男は黒野に意見を言う。
黒野「何時の時代の不良だよ。」
刃の意見に呆れた口調を返しながら開発作業を続ける黒野。
刃「どうやらトリオン兵の開発に色々と難航しているようだな。」
黒野「まぁ⋯⋯設計から開発も運用も基本1人だからな。」
刃「実地での試験もだろ。良くボーダーの連中にバレないようにしているよ。」
黒野「コイツらは外見が既存のトリオン兵と違い過ぎる。ヘタにコイツらでボーダーの連中を利用した戦闘データ集めをしていると上層部の連中が今以上に警戒する。タダでさえ神出鬼没の謎のトリオン兵使いとして扱われているのに⋯⋯」
刃「じゃあ、コイツら切り札代わりに温存しておくのか?」
黒野「必要以外は極力出さないだけだよ。切り札は使い時を見誤ると死に札に変わるからな。」
刃「それで今は何に悩んでいるんだ?」
モニターテーブルに浮かぶ3Dホログラムに映る開発中のトリオン兵を指でツンツンしながら刃は黒野に尋ねる。
黒野「⋯⋯⋯ボーダーのトリガーのスコーピオンを知っているだろう?」
刃「うむ。弧月を余裕で上回る何十人とバラバラにする際の大太刀や超刀に斬馬刀代わりに使っていたからな。」
黒野「スコーピオンは伸ばせば伸ばす程、刃の耐久力が減り全身を覆うと基本はガラス並みに脆くなる性質になる。」
刃「ボーダーの攻撃手トリガー使いの常識だな⋯⋯」
黒野「そのスコーピオンを固定武装にした白兵戦タイプのトリオン兵を開発しているのだが、やはり欠点は従来のスコーピオンではトリオン兵の運用に不向きと言う事だ。」
刃「攻撃重視で奇襲を基本とした軽量ブレードだからな。使い手のトリオン器官のコストで強度や耐久力が左右されるんだろ。何より発想力に柔軟性が無い人間が使う事を想定していないし。」
黒野「理想は今のスコーピオンよりずっと硬い強度や耐久力のあるスコーピオンだ。」
刃「スコーピオンでシールドの応用でもするつもりか?」
受け太刀で一番弱い耐久力の剣に強度や耐久力を求めるのは、攻撃だけではなく防御に応用する為だろう。シールドの応用を前提にするのならシールドになる機能があるレイガストが適しているのだろう。
黒野「ボーダーの開発室の連中のメインサーバーをハッキングしなくてもスコーピオンの改良版は出ていない。間違いなく改良点は幾つもある筈なのに⋯⋯」
刃「持ち手のあるエネルギーソードの方はどうなんだ?」
刃が言うエネルギーソードとは現在黒野が所有している試作型ウルトラーVとアメリカ支部に現在配備された穴杯無製のブレイブアーマーのガイストの白兵戦装備の事を指している。刃はスコーピオンが無理ならそういう装備をトリオン兵に装備させてみたらと提案する。
黒野「実体剣に電熱や電気エネルギーを付与させる技術ならある程度学んでいる。伊達に巨大ロボット兵器の開発や研究を合間を見て見学したり視察したり出資はしていない。エネルギーソードの構造も本物を分解して仕組みを理解してから組み戻した。」
海外で活躍しているガイストや盗んだウルトラーVのエネルギーソードは形状に差はある物の剣のグリップに内蔵されたビームエネルギーエンジンから熱エネルギーが放出し『お化け屋敷』のこの基地を始め各支部の防衛に使われている発生原理不明のバリアー発生装置の超小型版で放出する熱エネルギーを刃状に固定して使っている。ウルトラーVは固定されている物のガイストのエネルギーソードは孤月やレイガストと違い出力の調整も可能らしい。
刃「まっ、気長にするんだな⋯⋯」
そう言うと刃は冷えた麦茶が入ったペットボトルを片手に持ちテーブルの上に行儀悪く座り込み指でキャップ口を一瞬で切り裂き一気飲みする。
黒野「⋯⋯簡単に言ってくれるな。何か視えたのか?」
刃「まぁね⋯⋯ヒントは言わないけど、アンタはしっかりとソイツを完成させるよ。」
刃はそうモニターテーブルに映るトリオン兵を見ながら黒野に言う。
その刃の脳裏には森で目撃した皇虎に対してエナジーセイバーを振るい剣戟を繰り広げる春日炎太郎の姿があった。スコーピオンに似て異なる特殊なエネルギーを剣のように形成した様子を思い出す。剣持夢想の仲間が言っていたエナジーセイバーと言う能力⋯⋯
刃(こりゃあ、近々派手な戦いが起こりそうな予感だ。)
そう刃は独り嬉しそうに笑みを浮かべるのだ。
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人工衛星の原因不明の事故と剣持達の厳し過ぎる稽古から数日が経過した。
人工衛星の事故海面現場付近に赤と白のセスナ機が近付いてくる。遊覧飛行をしている様子だ。
立花「アレが例の事故海面です。近くまで見ますか?」
セスナ機を操縦する青年⋯立花ナオキは後部座席に座る女性に声を掛ける。
江戸川「あぁ。人工衛星謎の事故ね?」
立花「はい。其れにしても良い海の眺めでしょう?」
江戸川「本当ねぇ〜こうして見ると平和で1週間前にあんな騒ぎがあったなんて信じらんないわ。」
立花「伴野社長が言うには⋯⋯あの岬の沖に突っ込んだらしいですよ。何かのネタになりますか?」
江戸川「フリージャーナリストとしては確かに気になるネタだけど今はフリーカメラマンとしてこの美しい海の景色を撮る事に専念するわ。」
立花「へへっ。美しき海は何の傷跡も残さずその上を俺達は素通りして⋯⋯カメラマンは新しい写真を撮ると。」
ナオキが操縦するセスナ機⋯ジャンの窓から海の風景写真を自前のカメラで撮る女性⋯⋯江戸川由利子は笑みを浮かべながらも、
内心は人工衛星の原因不明の事故に既視感を覚えていた。ジャーナリストとして調べた限り墜落した人工衛星その物には何の問題もなくスペースデブリや他の人工衛星と衝突した訳でもない。しかし気になる事は墜落した人工衛星の燃料残量はゼロだったと言う事で⋯⋯警察は人工衛星は燃料切れで墜落したと考えているが人工衛星の開発し運用した人達は燃料切れになるのはあり得ない発表している。
江戸川(そういえば⋯⋯20年前の"あの出来事"も土星ロケットの謎の墜落事故現場近くを淳ちゃんが操縦するセスナ機で一回りしたのよね。セスナ機の窓から赤い風船が見えて⋯⋯)
由利子はカメラで写真を撮りながら波打ち際の岩礁に視線を向けるも⋯⋯其処には当然だが誰の姿もない。しかし、1週間前の人工衛星の原因不明の事故に何故だか胸騒ぎを覚えてしまう由利子であった。
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東京
空からの東京の街並みに視点が移されて次々に東京の有名な建物を次々と視点を変えてにして最後に昆虫怪獣に破壊されて再建設中の東京タワーや市街地のビル群の工事現場の様子を移り
ナレーション【大都会 東京⋯⋯日本の首都にして立法⋯行政⋯司法の中枢機能を始め外国からの大使館又は公使館が数多く置かれた場所であり⋯金融機関や各大手企業が集中し、新聞、放送、出版と言う情報文化面、大学・研究機関などの教育面・学術面においても日本の中枢をなし航空路、鉄道網、交通網でも日本の中心⋯⋯だからこそ⋯⋯情報は勿論、人や電力に紙を始め様々な種類のエネルギーが集まり日本各地又は世界各国に流れていく場所であり日々莫大なエネルギーが生まれては同じように消費されていく。】
視点は東京の街を行き交う様々な種類の人々、交通道路に連なる車、駅から発車する電車、空港から空へ離陸する飛行機、とあるオフィスでPCを操作する会社員達の姿、国会議事堂で政治について話し合う国会議員達、大学で自分の大学研究室で研究に集中する教授達の姿もある。
そんな大都会東京上空を飛行するのは『お化け屋敷』が保有する戦闘機ジェットホバー9。アタックシューターを始めとした新しい戦闘機達にこの頃、活躍の場を奪われて怪獣退治から主要都市周辺のパトロールが主な仕事になって空を飛行していた。
アラシ「此方、アラシ。現在東京の新宿上空⋯⋯異常無し⋯⋯にしても平和だな〜。あんな昆虫怪獣軍団の被害にあったと言うのに⋯⋯」
レーダーや周辺に異常が無いか確認しつつ万能ヘルメットに内蔵された通信機を起動してパトロールの定時報告をするアラシ。
イデ《此方、イデ。東京は日本の行政や経済の中心だからね。瓦礫のままにする訳には政治の人達も建設会社もいかないんだろ。》
アラシ「怪獣保険を持つ保険会社や建設会社にとっては正に稼ぎ時なのか⋯⋯成る程な⋯⋯黒野の奴も黒野重工とか黒野建設とか所有しているから怪獣の被害で儲かっている訳か。」
イデ《お金は幾らあっても困らないだろう⋯⋯僕らが使う装備や各兵器の開発資金や学会に追放された同然のあんな変わった博士達の面倒をみているんだから。彼ら彼女らの研究費⋯⋯絶対に凄いと思うよ。》
イデの呆れた声を聞いてアラシは自然と納得してしまう。悪の組織の怪人や兵器を開発した科学者すら世界平和の為に雇用しているのだ。絶対に出費と収入が凄い⋯⋯いや、その前にどうやって黒野はそんな科学者達を見つけたのかが素直に気になるも
アラシ「確かにな。お金は大切だ。使い所さえ間違わなければ良いだけなら黒野はお金の扱いが割りと上手いのかもな⋯」
黒野のやり方で皆が救われているのは確かだと思う。
ホシノ《雑談は程々にしてパトロールも忘れるなよ。アラシ。》
イデからホシノチーフに通信が代わりアラシは注意される。
アラシ「あっ、すいません。チーフ。」
アラシが操縦するジェットホバー9は東京上空のパトロールを続ける。
そんな東京の地下下水道では⋯⋯とある集団が汚れる事も構わずに移動していた。
???の宇宙人「あっ、レーザーネット型クレイモア地雷マーク15見つけたでやんすよ。サイクリードの旦那。」
モスグリーン色の顔出し全身タイツ型宇宙服に水色の腰ベルトに防水グローブとブーツを装備した大きな目玉が特徴の宇宙人が母星の光線発射機能ペンライトを下水道内部を光らせて捜索物を照らす。大目玉が特徴の宇宙人の後方からメキシコのポンチョを纏いソンブレロを被った宇宙人が姿を見せる。
【コーホー。コーホー。】
黒いマスクからくぐもった呼吸音を発しながら宇宙人は地雷を瞳なき白い目で見詰めてガントレットタイプのデバイスを操作して赤い網目状に光るレーザーネット型クレイモア地雷の電源を切り続いて磁力機能を切り無力化させた地雷を回収するサイクリード達。
遊撃隊員1「マーク15回収完了。」
サイクリード「よし。大目玉。そのまま捜索を続けろ。」
大目玉の宇宙人「全く、サイクリードの旦那は人使いが荒いでやんす。こんな大きな目玉をしておりやすが、あっしの視力が0.1なのを知っている癖に⋯⋯」
サイクリード「誰が下水道をそのままの大目玉の肉眼で探せと言った。用意させたバイザータイプの専用カメラで捜索しろと言ったんだよ。」
大目玉の宇宙人「⋯⋯忘れていたでやんす。」
そう言うと用意したヘルメットバイザーカメラを目線に合わせ下ろしてカメラのスコープ機能を起動させる。
大目玉の宇宙人「良く見えるでやんす。」
サイクリード「東京23区の下水道を囲むようにレーザーネット型の地雷があるんだ。どっかの地球人達に研究用に回収されるより早く回収しないな。」
大目玉の宇宙人「にしてもばら撒き過ぎやんすよ。旦那。」
サイクリード「分かっているから手を動かせ。俺が孤軍奮闘している間にアイドルのライブを見ていた癖に。」
大目玉の宇宙人「聞こえるでやんすよ。旦那。」
サイクリード「聞こえるように言ったんだよ。」
この大目玉の宇宙人はディクトル星の出身でも無ければ、サイクリードが率いる瞬殺部隊の一員ではない。サイクリードとは種族間を超えたちょっとした知り合いで同じ地球のアイドルを追っかけをする宇宙人仲間だ。残念なのは為になる地球を含めた様々な星の雑学知識はあるのに身体能力は人間より少しある程度しかない事だ。自衛能力の無い宇宙人の為に他の危険な宇宙人同士の諍いに巻き込まれたくない為に、アイドルの追っかけ仲間の俺に人道的な保護を申し出てきた。知り合いが知らん所で死ぬのは寝覚めが悪い為にヤバい仕事内容じゃない仕事の手伝いを条件に協力関係を気付いている。
彼の地球での様々な知識を教えてくれたお陰で部隊メンバー全員がヘマする事なく地球で活動出来ているのもそのお陰だ。部外者だから遊撃部隊の作戦参謀の自分にも文句やらを言われても部隊の面々は大目玉の宇宙人を闇討ちも私的な殺害も暴力も嫌がらせもしない。
何せ今回のレーザーネット型クレイモア地雷の回収作業は、本来俺1人で部隊の皆に報告せずに勝手にした行動の尻拭いをしているから大目玉の宇宙人を除いても推しのアイドルを見る時間を減らされた為に不満は大小様々あるのだ。
サイクリード「回収作業も既に8割終了している。残りは後2割だ。とっとと今日中に回収作業を終わらせよう。」
遊撃隊員2「了解!?」
昆虫怪獣災害が収まり生き残りのプレイター達を片付けながら作業して今日までそれなりの日数が経過した。東京23区の下水道は広い為に1人で回収作業するには時間が掛かる為に部隊の面々を集めて人海戦術を使って始めた回収作業の速度は随分と増した。
大目玉の宇宙人「そう言えば、旦那は故郷の星の仕事は良いんでやんすか?」
サイクリード「否、そろそろ長期休暇も終わるからその前に故郷の星にいる本隊の隊長達の元に帰還する必要がある。」
大目玉の宇宙人「そうでやんす?」
サイクリード「あぁ、ディクトル星では俺達がやるべき遊撃隊の作戦任務は沢山ある筈だ。」
遊撃部隊員3「そうですね参謀!」
サイクリード(星に帰る前にレッドマンの奴に文句の一言でも伝えておくか?)
今考えたら、東京の地下下水道で宇宙ビースト達と共に戦ったあの小型中型の昆虫達、本来はゾークロン細菌怪獣達を倒す任務を持つ傭兵のレッドマンが相手する筈だったのに、奴は大型昆虫とデカいサイボーグチンパンジーだけ相手して倒した直後どっかにワープしていった。
サイクリード(思い出したら、ちょっとムカついてきた。文句と合わせて襲撃でもしようか⋯⋯)
大目玉の宇宙人「旦那、クレイモア地雷マーク16を発見でやんす。」
遊撃隊員3「参謀。電源の切った後の無力化をお願いします。」
サイクリード(⋯⋯⋯否、襲撃は止めよう⋯⋯宇宙人同士下らない理由で争っても仕方がない⋯⋯だがせめて文句は言っておこう。)
何か下水道の昆虫達を退治出来ない理由があったのかも知れない。
大目玉の宇宙人「旦那?サイクリードの旦那?」
サイクリード「⋯⋯今、行く。」
思考を切り替えサイクリードは回収作業を終えたら一度、レッドマンがいる三門市へ向かおうと考える。
サイクリード(このご時世、いつ今生の別れになるかもしれないから⋯⋯仲良しこよしじゃないが、あんな無愛想な奴と喧嘩別れなんて俺は御免だ。)
『似合わない洒落た物等被りやがって⋯⋯』
観覧車の中で再会した時、アイツは⋯⋯ベムは俺にそう言った。"俺の知っている赤い通り魔のレッドマンは服装や容姿を気にする宇宙人"ではなかった。効率的な武器や装備に興味を持つ事はあれど人が見る見栄えを目的とした服装には反応も興味も持たない人種だった⋯⋯
『⋯⋯この惑星の酸素は、お前にとっては有毒のようだな⋯⋯』
淡々と機械みたいに無表情で無愛想で常に相手をどう仕留めるや苦しめるといった戦いや殺しの事ばかり考えて⋯⋯他者の事を心配するような奴ではなかった⋯
『宇宙アイドルの追っかけはどうした?親衛隊隊長さん。』
⋯世間話として熱心に語るも興味も無い宇宙アイドルの容姿を覚えてくれて俺が振った話に合わせてくれた。
『相手の男性は素敵の人だったんだな⋯⋯』
アイツの口からそんな言葉が俺の記憶の中で酷く印象に残っている。俺の知っている傭兵は、俺の想像以上に地球人との交流で"何か"が変わったらしい。それが何なのか。俺にはまだ分からない⋯⋯だが、その"何か"が酷く気になるのだ。
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三門市 とある日本家屋にて
???「おや?ユカリちゃん。こんにちは。」
自宅の縁側で老眼鏡を掛けて趣味の読書をしていると近くで知り合いのみかん農家の子供の姿に気付き挨拶する高齢者。
帯島「こんにちはッス!!⋯⋯あっ、こんにちは。」
気合の籠った元気の良い声で挨拶を返すも途中で恥ずかしくなったのか普通に挨拶を返していく帯島ユカリ。
縁側にいるパット見て何処にでもいる優しそうな高齢者はユカリの祖父のお年寄り友達で昔は東京で胞子についてを研究する大学教授だったらしい。
???「今日もボーダーに行くのかい?」
帯島「はいッス!?自分も弓場さん達みたいに家族や友達や大切な人の皆を守れるよう訓練を頑張りたいんです!!」
???「そうかね。でも親御さんや友達達に余りご心配を掛けないように⋯⋯気を付けて。」
帯島「はいッス!気を付けますッス!?」
ご近所さんと軽い挨拶を交わしたユカリはその家の横を通り過ぎる。
三門市のカフェブラックスター2号店の店内では
母親「美味しかったです。」
女の子「お姉ちゃんまたね!」
野島「ありがとうございました!?またのお越しを!」
何処で貰ってきたのか黄色い風船を片手に持った女の子が母親と共に店を後にする母娘の光景を意味もなく見ていた剣持。
田端「ネタが無い!!」
唐突に新聞部の部長田端直人はそう発言しだした。
「⋯⋯またですか?」
新メニューのしゅわしゅわコーヒーを無表情で視線を目の前に移し飲みながら直人の言葉に返事をする剣持。
テーブル席に集まる剣持夢想と新聞部の三人。部員でもないのにまた関わっている剣持も剣持なんだが⋯後からお店に来た新聞部の人達と三門市を騒がせた吸血鬼事件と連続バラバラ殺人事件の事で色々と話していたらバイトの野島万里子さんに相席に誘導されてテーブル席で雑談改め新聞部の恒例のネタ探しに振り回されてしまった。
吉井「そうでしょうか?隠岐君と烏丸君の協力で三門市にあるネコ喫茶の紹介記事は学年問わず女子達に大好評でしたよ。」
(隠岐先輩達。そんな事していたんだ⋯⋯)
井上「確かに⋯⋯隠岐君。猫を近くで撮る時、色々と俺達も知らない猫の接し方を教えてくれたな。」
田端「卒業した先輩から教わった廃部を免れる為にした奥の手の一つだ。顔の良い生徒に協力して貰い地域の何気ないお店の紹介をする⋯⋯使ってしまった。そして次のネタが殆ど思い浮かばない!?」
吉井「また東京に行って何かネタでも見つけますか?」
井上「ネタって何のネタなんだ?東京で発生した昆虫怪獣災害の復興の様子とかか?」
田端「そうだな〜〜今も東京の川とかにお化けカマキリの死骸があるからネタになるかならないかなら⋯⋯なるだろうな⋯⋯」
直人は一平の意見を聞いて考え込む。
吉井「皆で行きますか?」
「俺はパスさせて貰うよ。前に友達と東京で映画を観に行ったらお化けカマキリ達にモンスターパニック映画並みに追い掛けられたから。」
新聞部達の皆は嫌いでは無いが、自分が東京に行くと何らかのトラブルに巻き込まれると考えた剣持は東京への外出を事前に拒否する。其れに自分達が動く用事でも無い限り極力は三門市に待機しないと知り合い達が心配になるのだ。
(前回、空の軍神の刺客と対峙して何とか相手の弱点を突いて勝てた。あの弱点が無かったら負けていたのは恐らく自分だろう⋯⋯)
つい最近、持久戦に持ち込んでドラキュラスに辛勝した経験を思い出しながら剣持はしゅわしゅわコーヒーを飲む。
井上「剣持はノリが悪いなぁ〜」
「井上君もお化けカマキリ達に追い掛けられたら俺の気持ちが分かるよ。⋯⋯本当にシャレにならなかったんだから⋯⋯」
(そうでなくても数日前レッドバットに高い上空から国近先輩達と落とされて紐無しバンジージャンプして怖い思いをしたのだから⋯⋯)
もしあの時、イコさんとボンドさんが助けてくれなかったら俺以外は真っ赤な染みになっていたよ⋯⋯⋯確実にトラウマになるな。なる自信がある⋯⋯
真琴「お待たせ致しました。ご注文のオムライスでございます。」
「あっ、俺です。」
片手を上げて剣持の目の前に注文のオムライスが置かれる。
真琴「どうぞ。」
「ありがとうございます。」
ホールのバイトをする真琴先輩が離れてから剣持はしゅわしゅわコーヒーを飲み終えて空っぽになった容器を片手に微妙な表情を見せる。
(想像したよりも⋯⋯微妙な味だな⋯⋯しゅわしゅわコーヒー。)
容器から目を離してオムライスを食べる剣持。そんな剣持を他所に新聞部の人達は学校に載せる新聞のネタについて語り合う。
井上「あぁ〜。何処に面白いネタでも落ちていないかな〜」
田端「そんなネタが落ちているならとっくに三門市の新聞社が見つけているよ。」
井上「そうなんだよな〜。」
根を詰めている新聞部を見兼ねて剣持は言う。
「そんなに東京に行きたいのなら本当に行ったらどうですか?」
剣持の何気ない言葉を聞いて新聞部の三人は顔を見合わせて
田端「行くか?東京。」
吉井「行きましょう。東京。」
井上「行くぜ!東京!?」
田端「じゃあ、剣持。俺達は東京に行ってくるから!?」
「どうぞ。ご自由に⋯」
意を決したように三人は言い珈琲を飲み終えて三人はレジに行きお会計を済ませる。
野島「ありがとうございました!?またのお越しを!」
(嵐のような行動力だな⋯⋯)
(決断はどんなに遅くとも行動は神速になれだね⋯⋯)
ベムは彼らの行動力の高さに呆れて夢想は素直に感心しながら
(俺達もコレ食べ終えたら家に帰って勉強するぞ。)
(分かってるよ。)
今日の予定を思い出しながら剣持夢想はオムライスを食べるのだった⋯⋯
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剣持が自分の自由時間を過ごす同じ頃⋯⋯
鏡拓也は自宅で普通の部屋に比べて狭い部屋にある年季が入った机に向き合いながら節々の痛みに顔を歪ませていた。
鏡「ぐっ!」
鏡(身体のあちこち痛い⋯⋯成川先輩。本当に加減したのかな〜)
1週間前ギアナ高地で宙に打ち上げられた後本当に成川先輩相手に徒手空拳で頑張って挑み続けたが、素の身体能力と習得した格闘技術と対人戦闘経験の差で普通に返り討ちされた。例えるなら最新の戦艦が拳銃は愚かエアガンで沈没させられるレベルである⋯⋯この場合⋯最新戦艦が脆いではなく撃たれたエアガンの方がえげつないと考えた方が良い。
鏡(あれが宇宙戦争で宇宙怪獣達や宇宙人達を蹴散らしているレッドマンの先輩の実力⋯⋯普通に化け物揃いだわ⋯)
ギアナ高地での手合わせを思い出しながら拓也は面倒くさい気持ちを隠さずに六頴館の教科書に目を通しながら自習ノートに向き合う。
凄く不純な動機で進学校の六頴館高等学校に拓也は入学したが、授業は個人的に面白くない物の⋯⋯入学したからにはしっかりと学生の本分の勉強はしようと努力する。やれサボりだの遅刻だの早退だの駄目駄目な所を言われているが⋯⋯これらの理由もガイラットの危険な計画を阻止する為に動いていたり、複数の怪人相手にヘリオン所属のヒーロー達に加勢する為だから何方かと言えばボーダーの人達とそんなに違いないんだけどな〜〜
鏡(まぁ、六頴館の真面目過ぎる教師達にそんな事情を話す訳にはいかないな〜〜人生って⋯⋯本当にままならないなぁ〜)
それでも⋯⋯選んだ高校は動機が何であれ俺を高校へ入学させてくれた義父さんの為にも六頴館はしっかりと卒業しよう。)
拓也は面倒くさがりながらも自習勉を1人黙々と続ける。
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剣持と別れた新聞部の面々は三門市から電車を幾つも乗り換えをして東京に到着する。
三人は駅内の店に興味を持ちながらも本来の目的を忘れずに駅を出て行き交う人々の多さにビックリする。
田端「やっぱり都会の中の都会だから人が沢山いるな。」
井上「本当だな〜」
吉井「さて田端部長。一平。どういうネタを探す?」
田端「そうだな〜〜やっぱり怪獣災害の復興の様子とかかな?」
井上「直人にしては無難な物を選んでいるな。」
田端「無難な物の何がいけない。取り敢えず復興現場に行って見ようぜ。」
新聞部達三人は東京観光ではない物のネタを求めて東京タワー周辺の市街地の復興現場に向かう。
東京都 神楽坂のにあるレストランバー「ベム」
レストランの扉を開くとドアベルの音が店内にカランコロンと小さく鳴り響きレストランの店主はドアの方に視線を向ける。
??「いらっしゃいませ!?あっ!先輩!」
現れたお客の顔を見て笑顔を見せる。
???「よっ!一平。」
店主の名は戸川一平。一平が先輩と呼んだのは万城目淳。
二人は怪獣黎明期に起きた数々のアンバランスゾーンに何故か巻き込まれては此処にいない江戸川由利子と共に力を合わせて怪現象や怪獣騒ぎを解決した歳の差を超えた親友である。
一平と淳はかつては同じ航空会社 星川航空に勤めていたが、一平は奥さんと共にレストランを開店する為に退社して淳も定年退職した後自分が経験したパイロット時代に経験した怪事件を題材にしたノンフィクション作品を執筆し発表。SF作家として現在も活動している。
戸川「にしても先輩。どうして此処に?」
万城目「ちょっと近くの出版社に用が会ってな。その途中に立ち寄りたかったんだよ。それよりも注文良いか?」
空いている席に座りメニュー表を一平に見せて
戸川「勿論!?」
一平は陽気な笑顔で答えて動くのだった。
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東京 昆虫怪獣災害復興現場
重機が働きアリの如く瓦礫を持ち上げて重ダンプカーに瓦礫を乗せて指定された集積場に運ばれて、廃棄物は仮設の焼却場に運ばれて燃やされるらしい。
市街地に目に見えた大量の昆虫怪獣の死骸は大型中型小型問わずに復興作業の邪魔になる為、腐肉食動物のように鴉、蛆虫、ジャッカル、禿鷹の各グループが解体清掃していたおかげで復興建設現場に昆虫怪獣の死骸の姿は無かった。
その復興現場の光景を井上一平は持参したカメラで次々と撮り、田端達は復興現場の光景に静かに圧巻を受けていた。
吉井「部長⋯⋯沢山の人達が亡くなったんですよね。」
田端「怪我人達もな⋯⋯前にボーダーの人達にも昆虫怪獣災害の現場で体験した事について色々と取材しただろ。」
吉井「はい⋯⋯壊れた建物やビルの数だけその場所を仕事場にしている人達も被害にあったんですよね。」
田端「そうだな⋯⋯何時になったら世界から怪獣災害が終わるんだろう⋯⋯」
誰かに答えを貰えるような簡単な問いではないが、例え答えが無くてもこの光景を見てしまえば平和はとても尊い物だがずっと遠い物と感じてしまう⋯⋯田端達であった。
井上「大体、新聞に載せても問題ない写真は撮ったぜ。どうする?何処で腐敗している昆虫怪獣の死骸でも探すか?」
一平の提案を聞いて暫し直人は復興現場で働く建設会社の人達の後ろ姿を眺めながら返事を伝える。
田端「⋯⋯否、怪獣の死骸の写真は良いや。」
井上「そうだな。そんな写真なくても伝えられる事はあるからな。せっかくだし大都会東京をぶらりと観光するか?」
吉井「もう〜一平。東京は怪獣災害からまだ殆ど復興が終わっていないのよ。」
井上「東京が瓦礫の山や更地になっている訳じゃないんだから観光しても問題無いだろう。」
田端「それはそうなんだけど⋯⋯う〜〜ん。」
行動するままに東京に来てしまった為に計画予定とか殆ど立ててなかったのが災いし暫し頭を悩ませる田端直人だった。
東京 神楽坂のレストランバー「ベム」。
万城目「一平。この料理とても美味しいよ。」
注文した料理を食べて淳は嬉しそうに言うのだ。
戸川「そりゃあ、先輩。今はこの開いたレストランで家族を食わせているような物だから美味しくて当然ですよ!」
万城目「すっかり立派な料理人だな。」
戸川「先輩。褒めても何も出ませんよ。」
万城目「にしても話が変わるが、一平。例の昆虫怪獣災害があった日はどうしてたんだ?」
戸川「その日なら怪獣騒ぎの発生を知って急いで店を閉めて貴重品を持って家族全員で決められた避難場所に急いで避難しましたよ。寧ろ先輩の方はどうだったんですか?」
なまじ若い頃に万城目達と怪獣騒ぎに良く巻き込まれた人の為に見た目に似合わず危機に結構敏感になっていた。
万城目「俺が住んでいた方はあんまり被害は無かったよ。でも安全の為に警官隊の誘導で対怪獣災害用地下シェルターに避難して結構長い時間シェルター内に居た気がするな。」
戸川「まぁ、僕らが若い頃には見掛けない変わったデザインの戦闘機やら怪獣並みに大きい赤い巨人やらがいる時代ですもんね。」
万城目「その赤い巨人。世間ではレッドマンって呼ばれているらしいぞ。」
戸川「東京には色々な巨人が現れるから名称を覚えるのも大変ですよ。」
万城目「確かにな⋯⋯」
銀の巨人(ミラーマン)を始め赤と銀の巨人(ジャンボーグA又はジャンボーグ9)と色々な外見の巨人がこれまで東京に現れては怪獣と取っ組み合う光景を遠くから見た事ある淳は一平の気持ちを理解し同意する。
お客「すいません〜。」
戸川「はい。ただいま!」
一平は他のお客さんに呼ばれて淳から離れていき一平の頑張っている様子を見ながら淳は注文した料理を食べるのであった。
そんな万城目達を他所に行く目的地もなくブラブラと東京を歩く新聞部の面々。三門市には無い東京ならではの景色を眺めながら歩いていると土地勘も無い為に彼らは大利根航空の近くまで来てしまう。
田端「一平、此処何処だ?」
井上「俺だって知らないよ。」周囲の風景や景色を何気なく写真で撮りながら一平は答える。
吉井「妙な所に来ちゃったわね⋯⋯」
その時、セスナ機の飛行音が聞こえてその音の大きさに三人はビックリする。
田端「ビックリした〜〜結構近いぞ。」
吉井「直人。一平。彼処にセスナ機が飛んでいるわ。」
井上「え?何処何処?」
プロペラ音がした方向に一同は視線を向ける。
特徴的なプロペラ音と共に赤と白のセスナ機が滑走路に着陸する光景が其処にあった。
井上「赤と白の格好良い組み合わせのセスナ機だな⋯⋯」
田端「本当だな⋯⋯」
一平はセスナ機を見て感想を言いながらカメラで写真を撮る。
吉井「あら?」
田端「どうした?ゆか?」
吉井「二人ともアレを見て?。」
二人がセスナ機そのものに興味を向けている中、ゆかはセスナ機の中に居るパイロットの方を見ていたら、後部に乗っていたある人物がセスナ機から降りてきたのに気付く。
吉井「あの人って前に剣持君達と製油所に一緒に見学にしてくれた江戸川さんじゃないかしら。」
田端「あっ、本当だ。」
江戸川由利子が後部のドアから出てきたの目撃する新聞部の三人。三人の視線に気付いたのか?由利子の方も直人達に気付く。
江戸川「皆、久しぶり。」
井上「お久しぶりです。」
大利根航空が保有する滑走路の横に並べられた2台のバスの大利根航空事務所の前に集まる新聞部の面々と由利子。
吉井「江戸川さんは遊覧飛行ですか?」
江戸川「まぁね。皆は東京観光?」
田端「いいえ、部活動の時間外活動です。」
井上「学校の新聞のネタ探しに色々と見て回っています!!」
吉井「⋯⋯そんなに威張って言う事じゃないでしょ。」
間髪入れずに由利子の質問を威張った子供みたいに答えた二人に呆れるゆか。
江戸川「皆、仲が良いのね。」
田端「小学生からの付き合いだからな。」
直人と一平は互いの肩に手を組みながら笑みを浮かべて言う。
由利子は心做しか二人を見ていると万城目達の事を思い出して暇を見つけては戸川一平が経営するレストランに行って見ようと考え始めていると⋯⋯
立花「うわっ!何だ!この変な生き物!?」
「「!?」」
セスナ機の整備をしていたパイロット兼整備士のナオキの突然の大きな声が聞こえてきて新聞部の三人と由利子達はビックリして視線をセスナ機の方へ向ける。
伴野「どうした!ナオキ!?」
ナオキの大きな声に反応して事務所のバスの扉を内側から開けて姿を見せるのは、立花ナオキの上司である伴野大作。大利根航空の社長でかつては『お化け屋敷』に協力するPATと言う地球防衛組織に従事した経験がある人物らしい。
立花「伴野社長。コイツが俺のジャンのラジエーターに忍び込んでいたんです。」
パイロット用のスーツから長袖つなぎの整備服を着たナオキの方に慌てて駆け寄ってきた伴野社長にセスナ機のラジエーターに忍び込んでいた生き物を見せて伴野社長もビックリした表情になる。
伴野「何だ、こりゃあ〜」
田端「何だか、面白い特ダネの匂いがするぞ。」
江戸川「⋯⋯。」
慌てる様子の二人を見て由利子を含めた四人は二人が言う変な生き物に興味が生まれその視線を向ける。
【今思えば、大利根航空の滑走路で俺達が見た変な謎の生き物⋯⋯これが後の怪事件の始まりだった⋯⋯】
三門市立第一高等学校 新聞部部長 田端直人の独自より
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
田端「ナオキさん。本当にこの変な生き物がセスナの中にいたんですか?」
立花「おう。ジャンのラジエーターの隙間でプカプカ隠れてたんだよ。」
大利根航空の事務所内の簡素な応接テーブルの上に空を浮遊する飛行船に似た形状をする風船のようにその場でプカプカと浮いては沈む奇妙な生物を見ながら発見した状況を聞く直人。その直人は全く見たことのない未知の生物に対してのワクワクな好奇心に満たされていた。
新聞部の部員、井上一平は目の前の生き物に向けてゆっくりとカメラを構えて。
吉井「気を付けてよ。一平。」
井上「わ、分かっているよ。」
江戸川「⋯⋯⋯。」
【パシャリ】
シャッター音と共に奇妙な生物の姿を角度や向きを変えながら何枚も写真を撮る由利子と一平。一同が浮遊生物から程々の距離を保った位置にいるのは、完全にどんな行動をするか分からないからである。
吉井「⋯⋯由利子さん。アレって生き物何ですか?」
ゆかは一平同様に無言で浮遊生物の写真を撮っていた由利子に尋ねる。
江戸川「確かに生き物のようね。」
立花「もしかして⋯⋯風船虫か?」
田端「風船虫?そんな虫がいるんですか?」
立花「えっ!⋯⋯どうなんですか?由利子さん?」
江戸川「⋯⋯さぁ〜」
由利子は何処かでやったような懐かしいやり取りに話を振られるも生物学者ではないから曖昧な返事を返すしかない。だが実際
由利子の脳裏にはコレとは違う似た生物の姿を過ぎらせていた。
江戸川(人工衛星の謎の事故、正体不明の謎の生物⋯⋯これじゃまるで⋯⋯)あの恐ろしい怪獣騒ぎを彷彿とさせる。
伴野「兎に角その風船虫だか気球虫だか何だかは知らないが、そんな気味が悪い奴を何時までも俺の大利根航空に置いとく訳にはイカン。ナオキ。とっととコイツを外に捨ててこい。」
未知の生物に対して気味が悪さを覚えた伴野大作は社員のナオキに生物を捨てるように言う。
立花「えっ!」
田端「待って下さい。捨てるくらいなら有名な生物学者に渡しても問題ないでしょう!?」
全く見たことない生物に好奇心を刺激された直人は伴野の提案に異議を唱える。
吉井「何処の大学に運ぶ気よ。」
井上「なら御殿山の科学センターに運ぶのはどうだ?」
東京の知り合いが殆どいない新聞部の一同。そんな中、一平は輸送先を提案する。
立花「御殿山科学センターって東京の品川区北品川にある建物の事か?」
何回かテレビやラジオで紹介された建物の存在を思い出すナオキと由利子。
井上「其処なら偉い学者が沢山いるしコイツを見せたら何か分かるかも知れないだろ。」
吉井「この中の誰が科学センターにこの生き物を運ぶのよ。」
田端「ゆか。そんなの俺達しかいないだろ?」
吉井「えっ!」
田端は事務所内にある空の厚紙の箱を見つけて両手に持ち当たり前に新聞部の自分達が輸送する事を告げる。
江戸川「⋯⋯私も付き添って良いかしら?」
江戸川(私の杞憂なら良いのだけど⋯⋯)
全く未知の生物への興味と言うよりも⋯⋯顔見知りの新聞部の三人を心配した由利子は彼らの付き添う事にする。
伴野「おい、ナオキ。」
立花「はい。社長。」
伴野「この子らを御殿山の科学センターに連れていってやれ。」
立花「はい!?⋯⋯⋯⋯⋯え?」
社長の言葉を聞き反射的に威勢良く返事を返す立花ナオキは少し時間を置いて内容を思い出して戸惑うナオキ。
伴野「江戸川さんもいるけどこの子達だけだと何かと危ないだろ。コレから良く分からない生物を運ぶんだからさ。科学センターまで連れていってくれたら今日はもう上がって良いからさ。」
立花「でも社長⋯⋯」
ナオキはプカプカ浮かぶ謎の生物と整備途中の愛機・ジャンを交互に見て悩む。社長の言う通りこの謎の生物を高校生の子供達に運ばせて万が一のことが起きないかも分からない。そう思うと今までの経験で面倒事の筈なのにこの子達が心配になってきた。
江戸川「私からもお願いします。立花さん。」
そして由利子もナオキに対してお願いをする。
田端「俺達からもお願いします!?」
井上、吉井「「お願いします!?」」
田端達もナオキに頭を下げて連れていってくれるようにお願いする。
立花「⋯⋯分かったよ。先ずはこの生物をその箱に入れよ。」
田端「はい!?」
四人の気持ちに根負けしたナオキはそう言うと、事務所の貴重品入れにしまってある愛車のキーを持ち出して
立花「じゃあ、社長。俺は車の準備をして来ます。」
ナオキは社長達に言い一度、事務所を後にする。
吉井「私達もナオキさんについていく?」
田端「その前に、コイツを運べるようにしないといけないだろ。」
近くにあった空の段ボールの箱を両手に持った直人はそぉーっとプカプカとする風船状の生物に接近する。
吉井「二人とも危なくない?」
井上「平気だって。引っ掻く爪も噛みつくような口があるようには見えないし。」
直人の行動を心配するゆかに楽観的に答える一平。
江戸川「でも蜂だって刺激されたら針を使って反撃する事があるから充分警戒して⋯⋯」
謎の浮遊生物「⋯⋯」
風船虫と呼ばれた生物はジリジリと迫ってくる直人達に身の危険を感じて黄色い身体の外側に左右に分かれた尻尾のように生えた先端が小さく膨らんだ赤銅色の触手を向ける。
吉井「止まって直人!?」
不安そうに生物の一つ一つの動きを見ていたゆかは、生物に接近する直人に何時もは出さない程の声を張り上げて止める。
田端「どうしたんだよ。ゆか。そんな大きな声を出して⋯⋯」
突然の大声に足を止めた直人、そして生物はゆかの大きな声にビックリして慌てた動きをして赤銅色の触手⋯⋯攻撃手から黄色い放電攻撃を直人とゆかの間の誰もいない場所に放つ。
井上、田端、伴野「へっ?」
机の置いてある手動式の鉛筆削りに放電攻撃が直撃し鉛筆削りは簡単に粉々に破壊されその一部始終を目撃した一同は、同時に互いの顔を見合わせて一瞬で真っ青な表情に変わり
田端「わぁっ!逃げろ逃げろ!?」
直人の悲鳴の叫びを合図に事務所にいた5人は慌てて事務所から急いで退避する。
事務所として使われるバスの出入り口から内部の様子を覗く一同。
井上「スゲェ、電撃を放つ虫なんて始めてみたぜ!?」
ワクワクな表情で事務所のバスの扉から生物を見て言う一平にゆかは怒る。
吉井「関心している場合!?どうするつもりよ!?」
田端「鉛筆削りを破壊するなんて凄い威力なんてもんじゃないぞ。」
江戸川(電撃を放つなんて⋯⋯やっぱり普通の生物じゃないのね。)
井上「どうするもこうするも関係無い。突撃だ!?行くぞ直人!?」
田端「応!?一平。マルモを確保しろ〜〜」
そうノリノリに言うと直人と一平は再び風船状の生物がいるバスに乗り込み確保しようする。
伴野「警察に連絡した方が良くないか?」
【ピカピカピカーー!!】
立花ナオキはふと視線を事務所のバスの方に向けると、バスの窓は放電の光で何回も明滅するのを確認し、
立花「うん?」
疑問が生まれるも取り敢えず生物を運ぶ為の車を事務所のバスの近くに回す。
立花「何か会ったんですか?」
何故か社長達が事務所のバスの出入り口に集まっているから質問するとバスの出入り口から箱を持った直人と一平が姿を見せて二人は社長達と顔を見合わせて
「「いいえ?特に何もなかったよ(わ)(ぜ)(ぞ)」」
とナオキに向けて答えるのだった。
吉井「随分特徴的な車ですね。」
立花「良く言われるよ。でも俺はこのジャンカーZを気にいってるんだ。」
吉井ゆかに車の外見の感想を軽く返すやり取りを終えてゆかと社長を除いた一同は車に搭乗する。
田端「どうしたんだ?ゆか。」
井上「置いていくぞ。」
吉井「ちょっと友達に電話の用事を思い出しわ。少し待ちなさいよ。」
皆から離れた所でゆかはスマホで剣持に連絡する。
三門市
志岐小夜子の自宅。
ネット通販で注文した塩昆布が入っていた段ボール箱を中身を移して小夜子は片付けていた。
志岐「ふぅ⋯⋯」
一つの段ボールを片付けを終え額の汗を片腕で拭きとり一仕事を終えたポーズをする。
志岐「⋯⋯⋯」
そのポーズをしたまま視線の先にあちこちにある段ボール箱の数々を見て
志岐「⋯⋯綺麗な部屋への道のりはまだまだ遠いな⋯⋯」
諦めの表情で現実逃避の言葉を独り呟く。
志岐「はぁ⋯⋯」
軽く溜息を吐いて自分の家の惨状に頭を悩ませる小夜子。
原因は元々籠城生活をしていた自分だ。那須隊の一員になってからは時々熊先輩と茜が私の安否確認に遊びに来てくれるけど改善する気はなかった。改善しようと考えたのは⋯⋯
志岐(たまに家事をして来てくれる剣持君に申し訳ないから⋯)
まだ注意の言葉は剣持君の口から告げられていない物のこのままネット通販で購入した品が入った段ボールまみれだと必ず
『ちょっと大掃除するか。』と言い私の自宅の大掃除を決行するだろう。流石にそれは情けない意味で避けたい。
志岐(取り敢えず私の中でいらない物といる物を分別していらない物はゴミとして片付けよう。⋯⋯⋯⋯どっちも沢山ありそう⋯)
志岐「うへぇ〜〜やっぱり剣持君に手伝って⋯⋯イヤイヤ⋯⋯人に頼らずたまには自分で掃除をしないといけないよね。」
自宅の部屋にある段ボール箱の数々を見て露骨に面倒くさい表情をしながら小夜子は剣持に応援を要請しようと考えるも自分の問題だからと思い直して動き出す。
同時刻 自宅の自室。
余計な音がしない静寂が包む部屋内で黙々と勉強しているとスマホの電話が突然鳴り出す。
「⋯⋯。」
ノートに書かれるシャーペンを持つ手の動きを止め意識と視線を充電中のスマホに向け。
「⋯⋯吉井さん?」
スマホ画面に映る珍しい相手から電話が来た為に応答する剣持。
「もしもし⋯」
吉井《もしもし⋯剣持君。突然ごめんなさいね。》
「いえ、大丈夫です。それよりもどうしたんですか?」
近くに見える数年前の人気映画のポスターや時計に視線を移しながら剣持は質問する。
吉井《実は私達、東京で新聞のネタ探し色々と移動している途中ある航空会社で遊覧飛行を終えた江戸川さんとばったり再会したの。》
「江戸川さんって⋯⋯江戸川由利子さんですか?」
剣持はクラプトンの時にお世話になったフリーカメラマンの女性の事を思い出す。
吉井《うん。でもその話は続きがあって⋯⋯》
電話から聞こえた吉井さんの不安そうな口調に剣持は無表情ながら疑問を覚える。
吉井《剣持君は、電撃を出す昆虫を知っている?》
「⋯⋯詳しく聞かせて下さい。」
吉井《江戸川さんが遊覧飛行に乗っていたセスナ機の中に黄色い妙な形をした生物がいたの。》
「黄色い妙な形の生物?⋯⋯どのように妙な形なんですか?何か似てそうな物で例えて下さい。」
吉井《似てそうな物⋯⋯そうね⋯⋯あっ!飛行船や梅干しの種の真後ろと真下に球根みたいに茶色い芽や根のような触手が出た形をしているわ。》
「飛行船や梅干しの種⋯⋯また随分と変わった形を例えましたね。」
教えられた形を脳内に漠然と外見をイメージするもピンとこない。飛行船や梅干しの種に近い⋯⋯横に長い生物なのか?真後ろと真下と限定している触手⋯⋯もしかして生物の尻尾?否それなら一箇所の方がまだ尻尾としての役割が出来ている筈⋯⋯尻尾じゃない⋯⋯ならやっぱり吉井さん言った通り触手なのか?
(⋯⋯また微生物の突然変異か何かなのか?⋯⋯さっぱり分からない。)クラプトンの姿を脳裏に掠める剣持。
吉井《私達はコレから御殿山の科学センターにその生物の調査をお願いしようと行くつもりなんです。》
「もしかして、その梅干しの種に似た形の生物を捕まえたんですか?」
吉井《直人と一平がね。でも明らかに普通の生物とは違う外見をしているから私、妙に気になって⋯⋯》
「それで僕に連絡をしたと。うん?待って下さい⋯⋯その生物は電撃を放ったんですか?」
外見が普通の生き物とは違うと言う点に疑問を深めるも、吉井さんはさっき電話で電撃を出す昆虫を知らないかと聞いてきた。内容から考えて"梅干し型生物"は電撃を出せると言う事だろう。
(俺が訪れた星々の幾つかでそう言う攻撃をする昆虫は知っているが⋯⋯)
吉井《そうなんです。遊覧飛行した航空会社の事務所の鉛筆削りを粉々に破壊する程なんです。明らかに普通の生物では無いですよね。》
「それは⋯⋯穏やかな話ではないですね。」
吉井《直人も一平も電撃を出す新種の昆虫を発見したって科学センターに運ぼうって危機感のない始末で⋯⋯私心配なんです。》
ゆかの視点から見て二人に危機感が無いというが、実際には二人もゆか同様に電撃を出す虫の外見や動きに気味が悪いとは感じているのだが、得体の知れない恐怖心よりも新聞の記事のネタになる興味や好奇心が勝っている。
「⋯⋯分かりました。俺も直ぐに東京に行きます。」
吉井さんの得体のしれない謎の生物の情報を聞いて剣持は直ぐに動こうと準備をするも。
吉井《あっ、そこまで大事にしなくても⋯⋯ただ、剣持君の知り合いの一の谷博士や黒野さん達に報告してくれるだけで嬉しいです⋯⋯》
吉井さんに慌てて止められる。
「⋯⋯分かりました。僕の方から博士達に伝えときます。くれぐれも安全と分かるまで警戒して下さい。」
吉井《はい。何かあったらまた電話しますね。》
「⋯⋯。」
(梅干しの種に似た生物か⋯⋯)
その言葉を最後に通話が終わり剣持は、先ず最初に東京方面に怪獣の気配は無いか怪獣探知能力に意識を集中させるも⋯⋯
(⋯⋯全然引っ掛からない。吉井さんが言っていた生物は怪獣では無いのか?)
怪獣特有の反応を捉えられない事に疑問が生まれるも、探知能力で分からないならと剣持は直ぐにスマホから連絡先の一の谷博士達に電話をすると同じ頃。
吉井ゆかも立花ナオキの車に搭乗し大利根航空会社を後にする。
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ジャンカーZ内
車体の中心部から正面にかけ左側が銀色、右側が赤色に塗装されたこれまた特徴的なツートンカラーの軽自動車ホンダ・Z360の立花ナオキが命名したジャンカーZで科学センターへ輸送される謎の黄色い風船状の生物。それを事務所にあった厚紙の箱に捕らえた箱は揺れる自動車の後部座席の中でゴソゴソと不気味に揺れていた。
井上「ゴソゴソしてやがる。気味が悪いや。ちょっと預かってくれよ。直人。」
田端「ヤダよ。一平が科学センターに運ぼうって提案したんだろ。」
井上「そんな事言ったってしょうがないだろ⋯⋯じゃあ、ゆかが預かってくれよ。」
吉井「嫌よ嫌よ。ヤダ!」
江戸川「其れにしても全く新しい生物だとすると偉い特ダネだわ。発見者の名前を取ってナオキ虫って命名する?」
立花「俺の名前が載るのは嬉しい提案だけど俺は辞退するよ。そうだ。君たちの名前を取って命名するのは?」
田端「そいつは良い。コイツの事はナオト虫と名付けよう。」
井上「えぇ~〜付ける名前ならイッペイ虫だろ。」
吉井「⋯⋯アンタ達ねぇ⋯⋯」
気味が悪いと言いながら互いに押し付け合っていざ命名出来ると言われたら自分の下の名前を正体不明の生物に付けようとする二人の手の平返しに呆れるゆか。ゆかは無意識だが箱の中にいる正体不明の生物を警戒していた。既存のどの生物とはまるで似てない外見で言い知れぬ不気味さを感じていたのだ。二人は新種の生物の発見の歴史的瞬間に立ち会えて楽観的な考えを持っているようだが、ゆかはこの生物はもしかして全く新種の怪獣なんではと考える。
そんな気持ちを抱えたジャンカーZは東京の交差点で信号が変わるのを待っていた。新聞部達の面々は今は横から来る歩行者達が横断歩道を歩き渡る様子を車の窓から見ていた。
信号の色が変わりナオキはいざ進もうと車のアクセルを踏む。
立花「ん?」
何時も反応が無い事に疑問を覚えたナオキは車の各メーターを見て燃料メーターに視線を移すと一瞬目を見開き、そのナオキに挙動に由利子は尋ねる。
江戸川「どうしたの?」
何時までも前に進まないからジャンカーZの後ろに並ぶ自動車達がクラクションを鳴らし始めてその数は時間が進む事に多くなる。
立花「嘘だろ⋯⋯車の燃料が空になった。」お手上げの動作をするナオキ。
新聞部「えっ!?」
吉井「どういう事?」
立花「俺だってさっぱり分からん。ちゃんと燃料は満タンにしたのに⋯⋯」
戸惑うナオキは車にトラブルが発生した為に取り敢えずロードサービスに連絡しようと考えていた。
その時、箱を両手で持っていた一平の左手に妙に生暖かい感触を覚え一平は自分の手に視線を向ける。
井上「ん?⋯うわぁ!!?」
厚紙の箱の蓋の隙間から黄色い風船状の生物の一部がどんどん湧き出る水のように姿を見せる事実に悲鳴を上げて箱ごと直人の方にぶん投げる。
田端「突然何だよ⋯いっぺヒィッ!!」
反射的に受け取った直人は一平の行動に注意をしながら、小箱から漏れた風船状の生物に気付き一平同様に悲鳴を上げる。
【科学センターへ輸送の途中、あまりに突然の出来事でした⋯⋯
俺と一平がその生物を厚紙の箱に最初に入れた時、箱の中は充分なスペースがあった。
でも俺が次にその生物を見た時、明らかに箱の中のスペース上回る程に大きく⋯⋯肥大化しその一部が厚紙の箱の蓋の隙間から漏れていました⋯⋯】
(三門市立第一高等学校 新聞部部長 田端直人の独白その2より)
井上「あっあっ、ああ!?」
投げ渡された直人は慌てて一平に投げ返し悲鳴を上げながら受けとった一平は慌ててパスするように箱を座席に置く。
立花「どうしたんだ!?」
後部座席から突然の悲鳴が上がりナオキと由利子は背後を振り返り段ボール箱から漏れでるように肥大化し始める謎の生物に気付く。
田端「ゆか、早く出て!?」
吉井「もうヤダー!?気持ち悪い〜〜」
立花「皆、早く車から降りるんだ!?」
座席近くのドアも開きナオキ達全員は慌てて車から出ようとする。
江戸川「⋯⋯。」
助手席側のドアから出る直前、箱から身体の一部を出そうとする生物の姿を由利子は持参したカメラで写真を一枚撮り
井上「江戸川さん。危ないですよ!?」
江戸川「⋯⋯。」
静かに謎の生物を見詰めつつ由利子は車外へ出る。
謎の生物は自身の周りで騒ぐ直人達に構わずに肥大化していく。
後ろの自動車の運転手「おい、何しているんだよ!?」
運転席から不機嫌そうな顔を出して車のクラクションを鳴らす。道路ではこのナオキの車内の異常事態を切っ掛けに必然的に交通の渋滞が発生しナオキの車が動かない事に少なくない野次馬も集まり始めて⋯⋯誰かが通報したのかパトカーも来る。
ナオキ達は異常な状況をどう対処したら良いのか分からずに車外の窓から肥大化する生物の様子を眺めるしか出来ない。
井上「気味悪いな。直人。何すかコレ?」
立花「どんどん大きくなっていくぞ。」
吉井「あっ、また膨らんでいく。」
江戸川「コレは近くの動力を吸収して成長するのよ。」
立花「そんな水を吸ったスポンジみたいな⋯⋯」
車外から膨らむ生物に対して戸惑う一同の中で由利子は確信するかのように答える。
吉井「どうしてそう思うんですか?」
江戸川「私はこの生物に似た生物を知っているの。」
新聞部、立花「「っ!?」」
由利子の口から出た言葉に驚愕な表情をする新聞部の三人とナオキ。
江戸川「20年前の東京で起きた風船怪獣バルンガの事件に出てきた怪獣バルンガと同じ特徴をこの生物は持っているの。」
吉井「バルンガ⋯⋯。」
江戸川「私の知っている生物と同じなら直ぐにこの生物は車いっぱいに膨らんで車ごと浮遊して車体を内側から破壊すると思うわ。」
立花「成る程⋯⋯⋯って!?それじゃ尚更俺のジャンカーZが危ないじゃんか!?」
由利子の知識を聞いて感心するも直ぐに最悪のイメージを想像し義姉に足りない分を出して貰い購入した自家用車のピンチにナオキは慌てる。ナオキにとって目の前のジャンカーZはタダの車ではないのだ。
??「君。君。」
慌てふためくナオキの肩を誰かがトントンと叩き
立花「後にしてくれ。今、俺の車の一大事なんだ。」
何気なく肩を叩いた相手の方に振り返るナオキ。
お巡りさん「これは君の車かね?」
立花「そうですけど。」
お巡りさん「免許証は?」
立花「あっ。」
どうもこの渋滞の原因解決に警察の交通課が出動したようでナオキは車の様子を心配しながら財布から自動車運転免許証を取り出し警察官に見せる。
警察官「君。こんな所に車を停めるなんて困るじゃないか。早く何とかしたまえ。」
ナオキは警察官に無理難題を言われて困った表情する。
立花(⋯⋯俺が原因じゃないのに⋯⋯⋯⋯否、今この渋滞状況はある意味俺も関わっているのか。)
軽く不貞腐れそうになるも警察官の言う通り事態を解決したいのに、自分の力だけで解決出来ない状況の為に途方に暮れているナオキ。
吉井「あら、車にカーテンが掛かっているわ。」
井上「部長。」
野次馬「何アレ?」
江戸川「カーテンじゃないわ。あの黄色い風船のお化けが車いっぱいに膨れたのよ。」
立花「チキショウ!?俺のジャンカーZを壊すなよ!?」
その時、膨らむ風船お化けの騒ぎの中でナオキの亡き兄から貰った形見の腕時計が人知れずに緑の光に小さく輝くと、ジャンカーZの天井部分のルーフが独りでに開閉し黄色い風船状の謎の生物はプクプクとジャンカーZから下から上に抜け出すように出ていく。
新聞部一同、立花ナオキ、江戸川由利子、そして騒ぎに集まった二人の警察官と野次馬達は悠々自適に空へ浮遊していく謎の黄色い風船状の生物を見上げるしか出来ず、生物はそのまま何処かへ移動して行くであった。
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その頃 剣持は一の谷博士に吉井さんに教えて貰った謎の生物の事で電話を掛けていた。
博士は現在、三門市ではなく東京郊外の一の谷研究所に戻っており黒野の館に向かっても不在なのだ。
一の谷《おおう。剣持君。どうしたのかね?》
「お忙しい中、お時間を作ってくれてありがとうございます。」
一の谷《心配せずとも此方は予想より早くある実験の研究成果をまとめ上げられて時間に余裕が生まれて手持ち無沙汰になったのだよ。》
「実は⋯」
剣持夢想は一の谷博士に吉井さんが教えてくれた奇妙な黄色い風船状の生物についての話をする。
一の谷《ほほう〜君の友人達は中々興味深い生物を見つけたようじゃな。》
ことの話の顛末を聞き博士は謎の生物についての関心を持つ。
「つかぬ事を尋ねますが、博士は友人達が見つけた謎の生物に心当たりはありませんか?」
一の谷《そうじゃのう⋯⋯わしの知る限り》
【ーーーッ!?】
夢想は何気なく博士に質問し博士が質問に答えようとしていた最中、剣持夢想の怪獣探知能力が反応し始める。
「っ!?」
一の谷《どうかしたか?剣持君。》
「⋯⋯いえ、博士。何でもありません。」
電話でそう言いながら夢想は東京の方角に真剣な視線を向けていた。
本多助手《博士。ご報告したい事があります。》
博士がいる部屋に研究の助手を努める本多助手が部屋の扉を開けて姿を見せる。
一の谷《一体、どうしたのかね?本多君?》剣持と通話中の受話器から耳を離して一の谷博士は本多助手に尋ねる。
本多助手《東京に謎の黄色い風船のお化けが出現したと警視庁から連絡がありました。》
一の谷《それは本当かね!?》
「っ!?」
レッドマンの優れた聴覚を駆使して受話器から少し離れて聞こえた会話の内容に剣持夢想は例の謎の生物と確信する。
(っ!?新聞部の皆はどうしたんだ?)
東京の方角に怪獣のそれなりの反応が出たと言う事は、吉井さんが言っていた生物はやはり怪獣の一種と考える剣持は、直ぐに新聞部の皆の安否を心配する。
一の谷《剣持君!さっき本多君から教えて貰ったのだが、君が話した謎の生物が東京に出現したらしい。》
「⋯⋯そのようですね。すいません。電話を切ります。」
一の谷《うむ。恐らく『お化け屋敷』に出動要請が掛かるだろう。気を付けたまえよ。》
「はい。」
此方から電話を掛けて応対してくれた一の谷博士に申し訳なく剣持はそう言い電話を切り『お化け屋敷』へ向かおうと急ぎ準備をする。
正体不明の謎の浮遊生物が東京の市街地に現れた事で当然だが『お化け屋敷』の面々に出動要請が来る。
それはアーサー隊長達が丁度南極から日本に戻ってきた直後で⋯出動要請を聞いて現場に最も近かったのは⋯⋯
アラシ「此方アラシ。現場に現着しました!?」
東京上空をパトロールしていた我らのアラシ隊員であった。
ホシノ《現場の状況はどうだ?》
アラシ「対象は破壊活動をせずに大手デパートのバルーンみたいにプカプカ浮いています。⋯⋯にしてもコイツはまた梅干しの種に似た怪獣だな⋯⋯」浮遊する生物の様子を自分なりの主観を混ぜてチーフ達に伝えるアラシ。
ホシノ《直ぐに東京に応援が駆け付ける。民間人に被害が出ないようにしてくれ。》
アラシ「了解!?」
被害が出ないようにとホシノチーフに言われても基地の皆に報告した通り軽自動車サイズの大きさを持つ黄色い浮遊生物は空に浮いているだけで地上の建物に向けて空中から体当たりをしたり光線を出したり目立つような破壊活動はしていない。本当に空に浮いているだけなのだ。被害かどうかはまだ謎だが浮遊生物の真下にあるガソリンが切れたフロンガスの回収に奔走する回収トラック。其処の回収容器に積まれた大量のフロンガスが忽然と空っぽになっていたとトラックの運転手が教えてくれた。
自分が現場に到着する前に浮遊生物が真下に生えた赤銅色の触手をフロンガス回収トラックに向けてからトラックのガソリンとフロンガスが減り始めてやがて空っぽになったらしい。浮遊生物は風の向くまま気の向くまま浮遊してアラシはその後を追う。
警察官の提案で車道の端に置かれたジャンカーZの周りに大人しくしていた立花ナオキと新聞部の面々は電話連絡したロードサービスが来るのを待っていた。
井上「あっ!ジェットホバー9だ。」
そんな時、自分達の上空を通り過ぎるホバー9に気付く一平達
田端「何か大事になってきたな。」
立花「チクショウ!『お化け屋敷』が何だ!此方は車の燃料を空にされたんだ!?」
田端「不平不満は分かったから落ち着きましょう。ナオキさん。」
井上「叫んだって車の燃料が帰ってくる訳じゃないんですよ。」
江戸川「あら?吉井さんは?」
井上「ゆかなら向こうで友達に電話しているぜ。」
吉井「もしもし?剣持君?」
《吉井さん!?大丈夫ですか?怪我とか無いですか!!》
掛けた相手の慌てた様子の声がスマホから聞こえてきてゆかは安否についての返事をする。
吉井「うん。私や直人も一平も由利子さんも運転してくれた大利根航空の社員の人も全員無事よ。」
《良かった⋯⋯心配したんですよ。》心から安堵を心配する声がスマホから聞こえて心配させてしまったと申し訳ない気持ちになるゆか。
吉井「心配させて本当にゴメンね。実は⋯⋯」
《⋯⋯吉井さんが言っていた例の浮遊生物の事ですか?》
吉井「知っているの?」
《例の生物について博士に報告をしている最中に東京に例の生物が現れたって一の谷博士の助手から教えて貰ったんだよ。一体何が会ったんですか?》
剣持の中に浮かんだ疑問に対してゆかは素直に答える。
吉井「御殿山の科学センターまで向かう途中例の浮遊生物が乗用車の燃料を吸収して成長したようなのよ。」
《乗用車の燃料を吸収?》
吉井「由利子さんが言うには周りのエネルギーを吸収して成長するバルンガって言う風船怪獣と同じ能力を持っているって言っているわ?」
《⋯⋯皆さんは浮遊生物の近くには居ないんですか?》
吉井「えぇ。私達は浮遊生物が車内一杯に膨らむ前に乗用車から全員出て浮遊生物も乗用車のルーフ部分から飛び出ていって何処かへ移動していったの。」
《そうだったんですか⋯⋯その浮遊生物の正体が何であれ⋯⋯これはもう立派な怪奇案件です。》
吉井「うん。私達は状況が状況だから三門市に帰るわ。」
《そうして下さい。では失礼します。》
剣持の通話が終わるとゆかは直人達の元に戻る。
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ゆかの通話を終えると共に剣持は『お化け屋敷』地下の第7ゲートの特殊探知機の赤い光を慣れたように浴びる。
警備員「どうぞお通り下さい。」
「はい!ご苦労様です。」
最後のゲートを無事通過した剣持は馴染みの警備員に礼の言葉を伝えて自分の隊員用ロッカーから青い万能ジャケットを着替えて作戦指令室へ急行する。
伴「応。剣持。おはよう。」
「おはようございます。」
作戦室に向かう途中顔馴染みの反対側の方向へ行く整備員達に挨拶の言葉を伝えると同時に通り過ぎる。
「失礼します。」
ノックをすると共に作戦室の自動ドアが開き中に入室する剣持。
作戦室にはイデ隊員とホシノチーフと各隊長達がいたが何人かの隊員達が既に出動しているのか作戦室にはいなかった。剣持の入室に気付き此方を振り返るホシノ。
ホシノ「来たか。剣持。」
「はい。」
ホシノ「30分前、東京に謎の浮遊する黄色い生物が突然出現した。生物の正体も目的も不明。さっそくだがジャック隊員と共に生物への調査に東京へ行って欲しい。」
「⋯⋯その生物に関する事で報告があります。」
ムラマツ「話してくれ。剣持。」
「東京に出現したその浮遊生物は周囲のエネルギーを吸収し成長しているんです。」
ホシノ「それは本当か?」
「はい!」
ロイド「どうして現場で見ていないのに分かるんだ?」
俺の報告に疑問を覚えたロイド副隊長が理由を聞いてくる。俺は隠す事なく吉井さんに教えられた事実を言う。
「同級生の新聞部の人達が小さな状態の浮遊生物を捕まえて御殿山の科学センターまで連れていこうとした途中で乗用車の燃料を吸収して大きくなったと同級生からの連絡で分かったんです。新聞部の面々に同行していたフリージャーナリスト兼フリーカメラマンの江戸川由利子さんが言うには風船怪獣バルンガに似た性質を持っているらしいんです。」
ムラマツ「バルンガに似た性質⋯⋯⋯もしそれが本当なら厄介だぞ。」
風船怪獣バルンガの記録を知っている隊長達は表情を険しくする。
ホシノ「剣持。」
「はい。」
ホシノ「浮遊生物の生態は本当にバルンガに似ているだけなのか?」
「いえ、同級生が言うには複数人で生物を捕まえようとした際に浮遊生物の真後ろの触手部分から放電を放出してきたと教えてもらいました。」
「「ッ!?」」
剣持の報告を聞き他の隊員達も振り返る。あの生物にはバルンガとは違い攻撃手段があるのだ。生物についての情報を早速共有する為にアーサー隊長は通信機を操作して現場にいるアラシに連絡する。
アーサー「此方アーサーだ。アラシ隊員。聞こえるか?」
アラシ《聞こえますよ。アーサー隊長。》
アーサー「東京に現れた謎の浮遊生物は周囲のエネルギーを吸収して成長する能力があると報告が入ってきた。更に生物は外敵に対して放電攻撃を放つ傾向があると判明した。過度な接近は控えるように⋯⋯」
アラシ《了解です!》
ホシノ「剣持隊員。至急ジャック隊員と黒野隊員と一緒にガスファイター1号で現場に行ってくれ。」
「分かりました。」
チーフから指示を聞いて剣持は情報収集用機器ジャンクを持ってジャックと作戦室を後にする。
「⋯ガスファイター⋯⋯初めて搭乗するな。」
黒野「そうか。剣持は初めてガスファイターに乗るのか。」
ジャック「民間のガス会社が開発した戦闘機だよ。天然ガスを燃料に使い環境に考慮してプロパンガスやブタンガスでも飛べる仕様になっている。」
「ほほぅ。カセットコンロに使われるLPガスを燃料に使えるのか⋯⋯」
ジャック「それでも初期の戦闘機よりは性能は高いよ。10㍍サイズのプレイターを追い詰めるくらいは強いよ。」
「⋯⋯⋯心無しか戦闘機で出撃するのが随分久しぶりな気がする。最後に戦闘機で出撃したのっていつ頃だっけ?」
ジャック「気の所為だよ。」
剣持達は地下小型格納庫まで続く大型リフトに乗っている途中ふと初めて乗る戦闘機について意見を軽く交わす間に目的の格納庫へ到着して三人は搭乗する。
黒野「準備完了。」
ジャック「此方も確認完了。」
剣持を含めガスファイター操縦席の計器の確認を終え
イデ《ハッチ開きます。シークレットゲート54で発進してください!》
黒野「了解!」
ガスファイター1号は指定されたゲートから発進していく。
現場へ急行するガスファイター1号内では
黒野「現場に到着するまでまだ時間が少しある。実際どう対処すべきだと思う?」
「そうですね。この戦闘機のレーザー攻撃は勿論、飛行するのに必要な燃料も吸収される可能性もありますし⋯⋯」
ジャック「今回の敵は厄介そうだね。」
「何にしても情報が足りません。退治や攻撃の前に浮遊生物を分析すべきだと思います。」
黒野「なら相手のエネルギーの吸収範囲を想定して飛行する必要があるな。」
「先行したアラシ隊員が心配です。」
ジャック「急ごう。」
ガスファイター1号が浮遊生物がいる東京へ急ぐ中
同じ頃 東京上空。
建物を破壊といった破壊活動もせず只いるだけで騒ぎになる浮遊生物を追うホバー9。
軽自動車サイズだった浮遊生物は漂いながら周囲のエネルギーを吸収し目に見えてどんどん成長していた。
アラシ「クソッ!野郎!?周りのエネルギーを食べてどんどん大きくなってやがる!?」
ホバー9操縦席内で手出し出来ない状況に歯痒い思いをしながらアラシは浮遊生物を追いかけるしかなかった。その時操縦席にある通信機が鳴り始める。
黒野《此方黒野。アラシ隊員。聞こえますか?》
アラシ「おっ!此方アラシ。聞こえているぜ。」
アラシは通信機から聞こえた黒野の声に返事をする。
黒野《例の生物は様子はどうだ?》
アラシ「大都会のエネルギーを所構わずに吸収して成長してやがる!?」
黒野《こっちももう直ぐジャック隊員達と一緒にガスファイター1号で現場に到着する。》
アラシ「わかった。」
それから10分も経たない内に剣持達が乗るガスファイター1号が東京上空へ到着した。
「あれが⋯⋯吉井さんが言っていた飛行船や梅干しの種に似た奇妙な浮遊生物⋯⋯」
黒野「もう大きさがヘタな怪獣並みじゃないか⋯⋯」
ジャック「想像した以上に凄く奇妙な姿をしているね。」
ガスファイター1号の操縦席の窓から見えた浮遊生物の姿と大きさに一同は驚きを隠せない。
事前に吉井さんから生物の奇妙な外見や電気を出す事をスマホの電話で聞いていたとはいえ⋯⋯
(あんな生物が存在するなんて⋯⋯)
二人も驚いていたがその中で夢想は特に驚いていた。
大都会東京のエネルギーを吸収した浮遊生物は脈打つ鼓動音を己の身体から鳴らしながらその場に漂っていた。
ガスファイター1号は生物から離れた所で飛行していたホバー9の横に並ぶ。
「此方剣持。アラシ隊員。聞こえますか?」
ホバー9の姿を窓から見ながら剣持は操縦席にある通信機を使いアラシ隊員に連絡する。
アラシ《此方アラシ。聞こえるよ。》
ジャック「さて⋯⋯それじゃあ報告をお願いします。」
アラシ《報告といっても過度な接近はしていないから生物の能力が全部把握している訳じゃないぜ。》
「エネルギーを吸収している成長しているのは本当なんですか?」
アラシ《ああ。俺がジェットホバー9で目撃した時はまだ軽自動車サイズだった。》アラシ隊員から貰った報告で吉井さんや江戸川さんの言う通り上空を漂う浮遊生物は風船怪獣バルンガと同じエネルギーを吸収して成長する性質を持つ裏付けが取れた。
「僕の知り合いから聞いた話だと最初は段ボールの小箱に入るサイズだったようです。」
黒野「それが今や怪獣と変わらない大きさに⋯」
ジャック「凄い成長の速さだ。」
「仮にアレを攻撃した場合⋯⋯どうなるのでしょうか?」
黒野「レーザー攻撃やミサイル攻撃のエネルギーを吸収して更に大きくなるんじゃないか?」
アラシ《そうなんだよ。此方はエネルギーを吸って成長していくのを黙って見ている事しか出来ないんだ!?》
黒野「ヘタな刺激を与えて放電を放たれて周辺に余計な被害を出さなかっただけアラシは充分偉いよ。」
ジャック「僕らが先ずやるべきは徹底的な分析だ。剣持隊員。ジャンクを起動しておいてくれ。黒野隊員は怪獣の写真を撮ってくれ。様々な角度から頼むよ。」
黒野「了解!」ガスファイターに内蔵されたカメラ機能を起動させる。
「了解です!⋯⋯⋯あの浮遊生物に接近する気ですか!?」
ジャック「出来るだけあの生物の情報が必要だ。刺激しない程度に近付く必要はあると思うな。」
怪獣の周囲を飛び回りながら怪獣の姿を内蔵されたカメラで撮るガスファイター。
黒野「ジャック隊員の意見に賛成だ。生物近くに生物の体液とか細胞片が落ちていたらもっと良かったんだけどな。」
アラシ《現場に到着してから生物を離れた距離を維持して結構観察していたけどそんな都合の良い物は落ちていないぜ。》
黒野「分かっているよ。⋯⋯生態がまるで不明な生き物⋯⋯しかも本当に奇抜な姿をしているな⋯⋯外見を見る限り爬虫類や哺乳類とかいった既存の生物の特徴がまるで無い。」
ジャック「⋯⋯⋯地球外から来た生物なのかな⋯⋯或いは微生物や菌類の類なのかな⋯⋯」
アラシ《仮にそうなら完全に手探りで調べないといけなくなるぞ。》
「分からない事だらけだ。」
黒野「全部じゃない。君の同級生がくれた情報のお陰で生物は放電攻撃を持つ事とエネルギーを吸収して成長する事が判明したんだ。」
「⋯⋯。」
ジャック「アーサー隊長なら現時点で分かっている事は我々の地球が危険に晒されていると言う状況だね。」
黒野「それアーサー隊長の物真似か?」
ジャック「似てただろ?」
黒野「少しな。」
アラシ《真面目に仕事しようぜ。》
「そうですよ。」
アラシの連絡を聞き軽口ジョーク交わしていた二人は浮遊生物の方を注視する。
「了解。先ずは外見から生物の生態を調べる必要がありますね。羽根や翼も無いのにどうやって飛んでいるんでしょうか?」
黒野「そうだな⋯⋯どう見ても鳥や昆虫みたいに飛ぶのに適した身体付きはしていない。」
ジャック「体重はあるのだろうか?」
アラシ《体重が無いなら紙みたいにもっと飛んでいるんじゃないか?》
黒野「⋯⋯最低限体重はあると考えた方が良いだろう。」
黒野は建物等にしがみつく事なく滞空している浮遊生物の様子を見てその場に留まれる能力を持つと考える。
「どうやって測るんですか?」
黒野「飛んでいるし⋯⋯外見が珍し過ぎて見て参考になる生物がいない。」
ジャック「なら体重は不明だね。」
「そんなアバウトで良いんですか?」
黒野「大凡も測れないからな。取り敢えず対象を刺激しない程度の距離を意識して対象の周囲を飛行。剣持の言う通り外見から情報を集める事から始めよう。」
ジャック「了解。」
ガスファイター1号は怪獣サイズに成長した浮遊生物の周囲を一回りして調査を開始する。最初に僕らが調べたのは脳がある頭や顔の部分なのだが⋯⋯
「分かりやすい目や鼻や耳や口が見当たりませんね。」大抵の生物や怪獣が持っている周囲の情報を集める感覚器官が見当たらない事に疑問を覚える剣持。
アラシ《じゃあどうやってエネルギーの在り方を探しているんだ?》
ジャック「若しくは僕らが知らない特殊な感覚器官が周囲の情報を集めているのかも⋯⋯どうしたんだい黒野?」
黒野「⋯⋯あの浮遊生物⋯⋯否、サイズが怪獣クラスだから浮遊怪獣で良いか?黄色い浮遊怪獣の上部前面にある時々黄色く発光しているハニカム構造が気になってな⋯⋯」
アラシ《ハニカム構造?》
ハニカム構造とは蜂の巣のような正六角形が隙間なく敷き詰めた構造の事だ。剣持は黒野の気になる点を注目しているジッと見ていると
「⋯⋯そうか。この浮遊怪獣は複眼なんだ!?」
アラシ《剣持、複眼って昆虫とかにある眼だぞ。》
「でもさっきから僕らの方向にある複眼部分が車のウィンカー音みたいにカチカチ発光してますよ。」
怪獣の周囲を分析調査の為にゆっくりと飛行しているジェットホバー9とガスファイター1号を見ているようにその部分の複眼が発光している。
黒野「⋯⋯もしかして360度⋯⋯全方向に感知可能なのか?」
背後の部分に回った筈なのに後ろにいる俺達の戦闘機を意識しているように見える。
ジャック「知覚したエネルギーを捕捉する為に発達した複眼のようだ。」
「視覚情報は有りと⋯⋯」
剣持は調査報告書に"発光複眼"360度全方向感知できると書く。
(ベム。あの怪獣の上部後部にフサフサと海藻みたいに揺らめくのはタダの体毛かな?)
怪獣の上部に揺らめく赤銅色の数本の体毛のような形状した物が何かを探し出したように一斉に張り詰めてそれに従い浮遊怪獣は向きを変えてある場所へ移動した為にガスファイター1号とホバー9も追跡する。
ジャック「追いかけよう。」
アラシ《応よ!?》
「ここは?」
黒野「此処は⋯⋯フロン類充填回収をする業者の会社だな。」
浮遊怪獣は会社の真上に動きを止めて真下に生えた赤銅色の触手を会社が保管したフロンガス専用ボンベがある倉庫へ伸ばす。
アラシ《もしかして⋯⋯》
「どうしたんですか?アラシ隊員。」
アラシ《否⋯⋯お前達が現場に到着する前も奴はフロンガスの回収トラックから真下の赤銅色の触手を使って空っぽにしたってトラックの運転手から教えて貰ったんだ。》
「⋯⋯フロンガスが好物なのかな⋯」
アラシの報告内容を聞き怪獣はフロンガスを積極的に吸収するのか疑問を覚える夢想。
黒野「分からん。だけど他のエネルギーも吸っているぞ。吸っている様子から見て浮遊怪獣の真下生えている触手があらゆるエネルギーを吸収するエネルギー吸収触手と見て間違いないだろ。」
剣持は黒野の言葉を聞き調査報告書に"エネルギー吸収触手"あらゆるエネルギーを吸い取ると書く。
「あの浮遊怪獣の上部後部のは恐らくエネルギー源を探し当てるセンサーの役割をしているのでは?」
ジャック「センサーアンテナか⋯⋯視覚情報の範囲外からのエネルギー源をそれで探している可能性は高いね。」
一同は見ていた怪獣の部位はそれぞれ違う物のジャックは剣持と同じく上部後部の揺らめく赤銅色の体毛がエネルギーをある方向へ一斉に張り詰めていくのを目撃している為に剣持の見解を肯定する。
アラシ《大型兵器は出動しないのか?》
黒野「無駄だ。出動させても動力源のエネルギーを奴に吸収され無駄に成長させるだけだよ。」
「打つ手無いですね。」
黒野「でもコイツをほっとく訳にはいかないぜ。放っておくと日本の経済は笑えないレベルの大ダメージを貰い続けるぞ。」
日本の主なエネルギーを無差別に吸収されると言う事は本来送られる筈のエネルギーが滞る事を指す。この状況が長引くと日本はエネルギー不足に悩まされて各地で大停電を始め生産工場のストップや物流施設に影響を与え大混乱が起きるてしまうだろう黒野は考える。
ジャック「目立った破壊活動をせずにタダ其処にいるだけで日本を混乱させるって凄い怪獣だ。」
黒野「感心しないの。少しでも早く事態を解決する為に怪獣の分析調査を続けるぞ。」
「了解!⋯⋯⋯」
了承の返事を口にした夢想はガスファイター1号の窓から見えた
エネルギーを吸って膨らむ浮遊怪獣を無表情ではない不安そうな表情で見詰める。
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神楽坂のレストランバー「ベム」にあるテレビから緊急速報が映る。
食事をして終わり食後のコーヒーを飲んでいた万城目淳は緊急速報のニュースに気付きその内容に真剣な顔付きになり厨房にいる後輩の一平の名前を呼ぶ。
万城目「一平!?」
戸川「どうしたんですか?先輩。」
呼ばれた一平は淳と共に緊急速報を見て⋯⋯
万城目「⋯⋯割と此処から近いな。」
戸川「近いなって、直ぐ其処ですよ!?」
二人は急いでテレビから店の窓の方に視線を向ける。
「⋯⋯⋯。」
上空をプカプカと不気味に浮遊する浮遊怪獣を地上から野次馬に紛れて二人は驚愕した顔で見上げる。
江戸川「一平君に淳ちゃん?」
万城目「?」
不気味な物を見る顔で短くも怪獣を見上げていると突然、何処から自分達の名前を呼ぶ見知った声が聞こえてきて怪獣から声がした方向へ二人は視線を向けると此方に手を振る江戸川由利子に気付く。その彼女の後ろには知り合いの高校生くらいの年齢の三人の男女の姿がいた。
戸川「どうして由利ちゃんが此処に?先輩が呼んだんですか?」
万城目「否、一平お前が呼んだんじゃないのか?」
戸川「違いますよ。」
互いの何方かが由利子を呼んだのか質問し合いながら万城目は一平に急ぎお会計をして店の外にいる由利子に会いに行く。
江戸川「淳ちゃん。」
万城目「由利ちゃん。何でこんな所に?」
江戸川「怪獣を追って来たんじゃないわ。この子達を三門市に送ろうと駅に向かっていたらあの怪獣の方が此方に来たのよ。」
井上「どうも⋯⋯」
田端「こんにちは。」
吉井「こんにちは。」
万城目「こんにちは。この子達は?」
新聞部の面々と互い挨拶を交わす万城目。
江戸川「知り合いの三門市立第一高等学校の新聞部の面々よ。取材の終わりにばったり会ったのよ。」
万城目「兎に角、直ぐ其処に怪獣がいるから君たちは一刻も早く三門市に戻るんだ。」
由利子とその知り合いの安全を考えて此処を離れるように言う万城目。
戸川「先輩危ない!?」
店から聞こえた自分を必死に呼ぶ声に万城目達が反応し急いで振り返る。
前を見る事なく上空を浮遊する浮遊怪獣を見上げたままよそ見運転する1台のバイクが此方に迫ってくるのを確認する。車道から歩道を跳び上がったバイクは此方に人がいる事に気付かずに進んで行く。バイクの接近に悲鳴を上げる野次馬になった人達は急ぎ歩道から散らばるように移動する。
吉井「きゃっ!」
そんな中、吉井ゆかは慌てていた為か途中でコケてしまい。運転手も周囲の悲鳴を聞き漸く自分の状況を理解し急いで急ブレーキをかける。
田端「ゆか!」
バイクの運転手「っ!!」
バイクは何とか人を轢く事なく停止した物のその停止した際に歩道の前にあった物がタイヤと激突し吉井の元に急スピードで飛んでくる。
万城目「危ない!?がっ!!」
咄嗟に近くにいた万城目はゆかの元へ行き覆い被さるようにゆかを庇って飛来した物が万城目の背中に激突する。
万城目「⋯⋯うっ⋯⋯怪我は無いか?」
吉井「は、はい⋯」
万城目「良かった⋯⋯」
ゆかの安否の確認を終えると万城目は安心した表情で目を閉じてその場から力が抜けたように倒れる。
江戸川「淳ちゃん!?」
戸川「先輩!?」
田端「ゆか!?」
急ぎ二人の元へ駆け寄る由利子達、
バイクの運転手「ああああああ⋯⋯」
茫然自失で目の前の光景を見る運転手。その様子を見た一平は怒りの表情で運転手に近付き掴みかかる。
井上「この野郎!?よくもゆかと江戸川さんの知り合いを「馬鹿!?一平!?そんな奴を殴るより急いで救急車だ!?」でも直人!?」
背中から赤い染みが小さくも見えている万城目を楽な姿勢にして直人は一平に優先順位を口をする。
戸川「先輩!?しっかりして下さい!?」
江戸川「淳ちゃん!?死んじゃやあよ!?」
井上「⋯⋯。」
しかし直人自身一時は一平同様に運転手に掴みかかって同じような事を言いたいし殴りたい気持ちもあったが、大切な友達を助けてくれた恩人を死なせたくない気持ちを優先する。
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東京上空 ガスファイター1号内
「⋯うん??」
黒野「どうした?剣持?」
「いえ⋯⋯分かりません⋯⋯」
浮遊怪獣を離れた距離から色々と分析して最中突然、虫の知らせか妙な胸騒ぎを感じた剣持⋯⋯首を傾げるも胸騒ぎの理由が地上にいる知り合い達が原因など分かる筈もなくかつてマキシボーン山で無意識に危険が迫る染井華がいる場所に全速力で向かった時と似た感覚に剣持は戸惑いを覚える。
「⋯⋯任務に集中します。次はいよいよ怪獣の表面を調べましょう。」
ジャック「接近するのは危険だけどね。」
黒野「それでも分析しないといけないのが俺達の今の仕事だ。」
【新聞部の吉井を助ける為に江戸川由利子の友人で剣持も会った事もある万城目淳が怪獣騒ぎによっておきた交通事故に巻き込まれた事をこの時の剣持夢想は知る由もなかった⋯⋯】
鏡拓也の自宅にて
《番組の途中ですが緊急怪獣速報をお伝えします。》
鏡「っ!?」
一方、ミラーマンRBこと鏡 拓也は家で勉強をしている最中ラジオニュースで東京の怪獣騒ぎを聞き急ぎ外出の服装に着替えて急ぎ自宅を出て人気の無い場所に1人移動した後に静かに深呼吸し目をカッと見開かせ爽やかな青空に向かって
鏡「成川さんーーーーーー!!」
両手を口元に当ててメガホンの要領で力の限り声高らかに瞬間移動能力を持つ成川ジョージの名前を叫ぶ。
成川(大声を出すな!?)
鏡「うわっ!」
頭の中から聞こえた探し人の叱りの声に1人ビクつく拓也。
鏡(成川先輩!?今直ぐ俺を東京に連れって下さい!?)
成川(東京方面に出現した怪獣の事か?)
銀河連邦に属するジョージも剣持同様に感知能力を使い怪獣出現に気付いていた。
鏡(はい!)
成川(直ぐに其処にいく。待ってろ。)
宇佐美「お釣りをどうぞ。」
拓也にテレパシーをするジョージは立ち寄った本屋で三門市に関する本を購入している最中だった。
宇佐美「ありがとうございました!?」
眼鏡を掛けた黒髪長髪の女性の店員に購入した本とお釣りを受け取り店を後にしてジョージは急ぎ拓也の元へ馳せ参じる。
ジョージは先ほどの眼鏡を掛けた女性店員が拓也の学校の先輩とは知る事はなかった。
宇佐美「⋯⋯さっきのお客さん。中々黒いサングラスが似合った人物であったな。」
感心するように自分の眼鏡をクイッとさせる女性店員⋯⋯ボーダー玉狛支部のオペレーターをしている宇佐美栞は黒ずくめの格好をした成川ジョージの黒いサングラスに変な感想を言っていた事をジョージは知らない。
【ピシュン】
拓也の前にジョージは瞬間移動で現れる。
成川「行くぞ。」
鏡「はい!」
ジョージは拓也の手首を掴み二人の姿が三門市から消えて東京のあるビルの屋上に二人は一瞬で姿を見せる。
成川「うん?」
鏡「ヤベッ!今回の怪獣は浮いているのか!?」
上空を見上げて浮遊怪獣の姿を見て驚く拓也。空を飛べないミラーマンRBにとっては戦い方を考えさせられる相手が其処にいた。
成川「あの怪獣は⋯⋯拓也。」
サングラス越しに映る浮遊怪獣の特殊過ぎる姿を見たジョージは眉間にシワを寄せた険しい表情で拓也の名を呼ぶ。
鏡「何ですか?成川さん。」
成川「あの怪獣⋯⋯フロンガとは戦うな。」
鏡「⋯⋯フロンガ?それがあの怪獣の名前なんですか?」
成川「そうだ。浮遊怪獣フロンガ⋯⋯それがあの怪獣の名前だ。」
鏡「⋯⋯フロンガ。」
拓也とジョージはフロンガと呼ばれた上空に浮遊する浮遊怪獣を眺めながら言う。
成川「奴はエネルギーを求めて宇宙を彷徨う宇宙怪獣。お前の戦い方では奴を倒す事は出来ない。」
鏡「そんなのやってみないと分からないでしょ!?」
成川(不味いな⋯⋯あの怪獣の能力が相手ならレッドマンとミラーマンRBでは止められない⋯⋯)
相手の能力を知っている為に冷静に上空に浮かぶ怪獣に対して危機感を覚えるジョージ。そんなジョージの忠告を聞いても拓也は戦うつもりのようだ。
成川「第一どうやってアイツに攻撃を仕掛けるつもりだ?」
鏡「飛べなくてもミラーナイフを始め遠距離攻撃は使えますよ。遠距離からバシバシ攻撃します。」
成川「言っておくが、フロンガはエネルギーを吸収する事に特化した怪獣だ。ミラーマンのヘタな光エネルギーの攻撃は奴には吸収される。更にエネルギー吸収した後に大量の地球で言うオゾンを吐き出す。」
鏡「オゾンを?どうして?」
ジョージからもたらされた情報に耳を傾ける拓也。
成川「人間が酸素を吸い二酸化炭素を吐くのと同じだ。フロンガにとってはエネルギーは空気と同じでそれを吸った分オゾンを吐く。」
鏡「⋯⋯⋯ソレって普通にヤバいだろ!」
成川「否、あのサイズのレベルになると周囲に熱を放射するレベルだ。」
鏡「浮遊するフロンガに水でも掛けて冷やせとでも言うんですか?」
成川「残念だがミラーマンの能力に水を発射する技は無いぞ。」
鏡「じゃあ、どうするんですか?フロンガをこのままにするんですか?」
成川「⋯⋯⋯見た所、性格は大人しい。此方から刺激しない限り向こうも積極的に攻撃してはこないだろう。」
鏡「⋯⋯。」
成川「持つ能力や戦い方が通用しない相手と対峙する場合効果的な決定打や解決方法も無い場合は⋯⋯しっかりした戦術を始め対策や解決方法を用意してから行動しろ。」
成川(実際、地球に今いる銀河連邦の殆どのヒーロー達の技や能力ではフロンガを倒す事は出来ない⋯⋯)
特殊な方法でも使わない限りエネルギーの捕食量に限界がある宇宙大怪獣ベムスターと違いフロンガは放つ技を無尽蔵に吸収して成長するだろう。
鏡「そんな⋯⋯」
悔しそうな表情で拳を握り締めた拓也はフロンガと呼ばれた浮遊怪獣を見上げる。
だがエネルギーを吸うのを何もせずに放っておいても地球にとっては良い結果にはならない。寧ろフロンガがもたらすエネルギー不足によって世界各地でエネルギーの奪い合いによる戦争だって起きる可能性がある。
成川「⋯⋯変身許可証を本部に貰う必要があるな⋯⋯」
冷静に怪獣を見上げたジョージはそう独り言を漏らす。
鏡「えっ?」
成川「何でもない。このまま怪獣の動向を監視するぞ。」
「何処に行くんですか?」
成川「近くの自販機で飲み物を購入するだけだ。何飲む?」
鏡「ブラックコーヒー。」
成川「⋯⋯飲めるのか?」怪しい物を見る目で拓也を見るジョージ。
鏡「勿論⋯⋯⋯⋯はい。すいません。嘘です。コーラをお願いします。」
成川「分かった。」
【ピシュン!!】
そう言うとジョージはビルの屋上から姿を消しビルの薄暗い路地裏に姿を現す。
成川「ベムか?」
路地裏の奥から出てきて歩道の方に視線を向けると黒いサングラスと黒い長袖ジャケットを纏った剣持夢想の分身体と遭遇する。
「あっ、成川先輩。」
自販機の前で購入したであろうブラックコーヒーの缶コーヒーを片手に剣持の分身体もジョージの気配に気付き両者は向き合う。
「先輩はどうして此処に?」
成川「拓也の奴が怪獣の出現を知ってな。俺をタクシー代わりに利用して現場に運んだんだ。」
「成る程⋯⋯」
成川「本体の奴は既に怪獣近くにいるなら分身体の君は三門市に居なくて大丈夫なのか?」
「太刀風先輩と炎太郎の奴に留守番をお願いしてますよ。」
その頃 三門市 剣持の家の広間では
春日「あの怪獣。まさか地球に現れるなんて⋯⋯」
真剣な表情で剣持の広間のテレビに映る浮遊怪獣フロンガの現場リポートを見ながら炎太郎は言う。
太刀風「厄介な⋯⋯」
テレビに映る怪獣と過去に交戦経験を持つ二人は怪獣の手強さを思い出していた。銀河連邦と敵対し続ける星間連合すらテレビに映る浮遊怪獣を使うの危険視する程だ。敵勢力の各エネルギーを奪う為に使われたのは良いが無限に吸収して成長する為に星間連合すら手に負えなくなり怪獣使いに使用禁止に指定された怪獣だ。
春日「傭兵団ブラック・ミストの仕業でしょうか?」
太刀風「否、さっきから見る限り動きが大人し過ぎる。野良の宇宙怪獣が地球の重力に巻き込まれて落ちてきた可能性が高いで御座る。」
春日「何方にしてもあの二人だけじゃ倒すのはかなり厳しいですよ。」
光エネルギーを主体として巨大怪獣との戦闘経験が乏しい拓也と
実体武器を持ち戦闘経験豊富の傭兵と一心同体となった夢想を心配する炎太郎。
太刀風「⋯⋯⋯援軍が必要で御座るな。」
二人の持つ能力で全く勝てないとは言わない物の一筋縄にいかない相手が映るテレビから視線を外し窓の方に映る澄み渡る青空に流し目を向けながら皇虎は呟く。
春日「それは良いからその剣を樽に刺して下さい。先輩の番ですよ。」
太刀風「うむ。」
そして両者は剣持の家に有った黒ひげ危機一髪を更に真剣な表情で続ける。
その時、東京上空では浮遊怪獣の目の前を旅客機が横切ろうとしていた。怪獣の浮かぶ高度が旅客機と偶然被ってしまったのである。
「「⋯⋯⋯」」
フロンガは横切ろうとする旅客機の方に身体の向きを変えて少しずつ旅客機の方へ進んで行く。
その様子を見たガスファイター1号に搭乗する剣持達とホバー9を操縦するアラシは顔色はみるみると真っ青になる。
「これ普通に不味いですよ!?」
黒野「分かってる!?本部応答せよ!!」
怪獣の行動に嫌な予感を覚えた一同、直ぐ様黒野は慌てて『お化け屋敷』に連絡する。
アーサー《一体どうした!?》
黒野「怪獣が近くを航行中の旅客機に接近しようとしています!?旅客機を守る為にも攻撃許可を下さい!?」
アーサー《なっ!⋯⋯⋯攻撃許可する。無理はするなよ!》
黒野「了解!?」
アラシ《俺は!?》
黒野「アラシが乗っている戦闘機は保有してる中で一番弱いからこのまま怪獣から後退しろ!?」
アラシ《身も蓋も無い事実をありがとう!!頑張れよ!?》
ジャック「行こう。」
アラシが操縦するホバー9は怪獣から下がると入れ替わるようにガスファイター1号は怪獣に接近する。
フロンガは自分が吸収するエネルギーを横取りしにきたと勘違いして旅客機に向けて下部に生やした二本の赤銅色の絶縁プラグから先端の攻撃手から黄色い放電を放とうとしていた。
「「⋯⋯ッ!!」」
放とうとしている怪獣の背後に青い光弾が直撃する。ガスファイターから放たれた青い光弾はフロンガの表面を焼く事なく吸いまれるように消えていく。
「くっ!やっぱり吸収される!?」
黒野「でも相手は旅客機じゃなくて此方に意識を向けたぞ。」
「来るよ!?」
黒野隊員の言う通り攻撃手から放電攻撃を放つ直前に撃つのを辞めてフロンガは横取る旅客機を無視して攻撃してきたガスファイターの方に振り向く。
ジャック「次の手は考えてある?」
黒野「取り敢えず、戦うなら人がいない場所に怪獣を誘い込むぞ。」
(戦いになると良いなぁ⋯⋯)
目視とはいえフロンガは既に40㍍の大きさまで成長した様子を見た剣持は不安を大きくさせる。
「「ゥオォォーン」」
浮遊怪獣は咆哮を上げながらガスファイター1号は下部にある二本の攻撃手から放電を放つ。
ジャック「おっと!?」
機体を傾けて放たれた放電攻撃を躱すガスファイター。機体を水平に戻して
ジャック「黒野。レーザー砲のエネルギーを大量に与えないように意識して牽制攻撃を放ちつつ移動してくれ。」
黒野「了解。さぁ、此方についてこい!」
出力を抑えて青色から暖色系の色になったレーザー光弾の引き撃ち攻撃を浮遊怪獣フロンガに放ちつつガスファイター1号は移動する。
東京上空に飛び交う光弾と放電の光。牽制攻撃と同時に躱すガスファイターに光弾を吸収する怪獣。
黒野「エネルギー吸収触手に気を付けろよ。」
ジャック「吸収触手も危険だけど向こうは攻撃手から放電攻撃も持っている事忘れないでよ!?」
「「⋯⋯⋯ゥオォォーン!」」
神楽坂から両者は移動し続けて中々攻撃が当たらないガスファイター1号に対してフロンガは身体の前方に生えている赤銅色のトゲ⋯⋯通称磁界トゲの能力を使う。このトゲは剣持達も調査していない部位で6万テスラの強力な磁界を周囲に発生させる事が出来る。
黒野「これは、計器が!?」
フロンガが発生させた目に見えない強力な磁界に周囲の建物を始めスマホや各電子機器に影響を与え捉えられたガスファイター内の各計器が激しく暴れ始める。安定しない計器に驚く暇も無く磁界トゲの能力によって操縦不能になる。どんどん高度が見る見ると下がり地上に落ちそうになるガスファイター。
黒野「くっ、操縦が言う事を効かない!各員脱出準備!?」
飛行が安定しない為に黒野は剣持達に脱出準備を促す。
「了解!?」
浮遊怪獣の移動先のビルの屋上に瞬時に瞬間移動するジョージと拓也。そしてジョージとは別のビルの屋上にワープする剣持夢想の分身。
鏡「先輩!?」
拓也達は別々の視点から上空を見上げ墜落しそうになるガスファイターの姿を目撃する。
「変身っ!!」
普通の人から見た死角になる立ち位置に立ち地上目掛けて墜落しそうになるその光景を真剣な表情で目撃した剣持分身は有無を言わせない雰囲気と共に全身を赤く発光させる。
一方拓也の方も⋯⋯
鏡「あっ!先輩達がピンチだ!?」
剣持の分身体同様に磁界トゲの影響によって墜落しそうになるガスファイター1号を目撃する二人。
成川「よせ!今のお前ではあの怪獣には勝てない!?」
拓也を心配しジョージが止めるも拓也は鏡のある場所を目指す為に走り出して言う。
鏡「そんな事は百も承知です!それでも変身しない訳にはいかないんだ!?」
成川「全く!?」
鏡(ミラー・スパーク!?)
拓也は変身する為に前もって腕に嵌めていたミラー・ウォッチ型の腕時計を外して拓也は両手を水平に伸ばしてから両手を合わせてミラー・アクションポーズをして拓也は眩い光とともにスパークしミラー・ウォッチの盤面の鏡面体に飛び込む。
地上に向かうガスファイター1号から勢い良くパラシュートを使い脱出する三人。
(パラシュートの開き方を前持ってカンフー達と調べて正解だったな。)
(冷静に言ってる場合かよおおおおおおおおおおおおおお!!)
無表情でパラシュートをしっかり開き風を全身に感じる剣持夢想。
黒野「不味い!?戦闘機が市街地に!?」
ジャック「此方も不味いよ。」
浮遊怪獣が二本の攻撃手から放電攻撃を此方に向けて放とうとしていた。
黒野「確かに此方もヤバい!!」
パラシュートを開いているから両手が使えない状況で顔色を真っ青になる黒野。
三人目掛けて放たれる放電攻撃。眩い光が至近距離に迫る直前、
「「オリョッ!!」」
「「イヤッ!?」」
手も足出せない三人の前面にバリヤーのような巨大な光の幕が出現し放電攻撃を防いではそのまま放った怪獣に放電攻撃を跳ね返す。
黒野、ジャック「「ッ!?」」
更に三人は巨大な何かに掴まれる。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
指示を出された訳じゃない⋯⋯只今の自分に出来る事を考えて行動した。互いに言葉を交わす暇もなく変身して出現した位置で直ぐ様動きレッドマンは市街地に墜落しそうになったガスファイター1号を⋯⋯ミラーマンRBは怪獣が放電攻撃を仕掛けようとした戦闘機のパイロット達の安全を⋯⋯
出現した直後ミラーマンRBがディフェンスミラーで怪獣の攻撃を防ぎ相手に攻撃を逆に跳ね返した間に
墜落寸前のガスファイター1号を片手で掴んだレッドマンは直ぐ様、飛び上がりパラシュートを目印にして黒野達をもう片手で掴み怪獣から離れた安全な場所に戦闘機と剣持本人達を置く。
「⋯⋯レッドマンとミラーマンRB⋯⋯」
ディフェンスミラーを解いたミラーマンRBはレッドマンの元に駆け寄り立ち並ぶ二人の巨人は三人の安否を確認し終えると二人の巨人は後ろを浮遊する浮遊怪獣の方へ振り返り見上げる。
「「⋯⋯」」
感情の起伏が読み取れない浮遊怪獣フロンガは新たに現れた旨そうなエネルギーに興味を覚え効率良くエネルギーの大元を弱らせて吸収する為に身体に生やした攻撃手の先端を二人の巨人に向ける。
対するレッドマンとミラーマンRBは浮遊怪獣フロンガに向けてファイティングポーズをする。
「「レッドファイト!!」」
フロンガは地上にいるレッドマン達目掛けて生やした攻撃手から先制放電攻撃を放つ。
接近する為に直ぐ様レッドマンはフロンガがいる高度を目指して一気に飛び上がりフロンガの下部に向けて飛行速度を活かした鋭い膝蹴りを突き上げるように叩きつけて続いて赤く発光させた両手を組みダブルスレッジハンマーをフロンガの発光複眼に目掛けて一気に振り下ろす。
「「ッ!?」」
発光複眼に打撃を貰うも運動エネルギーを始めレッドマンの攻撃に使われた複数のエネルギーをエネルギー吸収触手を使い吸収し体内にあるコイル状の内臓器官フロンガコイルを使い吸収したエネルギーを増幅しその身体を膨らませてオゾンを二酸化炭素を吐くように放出する。
(熱っ!?やっぱり攻撃が通じないか⋯⋯)
フロンガの身体から放出されたオゾンの熱波に驚きながらレッドマンの分身体は打撃が通じない事に確かめる。
【ーーーーッ!?】
「ッ!?」
フロンガは身体の下部に生やした攻撃手を鞭の要領で振るいレッドマンは急ぎフロンガから距離を離す。
「「ミラーナイフ!?」」
地上ではミラーマンRBがフロンガの身体を切り裂く為に遠距離必殺技のミラーナイフを連続で放ちフロンガは体内の中心にある球体状の反重力球体を駆使してスピードを上げてエネルギー吸収触手を素早く使いミラーナイフは触手の先端を斬り裂くどころか吸収触手によって吸収される。
「「ッ!?」」
吸収触手に光エネルギーが吸収される様子を見たミラーマンRBとレッドマンは吸収する度に成長するフロンガに果敢に攻撃を仕掛ける。
「「イヤッ!!」」
「「ゥオォォォォーン」」
距離を離した分フロンガに距離を詰めるレッドマン。レッドマンに向けて放電攻撃を放つも危険察知能力を駆使して躱されて空中旋回からの急降下飛び蹴りを貰うも攻撃手がレッドマンの片足を絡みつきフロンガの元へ一気に引っ張られる。
「「イヤッ!?」」
片足を絡みつかれてフロンガに引っ張られながらレッドマンはしなる別の攻撃手の追撃を両腕で衝撃と共に受け止める。
「「イヤッ!!」
防御し終えると直ぐに両腕で攻撃手を払い除けて片足に絡みついた攻撃手を両手で解くレッドマン。それを妨害する為に更にフロンガはレッドマンの片足ごとレッドマンを空中で遠心力のまま振り回す。
振り回されながらレッドマンは拘束を外して目前まで迫った別の攻撃手の一撃を躱し反撃をしようと拳を赤く構えていたら
鏡(レッドマン。下がって!?)
「「ッ!?」」
ミラーマンの声が頭の中に聞こえてレッドマン分身体はフロンガの攻撃手の放電攻撃を避けつつ距離を取る。
「「ミラーナイフ!!」」
「「ゥオォォーン」」
フロンガは攻撃手から放電攻撃を放ちミラーマンは手裏剣の要領でミラーナイフを素早く放ち互い遠距離攻撃を撃ち合い繰り広げる。
鏡(回避⋯⋯いや駄目だ!?)
周囲のビル群に出来るだけ被害を与えない事を考えてミラーマンは攻撃と回避を辞めてフロンガの放電攻撃を次々と二の腕で防ぎ続ける。
鏡(絶対に防ぐ!!後ろに倒れるな!?)
その威力に後方に倒れ込みそうになるも必死に己を鼓舞し踏ん張るミラーマンRB。
放電攻撃を防ぎ続けるミラーマンを助ける為にフロンガに急スピードで接近するレッドマン。
「「レッドパンチ!?」」
二本の攻撃手の近接攻撃を掻い潜りながらフロンガの側頭部に赤く発光させた右拳を叩き込み更に手刀を発光複眼に向けて連続で叩きつける。
「「レッドキック!?」」
続いて赤く発光させた蹴りを下から上へ突き上げるようにフロンガ目掛けて放つもフロンガはダメージを貰う事なく身体を成長させる。そして遂に怪獣の攻撃手がレッドマンの身体を捉える。
「「イヤッ!?」」
打ちつける音と共に激痛が走り悲鳴を上げるレッドマン。一撃が命中した事により交互に放たれる二本の攻撃手の連撃が次々とレッドマンの身体に直撃する。
更に二本の攻撃手は空中を飛ぶレッドマンの両腕を含めた首と腹を蠢く蛇のように巻き付き身動きを封じこめて一気に締め付け攻撃手の先端をレッドマンの顔に向けて至近距離から放電を叩き込む。
「「イヤッ!!」」
尋常ではない放電攻撃を浴びて激しく悶え苦しむレッドマンの分身体。
「「ミラーナイフ!?」」
レッドマンを助ける為にミラーマンはフロンガの攻撃手の根元の絶縁プラグを狙うもダメージにはならず。
鏡(根元が硬い!?なら!?)
ミラーマンRBは高空へ跳躍し空中回転と共に急降下キックの体勢の状態で浮遊するフロンガの頭部に叩きつける。
「「オリョッ!!」」
ミラーマンRBの急降下キックはフロンガの頭部に直撃しレッドマンに浴びせていた放電が一旦止まる。
鏡(よし!?)
しかしエネルギー吸収触手が鞭のように迫りミラーマンRBの顔面に直撃。
「「オリョッ!?」」
バチンッと音と共に市街地に頭から落下するミラーマンRBを他所にフロンガは再びレッドマンに放電を浴びせる事を再開する。
レッドマンも放電をくらい続けながら拘束から脱出しようと必死に藻掻く。
(倒す事が出来なくても⋯⋯せめてコイツをエネルギーが無い場所まで誘導出来れば!?)
「「イヤッ!!」」
放電を浴び続けながら両腕の自由を何とか取り戻し攻撃手を外し自由になったレッドマンはフロンガの頭部を両手で掴んで遠心力に任せてフロンガを放り投げ飛ばす。
投げ飛ばされたフロンガは地表に激突する事なく空中を滑るように浮遊し続けレッドマンの前に戻ってくる。
「「ッ!!」」
【ーーーーッ!?】
そしてフロンガはスピードを上げてレッドマンに向かって突進攻撃を繰り出しその突進をレッドマンはギリギリ躱しやり過ごすもフロンガは急停止からレッドマンがいる方向へ方向転換し更にスピードを上げた突進攻撃を繰り出しその突進を躱し続けるも攻撃する暇もなく遂にレッドマンの背中に体当たりの一撃が直撃する。
「「イヤッ!!」」
躱せずに背中を殴打を貰い地表に落ちそうになるレッドマンに向けて二本の攻撃手がスピードを上げて迫りレッドマンの身体の各部に絡まり脱出させないようにきつく締め上げて拘束。フロンガは攻撃手を使いレッドマンを持ち上げてエネルギー吸収触手を使い拘束状態のレッドマンのエネルギーを吸収し始める。
(コイツ!?俺のエネルギーを!!)
「「イヤーッ!!」」
エネルギー吸収触手からレッドサンダーエネルギーとトリオンのエネルギーが吸われてその吸収スピードの勢いは更に増していく。
黒野「レッドマンが!?」
「くっ!!」
地上から空中に浮遊する怪獣の凶行と苦しむレッドマンの分身体の光景を悔しそうにただ見ている事しか出来ない剣持達。
アラシ《聞こえるか?剣持。此方アラシ!?》
「アラシ隊員!?」万能ヘルメットに内蔵された通信機から聞こえてきたアラシ隊員の声に剣持は反応する。
アラシ《怪獣の分析をしていたガスファイター1号との通信が急に取れなくなったってアーサー隊長から連絡があったから燃料を補給して作戦区域に戻ってきたんだ。一体何が遭ったんだ?》
「分からない。突然ガスファイター1号の全ての計器の様子が急におかしくなったんだ。」
黒野「アラシ。現在位置を教えるから迎えに来てくれ。」
アラシ《了解!?》
「あっ!?」
アラシとの通信が切れて再びレッドマンとフロンガを見上げると剣持は思わず目を開き声を上げる。
80㍍から様々なエネルギーを吸収し180㍍まで成長したフロンガはレッドマン分身体のエネルギーを全て吸い尽くしてエネルギーが切れたレッドマン分身体を地上に放り投げる。
「「オリョッ!?」」
力無く投げ捨てられたレッドマンをミラーマンRBが慌てて落下地点に先回りして受け止めるもミラーマンRBの目の前でレッドマン分身体は赤い光の粒子に変わり消えて行く。
分身体が敗れてしまい独りになるも成長したフロンガに諦める事なく挑もうと考えていたミラーマンRB。
成川(退け!?拓也。)挑もうと考えている頭からジョージの声が聞こえてくる。
鏡(そうしたいんですけど向こうの怪獣は俺を逃がすつもり無いみたいですよ。)
戦う前からジョージに色々とフロンガについて教えられていたが、実際に戦って確かにジョージの言う通り俺とレッドマンでは相手の特性のせいで勝負にもならない。
「「ミラーナイフ!?」」
空中に浮かぶフロンガに向けてミラーマンRBは素早く手を振るいミラーナイフを連射する。
フロンガもミラーマンRBに向けて放電光線を連射し互いの攻撃が相殺し直ぐに両者は次の技を放ち空中で次々と飛び交う鋭利なナイフ状の光と稲妻状の光線。
銃撃での戦闘経験がある拓也はフロンガの攻撃手から放たれる放電光線の発射感覚を意識しミラーナイフを兎に角放つ。
出現した場所が避難が終えていない市街地でも無いならもっとフロンガの周囲を走りながら側面や後方といった箇所を攻撃可能なもの避難もロクに完了していない市街地の為、結果的にミラーマンRBの戦い方が限定される。自身に迫るエネルギー吸収触手の先端を躱しつつもミラーナイフを絶えずフロンガに向けて放つミラーマンRB。
互いに相手に向けて光線を放ち続け3分以上経過⋯⋯両者弱まる事なく撃ち合いが続く膠着状態になる。気になるエネルギーを吸収出来ないフロンガはエネルギーの大元を弱らせる事を考えて外敵防御の手段を使う事にする。
「「ミラーナイフ!!」」
フロンガの攻撃手から突然放電光線を放つのを辞めてミラーナイフがフロンガに直撃するも
鏡(何だ!?どうして攻撃を放つを辞めた!?)
相手の行動の突然の変化にミラーマンRBもミラーナイフを振るい放つ動きをやめてフロンガを警戒する。
空を飛べないミラーマンに合わせて地上に下がる事なく浮遊し続けるフロンガは攻撃手から放電光線を出すのを辞め黄色くない背中の赤銅色の放電口を内側から蠢くように開閉させて何かの音がフロンガの背中から聞こえてくる。
【バチッ!?バチバチッ!?】
鏡(⋯⋯何だ?この音⋯⋯電流と電流がぶつかる音に似ている。)
成川(気を付けろ!?フロンガは身の危険を感じると身体から生やした攻撃手ではなく背中の放電口から200万ボルトの放電攻撃を放つ事が出来る。)
鏡(なっ!⋯⋯⋯)
ジョージからのテレパシーを聞き相手がこれからする行動を理解し地上からフロンガを見上げたミラーマンRBは不気味に聞こえてくる音に警戒心を上げて無意識にミラーマンも力強く右腕を振りかぶって光エネルギーを溜める。
【⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯】
短くも長い沈黙の末両者のエネルギーを溜める音はピタリと止む。
フロンガの背中の閉じ続けていた放電口が音を立てて開き眩い光と共に200万ボルトの電光球がミラーマンRBに
「「ミラーリング!!」」
ミラーマンRBも光エネルギーを光輪状にして素早くフロンガに
西部劇のガンマンのように殆ど同時に放たれる。
「「ゥオォォーン!?」」
フロンガは自身に向けて放たれたミラーリングを浮遊能力を駆使して高度を下げてミラーリングはフロンガの頭上を飛び越え避けられる。
「「オリョッ!?」」
一方、瞬く暇もなく相手の放たれた物が目前に迫りミラーマンRBは素早く光の幕ディフェンスミラーを展開するも200万ボルトの電流が迸る光球は一瞬で展開したディフェンスミラーを打ち砕きミラーマンRBの腹部に直撃しミラーマンは大きく宙に吹き飛ばされる。
鏡(ぐっ!ミラー・スパーク!)
吹き飛ばされて市街地のビルの一つに激突する直前ミラーマンRBは両手を素早く水平に伸ばしてから両手を合わせ近くの建物の鏡を見つけてミラー・アクションをしてその場から離脱する。
「「ゥオォォーーン!!」」
戦いが終わり二人の巨人に勝利したフロンガはミラーマンRBのエネルギーを吸収し損ねて悲しみの咆哮を空高く上げる。
成川「⋯⋯」
そんなフロンガの様子を見上げていたジョージが持っていた拓也のミラー・ウォッチの盤面から光と共にボロボロの姿で戻ってくる拓也。
鏡「⋯⋯はぁ⋯はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯」
鏡(念の為に⋯⋯素早くミラー・アクションポーズの動作練習をしておいて良かった⋯⋯)
痛む身体でビルの屋上に力無く大の字で寝転がり肩で息を整える拓也。その寝転んだ拓也の視線の先にはエネルギーを吸収して悠々自適に浮遊するフロンガの姿があった。
成川「⋯⋯⋯帰るぞ。」
傷だらけの拓也の肩に手を回してジョージはフロンガの方を険しい表情で見詰めながら拓也の事を優先し三門市に帰還するジョージと拓也。
こうしてフロンガとの初戦はフロンガの底無しの食欲に敗れたのだ。
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東京に浮遊怪獣が出現して数日が経過した。浮遊怪獣が我が物顔で様々なエネルギーを吸収し東京では界境防衛機関ボーダー玉狛支部の支部長林藤 匠が命名した有害巨大生物コードネーム。"フロンガ"合同対策本部が設立された。
そんな怪獣騒ぎの中⋯⋯剣持夢想と交流のある鏡京太郎が勤めている毎朝新聞社では
厚木デスク「おい。浮遊怪獣フロンガの記事はこれだけか?」
デスクは記者が書いた記事の見本を書いた本人がいる机に持ってきて質問する。
浅井「はい。」
鏡京太郎と同僚の浅井記者はデスクの質問に曖昧な表情で答える。
厚木デスク「馬鹿野郎。毎日新報を始め何処の新聞社も国際謀略説や宇宙人侵略説と相変わらず派手にやっておる⋯⋯然るに我が社は何だ?以前として正体不明!?なっとらん!?」
そう浅井に注意の言葉を言うと厚木デスクは自分の持ち場に戻る。
浅井「そんな事言われても⋯⋯怪獣についての情報が少な過ぎるんですよ。」
そんなやり取りがあった毎朝新聞社を他所に鏡京太郎は新聞社から出ておりある人達と待ち合わせしていた⋯⋯その場所の名はレストランバー「ベム」
江戸川「あっ、鏡君。此方よ。」
鏡「どうも。江戸川さん。」
テーブル席に先に座っていた由利子の姿を見掛けて京太郎は向かい側の席に座り待ち人が来た事を確認した店主の一平は厨房の奥から姿を見せて店を貸切り状態にする。
戸川「そんで由利ちゃん。彼が信頼出来る報道カメラマン?」
江戸川「えぇ。鏡京太郎君。世界的に有名な科学者御手洗博士の秘蔵っ子よ。頼りにして良いわ。」
鏡「鏡京太郎です。よろしくお願いします。」
京太郎は席に立ち一平に握手の手を前に出す。
戸川「此方こそ。僕は戸川一平だ。このレストランバー「ベム」の店主で由利ちゃんの友達だ。」
由利子の前で二人は互い握手を交わし自己紹介を終える。
戸川「そんで由利ちゃん。此処に来る前に先輩が入院している病院に行ってきただろ?先輩の様子は?」
江戸川「第1回目の手術は取り敢えず無事に終わったわ。」
戸川「そりゃあ、あの子らに朗報だぁ。」
由利子の朗報を聞いて安堵の表情で新聞部の三人の姿を思い浮かべながら一平は言う。
江戸川「でも時間をおいてまだ2回目3回目の手術を必要になるのよ。」
戸川「それ⋯あの子らに伝えたのか?」
江戸川「まさか?ご家族の方には伝えたわよ。」
戸川「あの子らには?」
江戸川「伝えたらゆかちゃん自分のせいと余計に感じさせる事になるわ。」
戸川「確かに⋯⋯自分の怪我が原因で知り合いの子らが自責に苛まれるのは先輩も望んでいないか。」
万城目先輩の性格を思い出しながら由利子の判断に納得する一平。
江戸川「それより二人にある人物を探して欲しいのよ。」
鏡「ある人物?」
江戸川「ええ。報道カメラマンや取材記者らしく言うなら素晴らしいネタと言う物よ。」
鏡「僕を呼んだ理由ですか?」
江戸川「そうよ。」
戸川一平と鏡京太郎は互い顔を見合わせてテーブル席に座る由利子の方に向き合う。
江戸川「現在、浮遊怪獣フロンガは東京上空で我が物顔で様々なエネルギー吸収して成長し続けているわ。」
戸川「無理もない。レッドマンやミラーマンすらあの怪獣を倒せなかったんだ。」
二人の巨人がフロンガに挑み敗北する光景は京太郎も一平も目撃していた。
江戸川「二人は風船怪獣バルンガを知っている?」
戸川「忘れないよ。20年前 星空航空のセスナのラジエーターの中に潜んでいてその後、車の中で燃料や色々なエネルギーを吸収して大きくなって車体を内側から破壊してその車の破片が僕の背中に思いっきり当たって僕は大怪我で入院するはめになったんだから。」
当時の痛いを通り越して死にそうになった思い出を思い出す一平。自分の意識が回復したのはバルンガが地球を去って暫くしてからだ。気が付いた時には手術は全て終わり入院していたのだから⋯⋯
鏡「僕も⋯⋯御手洗博士の家に住んでいた頃に見た事あります。」
ここ数年の記憶が無い京太郎は子供の頃⋯⋯御手洗邸の庭から見たバルンガの存在を覚えていた。
江戸川「20年前世間を騒がせたそのバルンガ⋯⋯実は今から約40年前にバルンガを発見したある大学教授がいたのよ。」
戸川、鏡「えっ!?」
由利子は驚く京太郎達にある資料を見せる。
江戸川「彼は山奥の隕石の破片から一個の宇宙胞子を採取してその飼育に成功したのよ。否、成功したと当時の学会に発表したのよ。けど学会からその実物の提示を求められた時に彼はこう答えたのよ。」
鏡、戸川「⋯⋯⋯。」
江戸川「"殺してしまった⋯⋯あれ以上成長を許せば人類の文明は荒廃に帰するだろうって"⋯⋯」
鏡「分かりました。その大学教授の名前は?」
江戸川「⋯⋯奈良丸明彦⋯彼は当時の学会に詐欺師呼ばわりされて大学教授の職を辞めたわ⋯⋯」
二人に説明しながらバルンガ騒ぎに出会った学者の姿を思い出す由利子。
戸川「思い切った事をしたもんだ。もしかして本当の詐欺師だったのかい?」
江戸川「まさか?バルンガ事件を解決に動いてくれた少し風変わりな考えを持った学者なだけよ。今回起きてるフロンガ騒ぎだって奈良丸博士だったら黙って見ている筈が無いわ!?」
戸川「薄々思ったけど⋯⋯本人に会った事あるの?」
由利子の話を聞いていた一平が疑問を言う。
江戸川「えぇ。私と淳ちゃんは一平君がバルンガ騒ぎの事故で入院している間、昔の資料を頼りに奈良丸博士をあちこち探していたんだから⋯⋯」
鏡「成る程、バルンガ同様のフロンガ騒ぎに今回は僕らで奈良丸明彦さんを探すんですね。」
集まった理由を理解する京太郎。
江戸川「そういう事。一の谷博士達にも捜してくれるように連絡したわ。」
戸川「でも由利ちゃん。日本は広くて沢山の人が住んでいるんだよ。奈良丸博士が今何処に住んでいるのか知っているのかい?」
江戸川「それでも探すのよ。」
バルンガ騒ぎの時でさえ博士の写真無し昔の勤務先や住所の情報を持って必死にあちこち探した当時の頃を思い出す由利子。
由利子は窓から映るフロンガの姿を見て一平と京太郎もそのフロンガの姿を見上げる。
鏡「⋯⋯手分けしてその博士を探しましょう。奈良丸博士が言った人類の文明が荒廃に帰しない為にも⋯⋯僕らに出来る事をしましょう。」
そう京太郎はすべき事を決めると店主の一平を除いた由利子と京太郎はレストランバー「ベム」を後にする。
由利子はかつて勤めていた毎日新聞社やフリージャーナリスト仲間達と連絡を取り合い、京太郎は勤めている毎朝新聞社の厚木デスクに奈良丸博士の情報を貰う為に一度、新聞社に戻り1人店に残っていた一平は由利子達から貰った奈良丸博士と過去に交流があった大学教授達の自宅の順番へ回る。
住宅街の1戸
大学教授「彼から引っ越し先とか聞いていませんねぇ。」
戸川「家族や親類でも⋯⋯」
大学教授「⋯さぁ⋯⋯何しろ奈良丸博士は一人息子さんを20年前に亡くしていらっしゃるし⋯⋯」
戸川「そうなんですか?」
大学教授「えぇ。すいませんね。あまりお役に立てなくて⋯⋯」
戸川「いいえ。此方こそ突然お邪魔してすいません。」
大学教授「いいえ。」
一平は聞くべき事を聞いてその家を後にする。
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鏡「おのれ!!あのフロンガめぇええええリベンジじゃあああああああ!!」
由利子達が奈良丸博士を探すのに動き出したも同じ頃 三門市 市外の森では頭に包帯を巻いた拓也が両手を力強く高く上げて声高らかに叫んでいた。
成川「却下だ。馬鹿者。」
そんな凄くやる気満々の拓也に呆れた顔で注意の言葉を出すジョージ。
太刀風「元気だな⋯⋯お主の弟子は。」
成川「違う。弟子じゃない。仮に弟子にするならもう少し落ち着きのある奴が良い。例えば⋯⋯」
ジョージは拓也から視線を変えて木製レイガストの刀身が激しく打ち合っては短く離れて再びレイガストを打ち合う染井華の姿を見る。
染井「⋯⋯。」
「手首だけで振らない。しっかり攻撃を防いで!?トリガーの持ち手も離さないようしっかり握って!?」
染井「はい!」
拓也を含めた三人は剣持夢想と染井華の防御の鍛錬をする光景を見ながら
太刀風「⋯⋯⋯言っておくが、彼女を拙者達の弟子にするには反対で御座るぞ。」
成川「⋯⋯分かっているさ。拓也。お前はとにかく傷の回復する事に集中しろ。もし次も勝手にフロンガと戦ったら訓練内容を厳しくするからな。」
鏡「そんな〜!?」
戦闘機に搭乗した人を助けるまでは拓也の行動は褒める事だが浮遊怪獣に無駄な戦闘をした事については険しい表情で拓也を叱るジョージ。
染井「やぁ!?」
「チェスト!?僕もプリズム先輩に賛成だよ。君は推定200万ボルトの放電を始め放電攻撃を何回も浴びているんだよ。」
たまに華が放つ木製レイガストの連撃を次々と受け止めながら剣持は拓也に言う。しかし染井さんの防御や回避を学ばせるトレーニングの為、剣持は攻守を戻して木製レイガストを振るう。
鏡「電撃なんて俺の知り合いとの訓練でしょっちゅう貰ってますよ!?」
「えっ?」
染井「隙あり。」
(甘い。)
拓也の言葉に集中が思わず削がれその隙を逃さず放たれた染井の不意打ちの一撃を木製レイガストで弾いて再び染井さんの防御のトレーニングを続ける剣持。
「隙を攻撃する時は、隙ありなんて言っちゃ駄目だよ。」
染井「分かったわ。」
「でも実際にどうフロンガを止めましょう。」
分身とはいえレッドマンのエネルギーを全て吸い尽くした恐るべき怪獣フロンガに剣持夢想自身は焦っていた。
太刀風「落ち着け夢想。染井華の訓練に集中しろ。」
「はい。」
成川「既に本部がある星に俺の変身許可証は提出した⋯⋯後は向こうからの返事が来るのを待つしかない。」
フロンガが出現しレッドマン達の敗北から数日⋯⋯地球の最悪の事態に備えてジョージは既に動いていた。
染井「⋯⋯⋯聞いているとまるでお役所の手続きのまんまですね。」
「染井さん。僕と戦いながら他の人達の動きを追う訓練はまだ先だから目の前の僕に集中して。」
染井「ごめん。」
トレーニングをしながら近くで皇虎とジョージの会話や問答を聞いてつい反応してしまう剣持達。
太刀風「ゾロは拙者達とは違い色々な星の生態系を調査する仕事をする公務員。元の姿に戻るのや使う技の類によって色々と許可がいるので御座るよ。」
成川「レンボー星人の能力を考えるなら仕方ない。甘んじて受け入れるさ。」
太刀風「うむ。」
剣持は染井華の防御のトレーニングが終わらせて華と共に一休みをしていた。
「あれ、そういえば、春日さんは?」
剣持は周囲を見渡して炎太郎の姿が無い事に気付く。
成川「フレイム仮面なら東京に行きフロンガの監視をしている。」
東京上空でエネルギーをむさぼり食うフロンガを路地裏から炎太郎はサングラスと黒スーツ姿で監視していた。
春日「⋯⋯。」
意図的に自身の気配とエネルギーを小さくしてフロンガの海藻のように揺らめくセンサーアンテナをやり過ごす炎太郎。炎太郎はサングラス越しに瞳の橙色に小さく光らせフロンガを見る。
春日(フロンガめ。昨日に比べてまた成長してやがるぜ⋯⋯)
炎太郎の目にはフロンガの内部のエネルギーを増幅するフロンガコイルを様子を見る。
我が物顔でエネルギーを吸収し成長するフロンガを見て炎太郎は罪の無い人達の様々な生活エネルギーを奪う怪獣に熱い正義の炎が内から激しく燃え上がるも衝動に任せて自分が変身して挑んでもレッドマン達の二の舞になるだけと頭を冷静にさせる。自分とフロンガでは相性ははっきりいってかなり悪い。
春日「⋯⋯。」
更にエネルギーを吸収する度にフロンガは周囲に大量のオゾンを吐き出しその影響で東京は真夏のような状態になっていた。熱や炎を攻撃に使う炎太郎にはこれと言った問題ないが東京に居る人間達にとっては散々な状況であった。
春日(早くプリズムファイター先輩が変身許可の承認が下りないと大変な事になるな。)
炎の心を燻ぶらせながら炎太郎は監視を続ける。
場面は東京から三門市の黒野の屋敷の書斎にて
黒野「セバス。進捗はどうだ?」
あの日、調査したフロンガの生態を調査報告書に記入しながら黒野はセバスにある事について尋ねる。
セバス「急な事でしたが旦那様の命令通り館の半分の暖炉を使える状態です。」
黒野「⋯⋯そうか。残りの半分の暖炉の状態は?」
セバス「半分の4割の暖炉はまだ溜まった煤掃除を終わらせば問題ありません。しかし⋯⋯残り1割は⋯⋯」すんなり答えていた物の途中言いにくそうに言うセバス。
黒野「⋯⋯分かった。燃料になる薪の方は?」
セバス「薪の方は問題なく倉庫の保存してあります。」
黒野「去年、必要以上に無駄に確保したのが功を奏したな。」
セバスから報告を聞き返事を返すも俯いたまま黙々と書類を書いている様子の賢人の姿を見てセバスは
セバス「⋯⋯旦那様は東京に出現した怪獣に備えて準備しているのですか?」
黒野「っ!?⋯⋯⋯。」
セバス「⋯⋯。」
確認するように尋ねるセバスに中間調査報告書を書くペンを握った手がピタッと止まり短くも静かな静寂が二人の間に包みやがて視線を俯いていた黒野は申し訳なさそう表情でセバスと向き合いフロンガの脅威に対して正直な気持ちを言う。
黒野「⋯⋯そうだな⋯」
セバス「旦那様。そんな申し訳ない顔をしないで下さい。」
優しそうな表情と声色で黒野賢人に言うセバス。
黒野「こんな時、義父さんならどう考えて動くのだろうと⋯⋯勝手に比べちまったんだよ。⋯⋯なぁ⋯セバス。」
セバス「はい。」
黒野「⋯⋯セバスなら20年前に起きたバルンガ騒ぎを知っているだよな。」
セバス「⋯⋯ええ。お亡くなりなった先々代と先代でバルンガ騒ぎを経験しました。」
黒野「⋯⋯そうか。」
バルンガ騒ぎ⋯⋯風船怪獣バルンガによる日本の大混乱の出来事
フロンガ同様にあらゆるエネルギーを吸収し巨大になる怪獣の前に多くの人々に恐怖を与えた騒ぎ。黒野賢人にとっては資料や記録でしか知らない出来事。
セバス「⋯⋯不安ですか?」
黒野「⋯⋯あぁ。この地下の格納庫にある戦闘機は勿論⋯⋯自慢の装甲とパワーを持つガーディアンAですら動力のエネルギーが無ければ只のウドの大木だ。ドン・ガバでさえも⋯⋯」
このまま時間と共にフロンガの吸収量が成長する度に増えるなら黒野が今必死にやっている事は焼け石に水かも知れない。
セバス「大丈夫ですよ。」
黒野「えっ?」
数多の怪獣に有効打を与える物が使えない現状に不安を覚える黒野。
セバス「先々代もバルンガ騒ぎの時には旦那様みたいに不安な表情で私と先代に弱音を吐いていました。」
黒野「⋯⋯。」
セバス「その時、不安そうな先々代に私は安心させる為にこう述べましたよ。」
黒野「なんて?」
セバス「不安でも良いから自分の出来る事をやりましょう。」
黒野「っ!?」
セバス「旦那様は先代でも先々代でもありません。ですが今は
貴方が此処の主⋯⋯居ない人と比べるだけ時間の無駄ですよ。」
黒野「そうか⋯⋯」
セバス「次いでに言うなら先々代は私の言葉を聞いて「もっと格言みたいなためになる言葉を言ってくれよ。」っと言ってました。」
黒野「⋯⋯⋯話を聞いて先々代と同じ言葉が浮かんだよ。」
不安そうな表情を辞めて呆れた気持ちを込めたジト目でセバスを見る黒野。
セバス「其れは良かったです。」
そんな黒野の反応を見て安心するセバス。
黒野「⋯⋯⋯バイオ燃料も用意する必要があるな。」
フロンガの起こす二次災害に備えて屋敷の倉庫にバイオ燃料用のトウモロコシを始めとした穀物の存在を思い出す黒野。
しかしそんな黒野の提案にセバスは困った笑みを見せる
セバス「申し上げますが⋯⋯旦那様。今からトウモロコシらの原料を粉砕し糖に分解、更に充分な発酵させ蒸留と工程を考えて短くても2週間近くは掛かりますよ。」
黒野「⋯⋯こんな事になるならバイオ燃料をもっと前に作っておけば良かった⋯⋯」
原料の粉砕は最悪、俺が開発したトリオン兵を利用すれば良いが糖に酵母を加えたエタノールを造るアルコール発酵は時間が掛かる。
黒野は諦めた表情をし
黒野「⋯⋯バイオ燃料は見送る。」
それを聞いたセバスも納得の返事を言う。
セバス「それが宜しいかと⋯」
場面は黒野の屋敷から三門市の市外の森に戻り
「拓也。どっちみち普通の正攻法で奴は倒せないんだ。焦らずにプリズム先輩の変身許可が出るまで待とうよ。」
剣持は手作り弁当を食べながらフロンガに負けて悔しそうにする拓也を宥めていた。
染井「⋯⋯。」
染井(剣持君が作ったお弁当。美味しい⋯⋯)
染井華も訓練に合わせて剣持が用意してくれた素朴なおかずやおにぎりが入った手作り弁当を堪能しながら会話に耳を傾ける。
鏡「⋯⋯剣持先輩の瞬間移動能力を利用してフロンガを地球から宇宙へ追い出す事は可能ですか?」コンビニおにぎりを片手に食べながら拓也は剣持に自分で考えた解決案を口にする。
「⋯⋯可能だけど⋯⋯それで変身許可の無いプリズム先輩を除いた僕ら巨大ヒーローが全員変身して宇宙空間にいるフロンガに向けて得意の必殺光線技を一斉に放っても倒せるどころかそのエネルギーを吸収して余計に成長させるだけで根本的な解決にはならないよ。」
鏡「そうか⋯⋯良い案だと思ったんだけどなぁ⋯⋯」
成川「心配するな。宇宙広くてもフロンガのようなタイプの怪獣は稀だ。銀河連邦でも珍しいくらいだ。」
太刀風「別次元では"虚空怪獣の別名を持つ動く超常現象"や宇宙の天体を吸収し無限に成長する不定形な暗黒怪獣らしいで御座るな。」
鏡(宇宙怖えぇぇ!!超怖ええぇぇ!!)
「その別次元の天体を吸収し無限に成長する暗黒怪獣なら知り合いの弟が体内に入って針で体内をあちこち切り裂かれて退治されたぞ。」
鏡(一寸法師みたいな倒され方をしてる!!)
染井「剣持君のその知り合いの弟さんって何者なの?一寸法師?」
疑問を覚えた華は剣持に質問する。
「いや?単にソイツが知り合いの兄弟の中で武器の名手って呼ばれてるだけだよ。」
華の疑問に対して淡々と答える剣持。
(寧ろソイツの以外の兄弟達もとんでもないしな。)
無表情で内心呆れながら例の兄弟達の姿を思い浮かべる剣持。
「⋯⋯⋯。」
(とはいえ⋯⋯拓也の気持ちも分かる。)
直接的な破壊活動をせずただ存在するだけで人々の日常に影響を与える浮遊怪獣に剣持夢想とベムは何も感じない訳では無いが⋯拓也に説明した通り正攻法では倒せない怪獣のために今はひたすらに満を持するのを待つ。
(⋯⋯自分の力で不安や脅威を消せない事は嫌な物だな⋯⋯)
複雑な気持ちを込めた視線の方角をフロンガの気配を感じる東京へ向ける。
休憩を挟んで再び染井さんと防御や回避のトレーニングをした後でその日は解散した。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
拓也達と途中で別れて自宅に1人帰宅した剣持はボーダー上層部に提出するフロンガの生態についての中間調査報告書を書いていた。
「⋯⋯⋯。」
1人黙々と報告書と向き合っていると突然スマホが電話が鳴る。
「はい。もしもし?」
志岐《もしもし?剣持君?》
「どうしたの?志岐さん。」
電話の相手は那須隊のオペレーターの志岐さんだ。
志岐《東京に怪獣が現れたのに攻撃とかせずにそのままにして大丈夫なの?》
「大丈夫じゃないんだが、肝心の怪獣に対する決め手が今は無いんだ。」
志岐《それってヤバない?》
「割とヤバいよ⋯⋯」
小夜子と会話しながら東京にいるフロンガの姿を思い浮かべる剣持。
志岐《何か私に伝える事ある?》
常に怪獣をレッドファイトしているレッドマンの剣持君が強敵と言うんだ。本当に強敵なのだろう。もし助言の類があるなら聞いた方が良い。
「そうだな⋯⋯災害時に使うスマホのモバイルバッテリーとかあるか?」
志岐《へ?普通のモバイルバッテリーは一応あるけど⋯⋯災害時?どんなの》
「防災やアウトドアとか手回し充電があるタイプだな。」
志岐《そういうのはウチ無いね⋯⋯》
「無いのか。」
志岐《無いね。どうして手回し充電タイプのモバイルバッテリーを?》
「あの怪獣は周囲のエネルギーを吸収しているのは知っているか?」
志岐《うん。ネット掲示板で東京で起きてる被害が結構書かれてるよ。怪獣が出現した地域の会社では仕事は勿論の事、社内の電気も点かないし住宅には電気やガスが出ないから日常生活に支障が出てるって⋯⋯》
「移動せずいるだけで人の日常生活を脅かすからな。」
志岐《もしかして⋯⋯地球の終わり?》
「そうならないように皆自分自身が出来る事をしているんだよ。」
志岐《掲示板の内容を見てまるで大都会で起きた大停電みたいな状況だね。》
「普通の大停電なら複数の発電所を再稼働させれば復旧なんだけどね。これは怪獣災害の二次災害だからなぁ⋯一筋縄にはいかない。」
志岐《カップヌードルとか缶詰とか色々買った方が良い?》
「保存食は念の為に購入した方が良いよ。」
志岐《おぉう⋯⋯急いで水と塩昆布を沢山購入しなきゃ。》
「水と塩昆布以外も普通に購入しなさい。」
志岐《はい。》
真面目な返答に小夜子はしょんぼりしたの表情で返事する。
「怪獣の二次災害の為に物流施設にも影響が出ている。もしスーパーに行く予定があるなら付き添うぞ。」
フロンガの二次災害に備えと友達の小夜子の安全を考えて剣持は護衛と荷物持ちを立候補する
志岐《ほえ?⋯⋯⋯えぇ゙っ!!》
生返事をした小夜子は⋯⋯⋯間を置いて変な声を口から出す。
(凄い声だな⋯⋯どっから出したんだろう。)
志岐《良いの?》
「別と友達と買い物なんて普通でしょう。今日の夕方の16時に志岐さんの家の前で合流するのはどう?」
置かれている時計に視線を向けながら剣持は時間を決める。
志岐《うん。分かった。16時ね。》
そうやって志岐さんからの通話が切れる。
「さて⋯⋯それまでに報告書を終わらせるか。」
(勝てない怪獣に悔しさを感じても良いから⋯⋯今は目の前の事を集中しろ⋯)
そう独り呟くと気持ちを切り替えスマホを充電し直した剣持は机にある中間調査報告書に視線を向け動く。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
一方、拓也が所属する地下基地ヘリオンのでは
鏡「⋯⋯。」
今日は義父が帰りが遅いと知っている為に自宅に帰宅せず仲間達が居るヘリオン基地へやってきた拓也。
甲斐馬「すっかりと上の空だな⋯⋯拓也の奴。」
孔明「無理もありませんよ。怪獣と対決して倒せなかった弊害が今東京で発生している状況なんですから。」
鉄鬼「元気だしなよ。拓也。」
鏡「元気だよ。」
拓也は基地内部にあるノートパソコンのモニター画面を見詰めながら力の無い返事を言う。
鉄鬼「こりゃあ、重傷だぜ⋯⋯」拓也の力の無い返事を聞いて肩をすくめる鉄鬼。
甲斐馬「だからといって俺達が拓也の代わりに怪獣と戦えるかって聞かれたら無理だぞ。相手は電気エネルギーや運動エネルギーを吸収する特性持ちだ。」
鉄鬼「隼人さんの超能力の瞬間移動で怪獣の体内に飛び込んで内側から攻撃するとか?」
甲斐馬「ほぅ⋯⋯面白い方法だな。」
鉄鬼の変わった提案に笑みを浮かべる隼人。
孔明「はいはい。二人とも、怪獣対策より今は隼人さん達が遭遇した幹部の対処法を考えましょう。」
その言葉を聞いた瞬間、拓也以外のヘリオンのヒーロー達やメンバーが雑談を辞めて孔明の方を切り替える。
埠「隼人君。デススカル将軍と遭遇した時はどうだった?」
甲斐馬「すいません。埠さん。幹部と遭遇したんですけど戦闘はしていないんです。」
孔明「そうなの?」
インセクトF「エレキトリガーマンは、俺達の安全を優先して幹部との戦闘を避けたんだ。」
甲斐馬「でも俺が倒した幹部パイロテスターと違い必要なら最前線に出撃するタイプのようです。」
鉄鬼「将軍だからな。きっと卑怯な事が嫌いな正々堂々の戦いが好きな奴だぜ。」
孔明「武人肌の人間ってたまに変なスイッチが入って融通が効かないんだよな⋯⋯」
孔明は何故か鉄鬼の方を見ながら言う。
埠「悪の幹部に偏見を見る物じゃない⋯⋯相手の能力も把握していないんだ。暫くは遭遇しても可能な限り戦闘は避けて相手の動きの癖や能力の観察や分析を優先してくれ。」
ヘリオンのヒーロー達「「了解!?」」
鏡「⋯⋯⋯。」
ヘリオンのヒーロー達がガイラットの幹部デススカル将軍に対して方針を決めている横で拓也はノートパソコンのモニター画面に映る映像を凝視していた。
緑色のカラーリングが身体が入った白銀の巨人と宇宙から来た侵略者と様々な戦いの記録。
自分が普通ではない出自と知った⋯⋯その事については自分は悪いとは感じない⋯⋯
色々な戦いで実力が未熟過ぎるも自覚している⋯⋯
⋯⋯そして地球を守る光の超人の1人だからこそ⋯⋯
自分の前にいた存在に興味を持つのに時間は掛からなかった⋯⋯
戦いにおいて未熟だからこそ導きが必要だった⋯⋯
鏡(ミラーマン。俺の前の地球を守っていた光の超人⋯⋯)
彼も俺と同じで怪獣に苦戦もするしピンチに陥る事もある⋯⋯飛ぶ事も出来ない⋯⋯負ける事だってある⋯⋯けど⋯⋯
鏡(俺よりも自分の能力を使いこなしている。)
彼の戦いは俺と同じく必死さが見ている此方にも伝わってくる。
彼の荒削りな戦い方は敵と戦う度に少しずつ洗練されていく。
鋼鉄竜、火炎怪獣、暗黒怪獣、分身怪獣、ロボット怪鳥、鋭い剣状の光線を手から出す火焔怪人、強力な戦闘力を持つ黄金怪人、人形に変身可能な人形怪獣、東京に死の灰を降らせる為に原子力船を狙った透明怪獣、国立科学博物館から奪った恐竜の骨に宇宙生命を融合し蘇生した光を圧縮・吸収する光物質の目を持つ古代恐竜、妖怪怪獣、兄弟巨大星獣、異次元モグラ、巨大宇宙怪獣、電気怪獣等々⋯⋯閲覧した映像は戦闘関連な物ばかりだが⋯⋯
拓也は映像を見終えると⋯⋯
鏡(⋯⋯違う。彼がミラーマンの能力を俺よりも使いこなしているんじゃない⋯⋯俺が単に色々な理由をつけて楽になりたいだけだ。)
彼は今の俺よりも強いかも知れないが⋯⋯でも最初から強かった訳じゃない⋯⋯寧ろ、最初は俺と同じで自分の能力の把握も満足に出来ない状況で鋼鉄竜とギリギリの戦いをしていた。
成川先輩から怪獣フロンガと戦うなと事前に言われていた。
鏡(俺がすべき事は先輩の言う通り傷の回復を優先する事⋯⋯でも、分かっていたけどリングやナイフやソード以外に多種多様な技や能力があるんだな。ディフェンスミラーだって展開の仕方によっては応用性がある。)
負けた事実に悔しさを感じていたが、こうして空いた時間を利用し先人の戦いの映像記録を見て今の自分の戦い方の無駄や反省点を探しては今後の戦いに繋げる。そういう長所と短所の把握も大事な事だと拓也は知っている。
鏡(先人達の動きを参考に俺自身の手札や切り札を活かした戦い方を模索するんだ。)
甲斐馬「⋯⋯。」
力無く映像を見ていた拓也の瞳が力強く燃えている物になっている様子を隼人は流し目で見て
甲斐馬(理由は思考を読んでいないから分からないが元気を取り戻したらしい⋯⋯頃合いを見てガイラット幹部対策の方針についての話をしてやるか⋯⋯それにしてもイコに変身する地球外生命体が存在するとはな。)
あの日⋯⋯偽生駒達人から照屋達を守った日から数日後、普通にイコの姿を見掛けたがどうやらしっかりと本人のようだった。
甲斐馬(連続バラバラ殺人事件に関しては拓也は何も知らないようだし⋯⋯結局、謎は残ったままか⋯⋯)
自分達ヘリオンは吸血鬼事件の解決に奔走していたからな。
埠「隼人君?」
甲斐馬「はい。埠さん。」
名前を呼ばれて拓也から話し合いの場に隼人は視線を戻す。
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拓也とは別に剣持はフロンガの中間調査報告書を書き終えて小夜子が住んでいる自宅へ向かっていた。
「⋯⋯。」
志岐の家まで歩く道のりの中、何気なく行き交う人達に目を向ける。
東京に出現したフロンガが倒されていない状態であるにも関わらず三門市はまるで対岸の火事のように何時も通りの日常を過ごしている様子を見て剣持は東京に住む人達に申し訳なく感じてしまう。
(状況が悪くなる前に成川先輩の変身許可が下りないと大変な事になるな⋯⋯)
無表情でも内心は不安な気持ちでいっぱいな夢想であった。
同時刻 ボーダー本部の寮 染井華の部屋にて
染井「⋯⋯。」
剣持のトレーニングから帰り身体を休んでいた彼女は何気なく備え付けの冷蔵庫の中を確認して⋯⋯
染井「⋯⋯スーパーに行かないと。」
自然な理由で彼女はゆっくりと立ち上がり外出の準備をする。
場面は染井から剣持夢想の方に戻り
「⋯⋯。」
志岐「⋯⋯。」
目的のスーパーまで徒歩で移動する間、行き交う人々が怪しい人を見るように剣持の隣にいる白いマスクに黒いサングラスを付けた小夜子の姿を見る。
特にその視線に剣持と小夜子は気にする気はないし事情を知っているからとやかく言う事もない。
志岐「何か話振って?」
「唐突だね⋯⋯」
志岐「せっかく二人で買い物に行くのに目的地まで終始互いに無言はアレでしょう?」
「⋯⋯数日前に太刀風先輩の弟子になりました。」
少し考えてから小夜子に話を振る夢想。
志岐「えっ!?」
小夜子は振られた話に驚愕の表情を見せる。
「理由はこれから戦う相手が余りにも僕よりも強過ぎるから⋯⋯天使騒ぎを終わった辺りから決めていたんだ。」
天使騒ぎでの激闘を思い出しながら剣持は理由を口にする。
志岐「⋯⋯大丈夫なの?」
心配するように小夜子は隣を歩く夢想に聞く。
「⋯大丈夫。心配してくれてありがとう。皆の中で一番僕が弱いからさ。少しでも強くなって安心して皆を守りたいんだ。」
心配する小夜子に剣持は安心させるように優しく微笑んで自分の気持ちを口する。
志岐「⋯⋯。」
その本人なりの笑顔を見て小夜子は何故か儚さや寂しさを酷く感じてしまうのだ。
「⋯⋯志岐さん?」
志岐「剣持君⋯⋯やっぱり、ダメ元であの先輩達に相談しない?」
「どういう事?」
志岐「剣持君よりも戦闘経験がある人達がこの三門市に何人もいるのに、その人達は自分達が追ってきた連中以外は必要以外に干渉しないのは⋯⋯それって普通に剣持君の方が負担が大きいって思うの。」
「⋯⋯。」
志岐「私は⋯剣持君より格上の怪獣や宇宙人には強い先輩に任せても良いと思うの。だって⋯⋯この先の戦いでボロボロになる剣持君なんて私見たくないから」
小夜子は剣持に建前と本音を伝える。怪獣との戦いを遠くで見守るしか出来ない自分のワガママと分かっていても言わずにはいられなかった。剣持君はその言葉を聞いて少し目を見開き
「⋯⋯志岐さんのその考え⋯⋯僕も浮かんだ事があるよ。」
志岐「そうなの?」
「でも何かが理由で僕よりもずっと強い先輩達が不在の時に大切な人が危険に晒された時に居ない人達を言い訳にしない為に弱くても⋯⋯弱いからこそ⋯⋯自分の出来る事を少しでも増やしたいんだ。」
自分なりの強くなる理由を小夜子に伝える剣持。
志岐「⋯⋯⋯。」
「ゴメン。変な話題を振って⋯⋯違う話題にしよう。」
気まずい感じになった為に話題を変える剣持。
志岐「なら今度、那須さんの部屋で那須隊の皆と映画鑑賞をする予定だから何か泣ける映画とか知らない?」
「其処は笑えるコメディ映画とかじゃないんだ?」
志岐「良い映画で候補があるなら教えてよ。」
「そうだね⋯⋯」
夢想と小夜子は那須隊の皆が見れる映画の候補の話題に盛り上がりながらスーパーへ向かう。
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染井「あっ。」
謎の少年「うん?」
一方、染井華も剣持達同様にスーパーに向かっていた。その途中のCDショップの前で剣持君達の知り合いの名前も分からない少年を見掛ける。
染井「君は⋯⋯」
謎の少年「お前は⋯⋯⋯眼鏡の女。」
自分に対して妙な呼び方をする少年に華は一瞬小さく目を見開かせるも直ぐに冷静になり
染井「⋯⋯⋯私の名前は染井華よ。」
彼女は少年に目線を合わせ自分の名前を名乗る。
謎の少年「そうか。俺は⋯⋯ナイトだ。」
染井(思ったよりも変わった名前⋯)
少年の名前にキラキラネームを連想させる華。
染井「それで⋯⋯ナイト君はこんな所で何しているの?」
目の前の少年は視線を華から後ろのCDショップに向けて
謎の少年「2代目が戻ってくるのを待っている。」
染井(どうしてナイト君は店に入らないのかしら?)
華は少年⋯⋯ナイトの行動に素直に疑問に思った。
謎の少女「ごちそうさまでした。美味しかったです。」
喜びを隠さない満面の特徴的な笑みと共に変な言葉を言いながらCDショップから出てくる謎の少女。
染井「うっ。」
最初は気にしなかったがこの二人⋯⋯汚い所にいたのか分からない物の凄く臭い意味で臭う。
謎の少女「お待たせ。ナイト君。それじゃあ買い物に行こうか。」
謎の少年「はい。2代目。」
染井(この臭さ⋯⋯まさか2人ともお風呂に入っていないのかしら?)
謎の少女「あれ?貴方は確か⋯⋯」
染井「こんにちは。染井華よ。」
謎の少女「こんにちは。2代目です。」記憶に残りそうな特徴的な笑顔をする少女とは剣持といる時に会ったのだが、互いに名前を教えてなかった為、改めて自己紹介をする二人。
染井(⋯⋯何の2代目なの?)
色々と謎が増える少女と少年に華は困惑する。
謎の少年「行きましょう。2代目。」
謎の少女「うん。」
まるでボディーガードのように周囲を警戒して歩く謎の少年は少女と共にこの場を後にする。
染井(変わった子ども達ね⋯⋯私も私の用事を済ませよう⋯⋯)
華は変わった二人の事が気掛かりになるも気を取り直してスーパーへ向かう。
スーパー三門の前では
謎の少女「また会いましたね。染井さん。」
染井「⋯⋯そうね。」
スーパーへ行く途中へ別れたのに華は再びスーパーの前で謎の少年少女と出会う。二人の様子から見て買い物と見て間違いないのだろう。
謎の少女「染井さんもこのスーパーでお買い物ですか?」
染井「ええ。」
謎の少女「良かったらご一緒に回りませんか?」
染井「⋯⋯そうね。」
謎の少年「2代目。カートと言う物をお持ちしました。」
2代目の少女の元にスーパーマーケットのカートを両手で押してきた少年が合流してくる。
謎の少女「ありがとう。ナイト君。」
少年と少女は華の左右に陣取りスーパーの奥の向こうへ行っていく。
染井(どうして私を真ん中に⋯⋯)
染井達は出入り口近くの野菜コーナーを歩く。謎の少年⋯⋯ナイトはまるでスーパーを始めて来た子どものように周囲の野菜を珍しそうに見る。その表情に子どもらしいワクワクといった物は感じられないが⋯⋯野菜や果物に興味はある⋯⋯そんな表情をナイトはしている。
染井「⋯⋯。」
華はナイトの反対側にいる2代目と名乗る少女の方を見る。
謎の少女「ほほぅ~~しめじやもやしが中々お得だぁ⋯⋯」
少女の方はナイト君と違いスーパーに慣れた様子でお買い物をしていた。
謎の少年「⋯⋯。」
こうして見るとナイト君は何を考えいるのか気になる華。
染井(でも何でだろう⋯⋯ナイト君のこの無愛想の顔、剣持Xに少し似ているな。)
視線を野菜コーナーに売っている野菜からナイトの方を見る華。
謎の少女「ナイト君の顔に何かついてますか?染井お姉ちゃん。」
染井「えっ?あっ!ごめんなさい。貴方の友達をジッと見てしまって⋯⋯」
謎の少女「いえいえ、ナイト君は見ての通りスーパーの中に夢中のようですし気にしている様子もありませんよ。私とナイト君の関係は友達に見えますか?」
染井「違うのかしら?」
謎の少女「⋯⋯秘密です。」
染井(ナイト君もそうだけど⋯⋯2代目と呼ばれる少女も気になる所が多すぎる。どういう生活をしているのかしら?)
臭いもそうけど⋯⋯モスグリーンのパーカーにフードを2枚重ね⋯⋯ト音記号が描かれた服⋯⋯ズボンは履かずにスパッツ⋯背中に背負ったランドセルと寝袋⋯⋯履いているのは靴はサンダルはなくスリッパ⋯⋯手にはめているのは指ぬきのグローブではなく指ぬきの軍手⋯⋯普通の年頃の女の子がする服装のファッションにしてはあまりに独特過ぎる。私の周りにはいないタイプの子もあって気になる所ばかりの二人と共に華は自分の買い物をする。
謎の少年「ムッ。」
三人仲良く歩いてスーパーの中を進んでいるとカートを押していた少年は突然立ち止まる。
謎の少女「あれ?どうしたの?ナイト君?」
華と2代目の少女は立ち止まった少年の方に振り返る。
少年の視線の先を二人は追うと剣持夢想とその剣持の背中にピタッとくっついている志岐小夜子の姿がいた。
染井(あら珍しい⋯⋯あの二人も来ていたんだ⋯⋯)
剣持君は普通だから特に言う事はなくても基本、志岐の方はスーパーに姿を殆ど見せる事はない。ネットの通販で購入するか那須隊の面々と買い物する。だからこうしてスーパーで小夜子の姿を見掛けるのは珍しかったのだ。そんな二人の様子を見ていた華の顔と剣持を2代目の少女はじぃ~と交互に見ていた。
謎の少女「あっ⋯⋯成る程。」
華の様子を見て何かを察した少女。
謎の少年「どうしましたか?2代目。」
謎の少女「うんうん。何でもないよ。ナイト君。あっ。染井お姉さん。私達違う所を見て回りたいので少し別行動して良いですか?」
染井「大丈夫?」
華はナイトの方を見て問いかける。
謎の少年「問題ない。2代目は俺が守ります。」
染井「⋯⋯そういう事じゃないんだけど」
年不相応の独特な受け答えに色々と思う事はあるが、見ている限りナイト君は2代目と呼ばれる少女を大切にしていると気持ちは理解する華。
染井(ナイトって夜を意味かと思ったけど守護する騎士を意味する名前なのかしら?でも⋯⋯)
ナイト君の2代目の少女にする立ち回りを見て
染井(ナイトって言うよりも⋯⋯⋯セコム?)
改めて見てみると二人の関係は護衛と護衛対象者の関係に見える。少女から秘密と言われた為に実際二人の関係がどんな関係なのか分からないけど
謎の少女「うぇっへっへっへ。私達の事はお気になさらず⋯⋯じゃあ、ナイト君。惣菜パンのコーナーに行くからついてきて?」華の方を見て記憶に残りそうな独特な笑い声と共に少女は少年を連れて別行動する為に華から離れていく。
謎の少年「分かりました。また会おう。染井華。」
染井(この子もこの子で人をフルネームで呼ぶ癖は何なのかしら?)
二人の後ろ姿を見つつも1人になった華は剣持達の方へ視線を向ける。
染井(どうしようかしら?)
別に後ろめたい事など二人には無い。話し掛けるだけなら何も問題ない。でも此方から話し掛けて大丈夫かしら?
染井(どんな物を購入しているのかしら?)
何気なく視線を二人から二人が持つ買い物カゴへ移す華。
二人の買い物カゴにはカップヌードルや缶詰が所狭しと入っていた。
染井「⋯⋯。」
華は無言で二人の買い物カゴから視線と距離を離し華はゆっくりと天を仰いだ。
染井(一人暮らしをする時の色々と心配する買い物をしている!?)
そして心の中で突っ込んでいた。
生駒「おう、剣持。こんばんはや。」
「こんばんはです。イコさん。」
華は聞き慣れた声に反応し視線を元に戻すと生駒隊の生駒隊長が剣持と遭遇していた。
染井(あれ?志岐さんがいない。)
視線の先にさっきまでいた小夜子の姿がない事に華は気付く。
染井(一体何処に⋯⋯)
「最近はどうですか?」
生駒「ボチボチやな。暫く寮に戻ってなかったから部屋の掃除とか大学の単位とか色々とあの事件の弊害を一つずつ減らして日常生活を取り戻している最中や。」
近所の主婦のような動きをしながら剣持に近況を伝える達人。
「イコさんもスーパーでお買い物ですか?」
生駒「せやな。剣持は⋯⋯」
「??」
生駒「アカンで剣持!?めっちゃ偏った物ばっかこうとるやん!?」
何気なく達人は視線を剣持から剣持が持つ買い物カゴに視線を移すと驚愕の表情で口元を主婦みたいに手を当ててツッコミを叫ぶ。
「イコさん。心配しなくてもビタミン剤やサプリメントも購入しますよ。」
生駒「アカンで!?何で今日に限ってそんな物ばかりこうてるやん!!」
染井(今日に限ってって事は、あの二人はスーパーで割と出会うのね。)
生駒は剣持の言葉をツッコミつつ剣持の買い物を心配している様子だ。しかし剣持は焦らず達人に購入理由を伝える。
「イコさん。もしもの事を考えての保険や備えは大事ですよ?」
生駒「えっ?どういう事や?」
「この所、日本の各地に起きている怪獣災害はイコさんも知っているでしょう。」
生駒「勿論や。」
「今だって新聞やテレビでも話題のニュースになっているフロンガなんて奴も東京上空にいるんです。あんな怪獣がいるなら危機感を抱いて俺だって非常食とか保存食とかも購入だってしますよ。」
生駒「そうゆう理由なん?」
「そうですよ。」
生駒「せやな。⋯⋯俺も何かこういうのをこうた方がええか?」
「イコさんの買い物に俺の意見いりますか?」
生駒「剣持の話を真面目に聞いていたら俺も非常食とか隊室においた方がええと思ってきたんや。」
「カロリーメイトとか売っている所は向こうですよ。」
生駒「こうしちゃおけれん。俺行ってくるわ!?」
そうやって⋯⋯生駒は剣持達から離れていく。⋯⋯後に生駒隊の隊室にお菓子ボックスが置かれるも小腹を空かせた部隊の隊員達に次々と減らされるのを達人はまだ知らない。そして達人は非常食のカロリーメイトを購入しようする途中のお菓子コーナーで足を止めてしまいお菓子を物色していた。
生駒「美味しそうなお菓子やな⋯⋯そうや。コレとコレを買ったら皆喜ぶだろうな。」
志岐「⋯⋯生駒隊長行った?」
何も無い所から声と共に姿を見せる小夜子。
染井(えっ?)
「それどうやって消えているんだ?」
志岐「引きこもりの能力だよ。」淡々と答える小夜子。
「そうか。引きこもりにはそんな能力があるのか。」
志岐「そうだよ。」
染井(いや、引きこもりにそんな能力あるの私、初耳なんだけど⋯⋯)
志岐「私程に長く引きこもりになると存在感を薄くしたり風景と一体化するなんて訳ないよ。」
「言ってて悲しくなる事を言うなよ。」
染井(自慢しているようで自虐している⋯⋯聞いていられない。)
剣持は小夜子から別の方へ振り返って言う。
「所で⋯⋯俺達に何か用ですか?染井さん。」
染井「っ!?」声を出さずに目を見開く華。
志岐「えっ?染井さん。いるの?」剣持の言葉に驚き周囲をキョロキョロとして見渡す小夜子。
「あぁ。気の所為と思わないくらいに凄く近くに染井さんの気配がする。」
志岐「⋯⋯剣持君。染井さんだってスーパーで普通に買い物するよ。」
「そういうのじゃないんだけど⋯⋯」
呆れながら言う志岐の言葉を反応しつつ自分の近くを通り過ぎるなら兎も角未だに自分達の直ぐ近くで立ち止まっているから⋯⋯剣持は珍しく自分から華の方に声を掛けたのだ。
染井(見つかった。)
剣持君には相手の気配を感じ取れる能力があると薄々感じていたが本当にあったみたい。オン・オフ可能と言うよりも意識を集中すると感じ取れるようだ。でなければ私がマキシボーン山やパリに来た瞬間、私が来ている事に剣持君が気付かないと説明がつかない。その時の私と遭遇した時の表情を見るに、必要以外は使っていないみたい。
染井「こんばんは。二人は一緒に買い物かしら?」
話し掛けようと悩んでいると逆に話し掛けられた華は二人の前に姿を見せて挨拶をする。
「こんばんは。染井さん。」
そんな悩みを知らない剣持は普通に挨拶を返し
志岐「そんな所です。」
小夜子が華の質問を答える。
染井「今日は何か安いのあった?」
落ち着いて華は二人との会話で予め決めておいた内容を口にする。
「魚コーナーのは特に変化無し⋯⋯豚ミンチと豚の小間切れが安いです。」
志岐「鶏モモ肉は高いよ。」
染井「相変わらずね。卵は?」
「250円以下。」
染井「あら。なら私も1パック購入しようかしら。」
(何だろう⋯⋯何時もの染井さんに比べて何か遠慮がちな気がする。)
至って普通の会話をしているつもりだ。ボーダーの寮の人間とスーパーでばったり出会って買い物の商品についての話題をする。
ボーダーという異次元から侵略者達と戦う特殊な点を除いても職場の人と職場以外で会うなんて何処にでもある話だ。
染井(私が剣持君と一緒にいる所を他のボーダーの人に見られるのは互いの事を考えたら良くないわよね。)
染井「色々と教えてくれてありがとう。じゃあ。」
剣持君の事情を知る志岐さんは兎も角、他のボーダーの人も通うこのスーパーの中では出来るだけ他のボーダーの人達に怪しまれないように剣持君との距離感を今のまま維持しないと考え会話を終わらせた華は二人の前から立ち去ろうとしていると⋯⋯
志岐「あっ。あの染井さん!?」
小夜子が立ち去ろうとする華を呼び止める。
染井「どうしたの?志岐さん。」
志岐「染井さんがもし良かったら何ですけど⋯⋯わ、私達と⋯⋯いっ、一緒に買い物しませんか?」
染井「っ!」
志岐「どうですか!?」
染井「⋯⋯。」
小夜子は剣持と華に気を遣ってそう提案する。
染井(⋯あぁ⋯⋯志岐さんは本当に優しい。)
その提案から小夜子の優しさを感じ取り華は軽く悩み⋯⋯
染井「⋯⋯そうね⋯⋯。」
悩んだ末に小夜子と剣持に視線を向けて華は返答内容を決めて口にする。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「⋯⋯⋯。」
前を並んで歩く二人の後ろ姿を剣持は付き添いとして二人から数歩距離を離れながら見る。
離れて見ている限り会話は弾んでいる様子だ。
(オペレーター同士分かる物があるのかな?)
小夜子は華との買い物に対して染井さんなりに折衷案を剣持と志岐さんに提案した。それは⋯⋯
(今日の買い物は志岐さんが主役。俺はあくまでも付き添いや荷物持ち⋯⋯だから一緒に買い物をする染井さんは志岐さんを意識する事。)
少なくても俺と染井さんが一緒に買い物するのを香取さんの知り合いのボーダー隊員や職員の人達が目撃して染井さんや志岐さんに在らぬ疑いが香取さん達に掛かるよりも所属部隊は違う物の同じオペレーター同士の買い物なら犬猿の仲でもない限り周りのボーダーの人達には怪しまれない。
(二人には頭が上がらないな。)
志岐「剣持君〜。」
「⋯今行くよ。」
志岐さんに呼ばれたから二人に剣持は近付く中で
(でも志岐さんはもう少し野菜とか肉等をバランス良く食べた方が良い⋯)
年上の男性が苦手で一人暮らし故に食事が出来合いの物といい偏り気味なのにほっとくと通販で購入した塩昆布と水で食事を済ます悪い癖を知っているから密かに志岐さんの健康を心配する剣持。
(次の志岐さんの家で料理する際に料理のレパートリーを色々と増やさないとな。)
(でもたまにはこういうのも悪くない⋯⋯)
世界各地にゾークロン細菌が宿主と共に潜み東京上空に浮遊怪獣がエネルギーを吸収し東京の経済や生活に被害を出しているし中で悪の秘密結社が世界征服の作戦を何処かで計画し異次元からは侵略者が現れる中で何気ない日常を確かに過ごしている。
(当たり前な事だけど⋯⋯何時もの平和な日常って僕の想像以上に尊い物なんだよな⋯)
志岐「こういうのどうよ?」
「⋯⋯それは値段が安い分量が余り入っていない奴だよ。買うならこっちの方が良いぞ。」
志岐「ほほぅ。」持っていた商品を戻して剣持に言われた商品を手に取る様子を見る華と剣持。
用があって呼ばれては二人に近付き買い物の助言を色々と言い用が済めば定位置のように二人から離れる事を何度か繰り返しながらスーパーを歩いていると。
ポニー「おや。染井さんに志岐さん。」
染井「えっ。」
自分の名前を呼ぶ声に反応し染井達は振り返る。
染井「あっ。ポニーさん。」
買い物をしていたポニー隊員とばったりと出会う。
ポニー「二人ともお久しぶり〜〜。」
特徴的なポニーテールと天真爛漫な笑顔で二人に近付き再会の言葉を言うポニー。
志岐「お、お久しぶりです。ポニーさん。」
染井「本当にお久しぶりです。」
ポニー「ホントだよ〜〜。」
染井「あの後、色々と都合が取れずそちらへ会いに行けなくて申し訳ありません。」
マキシボーン山の戦いの前日を最後に華はポニーに会っていない事を気にしていて頭を下げながら謝罪の言葉を申し訳ない気持ちと共にポニーに伝える。
ポニー「イヤイヤ、頭を上げなよ。ボクは別に会いに来なくて怒ってる訳じゃないから。」
志岐「そうなんですか?」
ポニー「アレからなかなか染井さんの連絡とかなかったから私は普通に心配していたんだよ。変な事件とか事故とかに巻き込まれたんじゃないかって」
志岐「あーっ。」
東京で起きた昆虫怪獣の怪獣災害や天使騒ぎに連続バラバラ殺人事件⋯⋯この所確かに怖い事が連続で起きたから連絡が中々なかった分、怒りよりも心配が増すのが小夜子は容易に想像出来る。
染井「うっ⋯⋯ごめんなさい。」
華自身幾つか心当たりがあるのか居た堪れない気持ちで謝罪の言葉をポニーに伝える。
ポニー「まぁまぁ、それよりも二人で買い物?」
志岐「いえいえ⋯二人じゃあありません。」
小夜子は数歩離れた立ち位置いる剣持に視線を向けてポニーもそれに続いて見るとニヤリとした悪戯っぽい笑みを二人に浮かべて
ポニー「⋯⋯もしかしてボク、お邪魔だったかしら?」
志岐「只の買い物に一体、何を勘違いしてるかは聞きませんけど⋯⋯ポニーさんが想像したのとは違うと言いますね。」
ポニー「怪しいな〜〜。」
染井「考え過ぎですよ。」
ポニー「そっか⋯⋯⋯剣持君と仲直り出来たんだ。」
二人の返答を聞き誂うような悪戯っぽい笑みから優しそうな笑みで華と剣持の方を見るポニー。
志岐「えっ?」ポニーの言葉にキョトンとする小夜子。
染井「っ。⋯⋯⋯⋯はい。」
その一言に染井は目を小さく見開きそして静かにポニーの伝えたい意味を察しポニーに対して色々と伝えたい感謝の言葉が幾つもあると言うのに⋯⋯頭の中で考えたどの感謝の言葉よりも単純で素直な返事を嬉しそうに微笑みながら染井は返す。
ポニー「⋯⋯良かった⋯⋯」
華の素直な返事を聞き太陽のような喜びの表情を見せるポニー。剣持君と染井さんの間にどんな会話があったのかポニーは何も知らない。でも二人の自然体な様子を見て友達思いの染井の此れまでの努力が報われた事を知り今はただ⋯⋯理由なんかの難しい事は気にせずに自分の事のようにポニーは天真爛漫な笑顔で喜ぶのだ。
染井「⋯⋯本当に⋯⋯色々と報告が遅れてしまってすみませんでした。」
そのポニーの笑顔を見て改めて色々と協力してくれた感謝の気持ちを込めて礼儀正しくポニーに再び頭を下げる華。
ポニー「もう⋯真面目なんだから⋯」
染井「厳しい家で育った者なので⋯」
志岐「⋯???」
染井「⋯⋯今直ぐは無理ですがお礼の品を持参してそちらへお伺い致します。」
ポニー「そういうのは良いよ。」
菓子折りを持って家に来る染井のイメージをしたポニーはやんわりと断りの言葉を伝える。
染井「ですけど⋯」
ポニー「なら今度は三人の予定が空いている時に何処かで美味しいご飯でも食べようか?」
染井「奢ります。」
ポニー「⋯⋯流石にソレはちょっと申し訳ないから割り勘ね。」
染井「分かりました。」
ポニー「ではでは後は皆さんでごゆっくり〜〜」
これ以上三人の楽しい買い物の邪魔するのは悪いとは考えたポニーはそう言うと、志岐達の前から去る。ポニーが去ると剣持が二人の後ろから近付いて小声で話し掛ける。
「何を話していたんです?」
志岐「何か染井さんと剣持君の仲直りが何とか⋯⋯心当たりある?」同じく小声でコソコソと返す志岐。
「⋯⋯俺と染井さんの仲直り⋯⋯あっ。」
志岐の言葉にパリでの出来事を脳裏に過ぎらせる剣持。
志岐「あっ、って何か思い当たる事があるの?」
剣持の反応を見て詳しい話を聞こうとする志岐。
「⋯⋯その詳しい話はまた別の機会で頼む。ホームズ君。」
志岐「⋯⋯まぁ、スーパーでする会話じゃないか。ワトソン君。」
気になるも場所も場所だし会話の内容も隠すつもりがないと分かった志岐は剣持に聞くのを一旦やめる。
志岐「⋯⋯⋯。」
二人の間に何があったのかは私は知らない⋯⋯でもゲンブ百貨店の服のコーナーで私との外出の際の服装を染井さんと一緒に選んでいたのは私を含めた那須隊の面々や真琴先輩も知っている。
志岐(⋯本当に何を話したんだろう⋯⋯)
染井さんにあるのはヤキモチとかではなく純粋な疑問だ。
染井「志岐さん?」
志岐「あっ。」
考え込んでいると隣にいた華に声を掛けられる小夜子。
志岐「あれ?剣持君は?」
染井「剣持君なら元の立ち位置に戻ったわ。」
華は振り返り数歩離れた位置にいた剣持の方に視線を向けながら言う。
志岐「いつの間に⋯⋯」
染井「次は何を買うの?」
志岐「えっと⋯⋯次は」
疑問を頭の片隅に置いて当初の目的である買い物を優先させる小夜子。
そんな二人を見ながらせっかくスーパー三門に来たんだから何か小腹を満たす物を買おうか考える剣持。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
スーパー三門の近くにて
買い物を無事に終えた剣持達は人が余り通らない所でスーパーで購入したオヤツを横一列に並んで食べていた。
志岐「剣持君。荷物重くない?」
「大丈夫。充分、許容の範囲内だよ。それよりも⋯⋯このコロッケ美味しいな。」
志岐「そうだね。」
謎の少女「すいませんね。私達もご相伴にあずかって⋯⋯」
染井「良いの。お礼したかったから。」
謎の少年「⋯⋯。」
コロッケを犬のようにがっつくように頬張るナイトに視線を向ける剣持と華。
「⋯⋯⋯これも食べる?」
剣持は購入した別のコロッケをナイトにそっと差し出す。
謎の少年「ん。」
差し出されたコロッケをナイトは受け取り再び犬のように汚く食べる。
「「⋯⋯⋯。」」
小夜子を含めた三人はナイトの食べ方を見て2代目と名乗る少女の食事の様子を見比べる。見比べると余計にナイトの食べ物の食べ方が犬や動物みたいに見えた事実を確認して三人は2代目達を他所に一箇所に集まり顔を見合わせる。
志岐「あの男の子一体何処の子!?」
スーパー三門内で途中ばったり華に合流(剣持にとっては再会)した謎の2人に対して初対面の小夜子が暫く地蔵のように黙ってくれた物の機会を得て剣持達に漸く問い詰める。
「何処の子かって聞かれても俺達も良く知らないんだよ。」
志岐「えっ!」
染井「天使騒ぎの時に葉子と真琴先輩と一緒にいた時にあの子に助けられたのよ。」
「俺は連続バラバラ殺人事件の犯人に国近先輩と一緒に捕まっている時に助けられたんだ。」
染井「悪い子じゃないと思うわ。」
「俺もそう思う。」
志岐「⋯⋯ワトソン君。あの子達について何か知っている事ない?」
「どうしてそう思うんだ?ホームズ君。俺はあの子達の事を良く知らないんだよ。」
志岐「そうなんだ。」
コレに関しては本当だ。最初に少年に会った時に、自分の身体能力をフルに使って逃げたのに少年は疲労もなく追い掛けてきた。更に俺を身動き押さえつける際に少年は両腕を紫と白の異形の物に形を変えた。普通の人間の子供じゃないのはもう分かっている⋯⋯
「でも⋯⋯心無しか⋯三輪先輩に雰囲気が似てないかな?」
染井「そうかしら?確かに⋯⋯少し髪型に近い物はあるけど⋯⋯」
志岐「言われてみたらマフラーを着けてる。まさか⋯⋯三輪先輩のファン?」
三人は無言で振り返りナイト君の方を見てから視線を元に戻して
染井「三輪先輩の親戚の子とか?」
「そんな話聞いた事ないけどな⋯⋯」
志岐「此れからどう接しよう?」
「取り敢えず、あの子達の付き合い方は各自の得意なやり方で」
志岐「えっ!?そんないい加減な!?」
染井「あの子達、親は居るのかしら⋯⋯」
華は華で2人の事が色々と気になり始めて別の事を心配するように2人の方を見る。
謎の少女「ごちそうさまでした。」
謎の少年「⋯⋯ごちそうさま⋯です。」
オヤツを食べ終えた少女は俺達にそう言うと少年は続けて言い慣れていないのか辿々しく言う。
謎の少女「オヤツありがとうございます。じゃあ、行こうか。」
謎の少年「はい。2代目。」
謎の少女「お邪魔しました〜」
2人は買い物を終えて俺達と別れの挨拶を言い終えるとこの場から立ち去っていった。
志岐「⋯⋯確かに、悪い子達じゃなさそうだね。」
「だろ?」
染井「でも普通の子とも違う⋯⋯」
「そう何だよなぁ⋯⋯ん。」
(この気配⋯⋯)
??「あっ、剣持。」
「?」
2人の方に視線を向けていると知った気配を感じ取ると反対側から声を掛けられて剣持は声がした方へ振り返ると
「⋯皆さん⋯⋯」
顔馴染みの新聞部の皆、田端達の姿が其処にいた。
「皆さんもスーパーでお買い物ですか?」
井上「⋯⋯何方かというと気分転換かな?」
「?」
染井「⋯⋯何かあったんですか?」
何時もに比べて賑やかさがなく寧ろ暗い雰囲気がある事に気付いた華が三人に話し掛ける。
吉井「染井さん⋯⋯」
何か俺達に伝えたそうな表情をした吉井ゆかは意を決して
六人の少年少女が近くの自販機で購入したバラバラな種類の缶ジュースを片手に横一列で並んでいた。
「そんな事が⋯⋯」
田端「あぁ。」
田端達は剣持達にフロンガとの遭遇。そしてフロンガによって発生した怪獣災害の最中に由利子の知り合いの万城目さんがゆかを庇って交通事故で大怪我をした事を剣持に話す。
「その⋯⋯万城目さんの容態は?」
田端「分からない。アレから数日が過ぎたけど東京にいる江戸川さんから何の連絡も聞ていないし。」
井上「俺等全員気になっちゃってさ。」
「⋯⋯。」
剣持は不安そうな顔をする三人の表情を見てなんて声を掛けるべきか考える。
田端達の話しを聞く限り田端達は何も責任を感じる事はない。
怪しい物を専門家に調べて貰う途中で怪獣災害が発生しその怪獣災害の二次災害に俺も接点がある万城目が大怪我をした。しいて悪いのはと聞かれたら巨大なフロンガの姿に集中して前方を見ずに交通事故を起こしたバイクの運転手だろう。
「余り気に病まないで下さいね。ここにいる誰1人悪くないんですから」
吉井「はい⋯。」
田端「あぁ。」缶ジュースを飲みながら不安そうな様子で答える直人とゆか。
(今度一の谷博士経由で江戸川さんに万城目さんの事を聞いてみよう。)
新聞部の皆と顔見知りの万城目を心配する剣持は近い内に一の谷博士に連絡を考える。
井上「俺らに何か出来る事ないかな〜」
「⋯⋯。」
ふと一平は東京のある方角に視線を向けながら呟く。
田端「一平。俺達は何処にでもいるただの高校生なんだ。大人達とは違うんだぜ。」
井上「そんな事、分かっているよ。でも何かしていないと余計な事とか考えちまうんだ。」
染井「⋯⋯不安なんですね。」
一平の様子を見て華は一平の心に巣食う物を冷静に言葉を選び指摘する。
井上「やっぱそうなのかな⋯⋯」
華の言葉が図星なのか的を射られた表情をする一平。
吉井「仕方ないよ。あの生物。レッドマン達に勝つ程の怪獣なんですよ。私達以上に東京に住んでる人達の方がもっとショックだったでしょうに⋯⋯」
俯いていたゆかも一平同様に不安の言葉を出す。彼女の中でレッドマン達が色々な怪獣と戦い勝利した実績を知っているから今回も当たり前のように怪獣を倒すと想定していたようだ。だからこそレッドマン達がフロンガに返り討ちになった事実が自分達の想像以上のショックで先の見えない状況に不安が増しているのだろう。
「っ!」
二人の言葉を聞いて小さく動揺する夢想。
志岐「⋯⋯。」
そんな動揺する剣持の服の端を小夜子は無言で小さく握る。
田端「二人とも⋯⋯不安になるのは仕方ないけど結局、なるようになるしかないんだ。俺らは俺らで出来る事をしようぜ。」
「出来る事?」
田端「新聞部の記事作りさ。何せ此方はフロンガを小さな状態で遭遇して何枚も写真を間近で撮ったんだ。書く事は沢山あるんだよ。」
(⋯逞しいな。)
田端「其れに見ようによってはフロンガは俺ら人間と変わらないと思うんだ。」
染井「どういう意味ですか?」直人の方を向く剣持達。
田端「人間だって鉱石や石油や木材や色々なエネルギーを消費して文明を築いたろ。必要な事とはいえ山や空気や海といった美しい自然環境を壊して文明を大きく広げている。自然界に住む生物からみたらエネルギーを貪欲に貪る人間もフロンガも対して変わらないって意味だよ。」
直人なりのフロンガの見解に素直に感心を覚える剣持達。
言われてみたら確かに人間とエネルギーを吸収するフロンガは本質的に同じ存在なのかもしれない。でもフロンガの行動を正当化して良い訳じゃない。否、フロンガの行動は文明を滅ぼす為の行動じゃない。人が生きる為に何かを食べるのと同じ自然現象⋯否、フロンガにとっては息を吸う呼吸と変わらないのかもしれない。
染井「例えその通りでも⋯⋯この状況が良い訳じゃない。」
華はスーパー三門内でフロンガによって物流問題の影響があったのか。幾つかの品が売り切れではなく届いていないから並べられていないコーナーに思い出しながら言う。
田端「当然だ。このままじゃあ東京を中心に各地方の都会も田舎も経済的や物流的な意味で今以上に大変な事になる。」
そう呟くと直人は持っていた缶ジュースを飲み切る。
「⋯⋯⋯。」
田端部長のその言葉がヤケに記憶に残る。その後、新聞部の面々と途中で別れて染井達三人は何気なく同じ帰路に歩く中で
志岐「大丈夫?」
足を止めた小夜子は買い物袋を持った剣持の方を心配そうな表情で話し掛ける。不安を隠さないゆかが言ったレッドマン達が怪獣に負けて市民がショックを覚えた言葉に、剣持は相変わらずの無表情なのだがやはり東京の怪獣の件で申し訳なさを感じているのか普通に小夜子は心配する。
「大丈夫。今度は負けない。」
無表情ではない真剣な雰囲気で答える夢想。
志岐「⋯⋯意外に平気そうだね⋯」
「まさか?ショックなのは本当。」
小夜子の返事に平気そうな言い方で返す夢想。
志岐「そうなの?」
「悔しい気持ちは今もあるけどゲームと違ってセーブデータをロードして挑む前のやり直しなんて僕らは出来ないから⋯⋯悔しさをゆっくりでも自分の中で受け入れて次の再戦に繋げるよ。今度はちゃんと対策を用意してね。」
焦ったって結局、成川先輩に変身許可が降りない限りフロンガを倒す事が出来ないんだ。
「でも今日のこういう時間は僕は嫌いじゃないよ。」
(東京の人が聞いたら不謹慎と感じるだろうけど⋯⋯)
帰路の途中で行き交う人々とすれ違いながら夢想は呟く。
染井「どういう事?」
並んで二人から程々に離れて歩く華は剣持の言葉に反応する。
「誰かと一緒に買い物なんて百貨店で東京のお出かけ用の服を購入する以来だからさ。」
染井「あっ。⋯⋯そうね。」
剣持の言葉にその時の思い出を思い出す華。
志岐「何だか随分昔に感じるよ。」
「そんな訳無いでしょ。」
志岐「そう言われたらそうなんだけどさ。あっ。昆虫怪獣災害で服を駄目にしちゃったんだよね。」
「新しい外出用の服を購入しないとな。」
志岐「なら今度は一緒に服見に行こうよ。」
染井(あっ。)
「このフロンガ関連の事件が解決したらね。」
志岐「約束だからね!?」嬉しそうに言う小夜子。
「守れる保証はないよ。戦いに絶対なんて存在しないのだから。」
志岐「此処は普通に約束するとか言う所だよ。」思った返事と違う事に不満を覚えてジト目で呆れながら言う小夜子。
「⋯ごめん。」
そんな二人のやり取りを離れて見ていた華は寮までの別れ道に足を止める。
染井「あっ。じゃあ私此方だから⋯⋯」
「染井さんも俺と同じ一人暮らしなんですから何か大変な事あったら僕に連絡して下さいよ。直ぐに駆け付けますから。」
染井「えぇ。」瞬間移動して現れる夢想を脳裏に過ぎらせながら返事を返す華。
志岐「今日は一緒に買い物ありがとうございました。」
染井「此方こそ一緒に買い物してくれてありがとう。またね。」
「また。」
そう言うと華は二人と別れる。その友達の1人歩く後ろ姿に名残惜しさを夢想は感じるも
「⋯僕らも帰ろうか。」
志岐「うん。」
志岐さんを送り届ける目的を果たすため歩き出す。
志岐「⋯⋯夢想。」
「どうしましたか?小夜子。」
志岐「染井さん同様に⋯⋯私も一人暮らしだから何かあったら夢想に頼って良いんだよね?」
「部隊の人を頼らないの?」
志岐「私の所属する部隊那須隊はガールズチームだよ。困った時には男手は必要でしょ。」
「君の中で僕はどういうポジションなのか一度ちゃんと話し合わない?」
志岐「お互い様でしょ。怪奇案件に関わりそうなオカルト関連の情報収集の手伝いを私にさせているんだから⋯⋯」
「おっと。コイツは一本取られた。」
志岐「へへへ。」
歩きながら互いに気兼ねなく軽口を叩き合う共犯者二人。
「⋯⋯⋯⋯何か僕が必要な事があったら連絡しろよ。」愉しげな雰囲気から真面目な雰囲気になった剣持が小夜子に言う。
志岐「そうじゃない場合は?」
「僕の方でも手が離せない時も充分あるから普通に那須隊や他の人達を頼りなさい。」
志岐「まぁ、そりゃあそうだね。」
夢想の言葉に納得したように答える小夜子。隣で買い物袋を持つ男の子は自分より強く大きな敵と日々誰にも感謝されず人知れず命懸けで激闘を繰り広げるのだ。
志岐「⋯⋯夢想。」
歩きながら夢想の名を何気なく呼ぶ小夜子。
「どうした?」
志岐「⋯⋯私は何時も君を那須隊の皆に負けないくらいに頼りにしてるよ。」
「⋯⋯僕の方こそ、何時も色々と助かってるよ。ありがとう。」
互いに助け合いの感謝の気持ちを込めた言葉を伝える二人。
志岐「今日の晩御飯は何するの?」
「今日は無難にお手軽な麻婆豆腐かな?」
志岐「おぉ〜良いね。なら私の方は野菜炒めかな。」
「人の晩御飯を聞いて同じのにしないの?」
志岐「麻婆豆腐の素を買ってないよ。」
「そりゃあ残念。」
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同時刻 三門市のとある日本家屋にて
???「⋯⋯。」
自宅の縁側に座っていた高齢の老人は真剣な様子で此処数日間の三門市の新聞集めながら見ていた。その数日間の新聞記事には記事の一面に差はあれど東京に出現した浮遊怪獣フロンガについての内容が記載されていた。
帯島「こんばんは。」
???「おや、こんばんは。ユカリちゃん。」
縁側で新聞を読んでいるとユカリに声を掛けられる老人。
???「ボーダーからの帰りかい?」
部屋の壁掛け時計に視線を軽く向け眺めながら話す。
帯島「そうッス⋯⋯」
???「?どうしたのかね?」
帯島「いえ、何でもないッス。」
縁側に座る老人に優しく声を掛けられている物のいつになく雰囲気が真剣な様子にこの時のユカリは少し気になった。
???「もう直ぐ暗くなるから帰りが遅くなってご家族に心配させない為に早く家に帰りなさい。」
帯島「⋯⋯分かりました。お邪魔しましたッス。」
至極真っ当な事を言われてユカリは老人の自宅の横を通り過ぎようとする。
帯島「あっ。」
ユカリは立ち去る直前、老人が集められた新聞の一つに目を向ける。
帯島(あれって⋯今、東京にいる怪獣だ⋯)
記事の内容は距離がある為に当然読めないもののデカデカとテレビやラジオにネットの話題になっている浮遊怪獣の写真が記載されていた。他の新聞達も種類は違うも浮遊怪獣の写真や記事が記載されていた。
帯島(わざわざ浮遊怪獣が記事になってる新聞を幾つも集めてる?⋯⋯どうして?)
ユカリはその時何気なく見た光景に素直に気になりながらも自宅へ帰宅する。
ユカリが去った後、老人は1人縁側から自宅にある仏壇にある部屋へ移動し仏壇の立てられた家族の写真を見て更に年寄り仲間から貰った東京の新聞に写るフロンガの写真を見詰める。
???「⋯⋯。」
集めた色んな角度のフロンガの写真を見て老人の脳裏には浮遊怪獣とは異なる外見を持つ風船怪獣の存在を思い出していた。
???(明日確かめなければ⋯⋯)
老人はフロンガがいる東京へ向かう事を決意する。
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翌日『お化け屋敷』
(プリズムファイター先輩やハリケーンマスク先輩の様子からフロンガと交戦経験があるのは間違いない⋯⋯)
銀河連邦の過去の事件資料記録にフロンガの存在を知っていたが、遭遇するのは今回が始めてのベム。情報の少なさに頭を悩ませながらフロンガについて新しい情報を知る為にフロンガの生態調査を率先して行なっている『お化け屋敷』の作戦司令室に向かう剣持。
「失礼します。」
作戦司令室の自動ドアが左右に開閉し部屋に入る剣持。
アラシ「おはよう。剣持。」
ドアの向こう側の司令室の中には何時ものメンバーの姿がいて剣持の姿に気付きアラシがいの一番に挨拶する。
「おはよう。アラシ。」
黒野「おはよう。剣持。」
イデ「おはよう。剣持。」
カンフー「おはようだ!?剣持!?」
グラサン「うわっ!ビックリした!!」
カンフーの元気のある声に近くのデスクで書類を書いていたグラサンとアイドルがビクッとする。
アイドル「静かにしてよね。カンフー。」
カンフー「悪い。」
罰が悪そうな顔でアイドルに謝るカンフーに呆れながら
「おはよう。皆。」
リリアン「おはようございます。剣持君。」
ポニー「剣持!おはようー!」
「おはようございます。」
(あれ?他の皆は?)
部屋にいる隊員達に挨拶回りをする中何時もの面々に見知った隊員達の姿が見えずキョロキョロと周囲を見る剣持。その様子を見たリリアンが慣れたように剣持に教える。
リリアン「他の皆さんは各戦闘機で東京にいるフロンガさんの調査に行っています。」
「そう⋯ですか⋯⋯⋯」
(⋯⋯やっぱり新しい情報なんて簡単に増える訳ないよな⋯)
此処に来た目的の一つが無くなってしまい落胆を覚える剣持。
アイドル「ハンサム隊員やダイアナ隊員とハカセ隊員も情報収集に行ってるわよ。」
(珍しい⋯⋯)
ポニー「やっぱり珍しい組み合わせだよね。」
「っ!」
思った事と同じ事をポニーに言われて反応してしまう剣持。
グラサン「性格に癖のある組み合わせだからな⋯」
アイドル「アンタがそれ言う?」
口が悪く遊び好きでトラブルが絶えないグラサンをジト目で見るアイドル。
カンフー「アイドル。グラサンの奴は意地っ張りで負けず嫌いなんだよ。凶暴な怪獣相手にも無茶な事して危ない目に良く遭う。」
リリアン「グラサン隊員は根は良い人ですよ。ツンデレさんなんです。」
アイドル「へぇ~そうなんだ〜」
ジト目からニヤニヤした表情で恥ずかしい気持ちになっているグラサン隊員を見るアイドル。
黒野「言われてるな。グラサン。」
グラサン「俺の話はもう良いだろう!!」
年上の仲間達のやり取りを聞きながら剣持は自分のデスクに座り持参したリュックから筆記用具を取り出し日課の勉強をしようとする。
アラシ「今日はどの勉強するんだ?」
見習い隊員の俺の為にアラシは本棚から幾つかの本を持ってきて
「今日は機械工学⋯⋯ロボット工学辺りを勉強しようと考えてます。」
アラシ「ならコレとコレとコレだな⋯⋯」
黒野「俺も手伝おう。ロボット工学関係なら色々と教えられそうだ。」
必要以外の本を棚に戻して黒野とアラシは剣持の教師役を買ってでる。
「お願いします。」
そんな剣持の勉強する姿を見ていたポニーはアイドル隊員に視線を移して
ポニー「アイドル隊員。この後、ローバーで市内のパトロールに行きましょう。」自前のハンドグリップをニギニギと動かしながらポニーはアイドルに言う。
アイドル「この書類を終わらせたらね。」
グラサン「にしても歯痒いぜ。東京で怪獣が経済や物流に影響を与えているのに退治出来ない。」
アラシ「同感だぜ!」
カンフー「少なくても俺達が今まで学んだ普通の方法じゃ無理なのは確かだよ。だから隊長達がチャールズやチーフも連れて今現在もフロンガを調べているんだろ。」
グラサン「⋯⋯世の中思い通りにならない物だね⋯⋯」
そう物思いに耽りながら提出予定の書類作成の続きをするグラサン隊員。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
アイドル「じゃあ、パトロールに行ってくるから何かあったら通信機で知らせて頂戴。」
リリアン「気を付けて下さいねぇ〜〜」
部屋の時計の針は時間と共に進みやがて書類を終わらせたアイドル隊員とポニー隊員がパトロールに向かう為に作戦司令室を後にしてから入れ替わるように作戦司令室へご存知オッカナイ顔のホシノチーフが入室してくる。
ホシノ「皆、悪いが集まってくれ。」
入室したチーフの言葉に雑談をしていた者、書類仕事をしていた者、勉強をしていた剣持は手を止めてホシノチーフの方へ視線を向ける。
ホシノ「一の谷博士からとある人物を捜索して欲しいと指示があった。」
黒野「とある人物?」
ホシノ「これがその人物に関する資料だ。」
ホシノは作戦室にいる隊員達に持参した資料を順番に手渡す。
(⋯少ないな⋯⋯うん?この名前は⋯)
「この人知っています。風船怪獣バルンガを発見した人ですよね。」
剣持は受け取った資料に記載された奈良丸明彦の名前に反応する。
黒野「確かに見たことある名前だ。」
ホシノ「二人の言う通り資料に記載された奈良丸明彦博士はフロンガにとても似た性質を持った風船怪獣バルンガ事件の中心人物であり解決してくれた方だ。『お化け屋敷』は此れから警察や関係各所と連携しこの奈良丸博士を探す。」
グラサン「フロンガ事件を解決する為にですか?」
ホシノ「そうだ。」
アラシ「ホシノチーフ。博士の顔写真とか無いんですか?」
作戦室で渡された資料に目を通しながらアラシはホシノに質問する。
ホシノ「残念だが1枚も無い。」
アラシ「これだけの資料の情報で博士を捜すのは厳しいですよ。」
渡された奈良丸博士の資料の内容の想像以上の少なさに不安や心許なさを覚えるアラシ。
ホシノ「資料の少ないと感じるのは私も同じ意見だ。しかしフロンガをどうにかするには博士の知恵を借りる必要がある。」
グラサン「これ結構大変な任務だぞ。」
アラシ「それでもやるしかないだろ。」
リリアン「ですね。」
「奈良丸博士を探しましょう。」
黒野(写真は無いが迅の奴に協力してもらうか。)
ホシノ「イデ隊員以外は直ちに周辺住民に聞き込みを始めてくれ。」
「「了解!?」」
ホシノチーフにそう返事をすると各隊員が作戦室を後にする。
通路内
グラサン「実際の所、どうやってこの博士を探す?」
リリアン「宛てはあるのですか?黒野隊員。」
黒野「そうだな。取り敢えず忍者部署のシゲハルさんや超能力者のセブンの奴の力を借りよう。」
カンフー「人を探すのにこれ以上にない適任者だな。」
黒野「闇雲に探すよりはマシなだけだよ。」
一同は博士捜索の為に忍者部署に向かう。しかし⋯⋯
「えっ?マスク・ザ・セブンさんとシゲハルさんいないんですか?」
杉田「わざわざ此処に来てくれたのにすまないが前に三門市を騒がせた吸血鬼事件の解決の際に何人かのヒーロー達が怪人との戦闘で大怪我をしてしまってね。怪我した彼らの治療が終わる間、無事なシゲハルのおっさん達は積極的に安全確認で街のパトロールに出てくれているんだ。」
部署にいた人から用のあるヒーローが不在と教えられて俺達は落胆の気持ちを覚える。
「そんな〜〜」
夢想自身ノンフィクションノベル『ウルトラQ』に書かれたバルンガ騒ぎに登場した奈良丸博士本人に会えるかもと期待していた為に他の面々よりもガッカリした気持ちが大きかった。
リリアン「どうしましょう。」
グラサン「宛てが外れてしまったな。黒野。」直ぐ隣に立っていたグラサンが黒野にそう言う。
黒野「分かっているよ。⋯⋯少し待っててくれ。他に何か情報が無いか情報部の方に連絡して見る。」
そう言うと黒野は剣持達から離れて腕時計型通信機を起動し情報部に通信する。
カンフー「人探しの専門家達が不在か⋯⋯いきなり暗礁に乗り上がっちまった。」
セブンの超能力で楽々と博士の行方を見つけようと考えていた俺達は早速行き詰まってしまう。
「やっぱり地道に⋯⋯⋯探そうにも顔写真がないから市民に聞き込みするのも難しい。」楽な方法をやめて普通の方法でも見つけようと考えるもそれすらも一筋縄にいかないと頭を悩ませる剣持。
アラシ「どうやって探せばいいんだよ⋯⋯」
杉田「何か⋯⋯スマンな。」
「⋯⋯いえ。忍者部署の皆さんは何も悪くありません。」
杉田「人手が足りないなら手伝おうか?」
黒野「必要ならお願いします。」
グラサン「早かったな。どうだった?黒野。」
戻ってきた黒野にグラサン隊員は尋ねると黒野は左右に首を振り
黒野「博士については資料に記載された情報しかないと言われたよ。」
「奈良丸博士は一体何処に住んでいるのだろうか?」
黒野「さぁな。」
アラシ「万策尽きたか?」
黒野「否、まだ万策は尽きていない。」
「何か方法があるんですか?」
黒野「⋯⋯俺の知り合いの力を借りるだけだ⋯⋯取り敢えず今日は市街地を中心に聞き込みをしましょう。」
カンフー「了解。」
リリアン「私達の出来る事をやりましょうか?」
「そうですね。」
仲間達とこれからの行動方針を決める中で
(黒野先輩の知り合い⋯⋯どんな人だろう。)
先輩の交流関係に普通に興味を覚える剣持。
(地球の危機に繋がる内容だから念の為、拓也や太刀風先輩達に相談しよう。)
拓也達の次に昨日の新聞部の面々を思い出し
(そうだ。一の谷博士にお願いして万城目さんの安否について聞かないと!?)
剣持自身のやる事が色々と決まる。
黒野(ボーダー本部にも協力を求めるか。メディア対策室長にアポを取る必要があるな。)
リリアン「二人とも⋯⋯聞き込みの為のパトロールに行きますよ。」
考えていたら既にアラシ隊員達は忍者部署を後にしてエレベーター前に立ちエレベーターが来るのを待っていた。
「はい。直ぐ行きます。先輩。」
黒野「あっ。今行くよ!失礼しました。」
杉田「おう。」
俺と黒野先輩は皆の後を慌てて追い掛ける。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
場面は『お化け屋敷』から三門市の市街地に変わり
サラリーマンの男性「名前だけだと⋯⋯顔写真とかは無いんですか?」
カンフー「写真はない。」
サラリーマンの男性「えぇ~。」
カンフー「ありがとうございます。」
カンフー隊員は話し掛けた男性にお礼の言葉を言い
高齢の女性「ごめんね⋯⋯分からないねぇ⋯⋯」
リリアン「ううん。教えてくれてありがとうね。お婆ちゃん。」
リリアン隊員は高齢の方々に優しい聞き込み対応をして
グラサン「すいません。少し時間宜しいですか?」
荒船「何でしょうか?」
弓場「写真は無いのか?黒野。」
黒野「それが1枚も無いんだよ。」
弓場「じゃあ、分からねえな。」
外岡「ごめん。写真は無いの?」
「すいません。無いんです。」
外岡「なら分からないな⋯⋯ごめんね。」
「いえ、捜査のご協力ありがとうございます。」
聞き込みの際にたまたま見掛けたボーダーの人達への聞き込みを終えて俺はローバーの車体に背中を預ける。
「はぁ⋯⋯。」
グラサン「はぁ⋯⋯成果が出ないな⋯⋯」
カンフー「警視庁も各県警と連携しながら行方を捜索しているんだ。気長にやろう。」
アラシ「そんな事していたらフロンガがもっと大きくなっちゃうぜ!?」
カンフー「落ち着け。焦るな。」
当然かもしれないが奈良丸博士の聞き込みは俺達の思った以上に難航していた。ノンフィクションノベル『ウルトラQ』にも記載されていたが博士は元々あまり有名な大学教授ではない。記憶に残る顔写真も無いから聞き込みした人達だって性別、推定年齢だけでは絞り込めなくても仕方がない。
グラサン「せめて1枚くらい顔写真があったらな⋯⋯」
カンフー「無い物強請ったって仕方ないだろ。」
リリアン「似顔絵でも描きます?」
黒野「指名手配の犯人じゃないから却下だよ。」
田端「おっ。剣持。」
「あっ⋯⋯新聞部の皆さん。」
(この所よく会うな⋯⋯)
聞き込みの途中で新聞部の人達と偶然会う剣持。
「すいません。まだ一の谷博士に万城目さんの事を聞いてなくて⋯⋯」
剣持が先ずしたのは謝罪の言葉であった。
吉井「えっ?」
剣持の突然の謝罪の言葉に困惑する新聞部の面々。
黒野「?どういう事だ?剣持?」
「実は⋯⋯」
新聞部と此処にいる仲間達に剣持は一の谷博士経由で由利子に大怪我した淳の安否確認をしようと考えていた事を話す。黒野とアラシはクプラトンの怪獣災害の際に淳と接点があった為に心配した様子だった。
田端「⋯⋯そんな事を考えていてくれたのか⋯⋯」
「すいません。自分の事を優先して後回しにしまって⋯」
考えていたのに行動に移せなかった事に申し訳なさを感じて頭を下げる剣持。
吉井「うんうん。心配していた私達を安心させようとしてくれたんだよね。ありがとう。」
井上「サンキューな。」
新聞部の面々は剣持の優しさを感じ取り感謝の言葉を伝える。
「⋯⋯。」
行動も移していないのに感謝の言葉を言われて複雑な気持ちなる剣持に黒野は自然と肩を置き
黒野「もう少ししたら休憩にするからその時に一の谷博士に電話してみたら良いんじゃないか?」
「あっ⋯⋯そうします。」
もっと早く電話をすれば良かったと考える⋯⋯それこそ昨日考えた時に⋯⋯
吉井「さっきから剣持達は誰を探しているの?」
「奈良丸明彦博士と言う70代後半の高齢男性だよ。何処かで見たかい?」
田端「奈良丸明彦⋯⋯もしかしてバルンガ騒ぎの?」
リリアン「知ってるの?」
吉井「数日前に会った江戸川さんが教えてくれたバルンガの事件を聞いて私達あれから色々と調べていたんです。」
井上「それで解決した人の名前に奈良丸明彦さんの名前があったのを知ったんだ。残念だけど顔は見たことないな⋯⋯」
吉井「私もです。ごめんなさい。」
リリアン「ううん。教えてくれてありがとう。」
「所で⋯皆さんは何かの用事ですか?」
井上「俺達フロンガの記事を書く為にフロンガがいる東京に向かう途中なんだよ。」
「へぇ~そうなんですか⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯えっ!?」
「「なっ!」」
剣持達の横を何気なく通り過ぎながらとんでもない事を言う一平の言葉に無表情の俺を除いた隊員達は驚いた顔で新聞部の方へ振り返る。
田端「おい一平!」
井上「ヤベッ!つい何時も世間話の要領で⋯⋯」
田端「バス停にダッシュだ!?」
吉井「待ってよ!?二人とも〜〜」
一平はハッとした表情を見せ新聞部の三人は剣持達に注意されると思ったのかその場から一気に走り出す。
グラサン「嘘だろ〜アイツら〜自分から危険な怪獣がいる場所に飛び込むか普通!?」信じられない物を見る顔で走り去った三人の後ろ姿を見るグラサン。
「今直ぐ三人を追い掛けましょう。」
焦るグラサンと剣持に黒野は逆に落ち着かせる。
黒野「落ち着け二人とも⋯俺達が今やるべき事は所在が分からない奈良丸博士の行方を探す事だ。」
「それは⋯でも!?」
黒野「心配なのは分かるが俺達は聞き込み中だ。それを忘れるな。二人とも⋯」
グラサン「了解。」
「⋯⋯はい。」
剣持は自分の今の立場を思い出して三人の後を追わずに三人の後ろ姿に目を向けつつ黒野に返事をして聞き込みに戻るのだった。
香取「⋯⋯。」
そんな剣持の姿を無言と険しい表情で見ている葉子。
染井「葉子?立ち止まってどうしたの?」
香取「⋯⋯別に」
聞こえてきた親友の声に反応し剣持から振り返るその場から立ち去る。
染井「⋯⋯。」
葉子を待っていた華は葉子が剣持を見ていた事に気付いていた物の二人の事を考えて知らないフリをする。
同時刻 三門市 市外の森
剣持が市街地で奈良丸博士について聞き込みをして新聞部の面々が東京に行くとは別に市外の森では木々に囲まれる中で目を閉じて静かに素手で居合いの構えをする皇虎が立っていた。その様子を傍にいた炎太郎が静かに見守る。
太刀風「⋯⋯はぁあっ!!」
刃如き鋭さを感じながら力強い目を開眼した皇虎は気合いの掛け声を発すると素手で居合いの抜刀の動作をし手刀にした己の利き手の先から水色のエネルギーを手裏剣を投げる要領で遥か宇宙空間に向かってビーム状で発射する。
春日「コレで遠くにある銀河連邦本部にヒーローサインは届きますね。」
空の彼方へ飛び去ったSOSメッセージを眺めながら炎太郎は言う。
太刀風「うむ。」
【ヒーローサイン⋯⋯レッドマンがイポポ事件の際に救援要請に使用したレッドサインと同様の銀河連邦に所属する各ヒーロー達が使う通信信号の一種。別次元の宇宙では主に使う光の戦士のの名に因んでこうも呼ばれる⋯⋯ウルトラサインと⋯⋯】
地球にフロンガが飛来した事による問題解決の手段に銀河連邦に向けて危機を知らせるSOSの救援要請を放った。
春日「許可が下りたプリズム先輩が変身出来るのが先か⋯⋯フロンガの問題解決のヒーローが地球に到着するのが先か⋯」
太刀風「既に出来る事はした⋯⋯後は座して只待つ事のみ⋯⋯」
春日「そうですね。」
太刀風「少し腹が減った⋯⋯何処かで飯でも食べるか⋯⋯」
春日「良いケバブサンドのお店を知ってますよ。」
二人のヒーローは澄み渡る青空を見上げながらそう呟くのだ。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
東京
怪獣フロンガから比較的離れている位置にある駅に三門市から走ってきた電車が停車し優先席に静かに座っていた電車から降りる予定の人達が次々と先に降りていき少し待ってからその老人は使い古した杖を片手にゆっくりと立ち上がり電車から降りる。
???「⋯⋯。」
フロンガの縄張り近く駅が使えない為に縄張りから離れた駅から電車を利用する人達が一時的に増えて老人は人混みをかき分けながら進み駅を出る。
???「⋯⋯。」
行き交う人々を他所に進む足を一度止めて駅の向こうにある20年ぶりに見た東京の街並みを眺めて暫し感慨にふける老人。
【⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯】
老人は過去を懐かしむのをやめて足を前に進む。
目的地の近くまでタクシーかバスを利用しようと考えた老人は取り敢えず駅近くのバス停まで歩く。
三門市 市街地にあるコンビニ
「もしもし⋯一の谷博士ですか?」
一の谷博士《もしもし⋯⋯剣持君。どうしたのかね?》
聞き込みを一段落させ近くのコンビニで昼食を購入するアラシ達とは別に店の前で待っている間、剣持は1人一の谷博士に電話を掛けていた。
「色々とお忙しい中、すいません。実は⋯⋯博士の知り合いの江戸川由利子さんに聞きたい事がある為にお電話を掛けたんです。」
一の谷《江戸川君に?》
「博士を経由せず直接俺が本人に電話すれば良い事なんですけど⋯⋯俺は江戸川さんの連絡先を知らなくて⋯⋯博士なら知っていると思いかけさせて貰いました。」
一の谷《私に電話をかけた理由は分かった。江戸川君に何を聞きたいのかね?》
「フロンガが現れたあの日に一の谷博士にも話したフロンガを見つけた俺の友人達が俺の知らない間に博士達のお知り合いの万城目さん達とばったり会ったんです。」
一の谷《ほう〜そうなのかね?》
「そんな時、東京上空を浮遊するフロンガを見てよそ見運転をしていたバイクが集まっている友人達のいる所に迫ってきて万城目さんが友人達を庇って大怪我したみたいです。」
一の谷《っ!》
電話口から博士の息を呑む声が聞こえる。その声を聞いた限り博士は知り合いが事故にあったのを江戸川さんから聞いていなかったようだ。
「俺の友人達は大怪我をして救急車に運ばれた万城目さんの安否が気になっているみたいで⋯⋯けど友人達も江戸川さんの連絡先を知らなくて連絡先を知っている博士なら万城目さんの事故を江戸川さんから聞いているかと思ったんです。」
一の谷《いや⋯すまない。君に教えてもらうまで私も知らなかったんだ。》
「そうですか⋯⋯」
一の谷《聞きたい話はわかった。私の方から江戸川君達に連絡して万城目君の事を聞いてみよう。》
「お願いします。お忙しいのに⋯⋯回りくどい事を頼んですいません。此方も何とかして奈良丸博士を探します。」
一の谷《頼んだよ。剣持君。》
「はい。⋯⋯ほっ」
そう言うと博士との通話を終えてスマホをポケットにしまいゆっくりと安堵の息を吐く剣持。
黒野「どうだった?」
コンビニの自動ドアの開閉音に続いて戻ってきた黒野に振り返り
「一の谷博士に伝えられる事は伝えましたよ。」
黒野「なら次は俺達が頑張る番だな。ほれ、昼食。」
「ありがとうございます。」
剣持は黒野から昼食を受け取る。
その頃 東京
エネルギー吸収手を伸ばして地上にあるエネルギーを所構わずに吸収するフロンガを背景に
怪獣フロンガによって始まった事件⋯⋯住宅街や市街地に直接的な破壊活動は無くとも東京を縄張りに数日間が経過しその間、様々なエネルギーを吸収し続けるフロンガのせいで東京の経済、物流、観光事業、産業、工場は甚大な被害を受け続けていた。『お化け屋敷』の面々がフロンガをどうにかする様子もなく未知の怪獣対策の為に生態調査をする日々⋯⋯それを見ていた被害を受けた一部の都民の方々の不満は爆発し政府やフロンガ合同対策本部に抗議。
政府としてもこの問題の解決の閣議の末⋯⋯自衛隊を出動を遂に決定。だか『お化け屋敷』のムラマツ達と一の谷博士はその決定を反対する。
一の谷「お願いです!?フロンガに攻撃を仕掛けるのは怪獣の分析が終わるまで待って下さい。」
「分析が終わるまで⋯⋯⋯一体いつになったら終わるんだ!?」「何を悠長な事を⋯⋯既に事態は切迫した状況なんだ!?これ以上は待ってられない!!」
ムラマツ「しかし、安易な攻撃はフロンガを傷つける所か返って成長させるんですよ!」
「⋯⋯止めようとしても無駄だ⋯⋯あの怪獣のせいで東京の大手を始め各企業は倒産寸前なんだ⋯」
対策の為の分析が不充分のことを理由に政府や自衛隊に攻撃中止を意見するも彼らは聞く耳を持たない。反対する意見を押しのけて状況を打破を理由にフロンガ攻撃は始まる。
フロンガ周辺に攻撃の為の緊急避難警報が発令されフロンガ周辺の都内道路には安全な避難所を目指して群衆がごった返す。都内道路に外から車が侵入をさせない為に急ぎ通行止めや市民の避難誘導をする警官達。
警官「落ち着いて逃げて!?」
警官「落ち着いて下さい!走らないで!?」
そんな彼らの様子をとあるオフィスビルの屋上から眺める黒スーツに黒いサングラスを掛けた青年。
謎の紳士「正義の警察さんらは大変だねぇ⋯⋯」
防暑対策の日傘を差し剣持も飲んでいたしゅわしゅわコーヒーを片手に慌ただしい群衆を他人事のように見る青年は視線を群衆から市街地の上空で巨大な入道雲ように成長し浮かんで短い間隔で発光複眼の発光を繰り返すフロンガを見上げる。
浮遊怪獣フロンガ 出身地 不明
食料となるエネルギーを求め宇宙をさまよう浮遊怪獣。
エネルギーを吸い取る時に大量のオゾンをはき出す。身の危険を感じると、200万ボルトの放電攻撃で相手を攻撃する。
謎の紳士「ハッ、こりゃあまだまだ大きくなるな⋯⋯」
青年は政府の強引な決断を鼻で笑い飛ばし独り呟き持っていたコーヒーを一口飲み。
謎の紳士「⋯⋯⋯やっぱ微妙な味だな。しゅわしゅわコーヒー。」
青年は何とも言えない表情で持っているコーヒーを見る。
それから数時間が経ち、日が沈み辺りが暗くなった時間帯
浮遊するフロンガに空気を切り裂くジェット音を鳴らしては迫る沢山の航空自衛隊の戦闘機F-15Jイーグル。
イーグルのパイロット《ターゲットを確認した。これよりミサイル攻撃を開始する。》
16機の大編隊を組んだ戦闘機がフロンガに向かって中距離からスパロー・ミサイルを放つ。
フロンガにミサイルが次々と炸裂し爆炎がフロンガの全身を包み込む。
イーグルのパイロット2《よし!やった!?》
包み込まれた爆炎が晴れるフロンガは何事も無かったかのように浮かんでいた。
イーグルのパイロット《くっ!?ターゲット尚も健在!?》
フロンガはエネルギーを横取りしてと勘違いして航空部隊に向けて攻撃手から放電攻撃を放つ。フロンガから放たれた放電攻撃をイーグルは散開して躱す。
イーグルのパイロット3《怯むな!攻撃を続行する!?》
イーグルのパイロット2《怪獣の頭部に攻撃を集中しよう!?》
フロンガを中心にして周囲を飛び回るF-15Jから再び放たれるスパロー・ミサイル。その攻撃は次々にフロンガに命中するが効いた様子もなく寧ろその度にフロンガの身体は内側から膨らむように大きく成長していく。
『お化け屋敷』と一の谷博士の懸念通り自衛隊の攻撃はフロンガに効果はまるでなかった。
その自衛隊の様子を大勢の人混みの間から見上げる新聞部の皆。
井上「畜生、フロンガの野郎。全然効いてないぜ!?」
田端「負けるな自衛隊!?」
吉井「⋯⋯。」
次の瞬間、新聞部達の直ぐ間近にフロンガの放電の稲光が通り過ぎる。避難する列に放電攻撃は直撃しなかったとはいえ、危機が身近に迫った事により避難民達は慌て出す。
警官「危ないからもっと下がって!」
田端「わっ!!」
井上「ああ〜ん!」
吉井「きゃあっ!!」
老人「あっ!」
新聞部の三人はフロンガと自衛隊の戦いを見ている為に避難民の群衆に押されて倒れ込む。
吉井「あっ!お爺ちゃん、大丈夫ですか!?」
田端「一平!」
井上「分かってる!」
ゆかの声に気付いた直人達も協力してゆか達は自分の直ぐ近くで同じように倒れ込んできた老人を急いで助け起こす。
老人「ありがとう。大丈夫だ。」
井上「本当に怪我とかないですか?」
一平は老人の服の汚れを手で払いながら聞く。
老人「あぁ。君たちこそ怪我はないかい?」
田端「大丈夫です。」
警官「押さないで下さい!」
警官「危ないから下がるんだ!」
新聞部の三人と老人は避難の列に戻り更に巨大になるフロンガを見上げる。
田端「⋯⋯なんつう大きさだ⋯⋯」
井上「今まで見てきた怪獣達なんかより余裕でデカくなってやがる。」
老人「何をしとるんだ!!」
吉井「えっ!」
老人「あれではまるで怪物に食い物をやっているようなもんだ。これ以上、育ったらえらい事になる!」
吉井「っ!」
老人は自衛隊と政府の対応方法に怒りを覚える。本人達は最善や必死な行動を選んでいてもこれでは20年前のバルンガの時と何も変わらない。そんな老人の独り言に横に立ってたまたま耳に入ったゆかは老人の横顔を思わず見る。老人は何か変な発言や行動をした訳ではない。しかし確信は何も無い物の直感のような物がゆかの頭の中で言うのだ。
【理由は分からないけど、この老人を忘れずに覚えろとこの時の私は思いました。学校新聞に載せるフロンガの写真よりも優先しろと私の中の何かが命令したんです。】
三門市第一高等学校 新聞部部員 吉井ゆかの独白より
戸川「あれ?君たちは由利ちゃんの?」
横に立つ老人の方をじぃ~と見ているとつい最近聞いた事のある声が老人の左側から聞こえてきてゆかは視線を老人から声がした方へ移す。
戸川「おーーい。こっちこっち。」
田端「あの人って江戸川さんの知り合いの⋯⋯」
「「ゥオォォォーーン!!」」
フロンガの咆哮に新聞部の三人は思わず一度、空を見る。
吉井「あら?どこに行ったのかしら?お爺ちゃん!」
視線をフロンガから移すもいつの間にか直ぐ横にいた老人がいなくなっていた事にゆかは気付く。
手を大きく振りながら人懐っこい笑みを見せる一平は避難所へ向かう人混みを掻き分けながら新聞部のいる所へ近付いてくる。
戸川「ごめんなさい。すいません。ちょっと通して下さい。」
老人「⋯すまないが通してくれ。」
戸川「あぁ。すいません。」
それと殆ど同時にいつの間にか老人は新聞部の元へ入れ替わるように離れて戸川一平の直ぐ横を通り過ぎる。
通り過ぎる際に両者は互いに顔を見つつそのまま通り過ぎて老人は人混みの中に消えて行く。
戦闘機の編隊がフロンガの上空を掠めて空中旋回から再びスパロー・ミサイルを発射するが命中部分か鈍く発光するだけで爆発せず更に戦闘機のジェット音が断続して聞こえなくなる。
イーグルのパイロット《なっ!燃料が!?》
フロンガのエネルギー吸収により搭乗する戦闘機の燃料が一気に減り音も無く市街地へ落ちて行く戦闘機。
イーグルのパイロット《くっ脱出する!!》
パイロットは急いで搭乗機から緊急脱出し空中でパラシュートを展開し墜落していく搭乗機の最後を空中から目撃する。
乗り手を失った戦闘機は市街地の建物の一つに突っ込み爆発する。
フロンガは自分の周りを蠅や蚊のように飛び回る戦闘機編隊を鬱陶しいと感じて身体に生やした磁界トゲから6万テスラの磁界を発生させ周辺の機械の計器を全て狂わせる。
イーグルのパイロット2《計器に異常!?操縦不能!?》
イーグルのパイロット3《機体を捨てて脱出しろ!?》
周辺のイーグルは数日前のガスファイターがされたように操縦不能させられて次々と地上へ堕ちていく。16機もあったイーグルはフロンガの能力によってエネルギーを吸収されるか計器を狂わされて墜落させられるか放電攻撃によって撃ち落とされるかの結果となった。
【怪獣フロンガの周囲には墜落した無数の戦闘機によって火災が発生していた。消防署が消火活動の為に出動するもフロンガのテリトリー内では消防車の燃料が吸収されて現場の到着すらままならない。消防署が対策を考案する中でフロンガ周囲の全ての火災は突然鎮火する⋯⋯何故ならフロンガが火災の原因のエネルギーを軒並み吸収しているんだ。明かりの点かない暗い夜の街に不気味に浮かぶ黄色い浮遊怪獣の姿がヤケに俺の印象に残った⋯⋯】
三門市第一高等学校 新聞部部員 井上一平の独白より
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新聞部の三人は一平の車で駅まで送ってもらっていた。
戸川「⋯⋯。」
新聞部「⋯⋯⋯。」
危険な怪獣がいる東京から出ようと無数の車が列を作り道路は渋滞していた。少し前に進んでは止まって再び進むを繰り返している。
カーラジオではどの局もフロンガ騒動について内容ばかり流れており戸川さんは俺達に気を利かせては流行りの音楽を流してくれた。
車内に明るい洋楽が流れるも車内の空気は重かった。
新聞部の面々はフロンガの脅威を何度も目の当たりにした。それこそ始めて遭遇した時も⋯⋯立花ナオキの自動車の燃料を吸収して巨大化した時も⋯⋯レッドマン達が挑み敗れた時も⋯航空自衛隊達が成す術もなく墜落された時も⋯⋯危険な問題が解決するどころか広がり続ける先の見えない状況に三人は不安になっていた。
戸川「それにしても今日君達に会えて良かったよ。」
吉井「え?」
戸川「休憩している時に一の谷博士から連絡があったんだ。博士の知り合いの剣持夢想君が、怪我した先輩の⋯⋯万城目さんの安否を知りたがっているって⋯⋯」
田端「あっ。」
直人は一平の言葉を聞いて剣持の姿を思い浮かべる。
(俺達と別れた後に博士に電話してくれたんだ⋯⋯)
戸川「皆に先輩の事を伝えなかったのは本当に悪かったよ。」
井上「理由があるんですね。」
戸川「あぁ。」
吉井「教えて下さい!?」助手席の後部座席のずっと気にしていたゆかは一平に尋ねる。
戸川「先輩。怪我の当たりどころが悪くて手術の為に病院に入院しているんだ。」
吉井「っ!」一平の言葉を聞き目を少し見開き口元が強張り脳裏には数日前の事故の光景を思い出す。
吉井「⋯⋯。」
吉井(私のせいで⋯⋯)
目に見えて不安そうな表情で俯くゆか。自分を庇い大怪我をしてしまった万城目に申し訳なくなる気持ちになった。そんな不安な顔をするゆかを見た一平達は
戸川「⋯⋯君が自分を責めないように由利ちゃんは敢えて伝えなかったんだよ⋯⋯」
井上「そ、そうだぜ。悪いのは怪獣を見て余所見運転事故なんか起こしたあの野郎だぜ。」
田端「もっと言うなら怪獣のせいだよ。ゆかのせいじゃない。」
吉井「⋯⋯皆、ありがとう。」
俯きながらもゆかは励ましてくれた二人に礼の言葉を言う。そんな新聞部の三人を優しく見守りながら
井上「万城目さんが元気になったらちゃんとお礼の言葉を伝えようぜ。」
吉井「⋯⋯うん。」
涙ぐみながらゆかは一平の言葉を聞いて俯くの辞めて顔を上げ返事を返す。
戸川「いや〜青春だねぇ〜俺にもこんな頃があったな⋯⋯」
井上「⋯⋯話変わるけど、戸川さんはどうしてあんな所に?」
勝手に過去を懐かしむ一平に呆れる目を向ける井上一平はふとした疑問を尋ねる。
戸川「何⋯⋯何処に住んでいるかも分からない科学者を探しているんだ⋯⋯」
何気なく聞かれた疑問に答える一平。その返答に新聞部の三人は一度顔を見合わせる。
田端「もしかしてその科学者って奈良丸博士!?」
戸川「えっ?どうして君達がそれを?」
井上「剣持の奴も探しているんだよ。」
戸川「そうか⋯⋯俺や由利ちゃん達と探しているんだけど⋯⋯見つからないんだ。」
田端「大変ですね。」
戸川「大変だよ〜」
吉井「⋯⋯。」
直人達が会話をしている横でゆかはその会話を聞いて何故かあの時出会った老人の姿を思い出す。
吉井(あのお爺ちゃん。もしかして⋯⋯)
井上「どうしたゆか?さっきから黙ってさ。」
吉井「気になる事があって⋯⋯」
井上「気になる事?」
吉井「⋯⋯⋯もしかして私達、奈良丸博士に会っているのかも⋯⋯」
「「えっ?」」
ゆかを除いた三人の男達は一度顔を見合わせ時間と共にゆっくりと目を大きく見開かせ
「「⋯⋯えええええぇぇぇ!!?」」
驚愕の表情で叫ぶのだ。
田端「本当か!?」
井上「まだ近くにいるかも!!戸川さん!?今直ぐ引き返そう!?」
戸川「いや普通に無理!」
既に渋滞の中、周囲を車に囲まれた状態でゆかの口から告げられた情報を三人は聞く。
田端「ゆか。教えてくれ。」
吉井「うん。避難の列にいた時、私達近くで倒れたお年寄りの男性を助け起こしたでしょ。」
戸川「そうなの?」
井上「応。杖を持った白髪頭の爺さんだ⋯⋯」
戸川「成る程!杖を持った白髪頭⋯⋯⋯⋯⋯ああっ!!」
井上「わっ!急に大声出すなよ〜ビックリした〜」
井上一平の言葉を聞いて戸川一平はオーバーなリアクションを見せて助手席に座る一平を驚かせる
一平の脳裏に浮かぶのは新聞部の三人を見掛けて会いに避難民を掻き分けて進む中、自分に声を掛けて直ぐ横を通り過ぎた老人の姿だった。
老人『⋯すまないが通してくれ。』
戸川『あぁ。すいません。』
戸川「⋯⋯あの老人が奈良丸博士⋯」
一平はその時の老人とのやり取りを思い出しながら独り呟くのだった⋯⋯
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
翌日
フロンガ合同対策本部では各社記者を交えた記者会見が行われていた。
記者1「フロンガはどんどん大きくなってる!一体、それをどうするんですか!」
対策本部長「これ以上、怪物にエネルギーを与えるような攻撃は行いません。対策は研究中であります。どうか、長い目で見て頂きたい。」
記者2「長い目だなんて、呑気なことを言っている間に、フロンガは高圧送電線からどんどん電気を喰ってる!」
対策本部長「間もなく都内全域の送電を中止させます。同時にあらゆる動力の使用が禁止されます。」
「「っ!!?」」
記者会見の会場の会議室に大きな動揺の波が広がった。
「じゃあ、電気は!交通機関は?新聞、テレビは!!」
対策本部のとんでもない決断にざわめく記者達。
記者3「人道問題だ。病院で手術を要する患者は、どうなるんですか!?」
記者4「病人や怪我の救出は!?その手段はどうなるんです!」
対策本部長「救急車が使える範囲内は勿論、医療関係各所と連携して優先的に他県に運び出します。」
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フロンガ合同対策本部の発表によって東京の街は大混乱が発生していた。
日本の経済の中心、摩天楼の大都会東京から次々に文明の灯りは消えて真っ暗闇となり、信号機の電気も消えて各交通関係は渋滞が発生、あちこちのスーパーで商品の買い占めにより食料が不足し、また一部のスーパーや商店には暴徒が現れた略奪行為が発生。渋滞の交通誘導や停電により発生した各事件の為に必死に奔走する警察とヒーロー。他県へと患者を乗せて走る各救急車。
「「⋯⋯⋯。」」
そんな大混乱を作り出した元凶のフロンガは吸収し続けるエネルギーの味に飽きを覚えていた。そして数日前、様々な種類のエネルギーを吸った中でフロンガはレッドマンのトリオンエネルギーを思い出す。後頭部のセンサーアンテナを数日間休まず揺らし続けて漸く見つけたフロンガは悩む。目的のエネルギーがある場所が此処から離れていて吸収出来ない。今よりもっと大きくなる必要があるが吸収するエネルギーが少なくて時間が掛かる。フロンガは己の本能に従う。
大変な状況の中、京太郎は万城目が入院した病院の場所を由利子から教えて貰い一人病院前に来ていた。
鏡「⋯この病院だな。」
鏡(二人は無事に在宅避難出来たかな⋯⋯)
京太郎は一平と由利子達の姿を思い浮かべていた。20年前のバルンガ騒ぎと違い彼らは既に家庭を持っている為に、二人には家族の安全を優先して貰った。
医師「気をつけて運ぶんだぞ!」
看護婦「はい!」
慌てた様子で荷物を病院から運び出す人々で入れ替わるように病院内に入る京太郎。
鏡「あっ、すいません!」
看護婦「何でしょう?」
近くに来た看護婦を呼び止めて万城目の事を聞く。
鏡「此処に入院しているとされる患者の万城目淳さんは何処の病院に運ばれるんですか?」
看護婦「貴方、万城目さんのお知り合いですか?」
鏡「はい!」
本当は万城目の知り合いの由利子達の知り合いなのだが話が拗れるからそういう事にした京太郎。
看護婦「万城目さんは1時間前に三門市の病院に移しました。」
鏡「どの病院ですか!?」
看護婦「三門市立総合病院です。」
突然、病院の電気が消えて周囲に驚きや悲鳴が上がる。
鏡「失礼しました!」
鏡(急いで二人に知らせよう。)
鏡「っ!?」
京太郎は急ぎ外に出るとフロンガの影響で燃料が無くなりエンストした救急車から担架で運ばれる患者達の姿を一度足を止めて申し訳なさそうに見詰めて視線を上空にいるフロンガに移す。
鏡(あんな奴に⋯⋯僕ら人類の文明は滅ぼされると言うのか⋯)
悔しさを隠さない京太郎は歯を食い縛らせただただ悔しいと強く感じた⋯⋯自分に怪獣をどうにか出来る力が有ればと夢想するも⋯⋯しかし、自分は只の報道カメラマン。怪獣の前では無力な存在なのだ。
鏡(いや⋯今は、僕に出来る事をするんだ。)
感じた強い悔しさを奥に引っ込めて直ぐに万城目の安否を知る為に京太郎は三門市へ向かう。
後編に続きます。出したい怪獣怪人ロボと書きたい話が本当に多い⋯⋯その割に話の一つ一つの平均文字数が多いから書き終わるのに時間が掛かる⋯⋯もどかしいな⋯⋯大した深い内容じゃないのに⋯⋯