「……焼きもち? 私が……誰に?」
「もちろん、梨璃さんの大事なあの子に、ですわ」
「……楽しそうね、楓さん」
「ええ、そりゃもう。一匹狼として仲間からも恐れられた夢結様が、梨璃ロスで禁断症状とは、ププーですわー!」
「梨璃ロッ……!?」
その間も、夢結のコツコツという音は酷くなる。
「ことこのことに関しては、私に一日の長がございましてよー!」
「威張ることか……」
そしてその後、個人的に保護した子に一度色んな意味で会っておきたかった悠斗は、そのまま梨璃について行き医療室へ移動した。最初はやけに警戒されていたが、飴玉を渡すと懐いた。
「りり、あーん」
「もう、自分で食べれるでしょ?」
「りりがいいんだもん。あーん」
「自分で食べるの!」
「母親か」
「フフっ。梨璃さん、お母さんみたいね」
奥から、秦祀が出てくる。一瞬だけ悠斗目を向けるとパチッ! とウインクをした。
「そして、悠斗くんはお父さん見たいね」
「俺、そんなに老けてませんよ?」
「お父さん、お母さん」
「せ、せめてお姉さんと言ってください!」
「お姉さん」
「ねぇ、そろそろ名前をつけてあげたら?」
「たら……?」
「名前が無いと、色々不便でしょ?」
「わ、私がですか!?」
「ゆうと、お父さん?」
「違うよ?」
そして、梨璃があの子に付き添ってから一週間近いときが過ぎた。梨璃ロスによる禁断症状がやばくなったり、やばくなったり、やばくなったり。
そして、夕方。
「ごきげんよう、お姉様」
「……っ」
久しぶりに聞いた梨璃の声に、夢結はそちらを向く。
「……お隣、いいですか?」
「えぇ、どうぞ。梨璃」
「……っ! ご無沙汰してましたお姉様~!」
そして、梨璃は今まで触れ合えなかった事を我慢していたのを解放したかのように夢結へと抱きつき、そのまま撓垂れ掛かる。
「どうしたの、ちゃんとしなさい」
「……? ……あぁ! それ、私の教本! お姉様が持っててくれたんですか!」
「さぁ、たまたまよ」
「ありがとうございます!」
向こう側では楓がヤキモチを焼いており、神琳がハンカチを差し出すも「泣いてませんわ!」と断る。嬉しそうに梨璃の事を見いた夢結の反対側に、重さが加わる。不思議に思って反対側を見ると、梨璃と同じような態勢で夢結に体重を預けている少女がいた。その奥には悠斗の姿もある。
その少女は、今は髪を三つ編みにしており、前へ二つ流していて百合ケ丘女学院の制服を着ていた。
「……! あなた、この間の」
「おお! 元気になったか~」
「って、その制服!」
「うん! 正式に百合ケ丘の生徒にして貰えたって!」
「編入されたってこと……?」
「まぁ、可愛い」
「ほら、ご挨拶して。こちらは夢結様だよ」
「ゆゆ?」
「もうっ、ちゃんと練習したでしょ? 自己紹介っ、しようよ!」
「なんで?」
きちんと練習したことが出来なくて「ふぇ~」と声を漏らす。そのやり取りを知っていた悠斗はクスリと笑った。
「なんじゃ、梨璃とこの娘……てか、悠斗も合わせると……」
「姉と妹。そしてお兄ちゃんって感じです!」
「ちょっとあなた達狭いわよ!」
「もっと詰めろ」
「梅も見たいゾ!」
「これなに?」
「スコーンよ。食べたいの? 食いしん坊さんね、誰かさんのようだわ」
「私ですかっ!?」
「夢結にもう一人シルトが出来たみたいダ」
「食べていい?」
「ちゃんと手を拭くのよ」
普段は見せないような優しい顔で、少女にハンカチを渡す夢結。その光景はまるで────
「妹というか……」
「母と娘じゃな」
「夢結、お母さん?」
「産んでないわよ」
「じゃあお父さん?」
「それはどちらかと言うと悠斗でしょ」
「じゃあ、ゆうとがお父さん?」
「そのやり取り、さっきもやった────違うから神琳、肩を離しなさい。メシメシ言ってるから」
どこか既視感を感じるやり取り。悠斗の後ろにたっていた神琳が、静かな笑顔で悠斗の肩を力強く握っていた。
「……で、この子の名前は分かったんですの?」
「それが、まだ記憶が戻ってなくて……」
「それじゃあ、今までなんて呼んでたんダ?」
「ふぇ!?」
「一週間近くありましたよね?」
「それは…………」
「? 別に、いい名前じゃん。なんで渋ってんの?」
一週間近く、梨璃と一緒にこの少女を見守ってきた悠斗は、梨璃がなんて呼んでいたか知っている。なぜ渋るのか疑問に思った。
「言ってご覧なさい、梨璃」
「ゆり」
その名前に、夢結が紅茶を吹き出した。
「はぁ!?」
「あぁ! それは!」
「私ゆり。りりが言ってた」
「そ、それは! 本名を思い出すまでの世を忍ぶ仮の名で!」
「それは無理あるだろ」
変な言い訳に悠斗が咄嗟に突っ込む。
「それぇ! 私が付けた夢結様と梨璃さんのカップルネームじゃないですかぁ!」
「いえっ! あ、あのそれは!」
「あらぁ~、いいんじゃないんでしょうか」
「似合ってる、と思う!」
「なんか愛の結晶って感じだナ!」
「一緒に猫缶食うか?」
「いつの間にやら、既成事実が積み重ねられてますわぁ……!」
楓が頭を抱えて本気で困りだした。既成事実とはちょっと違うと思うが……。
「じゃあ決まりじゃの」
「その名前でレギオンにも登録しちゃいますね」
「二水ちゃん!?」
「苗字はとりあえず…………悠斗さんのにでもしておきますか!」
「ふぇ!? 悠斗くんの!?」
「え、なぜ俺?」
「まぁ、別にいいんじゃないかしら」
「いや……まぁ別に俺はいいんですけど……」
「……美味しい」
こうして、一柳隊に新たなリリィ『浅野結梨』が加わった。
せっかくの二次創作なんだから、苗字ちょっと変えたろーと思いました。反省も後悔もしてません。
ついに出てきた結梨ちゃん!分岐ですが………?
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結梨ちゃん生存ルートに決まってんだろ!
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ゲンサク、ダイジ