SEXFRIEND SS集   作:TANASOUKO

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友よ。

 

夏休みの初日。

 

とりあえず惰眠をむさぼるオレ。

毎朝早く起きなくていいってしあわせ……。

 

と思っていたら、チャイムが鳴った。

この時間、母親はなんかの講習会だとかでいない。

 

仕方なく、オレが出ると。

 

「友よ! 友よ! 聞いてくれい! もちろん聞いてくれるのだろうな!」

 

──満作がいた。

 

 

 

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「友よ。」 03/06/29 by TANA

 

 

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満作の様子は端から見ても、並大抵じゃない。

目は血走り、息を荒げ、肩で呼吸をしている。

 

たった今、銀行強盗をしてきたといっても信じそうだ。

 

「ああ、そうか。……昨日は赤坂さんの家に呼ばれていたんだっけな」

 

とりあえず、こんな危険人物を家の前に立たせておいて通報とかされても困るので、部屋

に通すことにする。

 

「……で、どうだったんだ? 昨日の首尾は」

「うむうむうむっ! 其処なのだ! 是非この喜びをお主と分かち合いたかったのだ!」

 

ずずいと近寄ってくる満作。

夏真っ盛りだというのに顔近づけるなよ、暑苦しいな。

 

「まぁまぁ、おちけつ」

 

どうどう、とオレは満作の肩を押し返す。

 

「う、うむ。すまなんだ。わしもつい興奮してしまってな」

「んじゃ、順番に話していけよ」

 

幸い、時間はまだ平気だしな…。

 

「うむ! 昨日、学校が終わったあと、わしは真紀殿と一緒に、真紀殿のお宅に呼ばれた

のだ」

「赤坂さんの家って、学校から近いのか?」

「だいたい30~40分ほど歩いたであろうか……真紀殿と話をしながらだったので、時間は

まるで飛ぶように過ぎ去っていたのだが……」

 

歩きで30~40分。

 

どこかで聞いたようなフレーズだな。

あ、そうか。赤坂真紀って早瀬と幼なじみなんだっけか。

 

なら、家も近いはずだよな。

 

「なんと驚いたことに! 真紀殿の家は驚くほど大きな家だったのだ!」

「大きい…って、どのくらいだ?」

「うぅむ……だいたい、この家の数倍はあっただろうか……真紀殿の育ちの良さは矢張り

あのような素晴らしい家庭環境の元で健康的に育まれたものだったのだな……」

 

目をうるうるさせてオレに感動を訴える満作。

 

大きい家。家庭環境。

 

……どうしても、早瀬を思い出しちゃうな。

 

同じような大きい家。

でも、早瀬の家は寂しさにあふれていた。

 

「家に到着するとだな、真紀殿とよく似たご母堂が出迎えてくださったのだ!」

 

赤坂真紀によく似た……?

やっぱり、母親もちっちゃい子供みたいなんだろうか。

 

あるいは、父親も……?

 

ぶんぶん。オレは頭をふって想像を振り払う。

まるでパタリロのように同じ顔した家族がお出迎えをする想像が浮かんだからだった。

 

「ご母堂に勧められて応接室にあげて頂くと、お父上が待ってらっしゃったのだ!」

「……そりゃ、家にお呼ばれしたんだから、いてトウゼンだろ?」

「うむ! ちなみにお父上は、とても品の良い紳士であった。……不思議なことだが、

わしとお父上は、一目見ただけでなにか通じ合うものがあった」

 

 

 

……それって、ロリ好きの血が感応したんじゃ?

 

 

 

と思ったけど、口には出さないオレ。

 

「そしてケーキを出して頂いて、しばし歓談をしたのだ。……非常に有意義なひとときで

あった。ううっ」

 

うわ泣いてるよこのヒト。

 

「思えば、あのときお主が背中を押してくれなければ、あのような幸福な時間もなかった

であろう。改めて礼を言わせてもらおう」

 

言って、深々と頭を下げる満作。

 

「…背中を押すって……ああ、終業式のアレか」

 

不安がる満作に『大丈夫だ』って言ったアレか。

 

「別にそれほど大したこといったわけじゃないだろ。お前が温かく迎えてもらえたのは、

お前がいいやつだからだよ。そんなにアタマ下げるほどのコトじゃないよ」

 

「うむ。しかし、やはりちゃんと礼は言っておきたかったのだ」

 

……コイツ、そのためにわざわざ来たのか。

はじめは自慢かのろけに来たのかと思ったけど。

 

やっぱり、コイツはいいやつだ。

 

と、ちょっぴりオレが感動していると。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぴんぽーん。

 

チャイムがなった。

 

「む…、来客か……?」

 

……しまったぁーーっ! もうそんな時間だったか!?

 

「すいませーん!? ……高辺くーん、寝てるのー?」

 

早瀬が来てしまった。

 

 

 

 

 

「にっしっし♪ 起こしに来たよー……って、起きてるじゃん」

 

「お、おう」

 

「……早瀬?」

 

「あ、あれ!? 戸狩クン?」

 

今さら気付く早瀬。……出来ればクツとかで気付いて欲しかった。

 

「随分と勝手知ったる様子だが……」

 

「いや、えーと、その、つまりだな…」

「え、えっと、私、お邪魔だったかな……?」

 

どうしたものか、説明に困るオレ。

予想と違う状況にとまどう早瀬。

 

そして。

 

「そうか!!」

 

ぺかー、と突然満面の笑顔を向ける満作。

 

「ど、どうしたの?」

 

「お主ら、ようやく上手くいったのだな!!!」

 

「「よ、ようやくって……?」」

 

思わずハモるオレと早瀬。

 

「いや、お主ら、いつになったら付き合い始めるかと思っておったが、ようやく付き合い

だしたのだな!」

 

満面の笑みで続ける満作。

 

「へ……?」

 

それは、あまりに予想外のコトバ。

早瀬も意外だったのか、目をぱちくり。

 

「いつになったらって…いつからそう思ってたんだ?」

 

「うむ…だいたい、7月のはじめくらいであったろうか」

 

7月はじめ。

そのころ、オレたちはまだ、ただのセックスフレンドだったはず。

 

「ええと…マッキーから、なにか聞いた、とか?」

 

妙に顔を赤くして、早瀬。

……なにか心当たりでもあるのか?

 

「いや…? 真紀殿との会話で早瀬の話題はあまり出んぞ」

「そ、そう。……ならいいんだけど」

 

ほっとした様子の早瀬。

……あやしい。あとで問いつめてみよう。

 

「と言うか、お主の様子を見ていたら、なんとなくそうではないかと思ったのだが」

 

言って、オレを見る満作。

 

「え……」

 

ちょっと、いや、かなり意外なコトバ。

 

あの頃の満作と言えば口を開けば『真紀殿が、真紀殿が』ばっかりで、こちらの様子など

お構いなしだと思っていた。

 

でも。

 

そんななかでも、実はオレの様子をちゃんと見ていたらしい。

 

……というか、7月はじめと言えば、まだオレ自身、早瀬のことが好きだと気付いてない

頃じゃん。お前の方がぜんぜん先に気付いていたのか……。

 

ちょっと、胸にじーんと来る、オレ。

 

たぶん、コイツと友達になって、一番よかったと思える瞬間だった。

 

 

「…うむ。そう言うことであれば、わしは退散することとしよう」

 

「え、帰るのか?」

 

「愛し合うふたりの邪魔をするほど、わしは無粋ではないぞ」

 

「「あ、愛し合うふたり……」」

 

またハモるオレたち。

 

そういうことならば、今度は真紀殿も一緒に4人でどこか出かけることとしよう、などと

からからと笑って、満作は帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え、えーと、まさか戸狩クンが来てるとは思わなくて、勝手にあがっちゃって、その、

ゴメン」

 

「いや、それはいいよ…もともと、お前の方が先約なんだし」

 

「う、うん。しかし、さっきは驚いたよ♪」

 

「なに? 7月くらいから気付いてたって、アレ?」

 

「うん。…そういえば、キミはいつから私のこと好きだと思ったの?」

 

「え」

 

「もしかして、戸狩クンには相談してるかと思った」

 

「いや、あいつは赤坂さんと付き合いだしてから、ずっとクラスでは滅茶苦茶だったろ。

相談なんて、とてもとても」

 

「にゃはは、それもそうだね♪ ……で、いつから?」

 

目を輝かせてこっちににじり寄ってくる早瀬。

 

「…お前も言うんなら、言う」

 

「え……わ、私も言うの?」

 

「オレだけ言うんじゃ不公平だろ」

 

「わかった♪ 言うから、言って♪」

 

「う、うん。…実は、告白する一週間前くらいだ」

 

「え……? ということは、試験勉強してる頃?」

 

「そ、そうだ」

 

ううう、なんというか、凄くハズカシイ……。

もう一度コクハクしてるみたいだ……。

 

「そうなんだ…でも、ということは、キミが自分で気付くより先に、戸狩クンは気付いて

たんだねー。すごーい」

 

「うん。……オレもさっき、すごいびっくりした」

 

「(……私がマッキーに気付かれたのと、おんなじだ……)」

 

「ん? 今なんて言った?」

 

「え? いやいや、なんでもないよ♪」

 

「あやしいな……で、早瀬はいつ」

 

「戸狩クンみたいな友人て、なかなかいないよー。大切にしないと」

 

「そうだな。で、早瀬は」

 

「マッキーも、いい人見つけたよね。……あとでこのこと教えてあげよ♪」

 

「そうするといいんじゃないか。で、早」

 

「あ♪ そうそう。今日、なんの映画を見るか決めようよ♪ ほらほら、情報誌こんなに

買ってきたよ」

 

「……情報誌をそんなにたくさん買ってきても仕方ないだろう」

 

「いいんだよ♪ 紹介文も雑誌ごとに違うんだから、一冊だけ見て決めると後悔すること

がおおいからね。……あ、これなんてどう?」

 

 

 

 

そんな感じで、オレたちは見に行く映画を決めるのに夢中になって。

 

 

早瀬が赤坂真紀に何か相談してたのかとか、いつオレを好きだと気付いたのか聞きだす

のをすっかり忘れてたことに気付いたのは、夜寝る前だった……。

 

 

 

 

 

 

おしまい。

 

 

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