とある日、哨戒任務に当たっていた一柳隊だが、そこにはアビスの残骸とも呼べる物があちこちと砂浜に打ち上がっていた。
「全く……派手にやらかしてくれたものねぇ」
「昨日って! 戦闘ありましたっけ!」
「いえ、昨日は何も無かったはずです」
「共食いでもしたんじゃろか」
「HUGEを形作るのは、全てマギの力だからHUGEは物を食べたりしないはずです」
二水があまりの臭いに鼻をつまみながら説明する。
「マギを失えば、HUGEは巨体を維持出来ず、その場で崩壊するはずよ。軟組織は一晩もあれば無機質にまで分解され、骨格も数日で────」
「それがまさに今……」
「この臭い、まだマシな方……」
そんな雨嘉の言葉を聞いた二水が「ふぇぇぇ……」と声を出した。そんな中、なにかに気がついた梨璃が隊から少し離れる。その先には、なにか不思議な色をした不思議な物体があった。
「……?」
しゃがみこんで覗くと何やら驚いた梨璃は慌てて立ち上がり、恐る恐るその物体へCHARMを突き刺そうとすると、マギクリスタルコアが反応を見せた。
「……? ……え!?」
そして、CHARMの刃先と謎の物体の間に電流が走ると、それにまたもやびっくりする梨璃。
「ふわ!? ……え……なに、今の……?」
「梨璃さーん。どうしたんですかー?」
その声に気づいた二水が梨璃の元へと近づく。
「あ、二水ちゃん! 今、CHARMが──―」
「ふぇ……え!? 梨璃さん!?」
「ふぇ? どうしたの? 二水ちゃん!」
その時、梨璃の背後からゆっくりと近づく何か。それに気づいた二水が、顔を真っ青にした。
「どうしたー?」
「なにか見つかりまして?」
そして、二水の声を聞いてゾロゾロと集まる一柳隊ズ。
「いえ! 何でも! CHARMが、ちょっと……」
「梨璃さん……う、後ろぉ!」
「え? ……わぁぁ!」
遂に、その謎の影は梨璃に抱きついた。それは、人の形をしており、何故か全裸だった。それに驚いた梨璃がCHARMを落とした。
「「「「「………………」」」」」
「梨璃、何をしているの? …………!」
「梨璃さん?」
そして、悠斗と夢結も交流。悠斗が何があったのか梨璃の方を見ようとしたが────
「! 悠斗さんは見てはダメよ!」
「だ、ダメっ!」
「うごっ!?」
ベチコーン! と神琳と雨嘉の二人に目を手で勢いよく塞がれ、悶絶した。
「お、お姉様……」
「なんでこんな所に人がいんダ?」
「……ふぁ」
「……ふぁ?」
「ブアックシュ!」
「ふぇぇ!」
その後、悠斗の目はそのまま神琳と雨嘉が塞いだまま(神琳はここぞとばかりに腕に抱きついていた)医療室へ謎の少女を運んだ一柳隊。
外にて全員が少女の様子を眺めている。
「ふぁ……こんな所にいても、私たちに出来ることはありませんわ」
「出来ることはしたわ梨璃。行きましょう」
「……あの、私もう少しここにいてもいいですか?」
「「「「「え?」」」」」
ガラスに張り付きながら、目を逸らさずに言った梨璃。そんな梨璃を見て、夢結は一言────
「分かったわ」
と言って笑うのだった。
────いや、親子か。
そんな光景を見て、悠斗は思った。
カフェテラスへ移動した一柳隊。紅茶や菓子をつまみながら梨璃のことを待っていたが、全く姿を表さない。
「帰ってきませんわね、梨璃さん」
「自分が助けたから、世話を焼きたいのでしょう。責任感の強い子だから。気になるのなら、あなたも行けばどうなの?」
「治療室はお喋り禁止なんですのよ。折角梨璃さんといた所で、黙ったままどうしろと?」
「見舞えや」
「見舞えよ」
悠斗と鶴紗のダブルパンチが楓へ突き刺さる。
「意外だナ。黙っていても出来ることはありますわ~。とか何とか言うと思ってたのに」
やけにクオリティの高いモノマネを披露した梅。それを聞いた楓が手をパンっ! として一言。
「なるほど! その手がありましたわ!」
「あるかー!!」
噂をすれば影。ということか、突然と「お姉様ー!」という声が耳に届き、楓が嬉しそうな声を上げる。
「梨璃、どうしたの? そんな慌てて。あの子が目を覚ましたの?」
「いえ、まだ寝てます……ぐっすり」
そして、梨璃は三つの教科書を置き、「お姉様に戦術理論の講義で教えて欲しいことがあったんですけど──―」とまで言ったところで、予鈴のチャイムがなった。
「あぁー! 間に合わなかった! これから講義なんです! ごきげんよう! お姉様っ!」
夢結に笑いかけた後に急いで教室へと移動した梨璃。
「夢結は授業ないんだっけ?」
「取れる単位は、一年生の時に全て取ってしまったから」
「あっそ……じやあなー」
「ごきげんよう」
と、一柳隊が全員移動し、その場に残ったのは悠斗と夢結のみ。
「……あなたは、授業はないの?」
「ほら、俺色々と特別ですので」
夕暮れが立ち始め、理事長室へ呼び出された悠斗。既に先にいた史房と共に話をしていたのだが、そこで政府から通話が掛かってくる。政府にバレる訳には行かないので、悠斗はそのまま黙った。
「時に高松君。先日そちらに保護された民間人のことなのだが」
「あー、該当する者はおりますが、それが何か?」
「民間人がHUGEとの戦闘に巻き込まれたというなら……対外的な問題になる前に、我々には身柄を引き受ける用意がある」
「折角ですが、お気遣いはご無用です。彼女はリリィであると判明しました」
「ほぉ、リリィとは」
「君たちの手を煩わせる訳には及ばん。提案を受け入れてはどうだ?」
その言葉を聞いて、悠斗の眉がピクリと動く。
「ご存知の通り、当学院には対HUGE防衛線以外にも、リリィの保護という役割があります。そのため学院には独自の自治権が認められております」
「リリィ一人がどれだけの戦力になるか、そのリリィを一箇所に集中させ、かつシビリアンコントロールを受けることなく自治などと…………それがどれだけ、危険視されているかは、勿論君も知っているだろう」
あまりの言いように、史房はついついため息を吐いてしまい、悠斗と目線を合わせる。悠斗はバカバカしいと言わんばかりに肩を竦める。
「勿論です。関係各所にそれを認めさせるほどの苦労は、筆舌に尽くしがたいものがありました。この学院が預かるのは年端も行かぬ子供ばかり。その彼女たちを、HUGE殲滅の矢面に立せれる我らもまた、危険なのではありますまいか?」
「…………今のは、問題発言として記録されるぞ」
「少なくともリリィが人間の敵になるなど、ありえない事です」
「リリィ第一世代としての君の見解は承知している。だが、過度な思い入れは判断を誤ることになる」
「…………ひとつお聞かせ願いたいのだが、彼女に興味を示しているのはどこの誰ですかな?」
「質問の意味が分かりかねるな」
「それは君とは関係ない事だ」
「関係ないとは────」
「いや待て」
その瞬間、政府陣が一旦黙るが。
「また改める」
と言って、通話を切った。
────嫌な予感がするなぁ。
「……はぁ、済まなかったのう二人とも、付き合わせてしまって」
「いえ、生徒会長としての権利ですから」
「俺にも関係あるかもしれないことですし、問題ないですよ」
「それよりお聞かせ願いますか? 理事長代行が、彼女をどのようにお考えなのかを」
「おっと」
「あ! 悠斗くん! また後で!」
次の日、一柳隊の隊室に入ろうとしたが、その瞬間に梨璃とすれ違う。そのことに首を傾げながらも隊室へと入っていった。
「ごきげんよう皆。梨璃さんとすれ違ったけど何かあったの?」
「梨璃が昨日拾った子の面倒を見ると言ってのう」
「あぁ、なるほど」
ミリアムの言葉に全て察した悠斗。その時、コツコツコツと定期的に響く音が聞こえる。不思議に思って周りを見てみると、夢結の前に置いてある紅茶が波立っていた。テーブルの下をのぞき込むと、夢結がコツコツと靴を地面に当てて鳴らしていた。
「……夢結様?」
「どうかなさいまして?」
それに気づいた悠斗と楓が夢結に話しかけるも、「何か?」と何も分かっていないかのように返した夢結。
「夢結様……そうは言ったものの、どこか落ち着かないのではありません?」
「…………多少」
「胸の内がザワザワと?」
「かも、しれないわね」
「ささくれがチクチクと痛むような!?」
「なぜ、それを……」
──―なんで楓さんはこんな嬉しそうなんだ?
「夢結様、それは焼きもちです!」
アンケートがあります。これによって悠斗くんの存在が明るみになるタイミングが違います。
生存ルート→早い段階で存在が露見。どこぞの年上リリィのお二人にとある反応
原作ルート→ラスバレ編で存在が公にされる。