第9話 伝説の男
ピンポーン
「はじめまして、咲良田の管理局から来ました。浅井ケイという者です」
「はーい」
ガチャッと音を立てて扉が開く。
「って大所帯じゃねーかよ。まあいいや、上がって上がってー」
「お邪魔します」
「さて、俺は時雨沢恵一。しがない小説家だ」
「改めまして、浅井ケイです」
「春埼美空です」
「村瀬陽香です」
「坂上央介です」
………………。
「あわわ、えっと、木之本桜です」
「おう、よろしく! って、木之本桜⁉︎ え、え、ええ‼︎ えっと、とりあえずあとにしよう。そ、そしてこいつは……」
時雨沢は視線を向かって右に誘導する。
「キノさんですね」
先に口を開いたのはケイだった。
「どうしてボクの名前を?」
当然の問いだった。ケイは答える。
「僕と村瀬さんと木之本さんは、ちょっと未来から来たんです。既に未来で会ってるんですよ」
「にわかには信じられないですね」
キノが苦笑気味に言う。
「マジかよ、じゃあ事情は全部わかってる感じなの?」
「ある程度は」
こちらも苦笑気味に言う。
「最近、この横浜で、能力勃発事故が多発しています。その原因を調べに一度来たんですが、あまり収穫はありませんでした。そして、3日後、カードキャプターさくらのイベントに行くことになってるはずです」
「え、そこまで知ってんの?」
「ええ、同席しましたから」
「え、でもチケットとか……」
「管理局に頼めば、だいたいのことはできるので」
「めっちゃええ機関やん」
咳払いを一つ。
「しかしそのイベントで、事件が起きました」
「事件?」
「はい、世界から色という概念が失われたのです」
「は?」
「世界から色が消えて、モノクロ世界になり、人も時間が止まったかのように動かなくなりました」
時雨沢はどう反応していいか分からず、とりあえずキノに目線をやった。
「えっと、にわかには信じられないですね」
ところが……、
「いや、そうでもない。だってお前、小説の中の登場人物のくせして、この世界に現界してんじゃん。しかも目の前には木之本桜がいる。それに能力勃発事件。あり得んことが次々に起きてる。もうこの世界、何が起こってもおかしくない……」
「だそうです」
キノは目線を時雨沢からケイに移し、そう言い直した。
「ええ、今回の事件と能力勃発事故、そして創作物の現界、これらは何かしら関係していると考えています」
「そうだなぁ、ちなみにそのモノクロ事件は、どうなったんだ?」
「このままだと世界が滅んでしまうというような状況の中、現れたのが木之本桜さんなんですよ。彼女のおかげで一旦世界は救われました。ですが、一連の事件から鑑みるに、完全に解決したわけではない。たまたま彼女がそこにいたから一時凌ぎはできたものの……。だから、モノクロになってからでは遅いんです。そのために、僕たちは来ました」
さて、入院の話の続きです。
自分は、顎変形症の手術のため、半月ほど入院していました。
すごく退屈な日々でした。だから、執筆作業する時間も山ほどあったというわけです。執筆の他にも、例の『化物語』上下巻ともに読んだり、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の原作小説を読んだりしていました。麻酔科のお医者さんも『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』のご本に反応してくれて、少し話に花を咲かせたり。嬉しかったです。
『化物語』は、やはり言葉遊びや会話劇がおもしろいですし、後の話を知っているが故に、後の伏線となるセンテンスが光ったりします。
『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』は、1エピソード目で既に泣きました。この作品は、詩やポエムのような印象があり、じわっと心に沁みてくるセンテンスが多いです。しかしながら、アニメ化するにあたって、大幅にアレンジされているのですが、それも良いアレンジのされ方でされていて、より洗練された作品になっていると思います。心から、尊い。
この作品たちは、アニメも原作小説も、どちらもオススメします。レベルの高い作品を、やはりインプットしたいものです。