そして、またまた悠斗は梨璃達に引っ張られながら、訓練室へと入っていく。今から、夢結と梨璃の訓練が始まるのだ。
「構えなさい、梨璃さん」
「は、はい! ……こうですか?」
夢結の言葉に促されながら、梨璃に支給されたグングニルを構えるが、呆気なくそれは夢結に吹き飛ばされる。
「うあっ!?」
「「あっ!」」
「ダメだ。CHARMに全くもってマギが込められていない」
本当に初心者だったんだな、と思いながら痛みに顔をしかめる梨璃を見つめる。なにかアドバイスが必要かと思うが、マギの扱いは人それぞれなので、あまり意味は無いし、そもそもそれは、シュッツエンゲルである夢結の役目である。
「ヒュージとは、通常の生物がマギによって怪物化したものよ。マギという超常の力に操られているヒュージには、同じマギを使うリリィだけが対抗出来る…………マギを宿さないCHARMなど、それはただの刃物よ」
「は、はい!」
「もっと集中なさい。そうすればCHARMは動く。強靭になる」
「…………」
梨璃は、意識をCHARMに向けて、少しずつマギを流していく。すると、少しずつCHARMが光り、マギクリスタルコアが輝き始める。
だがしかし────ー
ガァン!
「ぐあぁぁぁっ! グッ……!」
しかし、夢結はお構い無しにCHARMを梨璃のCHARMへとぶつけ、吹き飛ばす。あまりの痛みで、梨璃は片膝を着いてしまった。
「あぁぁ!」
「素人相手に、なんてことを……っ!」
二水が心配そうに梨璃を見つめ、楓が少し怒り気味に夢結を見つめる。しかし、二人は外野など無視して、訓練をする。
「もう少し粘って見せなさい、梨璃さん」
「は、はい……っ!」
痛いはずなのに、梨璃はもう一度立ち上がり、グングニルを構える。
ガァン!
「うああっ! くっ……」
少しばかりの足音の後に、またもやCHARM同士がぶつかる激しい音。三度しか合わせていないのに、梨璃の息は切れており、肩で息をしている。そんな梨璃を、夢結は感情が何一つも残っていない目で見つめる。
────あの目だ。
悠斗は、夢結のあの目が苦手だ。同じ人間────いや、悠斗は既に人間とは言えないかもしれないが、あんなに冷徹で、何も移していない夢結の目が、悠斗は苦手だ。
「……軽いわね」
「随分と手荒い事ですこと」
そして、遂に我慢できなくなった楓が待ったをかける。
「私にマゾっけがあればたまらないでしょうねぇ」
────そういう問題か?
────そういう問題です?
二水と悠斗の思っていることがリンクした。
「夢結様のお噂は存じておりますわ。レアスキル、ルナティックトランサーを武器に、数々のヒュージを屠ってきた百合ヶ丘屈指の使い手…………」
「………………」
「トランス状態ではリリィ相手でも容赦しないとか?」
「おい、楓さん──ー」
「楓さん、それは──ー」
「いいんです、私……」
これ以上はダメだ。そう思った悠斗と二水が楓を止めようとしたが、立ち上がる音と声によって塞がれる。
「私……っ! 皆より遅れてるから、やらなくちゃいけないんです……! 今度こそ、失わないためにも…………」
「梨璃さん……」
その時に、梨璃と悠斗の視線があったような気がした。
「だから、続けさせてください!」
カッポーン。
「あいたたた……」
「おいたわしや梨璃さーん。全身アザだらけですわ~。ほらここも……ここも~!」
「そ、そこは違いますぅぅぅ!!!」
「はぁ……私にはやっぱり解せませんわ。そこまでして夢結様にこだわることないんじゃありません?」
「楓さんだって最初は………………」
「こんな所で挫けてはいられないよ。だって、私まだ夢結様のこと、それに、悠斗くんのことだってまだ何も知らないから」
グッ、と拳を握って気合を入れる夢結。そんな梨璃達に近づく影が三つ。
「あなたが夢結様のシルト、そして悠斗の昔馴染みね~」
「まさか本当にモノにしちゃうなんてね」
「おめでとう、梨璃さん」
寄ってきたのは、壱、亜羅椰、そして樟美の三人。
「あ、アールヴヘイムの皆さん!?」
そして、二水は慌てて鼻を抑え始めた。
「丁度いいですわ。教えて頂けません? 夢結様のこと。ついでに、悠斗さんのことも」
ついで発言に少しだけ楓にカッチーンときた三人だが、ここでやり合う訳にはいかないので、壱達は大人しく梨璃達の隣に落ち着いた。
「そう言っても、中等部は校舎違うしね~。悠斗のことなら沢山喋れるんだけど」
「でもぉ、夢結様と悠斗の共通点と言ったら……」
「…………甲州撤退戦」
「……甲州」
梨璃がその言葉に反応する。忘れるはずもない、あの夜のことである。
「二年前、ヒュージの大交戦にあって、甲州の大部分が陥落した戦いのことですね? 百合ヶ丘からも、いくつかのレギオンが参加したものの、大きな損害を出して、威勢を誇った先代のアールヴヘイムが分裂するきっかけにもなったんです。先輩方にも伺っても、この件には口が重くて……」
「度胸あるわね、あなたも…………」
二水のジャーナリズム魂に、引きながらも感心する壱。
「中等部三年生だった夢結様も、特別に参加していたと……」
「なら知ってるでしょ? 夢結様はそこで、ご自分のシュッツエンゲルを亡くしてるって」
「…………思ったんですけど、これと悠斗さんのどこに共通点が?」
「簡単よ。悠斗は甲州撤退戦で死んで、そこでヒュージに寄生されて生き返り、天葉様と依奈様に救われた…………本人もあまり覚えていないようだから、ここら辺の詳しい話が聞きたいのなら、天葉様たちの所に行くのをおすすめするわぁ」
ひえー……忙しすぎて書く時間がぁ~