アサルトリリィーPARASITEー   作:沼りぴょい

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十七話

「へぇ、結局梨璃さんの所にしたんだ。薄々分かってはいたけど」

 

 翌日、アールヴヘイム隊室に顔を出した悠斗。そこには壱しかいなかった。他のみんなは、この後にある出撃のための準備を慌ててしているのだとか。

 

「そうなのか?」

 

「そうよ。だって、悠斗の目、明らかに梨璃さんを見つめる時だけ違うもの」

 

「そんなに?」

 

「そう…………なんていうか、父親が娘を見守る的な?」

 

「えぇ……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、正式に梨璃のレギオンの隊室が渡されたとのことなので、一応悠斗もレギオンに入った身として立ち会いに参加する。

 

「…………」

 

 そして、隊室の前に立った梨璃がほげーっと看板を見つめた。

 

「一柳…………隊!?」

 

「一柳隊がどうかしまして?」

 

「ええ、一柳隊ですよね」

 

「うむ、一柳隊じゃな」

 

「確か一柳隊だったかと」

 

「私も一柳隊だと思ってた」

 

「え? 違うのか?」

 

「私達、白井隊では?」

 

 元々梨璃は夢結のためのレギオンを作ろうと躍起していたので、この反応は当たり前だが……。

 

「どっちでもいい。だから一柳隊でいい」

 

「もう一柳隊で覚えちゃったヨー」

 

「じゃあ、一柳隊で問題ないわね」

 

「え……えぇ!?」

 

 

 

 

 

 

 

「で、でもこれじゃ私がリーダーみたいじゃないですか!」

 

「いいんじゃないか? 別に」

 

「私はちーっとも構いませんが」

 

「梨璃の働きで出来たようなもんじゃからな」

 

「えぇ……?」

 

 隊室に移動し、机にそれぞれお菓子を広げてちょっとした宴みたいになっている中、悠斗、楓、ミリアムの言葉に困ったかのような声を出す梨璃。

 

「ま、梨璃はリリィとしてもまだちょっと頼りないけどな」

 

「まだまだよ。勿論、梨璃の足りないところは私が補います。責任をもって」

 

「良かったぁ……ですよ────!」

 

 次の瞬間、夢結がどこからともなく、現在使っているCHARM『ブリューナク』を出すと梨璃の目の前に置いた。

 

「──うわぁぁ!」

 

「つまり何時でも私が見張っているということよ! たるんでいたら、私が責任をもって突っつくから、覚悟なさい!」

 

「は、はぃ!」

 

「突っつく……? 一体何で?」

 

「あははっ、これなら大丈夫そうだナ」

 

「くっ……なんて羨ましい……っ!」

 

「リーダーを突っつきたいのか……あむ」

 

 鶴紗がドーナツを食べながら楓に突っ込むと、雨嘉が神琳へ視線を向ける。

 

「……百合ケ丘のレギオンって、どこもこんななの……?」

 

「……否定できねぇな」

 

「そうでも無いと言いたいところだけど……結構自由よね」

 

 アールヴヘイムを見ればお分かりである。

 

「と、ともかく! こうして九人通り越して十人揃った今ならノインヴェルト戦術だって可能なんですよ!」

 

「ま、理屈の上ではそうじゃな」

 

「それって……これだよね」

 

 と、梨璃がポケットから取り出したのは、リリィの手のひらからちょっと横がはみ出るくらいの銃弾があった。

 

「なんですか?」

 

「ノインヴェルト戦術に使う特殊弾ですわね」

 

「うわぁ……! 実物は初めて見ました!」

 

「それな、無茶苦茶高いらしいぞ」

 

「そ、そうなんですか!?」

 

「それ、一番安いヤツでも(ピー)千万するぞ?」

 

 そして、CHARMが戦車一台分くらいである。

 

「ノインヴェルトとは、『九つの世界』という意味よ。マギスフィアを、九つの世界に模した九本のCHARMを通し、成長させHUGEに向けて放つの。それは、どんなHUGEも、一撃で倒すわ」

 

「……できるかな、私達に」

 

 と、夢結の話を聞いた雨嘉が自信なさげに呟いた。

 

「今はまだ難しいかと。何よりもチームワークが必要な技ですから」

 

「ま、『目標は高く』と申しますわ」

 

「はぁ……そうですよね」

 

 少しばかり落ち込む梨璃に、夢結は何かを考え始めた。

 

 

 

 

 場所を移動し、一柳隊の皆が移動してきたのは今回討伐部隊としてアールヴヘイムが任務を行う場所だった。

 

「ここで見学ですか?」

 

「私達の戦闘を見学するなら、特等席でしょ?」

 

「あの夢結がシルトの為に骨折りするなら、協力したくもなるでしょ?」

 

 

 そう、夢結が梨璃の為にノインヴェルト戦術を見学させたいと言う思いから、アールヴヘイムの天葉と依奈に頼んたのだ。

 

「あはは、夢結をこんなに可愛くしちゃうなんて、あなた一体何者なの?」

 

「え? 私はただの新米リリィです」

 

「ありがとう、天葉」

 

「気にしないで、貸しだから」

 

「ノインヴェルト戦術が見たいのでしょう? お見せする間もなく倒しちゃったら、ごめんなさいね…………と、こ、ろ、でぇ?」

 

 依奈がくるりと振り向き、悠斗に向かって視線を向けた。その視線に、なんとなく寒気を感じてビクッとなった悠斗。

 

「そ、れ、でぇ? 私達に黙ってレギオンに入った悪い子はここにいるのかなぁ?」

 

「え、壱から何も聞いてな────痛っ、ちょっ、痛いです依奈様!」

 

 べシッ、べシッと依奈が悠斗の背中を叩く。そこに天葉も加わった。

 

「ほらほら、今はこれで勘弁したげるから、後でもっと凄い目に合わせるからね」

 

「俺何されるんです!?」

 

 

 

 

 

 そして、作戦開始時間となり、1匹のHUGEが海を潜り水飛沫を上げる────が、飛び出てきたのは触手のみであった。

 

「……! 私達に陽動を仕掛けた!?」

 

「HUGEの癖に、小賢しいじゃない……っ!」

 

 そして、今度こそ本命のHUGEが登場し、海から跳ねた。

 

「……押されているな」

 

「えぇ、あのHUGE……リリィまるでを恐れていない」

 

 そして、その異常性に気づいた悠斗や梅、そして夢結は不安を感じる。

 

「こいつ……戦いになれてる!?」

 

 天葉もこの危険性を感知し、自身のCHARMである『グラム』にノインヴェルト戦術を行うための特殊弾が装備された。

 

「アールヴヘイムはこれより、上陸中のHUGEに、ノインヴェルト戦術を仕掛ける!」

 

 天葉からスタートするノインヴェルト戦術は、次に依奈が受け取る。

 

「よく見ておきなさい」

 

「はい!」

 

「ノインヴェルト戦術は、その威力と引き換えにリリィのマギとCHARMを激しく消耗させる、文字通りの諸刃の剣です!」

 

 そして、完璧なコンビネーションで繋がれたマギスフィアは、ラストのフィニッシャーである亜羅椰の元へ。

 

「不肖遠藤亜羅椰。フィニッシュショット、決めさせてもらいます!」

 

 そして、放たれたマギスフィアは、HUGEの元へと行くと────マギの障壁によって受け止められた。

 

「なに!?」

 

「フィニッシュショットをとめた!?」

 

「嘘っ……!」

 

 そんな光景を初めて見たアールヴヘイムの面々は、驚きを隠せない。

 

「なんじゃぁぁぁ!!」

 

 後ろの方では、ミリアムの髪がすごいことになっていた。

 

「こんにゃろぉぉ!!」

 

 しかし、そこで黙っていないのが我らがアールヴヘイムの主将である。まるで女の子とは思えないようなセリフを吐きながら突撃。マギスフィアを後ろから後押しして、障壁を突破。そして爆発。

 

 ノインヴェルト戦術は確実にHUGEに当たった。

 

「もう、天葉姉様危ないです……」

 

「不本意ですが、アールヴヘイムは撤退します……くっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「アールヴヘイムが、ノインヴェルト戦術を使って仕損じるなんて」

 

 その信じられない光景に、一柳隊が呆然としていると、梨璃がCHARMを持って跳躍し、前にある廃墟の屋上へと着地した。

 

「梨璃さん!」

 

「あのHUGE! まだ動いてます!」

 

 確かに、遠目からでもあのHUGEが生きていることは明らかであった。

 

「黙って見てたりしたら、お姉様に突っつかれてしまいますから!」

 

「どさくさ紛れに、一柳隊の初陣ですわね!」

 

 そして軽く、一柳隊は悠斗を含めた10人で作戦会議を行うことに。レギオンのフォーメーションにはそれぞれ、『AZ』『TZ』『BZ』の三箇所がある。

 

 しかし、今回はまだまだ一柳隊の連携も全然取れていないということで、少なくともコンビネーションが取れる面で分けようということになった。

 

 夢結は当然、AZになるのでコンビが組める梨璃もそこに配置。レアスキルが分かっている楓と二水をBZに置き、残りはTZにおいて固めた。

 

 そして、夢結と梨璃が息を合わせた一撃により、HUGEがパックリと割れるが、消滅はしていないため倒せていない。

 

 そして、割れ目の境い目から、蒼い光が輝いている。

 

「何ですの!?」

 

「あの光は……」

 

「あれは……CHARMか? いや、待て……あの形状は……っ!」

 

 昔、天葉と依奈から聞いたことを思い出す。夢結は昔、ダインスレイブというCHARMを使っていたのだが、悠斗が死んだ甲州撤退戦の時に無くしてしまったのだと。

 

 あのHUGEに刺さっているのは紛れもないダインスレイブだ。しかし、別のリリィのという可能性もあるが、悠斗はどうしてもその可能性を捨てきれなかった。

 

「あのHUGEが…………俺の事を殺した……?」

 

 ドクン、と胸が激しく鼓動した。

 

 

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