桜色の海   作:前田マキア

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第6話 邂逅

第6話 邂逅

 

ドンビシャーン‼︎

それは突然起こった。大きな衝撃音とともに地響きがなった。思わず音源である正面のステージ上を見やる。すると、もくもくと土煙が舞い上がっている。あまりの衝撃に心臓を撫でられたような感覚がした。が、……土煙から何か聞こえる。パニックになりそうなのを抑えながら、耳を側立てる。

「……ちゃーん! ……ちゃーん‼︎ ケロちゃーん‼︎ ケロちゃーん‼︎」

ケロちゃん? まさか、と思った。仕切りに同じ名前を連呼している。こんな出会い方はしたくなかった。土煙が徐々に引いていき、そのシルエットが明らかになっていく。躊躇(ためら)いの気持ちを(はら)んだ目で、その行方を凝視する。

「ケロちゃーん! ケロちゃーん‼︎ 死んじゃやだよー‼︎」

目に映ったのは、ぐったりとした獣に(すが)り付く、セーラー服の女の子の姿だった。その女の子を、彼女は知っている。どうしようもなく、知っている。ずっと会いたかった。愛してやまなかった。だからこそ、悲しかった。そう、かの少女の名は……、

「さ……くら?」

そう口に出したのは、右隣にいるましろだった。そう、かの少女の名は、木之本桜。カードキャプターさくらの主人公にして、今回のイベントの主役。だが、このステージのセンターには決して立つはずのない、創作物そのもの。

それは、作品世界の雰囲気とは似つかわしくない(すす)けたような光景だった。彼女が木之本桜を好きな気持ちは、憧憬に近いものだ。彼女はかつて、木之本桜の強さに魅せられた。人を思いやれる強さに。私もこんな強い女の子になりたいと思った。その女の子が、今、膝を突き、縋り付き、泣き崩れている。どう見ても、この世界で一番弱い女の子の姿だった。そんな姿を、彼女は見たくなかった。彼女にとって希望の象徴だったからだ。そして何より、もし、もしも出会うことがあれば、桜の木の下で、抱きしめたかった。もらったパワーを、見せてあげかった。あなたのおかげで人生が幸せなものになったと伝えたかった。胸いっぱいのありがとうを言いたかった。互いに明るい笑顔を見せ合いながら。しかし、こんな状況になって、もう叶うはずがない。彼女は神を呪った。おそらく人生の中で一番強く。その呪いは、言葉にすればこそ同じだが、二重の意味を帯びていた。希望を汚された。木之本桜そのものと、木之本桜への思いを踏み躙られたことに対する、やり場のない怒り、悲しさ、悔しさ。やがて視界が狭まっていく。大切なことを忘れたような、やり残したような、そんな心許なさと罪悪感とともに、意識が薄らいでいく。

 

「にゃーん」

 

ハッとした。猫のさくらだ。

「あなたが桜……さん、でしょうか?」

「は、はい」

それは、中性的で、性別の判別ができないような声だった。猫が喋るのを見たのは、これが初めてだ。とある作品で聞いたことがある。猫は9つの命を全うする。何度も生まれ直し、人間と接していれば、やがて人の言葉を理解し、操るようになると。そして、さくらこそ、9回目の命を授かった猫なのではないか。

「さくら……さん? いったいこれは……?」

「こっちです」

猫のさくらが視界から消え、上から人の顔が現れ、私の目を覗き込んでいた。

「キノです。えっとこの人で合ってるかな?」

「にゃーん」

「そっか」

よもぎいろのショートの髪に、整っていて穏やかな顔つき。その顔つきの持ち主が私の顔から離れ、姿勢を正した。なるほど状況を理解した。彼女は猫を胸の前に抱き抱えていた。つまるところ、言葉を発したのは、彼女の方だったのだ。その容姿は少年と見紛(みまが)うものだったが、彼ではなく、彼女だと表現することができるのは、これまた知っていたからだ。彼女はキノ。旅人。その容姿から少年に思われがちだが、少女である。その少女が、先程の質問に答えようとしていた。が、

「何と言えばいいか……。とりあえずこの世界は、このままだと滅んでしまいます。あなたは、この終末をどう過ごしますか?」

その言葉に、頭がぐらついた。そしてその問いに咄嗟に答えることもできなかった。

「にゃーん」

「せっかく案内してくれたとこ悪いけれど、ボクは、本人の意思を尊重したい。これはボクにとって大切な確認事項なんだ」

何を言っているんだ。私の意思? そんなものわかるはず……。

「まあ、いきなりそんなこと言われても困りますよね。とりあえず、落ち着いて状況を整理しましょう」

 

私はカードキャプターさくらのイベントに来た。すると、創作物の神田空太と椎名ましろに出会った。そしてイベントの途中、世界から色が消え、周りの人達が動かなくなった。ふと右に視線をずらすと、すでにましろも動かなくなっている。そんな中、突如空から、ステージ上にケロちゃんに跨った木之本桜が降ってきた。そして、キノまで現れ……。会場には女の子の悲痛な泣き声が響く。

私は小さく口を開いた。

「終末なんてどうでもいい」

「どうでもいいんですか?」

「私はただ……」

「ただ?」

「目の前の女の子の涙を拭いに行きたい!」

私は席を立った。

「どうして?」

「大好きだから‼︎」

勢いよく走り出した。

「そっか、なら、いってらっしゃい」

かすかにその言葉を耳にしながら、前を向いて走る。詳しい状況は依然としてわからない。自分が知り得る限りの情報しかない。でも、

「さくらちゃん! さくらちゃん‼︎」

そうだ、私は木之本桜から、いろんなものをもらった。走りながら、思い返す。そして、思いを返すんだ。そう自分に言い聞かせて、ステージに身を乗り出し、

 

「さくらちゃん! 絶対大丈夫だよぉぉおおお‼︎」

 

力の限り叫ぶ。すると、一筋の光が、勢いよく飛び出した。木之本桜の下に向かって!




こんにちは。ここまで読んでくださった皆様ありがとうございます。楽しんでいただけてますでしょうか……。ところで、つい先日購入した「化物語」、まだ家に届きません。通学中、手持ちブタさんです  さて、自分はアニメが好きなので、アニメの話でもしましょう。今期のアニメ、やはりなんといっても楽しみなのが、「美少年探偵団」!!これまた西尾維新先生の作品です。女性キャラクターが多い西尾先生の作品の中で、男性キャラクターを中心に描いたいわば挑戦的な作品のように思われます。自分は西尾先生特有の文法がとても好きです。西尾先生と男性キャラクターの集団。そして、再びのシャフトさんによる映像。どんな化学反応が起こるのかとても気になります。あとは「フルーツバスケット」。とうとうThe Finalまできましたね。透くんの、ふとした瞬間の夾への反応。ドキドキします。これもまた名言の多い作品です。きっとあなたの背中にも、梅干しはついていますよ。
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