壊れないように、離さないように   作:東雲。

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告白後のヒロインちゃんサイド。
ヒロインちゃんを急降下爆撃に導いた黒幕が明かされる!


昨日のAnother Side

斎賀玲は最早言い表せないほどに後悔していた。

自室に戻ってからというもの、布団にうつ伏せて枕に顔を埋め、足をじたばたさせながら羞恥とか後悔とか絶望とか不安とかがミックスした感情の嵐に耐え続けていた。

 

この告白が100%自分の意志によって行われたものであるならば、勇気を出した自分を褒めるひとかけらの自賛もあっただろう。

だがそれがない。つまるところこの告白は、第三者に煽られて触発されての暴発である。

 

(私っ…私は何という軽率な行動を………っ!!!)

「ぁああぁああぁぁぁぁぁあぁあぁぁぁああぁあぁあぁぁぁあ………」

 

陽務楽郎攻略計画(告白できない自分を誤魔化す理論武装とも言う)ではもっとじっくりアプローチを重ね、向こうから自分を恋愛対象として意識させてから告白するはずだった。

あわよくば楽郎の方から告白してほしかった。

だが今楽郎からの玲の評価はせいぜいが「仲のいいゲーム友達」止まりだろう。そんな相手から脈絡もなく告白された時に彼がどう返事するのか、玲には全くわからない。

これで自分の事を意識してくれてめでたくカップル成立…となればその日が人生最大の記念日となるが、逆に「ごめん、玲さんのことは友達としてしか思ってなかったから…」などと言われてフられようものなら翻って命日だ。

 

脳裏に走馬灯めいて過るのは、過日に自分を煽った姉の友人にして、玲が所属するクランのオーナー。アーサー・ペンシルゴンとの個人チャットだった。

 

----------------------------------------------------------------------

 

『玲ちゃん。ちょーっとこの動画見てみない?GGCっていう世界規模のゲームイベントで行われた新作格ゲーのエキシビジョンマッチなんだけどね?

https://~~~』

 

(しばらく経過)

 

『動画、拝見しました。あの、もしかしてこれ…』

 

『流石玲ちゃん察しが良いね!その通り!白バイ5台くっつけて気色悪い動きしながら全米一のプロゲーマーと大激戦を繰り広げたのがサンラク君だよ!』

 

『どうしてご存知なんですか?』

 

『…。ざっくり言うとカッツォ君のリベンジマッチの為に、数合わせの欠員補充として引っ張り出されたんだよね』

『この試合を経て、カッツォ君は見事全米一の不敗神話を終わらせた訳だからまぁこの件はハッピーエンドって事で』

『それにしても凄いねぇサンラク君。『顔隠し』というガワこそあれど、これだけの活躍をしたから世間からの評価はうなぎ登りだよ』

 

『そうですか…』

この時、玲は胸の中が嬉しさで暖かくなった。

自分の大好きな人が、たとえ正体不明だとしても他者に認められる。

ただ近くにいるだけであっても、どこか誇らしさを感じずにはいられなかった。

 

『うん。だからカッツォ君経由で『顔隠し』宛のファンレターとかめっちゃ来てるんだってさ。中にはラブレター紛いのものも』

 

『え?』

玲の胸の中が氷点下と化した。

 

『いやー凄いよねぇサンラク君。オルケストラ戦も生配信の視聴者数300万突破してたし』

『いくら半裸の鳥頭だとしても、これだけの母数があれば女性人気も少なくないだろうねぇ』

『サンラク君結構いい顔つきしてるし?一度顔を出せばそれまでの人気含めて大変な事になりそうだなぁ~』

 

スゥ…と玲の胸の中に固形化した重く固い感情が落ちる。

 

『ほらシャンフロってばやっぱり日本で大々的にヒットしたタイトルだし?同じ学校でシャンフロをプレイしているのがまさかサンラク君と玲ちゃんだけって事は無いだろうねぇ』

『そうなるとあーどうかなーサンラク君ネットリテラシーはしっかりしてる方だけどーなにかの拍子でバレちゃうかもしれないなー』

 

----------------------------------------------------------------------

 

あの時は色々と冷静さを欠いていた。今にして思えばあれは明らかに自分を煽って発破をかけていたのだ。

なぜそうしたのかは考えが及ばないが、ともあれ自分はまんまと掌の上で踊ってしまった事になる。

 

「ふぐっ………うぅううぅぅぅっ………」

 

ネガティブな想像と涙が止まらない。もう今日は何をする気力も湧かなかった。

その日、斎賀玲は夕食を摂らず、姉によって無理矢理風呂に入れられてのぼせて力尽きて寝た。

 

 

 

……

…………

………………

 

 

泥のように眠りて翌朝。

 

人の心は案外単純なのだろうか。睡眠を挟むことで少しばかり心が落ち着いた。

寝ぼけ眼をこすり、枕元に置いてある時計を見れば7時20分…いつも起きる時間より遅い。

空腹と泣き疲れて少しばかり気だるい身体を起こし、端末を手にとって見る。

 

サンラク:昨日の返事がしたいのでレイさんの家に行っても良い?(20分前のメッセージ)

 

眠気どころかいろんな感情が吹っ飛んだ。

手が震える。彼からの大切なメッセージを、あまつさえ自分は寝過ごして、20分も待たせてしまった……!!!

 

「もはや…これまで………っ!」

 

しかしこのまま何も返答しないわけにはいかない。失敗したのなら、取り返す努力をせねばならない。

昨日以上の感情と思考が二重螺旋を描いてループし続ける脳内で何とか返事を打ち込む。

祈る思いで送信!

 

サイガ-0:大丈夫です

 

パニックのあまり確認の前に送信してしまった玲は文面を見直して枕に顔を叩きつけた。

 

「………どっち!」

 

これではYESともNOとも取れてしまう。早急に再度返事しなければ。

加速するパニックの中で玲は返事内容を考える。

「来ても大丈夫です」?返事を20分送らせてしまっている分際で言い方が厚かましすぎる。

「どうぞお入りください」?「お待ちしています」?どれもダメ!

そもそも悪いのはこちらなのに待つばかりなのがそもそもダメで…

 

「……!!!」

 

天啓が降りた。

返事をまたせた失点をある程度カバーする妙策。

こちらが待つ側なのが悪いのだ。

つまり、

 

「わたひから…伺います!!!」

 

楽郎本人から住所を聞いていないのでこのまま行った場合不自然なのであるが、状態異常:混乱の玲にそこまで考えが及んでいなかった。

静かに、しかし最速で身支度を整え、何か言っているような気がする姉を振り切り、庭を駆けて通用口へ。

扉を開き

飛び出した

 

想い人が目の前にいた




このユニバースのペンシルゴンはサンラクサンの素顔を見てませんが、
・妹ちゃんの顔付きはいい感じだし、兄も極端に悪くはないだろう
・玲ちゃんが惚れてる訳だから多少バイアスかかってるだろうし、褒めても嘘にはなるまい
などの推測から言ってます。ペンシルゴンはそういうことする
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