第12話 クロスオーバーパーティー
「俺、調べたんだけどさ、お前たち、全員が別の世界からやってきたみたいなんだな。というわけで、俺から改めて紹介するぜ! 『サクラダリセット』から、浅井ケイ、春埼美空、村瀬陽香、阪上央介! 『キノの旅 the Beautiful World』から、キノ! と下にいるエルメス! 『カードキャプターさくら』から木之本桜! そして『キノの旅』の原作者、俺! というわけでまずはケイ! 乾杯の音頭をとってくれぃ!」
「僕ですか?」
「いいからいいから」
「えっと、僕は、これから世界を救いたいと思っています。みんなの力でマイナスエネルギーをやっつけたいと思っています。だから、僕に力を貸してください」
「堅ぇなぁ」
構わず、
「かんぱい!」
彼女はキノ。旅人。彼はケイ。高校生。
「もしこの世界が滅んでしまうとして、あなたなら、この終末をどう過ごしますか? ケイさん」
「急にどうしたんですか? キノさん」
「同じ質問をもう一人の、桜さんに聞いたんです」
「なんて答えたんですか?」
「終末なんかどうでもいいって一蹴されました」
「キノさんこそどうなんですか?」
「そうですね……。静かな丘の上の木に、ハンモックを吊るして、気持ちよく寝たいかな」
「最高ですね。でも、せっかくの残された時間、起きてなくていいんですか?」
「寝ることも、生きてなきゃできないことですよ」
「なるほど」
「で、ケイさんは、何か思いつきましたか」
「もちろん、いつも通りの日を過ごしますよ」
「ケイさんこそ、それでいいんですか?」
「物事の手順や順位は大事だけれど、単純な順番にはあまり拘らないタイプです。僕には記憶保持能力がある。だから、どんな思い出も体験も、すぐに頭の中で再現できる。それでも新しく体験したいことなんて特に思いつきません。でも強いて言うなら、神様になりたい」
「神様?」
「お腹を空いている人がいれば、パンを分けてあげる。雨に濡れている人がいれば、傘をさしてあげる。試練なんて与えたりしない、そんな人間不信じゃない神様になりたい、そんなことを話したことがあります」
「ボクらはすでに神様みたいなものですよ。信仰されているから、存在できているんだから」
「僕らなのか、読者のみなさんなのか、はたまた原作者なのか、神様はいったい誰なんでしょうね」
「なるほど、神様の国だ。どこにでも宿る、神様の国」
「十中八九、人間の国ですよ。神様にしては、できないことが多すぎる。僕らがこの世界に迷い込んだのも、時空の歪みなんかが原因なんだろうし。でももし神様がいるのだとすれば、僕らをこの世界に連れて来た存在でしょうね。全く迷惑な神様だ」
「そうでもないですよ、こうしてみんなに会えたんですから」
「それもそうだ」
それは、クロスオーバーパーティーが終わり、就寝時間を過ぎた、寝室(女子部屋)でのこと。
「死んだらどうなっちゃうんだろう」
そう呟いたのは、木之本桜。女子小学生。それを聞き、
「そんなこと……」
そう呟いたのは、村瀬陽香。女子高生。
「見ちゃった。聞いちゃった。人が苦しんでるとこ。人が怒ってるとこ。その……人が人を……殺すとこ。人が一人で……死んでいくとこ。怖かった……死んだら……死んだら……どうなるの?」
「わからないわよ……そんなの。でも、もしかしたら、浅井なら知ってるかもしれない。覚えてるかもしれない」
「なら私が聞いてきましょうか?」
平然と言ってのける、春埼美空だった。こちらも女子高生。
「ちょっと待って。いいわよ。そんなの」
慌てて制する村瀬陽香。
「人は、いつかは死ぬんだ。お父さんも、私よりずっと先に、死んじゃうんだ。お母さん、お母さん……やだよ、死にたくないよ」
ポロポロと泣き出してしまった。
「それに、人を殺す感覚も……。撃っちゃった。撃っちゃった。ボタンも……押しちゃった……。そしたら、爆弾が……。この手で……」
「この手じゃないわよ。大丈夫。さくらは何も撃ってないし、ボタンも押してない。いい? さくら。拳銃や爆弾なんかよりも、もっとずっと強いものがある。さくらなら知ってるでしょ?」
「なに?」
「人の心よ」
「でも、人の心は……弱いよ。飛び降りたりも……した」
「その感覚も、浅井なら知ってるかもね」
「聞いてきましょうか?」
「だからいいって!」
相変わらずの二人だった。
「なんで人が自殺するのか分からなかったけど、今ならわかる。説明できないけど。死にたくないけど、死にたい気持ちがすごくわかる……」
「体験した……から?」
「うん、もうなんか、よくわかんない感じ」
「そう……。でも、さくらは飛び降りたりなんかしない。だから大丈夫。さくら。強いとか弱いとかは言わないし、年齢的には私が先に死ぬし、死んだらどうなるかなんか私にもわからないけど、さくらには、ちゃんと生きた心がある。ほんとにあったかい心だわ。それに知ってるでしょ? 私たちには、サクラパワーがある。だから絶対大丈夫よ」
囁くように、
「絶対大丈夫。だから、安心しておやすみ」
村瀬陽香は言った。
坂上央介とエルメスは先に、寝てた。
最近、オリジナルものも書いてみたいと思い立ち、投稿してみました。
タイトルは『藤林裏葉の第一印象』です。
よければ、そちらの方も読んでみていただけたら幸いです。