アサルトリリィーPARASITEー   作:沼りぴょい

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十五話

 6月18日。今日も今日とてレギオンメンバーを集めるために集まっていた二水、梨璃、楓だが未だに七人から増えていない。

 

「個別に当たっても迷惑がられるから机を用意したけど……あと二人、なかなか集まらないね」

 

「そらまぁ六月ともなれば、大抵のリリィは大抵のレギオンに所属済みですわ」

 

「してないとしたら、一匹狼系の個性派リリィしか……お?」

 

 その時、二水が歩く二人のリリィを見つけた。片方は緑色の髪が特徴な二年生、吉村・Thi・梅で、もう一人は梨璃達と同じツバキ組、金髪の髪と赤い目が特徴の安藤鶴紗(あんどうたづさ)である。

 

「いました、個性派!」

 

「このさい贅沢言ってられませんわぁ!」

 

「し、失礼だよぉ!」

 

「……んお?」

 

 二人は、近づいてくる足音が聞こえて後ろを振り返る。

 

「なんだ……お前らまだメンバー探してんのカ?」

 

「は、はい……梅様どうですか? そろそろ…………」

 

「私はな……今はまだ一人で好きにしていたいかな」

 

「そこをなんとか……」

 

「しつこいっ」

 

「「わわわっ! ごめんなさ~い!」」

 

 鶴紗の剣幕にやられた梨璃と二水が楓の後ろに引っ込んだ。そのまま歩き去る鶴紗に対して、梅は三人に手を振りながら去っていった。

 

「……もう、このさい七人でよくありません?」

 

「もうちょっと頑張ろうよ……」

 

「定員まで残り二人……先は厳しいです……」

 

 二水が手元にあるチラシを見ながら呟く。

 

「せめて、悠斗さんが入ってくれればいいんですけど」

 

「悠斗くん?」

 

「はい。あまりにも悠斗さんのことが欲しいレギオンが多すぎるので、生徒会長が特別にほかのレギオンに所属してもいいと特例がでたらしいです……悠斗さんの条件により一つだけですが……」

 

「悠斗さん? 確かに不思議な魅力を感じるお方ですけど、梨璃さんの方がよくありません?」

 

「えっと……楓さん? それはどういう……」

 

「でも、悠斗くんって本当に人気だよね。この前も閑さんが熱心に勧誘してたなぁ」

 

 梨璃のルームメイトである伊東閑(いとうしず)は、レギオン『シュバルツグレイル』のリーダーである。

 

「幻想論」と呼ばれるファンタズムの未来予知のような動きを理詰めで再現する戦術を提唱し、理論的かつ攻撃的の極を目指している。

 メンバーは閑が書いたものすごい量の戦術論文を全員暗記して戦いに臨む。理性的で頭脳プレーを行うメンバーが多く、ときには教導官からのアドバイスにも反論するため、哲人のレギオンとも呼ばれている。

 

 また、現在生徒会『ジークルーネ』の役割を持っている二年生、内田眞悠理もこのレギオンに所属している。

 

「結果はどうでしたの?」

 

「えっと……遠目だったからよく……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら」

 

「夢結様」

 

 工廠科の廊下にて、とあるリリィのCHARMのメンテナンスをしていた悠斗は、夢結で鉢合わせした。

 

「…………いらっしゃい」

 

「え…………え!?」

 

 そして、大したことも告げられずに夢結に手を引かれる悠斗。

 

「ゆ、夢結様? 一体どうしたんですか?」

 

「明日、梨璃の誕生日なの。何をプレゼントするのか聞き込みをしているから、あなたもいらっしゃい」

 

「あ、明日ぁ!?」

 

 明日────6月19日は梨璃の誕生日である。

 

 ────ま、まずい!? 俺何も準備してない! 

 

 当然、その事を知らなかった悠斗は酷く慌てた。

 

「昔なじみのあなたの意見も聞きながら決めていくわ」

 

「是非、お供します」

 

 こうして、梨璃の誕生日プレゼントを決め隊が出来上がった。

 

「ちなみに、既に誰かのところ行きました?」

 

「百由よ」

 

「…………なぜ行こうと思ったんです?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたは何か知らないかしら。梨璃の趣味とか、好きな物とか」

 

 次に夢結が────初めて悠斗が訪れた場所は、同じ梨璃のレギオンメンバーであるミリアム・ヒルデガルド・v・グロピウスの場所だった。

 

「あぁ~。そういや梨璃は『ラムネ』が好き、と言っておったな」

 

「…………ラムネ?」

 

「わしは飲んだことないがの」

 

「ガラス瓶にビー玉で蓋をした、炭酸入り清涼飲料水のことかしら」

 

「……え?」

 

「ラムネをそこまで堅苦しく言い表す御仁は初めて見たの」

 

「私も……よく知らなくて」

 

「…………悠斗も大変じゃの。夢結様に付き合わされて」

 

「いや、俺も梨璃さんの誕生日プレゼントで悩んでたから都合がいい」

 

「じゃが、夢結様が用意してくれたものなら、梨璃はなんだって喜ぶと思うぞい────お?」

 

 しかし、ミリアムが後ろを向いた時には既に夢結の姿はなく、引っ張られる悠斗の姿だけが見えた。

 

 

 

 

 

 

 

「はい。梨璃は、ラムネ好きです」

 

「たまに、分けてもらいますよ。お口の中でほらほろと溶けていくのが面白いですね」

 

 次に向かった場所は、王雨嘉と郭神琳の場所である。一瞬、悠斗の姿が見えたことに喜んだ神琳だが、隣に夢結の姿が見えた瞬間、背中に般若が浮かんだ。

 

 しかし、そんな夢結は先程聞いたラムネとは別物であることを知り、顔を背けた。

 

(ラムネとは……飲み物のことではなかったの!?)

 

「でも、梨璃なら夢結様からのプレゼントなら────」

 

「なんだって大喜びするのは間違いありません…………ところで、悠斗さん」

 

「ん?」

 

「まだ、レギオンが決まっていないのなら、一柳隊が────」

 

「ごめん、その話は後でな」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ラムネ?」

 

 そして、次に現れたのは鶴紗の所だった。悠斗の姿を見て一瞬だけ少し頬を弛めたが、夢結に手を繋がれている場面を見て少し哀れなものを見るような視線に変わった。

 

「あぁ、駄菓子のラムネをよく購買部で勝ってますね。なんで私に聞くんですか」

 

「私の記憶だと、鶴紗さんは梨璃と仲がいいと思ったんだけど」

 

「ただのクラスメイトです。猫のご飯を買いに行くと、出くわすくらいで」

 

「……梨璃は、購買部で手に入るお菓子のラムネを貰って喜ぶかしら」

 

「白井様が、一柳のために選んだものなら、なんであれ喜ぶと思いますよ」

 

「……お前、なんか普段の言動からは理解できない良い言葉が出てきたな」

 

「うっさい……私でも見て分かることを言っただけ」

 

 

 

 

 そして、夢結と悠斗は購買部に顔を出した。一瞬、夢結は激辛コーナーの方に目を奪われそうになったが、梨璃のプレゼントを選ぶためだと鋼の意思を発動させる。

 

 暫し、夢結と別行動を購買部内でしていた悠斗の背後から、一人の少女が近づいた。

 

「悠斗」

 

「……眞悠理様? 珍しいですね、購買部に」

 

「それはお前もだろう。どうしたんだ?」

 

「梨璃さんに誕生日プレゼントを買おうと思って、参考になるかとここに来たんですが……どうも、いまいちピンと来なくて」

 

「梨璃……一柳か」

 

 顎に手を当て、苗字と名前を一致させた眞悠理。暫し中をキョロキョロと見渡した眞悠理は、悠斗に「しばし待て」と言った後その場を離れて二分後、一つの物を持ってきた。

 

「これでどうだ」

 

「ペンダント……ですか?」

 

「あぁ。蓋を開けば写真を入れることができるアクセサリーだ。そこに、夢結の写真でもはめておけばかなりいいと思うが」

 

「なるほど……確かに」

 

 梨璃の夢結スキーは見て分かる。確かにこれならプレゼントにもありだなと思い、眞悠理の手からそれを受け取る。

 

「ありがとうございます、眞悠理様」

 

「気にするな。お前のためだと思えば苦にはならん」

 

 と、少しばかり微笑んだ眞悠理。しかし、次の瞬間コホンと咳払いをするの、目線を少し下に下げ頬をパッと見では分からないくらい────少しだが赤くした。

 

「そ、それでだな悠斗……レギオンに着いてだが────」

 

「悠斗、行くわよ」

 

「夢結様?」

 

 夢結の声に振り向くと、彼女の手には駄菓子のラムネと、ラッピングができる袋の一式を持っていた。

 

「すみません眞悠理様。お話はまた今度」

 

「……あぁ。その……なんだ、夢結と一緒だったのか」

 

「はい、梨璃さんの誕生日プレゼントを一緒に決めていたところで……ではまた、ごきげんよう」

 

「あぁ……ごきげんよう…………羨ましい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、中庭に移動した悠斗と夢結。木陰になる所で暫しの休憩を挟み、隣同士でベンチに座っている。

 

「……あなた、ラッピングはしたことあるかしら」

 

「ごめんなさい夢結様。力不足です」

 

「……そう」

 

 手の中にあるラムネとラッピング袋を少々悲しげに見つめる夢結。そこに、一つの人影が近づいた。

 

「梨璃さんへのプレゼントですか?」

 

「汐里?」

 

「あなたは?」

 

「失礼しました、夢結様。あたし、梨璃さんのクラスメイトの六角汐里(ろっかくしおり)と申します。明日はお誕生日ですものね」

 

 六角汐里。不動劔(ふどうけん)の姫という異名を持ち、レアスキル円環の御手の使い手である。上品な性格をしているが、戦い方は非常に荒く、CHARMを使い捨てるように何度も何度も壊すので、ひっそりとアーセナルからは嫌われている。

 

 アールヴヘイムの次くらいによく悠斗にCHARMを見てもらっている。

 

「よく、ご存知ね」

 

「クラスメイトのことは、大体知っているつもりです。ラッピングなら、お手伝いしましょうか? あたし、こう見えても器用な方なんですよ」

 

「汐里は、そうさく倶楽部っていうのを主催してるんです。彼女になら、任せてもいいと思います」

 

 そう悠斗が補足すると、汐里は嬉しそうに笑う。

 

「……そう、それなら」

 

 そして、汐里の手伝いもありながら、何とかラムネを綺麗にラッピングをすることが出来た夢結。彼女の目には、ラッピングしたラムネが光り輝いて見えるだろう。

 

「流石汐里だな」

 

「いえいえ、あたしはほんの少し口添えしただけですよ」

 

「それでも、あなたのおかげだわ、ありがとう」

 

 少し微笑む夢結。

 

「できたら、本物のラムネをプレゼントしたかったのだけだ、何処で手に入るのか、調べても分からなくて……」

 

「そうですね……瓶入りのラムネは、今はほとんど作られていないと言いいますね。でも、梨璃さんの好物ということでしたら、梨璃さんの故郷でなら手に入ったということではないでしょうか」

 

「……梨璃の、故郷……!」

 

 ────あ、なんか嫌な予感。

 

 夢結が呟いた瞬間、嫌な予感が悠斗の体を貫いた。

 

「ところで悠斗さん」

 

「ん?」

 

「まだ、レギオンが決まってないのでしたら、是非水夕会に。お姉様も望んでます」

 

「……汐里? いつも言うけどさ、君達は既に18名でめっちゃバランス取れてるから、俺が入ってもバランスを崩すだけだと何回も説明したよ?」

 

「いえ、悠斗さんはいるだけでいいんです。それだけであたし達は嬉しいですから」

 

「えぇ…………?」

 

 そして、今日も何とか汐里のレギオン勧誘を回避した悠斗。汐里と別れると、夢結がゆっくりと悠斗の袖を掴んだ。

 

「悠斗」

 

「夢結様、念の為に聞きますが、梨璃さんの故郷にいくから着いてきなさいとか言いませんよね?」

 

「明日、梨璃の故郷に行くわ。着いてきなさい」

 

「言ったわ……」

 

 梨璃の誕生日プレゼント決め隊は、どうやら明日もあるようだ。




今日の補足By鶴紗

鶴紗とは猫関係でお友達になった。猫と仲良くしている悠斗を遠目で見ていたのを気づかれ、そこから徐々に仲良くなったネコトモである。常々、勝手に猫がよってくる悠斗のことを羨ましいと思っている。

でも、悠斗といる時間も……その、悪くない。
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