ちょっとグロテスク注意ですかね?
(R-15の範囲にはしっかり収まっているはずですが)
第3培養室を出てまた通路を進む。時間が無限に感じる。本当に夕暮れは夕暮れではなかったのかもしれないな。
……っ!
『なんなんだ!この断片的な記憶は!』
第3培養室に立ち入ったあたりから精神不安定性が顕著になってきた気がする。
人の家(この家の住民に面識はないはずであるが家族と錯覚しそうだ)の庭が水没し、なぜか金属製の巨大な工具のような何か、トラバサミとも言えそうな何かが跳ね回っている。さっきはそれで船が沈んだ。
場面は変わる。これは高校生の記憶だろうか?体育館で何か学園祭でもやっているのだろうか賑わっているようだ。……何かがおかしいな。
そう思った。それもそのはずだった。顔が無い。包帯でぐるぐる巻きだ。
そして世界は流れる。コンビニの前に来た。二人っきりで。隣りにいるのは誰だ?私は恐ろしかった。
不鮮明な領域を越えて私は逃げる。包帯で顔を隠した女から。そして追い詰められてこのまま死ぬんだと思った。だから、
その頭頂部に噛み付いた。
『……!は!はぁ、はぁ、はぁ……』
私は帰ってきた。……この遺跡に。帰ってきてしまった。なぜか人の記憶に引きずり込まれた(?)きっともっといい表現はあるはずではある。だけれどわからない。わたしにはわからない。せいぜい、かゆいうまいくらいしかいえない。私は情報を操る為に開発された元人間のDOLLS……元人間?そうか、元人間だからなのか。
(足音)
『あのー……誰かいませんかー?』
「君は何者だ?」
(女性の声)
『お、誰か居た!ここどこ!』
「わからない。」
『あなたの名前は!?』
「……GRB-36Fのオペレーターだ。詳しいことは言えない。君は?」
『私はHe177。GRB-36F……星屑の所属機体のライブラリにはいなかったと思うけれど?』
「まあ秘密兵器ってことで。」
『……秘密兵器って、貴官は何者?』
「うーん……私については整備会に聞いてくれ。消されると思うけれど。だから私がここにいた事は口外禁止で。遭遇したことはこっちも言わないでおくから。うちの部隊に来るなら別だけれど。」
『冗談でしょ?』
「整備会の秘密兵器は嘘をつけない。」
『なんて日……試験室で新型炸薬のテストをしていたら気がつけばこんな廃墟みたいなところに来ているし……』
「それは災難だったね。あとここは廃墟みたいなではなくて廃墟だと思うよ。」
『揚げ足を取らないでくださる?』
「それは失敬。」
『それはそうとどうやって脱出すれば良いものか……』
「こっちから穴を開け……るわけにはいかなさそうだね。天井が。」
『天井?……あ。崩れかけてる。』
「壁に穴を開けたら二人共天井に潰されているかもしれない。」
『確かに……』
「各自、道を見つけるしかないようです。」
『それは残念。』
セピア調に染まった視界を振り回して歩く。照明がパチパチと明滅する。海から入る光が視界を染めていた。
「貴官のことは何と呼べば?」
『好きに呼べばいいと言いたいところだが、そうだな……プリオンとでも呼んでくれ。本名よりそっちの方が合ってる。』
「了解、プリオン。私の事は……グライフと…」
『了解、グライフ。声が通じるという事は無線機が生きているか、互いにまだ近くにいるという事だろうね。どう思う?』
「無線機は……故障している。」
『なるほど。困ったな。どこか通じていないだろうか……第3培養室って知ってる?』
「えーと……中に人間サイズの人形のような何かが収容されていたカプセルのようなものが3つ、有った部屋のことか?」
『そう、それ……もう一つも中に何か入ってた?』
「え?人形が……金髪と銀髪、そしてもう一人銀髪の……見えていなかった?」
『うーん……そうか……まあ、うん、そこだ。そこまで歩いてきてくれないか?』
「りょ、了解……」
「私、少し怖いです。」
『どうしたんだい?』
「正体不明の人物と一対一で接触するなんて……」
『あー……それは申し訳ない。』
カツカツカツ……足音が聞こえ続ける。
第3培養室に戻っている。壁の向こうを歩く誰かが居る。この人は何者なのか。ヒタヒタという音が聞こえる。
「第3培養室に入った。そちらは?」
『もうそろそろ入る。』
「うーむ……見えんな……」
『失礼しまー……す?えーと……?』
貴女は?
「あー……私がプリオンこと……ニューマコーニオシス中佐だ……どうした?」
『いえ、DOLLSに将校クラブの一員が居るとは。』
「すまんな。上層部じゃなくて。」
『は?』
「ニューマコーニオシス中佐、中佐だが……君の直属の上司ではない。」
『えーと……?そもそもDOLLS本体にARMSとは違う名前がついていることに困惑しているのですが……』
「あー……どこからどこまで話していいのか。……私はちょっと変わったDOLLSでな。」
『ほほう?』
「まあ、一言で言えば……整備会に作られたDOLLSでな。灰燼教会のDOLLSとは作り方が違うらしい。」
『……は?』
「ちなみに私は一応、とある部隊の司令官をさせてもらっている。お飾りの階級とはいえそこらの人間よりは偉いらしい。狂ってるな。」
『はい?』
予想以上の変化球。だけれど、私の探求はそこで終わってしまった。
(硝子にヒビが入る連続的な音)
ピシッともパリッともミシッともとれる音を立て続けて何かが割れる。振り返れば縦に伸びていたカプセルが割れていた。床にはカプセルに入っていたであろう琥珀色の透明な液体……触れた足を上げたところ粘性はあまり高くないようで。
カプセルから出てくる病的なまでに白い腕。何回も壁面を叩いたのか割れたガラスは大きなものが貫いたように一部が無くなっていた。
「……グライフ、少し下がっていてくれ。どうやら私の出番のようだ。」
私は星屑連邦学連のA-20G"ハボック'やF4U-1"コルセア"を見たことがある。けれど中佐を見たことは無かった。それは彼の所属する部隊は隠匿されていたから。さて、このDOLLSは何故この2機種を混ぜたような容姿をしているのだろうか?
なぜこのDOLLSは対峙している謎の人物とある意味、瓜二つなのか。
対峙している謎の人物には羽根があることの理由はつくのだろうか?
二人して床の鉄筋を取る。
羽根有りは上に、
羽根無しは下に。
時間が止まった。
先に動いたのは羽根有り。
そして機敏に反応する羽根無し。
空間を切り裂く鉄筋。援護したくてもどちらが味方でどちらが敵かわからない。あまりの速さ故に。
すぐさま入れ替わる。全てが変わる。鉄筋どうしがぶつかって擦れて火花が散ったかと思えばすぐに離れて。組み合ってはすぐに壁まで離れる。もしかしたら音速だって超えてしまうかもしれない。
『社長砲……』
唐突に思い出した。なぜこのタイミングなのかわからないが。確か……ここに……あった!
『中佐!失礼!』
「なっ……!」
(ポンッ)
軽い音と小口径の対戦車榴弾が描く放物線は半ば計算外を吐き出し、その上で敵に命中、動きを遅くしてしまった。
「よくやった!」
隙ができたところを中佐が押し倒し……噛みt!?
「あー……なんかすまん……」
おえー……
(自主規制)
(自主規制)
(自主規制)
それは言う。噛みつく行為には主従関係に関するものもあると。にわかには信じがたいが。
吐瀉物で汚れてしまった床(主に自分のせいではある)をあるきつつ残りの中身がわからなくなってきたカプセルを開けることを考える。割るか何処かスイッチはないかと探るか。……くちゆすぎたい。吐くことには訳あってなれてしまった(単純に試薬が非常に臭い+吸い込むと催吐作用がある)のだが……
私は思う。この吐瀉物で床を汚したDOLLSは正気だろう。非常に酸っぱい臭いがあたりに立ち込める。呼吸に問題はない。
カプセルから出てきたこの……羽根付き?まあ弐型と呼ぶか。弐型は気絶している。抵抗するようであれば首をもぎ取るのみ。
『グライフ、混乱しているところ悪いが、どうやってグレネードランチャーを取り出した?』
「……わからない。どう考えても服の中にそんなスペースは無いし、そもそも持ってすらなかった。」
その頃……キヴォトスでは…?
夏の夕暮れみたいな黄昏時をイメージしてました。ハイ。
(尺の都合上登場できませんでしたが、次回はとあるお船のゲームから3体が友情出演します。)