SEXFRIEND SS集   作:TANASOUKO

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涙が止まらない放課後

いつもと変わらない日常のつもりだった。

いつもと変わらない日曜のつもりだった。

 

つまり、明日になれば土日は終わりで寂しいな。

恐怖の月曜日と学校がやってきます。

それがどようびクォリティ。

 

過ぎ去った時は振り返るときにはすでに過去であり。

振り返る時点で全ては決定された過去として成立する。

 

「高辺クン……?」

 

そう、例えばこのオレの前で目を潤ませて、オレの行動を

待っている早瀬も。

 

「ぁん……じらさないで……」

 

──全てはもう決まっているわけだ。

時は戻らない。

現実は覆らない。

奇跡は起こらない。

 

……。

 

……。

 

 

 

 

 

よし。コマンド「難しいことを考える」しゅーりょー。

 

さっきまで狂ったように熱を帯びていた下半身はやや静まった。

オレのカラダの下で物足りなげにアツイ身体をもてあます早瀬の顔を

やさしく撫でる。

 

「はぅん……気持ちいい」

 

うっとりと、目を細める早瀬。

 

もう互いに何度も果てて、何度目かわからない高ぶりに身をゆだねる。

 

「すき……高辺クン……」

「オレも、すきだ」

 

ちゅ、と軽いキス。

今の早瀬はそりゃもうえらいことになっているのでキスだけで

達してしまうかもしれない。

 

オレが言うんだから間違いない。

 

さて、そろそろラストスパートだ。

高ぶりの望むまま、腰を打ち付ける。

 

「あっ、ああぁっ! ふあ、あん──」

 

 

いつもと変わらない日常のつもりだった。

それがまさか、こんなことになるとは。

 

 

 

 

─────────────────────

 

「涙が止まらない放課後」 06/05/07 by TANA

 

─────────────────────

 

「すぅ……」

 

ふとんのなか。

オレは目を覚ますと、至近距離にある早瀬の顔を見つめる。

 

「すぅ……」

 

重ねた手はほんのりと温かく、早瀬がまだ夢の中にいることを

伝えてくる。

 

 

 

いや昨日はひさしぶりに徹底的にふたりして愉しんだ。

下手すれば互いにフタケタに到達しちゃったかもしれない。

若いってすばらしい。

 

 

って、そろそろ早瀬を起こして、朝メシにしないと。

 

「はやせ……?」

 

驚かせないように、そっと声をかける。

ウチのお姫様はお世辞にも朝が強い方ではない。

しかも昨日はそれなりに疲れることをしてから寝たわけで。

 

ちょんちょん、と頬をつつく。

うわ、やらかい。

 

 

 

ふにふに。ふにふに。

かわいー。

 

 

 

……はっ!

いかん。愉しんでいる場合ではない。

 

「はやせ、あさだよ……」

 

軽く揺する。

 

「ん……」

 

お、反応あり!

 

「はやせ、がっこう、遅れちゃうぞ」

「ん、高辺クン……?」

「オレは朝の支度してるから、ちゃんと起きて来いよ」

 

そう言って、軽く口づけをする。

 

いつか、オレんちに早瀬が泊まってからの習慣。

お姫様の目を覚ますとっておきのおまじない。

 

「ん……うん、今、おきるー」

 

まだぽややんとしているが、ちょっと目が覚めてきたみたいだ。

これなら朝食の支度をしていれば起きてくるだろう。

 

 

 

 

食パンをトースターに放り込んで焼き始めて。

それからぱかぱかっとフライパンで目玉焼き。

コンポタはインスタント。

 

オレも料理は得意な方じゃないけど。

早瀬に作らせたらそりゃもうタイヘンなコトになってしまうので、

必然、泊まったときの朝の支度はオレがやることになっている。

 

 

 

 

パンが焼けた。冷蔵庫からバターを取り出して、テーブルに置く。

目玉焼きはあと2分ほど。今のうちにコンポタを。

 

「ん……あれ、あれれ?」

 

なんか向こうで早瀬が何かに驚いたような声。

 

──コンポタちょい待ち。

 

フライパンの火を止めて、早瀬の部屋に……いや、今の声は洗面所か。

 

「どうした? ──え」

 

洗面台の前で。

ぐしぐしと目をこする早瀬の目はやや赤く。

──卑怯なまでにかわいらしく、潤んでいた。

 

 

 

 

 

ひょい。パンを手に取る。

さく。ひとくち囓る。

 

「ぐす……おいしい」

 

さながら難民キャンプで数日ぶりの食事にありつけたか、

究極にして至高のメニューのなんか名前の長そうな特殊原料のパンでも囓ったか。

 

ぐすぐすと鼻を鳴らし、目を潤ませながら早瀬は言った。

 

「なぁ、それホントに大丈夫なのか」

「へいき」

 

ぐす。また早瀬が鼻を鳴らす。

 

 

 

──最初は、オレがなんかとんでもないヘマでもして、

早瀬を傷つけてしまったのかと思った。

 

が、早瀬はぐすぐす言いながらそれを否定し、

 

「感動しすぎたりすると時々なっちゃうの。病気とかじゃないから安心して」

 

ということらしい。

 

「……はじめてじゃないから。映画とかでなっちゃうこともあるし」

 

ちなみに何の映画かは聞いても教えてもらえなかった。

 

 

 

確かに見る限り、目が潤んでいることとぐすぐす言ってることを除けば、

気持ちを取り乱している様子もないし、落ち着いているようだ。

 

……しかし。

 

どう見ても。

今の状況を第三者が見ると、オレがなんか悪いコトして早瀬を泣かせている

ようにしか見えないだろう。

 

 

 

「……学校、休むか」

 

こんな様子の早瀬。やっぱり見ていられない。

本人がなんと言おうと、休ませた方が。

 

「だめ。いく」

 

でもなぁ、その様子だと。

 

「平気だから」

 

うーん。100歩譲って早瀬は平気なのかもしれないけどな。

目をうるうるさせた早瀬はなんか壊れそうな人形のようで、

なんか見てると痛々しいというか良心に訴えてくるものがあるというか。

 

 

 

 

がらっ。

 

「おはよう」

「ぐすっ……おはよう」

 

さー。

 

なんか教室の温度が一気に下がった。ざっと10度くらい?

 

「こらー! 高辺ー! 早瀬に何をしたんだー!」

 

どしどし。

うわ佐藤が突進してくる。

 

危ないのでひょい、と早瀬を横に避難させる。

 

ぐわし。

うおう。胸ぐら捕まれた。

 

「どんな不適切で猥褻で教育上よろしくないことをしたぁー!」

 

身に覚えはたくさんありますがとても教室では言えません姉御。

 

 

 

その横で。

 

「またか」

「うん、ちょっとね……」

 

何事もないように会話する蕪皿と早瀬。

できればこっちに気づいて欲しい。なるたけ早く。

 

 

 

 

 

「つまり、早瀬が感動しすぎると、ああなるってことか?」

 

教室はお白州になっていた。

裁かれる罪人、オレ。

早瀬も横に並んで座っているが、こちらが床の上に正座なのにたいして、

早瀬は3枚くらい座布団を重ねた上に座ってぐすぐす言っている。

 

笑点ですか。

 

座布団を全部持って行かれたこん平師匠が歌丸師匠を見るような気分で、

早瀬を見つめる。

 

「間違いない。一度見た」

 

今証言台に立っているのは蕪皿だ。

唯一の証人と言っていいので、期待のかかるところです。

 

向かって右に女性陣。オレを見る目が冷たい。

向かって左に男性陣。オレを見る目は殺意がこもっていた。

 

真ん中にお奉行佐藤。

斜め後ろに刀持ち小姓小平。……なにがしたいんだお前。

 

「うーん、で、早瀬は何をそんなに感動したんだ?」

 

う。

 

痛いところをついてきた。さすがは佐藤だ。

 

これは言えない。

ヤリスギマシタと言った途端に靴とかカバンとか分度器とかコンパスとかが

飛んできそうだ。コンパスに殺されるのは勘弁して欲しいところだ。

 

 

 

「あのね、昔見た映画。……前の時も同じ映画だったんだけど。

今度は大丈夫かな? と思ったけどやっぱり同じだったんだ。

えへへ♪ あ、あのゴメンね。こんな騒ぎにしちゃって……ぐす」

 

 

 

「つ、つかれた……」

 

体力的な疲れとは違う疲労にやられて座り込むオレ。

 

教室でクラスメートの誤解を解くだけで一苦労だというのに。

なぜか今日に限って担任に呼び出されて早瀬とはどうなんだ泣いてるのはどうしたんだ

とか聞かれたり、ついに破局ですか待ってましたととある一年生が押しかけてきたり、

また面白くなってきたの? と理想の美人保険医がわざわざ教室まで見に来やがったり

したせいで、もう一日でバッドエンドのフラグが1ダースくらい降ってきたような騒ぎ

だった。

 

「ゴメンね……ぐす」

「いいよ。なんとかバッドエンド直行はさけられたようだし」

「バッドエンド?」

「なんでもない」

 

まぁ、こんな目をうるうるさせた早瀬にゴメンねと言われたら火星まで

言ってマンプク大王を捕まえてやっても報われるってもんだ。

 

「で、明日にはたぶん治っているんだな?」

「うん。……もう、少しよくなってきてるから」

 

早瀬を家に送りながら、手をつないで歩く。

今回は本当に懲りた。若さに任せるのもほどほどにしないとダメだな。

 

「でもこれからは少し控えた方がいいな。……アレ」

「今日のでいいわけが立ったから今後はいつでも平気だよ……ぐす」

 

早瀬のほうが大物だった。

ついでにぜんぜん懲りてなかった。

 

 

 

 

 

いつもと変わらない日常のつもりだった。

いつもと変わらない日曜のつもりだった。

 

つまり、明日になれば土日は終わりで寂しいな。

恐怖の月曜日と学校がやってきます。

それがどようびクォリティ。

 

どようびどようび~。

脳内で右に左にキャラが漂う。

 

「あ、そーだ」

 

何ですか早瀬さん。

そのTATSUYAのレンタル袋は。

 

「コレ」

「DVD? ……映画だな」

「前言ったやつ」

「なんだっけ」

「感動して、涙が止まらなくなった映画……♪」

 

 

「……」

 

「……」

 

問答無用で早瀬からDVDを奪い取るとレンタル袋の中に放り込む。

 

「返してくる」

「えー! 一緒に見ようよ! せっかく借りてきたんだからぁ」

「二週連続で同じイイワケが通用するかっ!」

「だいじょーぶ。……たぶん」

「──却下だ」

 

 

 

「キミが一緒に見てくれると思って借りてきたのに……ぐす」

「ぐすって……」

「……」

「悪かった。悪かったからそうやって瞳に涙溜めてこっち見るのはやめてくれ」

「……にしし♪」

「って目薬!?」

 

──姉さん事件です。

僕の彼女はまた新たな技をぽけもんげっとだぜーした模様です。

もう手に負えません。

 

たすけてー。

 

 

 

「でも私のこと好きだよね?」

「うん」

 

 

 

即答だった。

めでたしめでたし。

 

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