アサルトリリィーPARASITEー   作:沼りぴょい

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二十二話

 的棒倒しも終わり、次の種目へ移行するはずだったのだが、悠夏はCHARMを持った結梨を見て首を傾げた。

 

「結梨?」

 

「あ、ゆうな」

 

 悠夏の姿を見て、てくてくと近づいてきた結梨。

 

「結梨、どうしてCHARMを持っているの?」

 

「まいが言ってたの。次はゆりの出番だから、CHARMもって準備しとけーって」

 

「……?」

 

 確かに、次はエキシビションマッチで百由が作ったHUGEと戦う種目だったはずだが、その相手はミリアムと記憶している悠夏。しかし、何やら楽しみにしている結梨を見て突っ込むのは響かれた。

 

 そして、結梨は既に設置されているHUGEの元まで行き、「ほぁ……」と見上げた。

 

「ちょっ!? ちょっとこれどういうことですかぁ!?」

 

 それに気づいた梨璃が、その方向を慌てて指を指した。

 

「見ての通り、午後のエキシビションマッチ」

 

「百由様が研究の一環で作成したヒュージロイドと、ミリアムさんの特別対戦のはずですが……」

 

「あ、梅がみりりんの代わりに登録し直しておいたゾ」

 

「そんなぁ!?」

 

「相手は百由の作ったなんかだろ。大丈夫じゃないカ」

 

「百由様だから心配なのでは……」

 

 珍しく、楓の言葉に全員の心が一致した。

 

 そして、時間になったのか地面から格子が出てきて、結梨とヒュージロイドを包む檻となった。梨璃が介入するのは間に合わず、格子の間の部分を握り、「あわわ……」と呟いた。

 

「あらら、間に合わなかったか」

 

「あー! 百由様! どうにかしてください!」

 

 そして、その場に百由とミリアムが現れ、この元凶である百由に対して梨璃が泣きついた。

 

「いやぁこの檻、勝負が着くまで開かないのよ」

 

「えぇ!?」

 

「要は結梨が勝てばいいんだロ?」

 

「エキシビションだから、当然リリィが勝つようにセッティングして…………ありますよね!?」

 

 今更ながら、百由の性格のことを思い出した雨嘉が、普段よりも少し大きめの声で聞いた。

 

「いいえ、その逆よ。ゴリゴリにチューニングしてぐろっぴもイチコロのはずだったのに……結梨ちゃんが危ないわ!?」

 

「百由様わしをどうする気だったんじゃ!? って、慌てるのが遅いわ!?」

 

「名付けてメカルンペルシュツリュツビュンくんよ!」

 

「名前まであんのかい! よっぽどお気に入りじゃの!」

 

「初心者が無茶するのは、私の役目じゃなかったんですかぁ!」

 

 ドサリ、と梨璃が地面に座り込み、泣き叫んだ。

 

「時代が変わったのね……」

 

「はい! 百合ケ丘のゴシップは、今やすっかり謎の美少女結梨ちゃんにとって変わりましたから!」

 

「二水ちゃんまで!」

 

「梨璃! 私、やるよ!」

 

「……結梨ちゃん」

 

 檻の中にいる結梨が振り向き、梨璃を見た。

 

「私もリリィになりたいの! リリィになって、皆のこともっとよく知りたいの! だから見てて!」

 

 そして、結梨はCHARMを掲げて自信満々に言った。

 

「信じなさい梨璃。あの子はちゃんと見ているわ。あなたもちゃんとご覧なさい」

 

 結梨は、右足を引きCHARMを倒して刀身が地面と平行になるように倒し、足は殆ど一直線。右腕を少し引き、突きの体勢で動き出しを待つ。

 

「あれは……!」

 

「夢結様の型……」

 

 ヒュージロイドの体が左に一瞬揺れた────その瞬間に、眼の残像が起こるほどのスピードで回転をし、結梨へと近づき、三本足のうち右後ろの足を遠心力を使いながら結梨へ突き刺す……が、結梨はなんとか左下からの切り上げにより防御を成功させるが、ヒュージロイドの連打を許してしまい、二撃目と三撃目はCHARMの刀身でガードしたが、四撃目の左脚の攻撃は後ろに回転しながらも回避したが、五撃目で大きく後ろへ飛ばされる。

 

「押された時は間合いを取りなさい!」

 

「そう。相手のペースは崩すためにあるのよ!」

 

「止まらず動いて! 相手に隙を作らせれば勝機はある!」

 

「相手をよく見て! そこに活路は見い出せるわ!」

 

 田村那岐、ロザリンデ・フリーデグンデ・v・オットー、内田眞悠理、悠夏からアドバイスが飛んだ。

 

 二歩後ろに下がり、左脚の攻撃を地面へと受け流すと砂煙が発生する。結梨はそれを利用して、ヒュージロイドの脚を走りそのまま頭を踏みつけてジャンプ。回転しながらも攻撃をしようとしたが既に結梨に向かって脚が伸びてきていたので迎撃へとシフト。「えいっ!」という可愛らしい声を出しながら脚を弾き飛ばし、その勢いを使ってヒュージロイドから離れた場所に着地し、すぐさまヒュージロイドに向かって走る。

 

 その動きにヒュージロイドが反応し、右脚を踏みつけたが、それを前に回転しながら回避。そのまま片手だけ使ってロンダードをし、その間にCHARMを両手で持って左脚の攻撃を弾き飛ばして、両足で着地してからジャンプ。

 

 その様子に、周りのリリィが「おぉぉ!」とどよめきと浮かぶ。歴戦の猛者であるアールヴヘイムでさえ前のめりになるほどである。

 

「皆……」

 

「梨璃。私が最初に手解きした時のこと、覚えているでしょ。最初に教えたのは?」

 

「はい。敢えて受けて、流して斬る」

 

「そう……ほら」

 

 結梨は決して自分からは斬りに行かない。あくまでも今まで見たことを活かし、確実に勝利を掴むために最前の手をいくつも脳内で計算している。

 

「…………っ!!」

 

 ガンッ! とCHARMとヒュージロイドがぶつかる。それを見事受け流した結梨は、右脚を隠れ蓑にしてヒュージロイドの側面へと移動。踏み込んだ足が地面を陥没させながらもヒュージロイドへ向かってジャンプ────そして、横一閃。

 

「はぁ!」

 

 そして、返すように上段の一撃。ヒュージロイドは配管を撒き散らしながら爆発四散した。

 

「やったぁ! ……と、失礼」

 

 史房がまるで自分のように驚いたが、我を取り戻した。

 

「りり! ゆうな! みんな! 見てた! 私、出来たよー!!」

 

「うわぁぁん! 結梨ちゃんえらいよォ!」

 

「うんうん、泣くなりり」

 

「全く、どっちが姉かしら」

 

 戻ってきた結梨に、梨璃が抱きつき、結梨が梨璃の頭を撫でた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦技競技会も終わり、女装をする必要が無くなった悠斗は夜、百由、史房らと共に理事長室へ呼び出されていた。

 

「……解析科から、結梨ちゃんのDNAの解析結果が届きました」

 

「うむ」

 

「彼女のDNAは……平均的な人の女性であることは確かです……が、どこか不自然で……なんというか、平均的すぎるんです。普通の人間はどこかしら偏っているのが当たり前なのに……」

 

「要点を頼む」

 

「……彼女はHUGEに由来する個体……というのが私の結論です」

 

 

 

「人化したHUGE……というわけか。悠斗くんとは違って」

 

「……驚かれません?」

 

「……残念だが、先手を打たれた。研究機関G.E.H.E.N.A.とチャームメイカー『グランギニョル』が共同研究していた実験体の紛失を、国連に届け出た」

 

 ピクリ、と悠斗の眉が動いた。

 

「連中────彼らが言うには、彼女はHUGEから作り出した幹細胞を元に生み出された()()()()()だそうだ」

 

「……っ、その表現、胸糞悪いです」

 

「……可能なのか?」

 

「HUGEのDNAは、多層ゲノム重複を起こしていて、これまで地球上に現れた全てのDNA情報が備えていると言われています。その中には勿論、ヒトの物もあって、方舟に例える学者もいるほどです……まぁ、どうやったかは知りませんけど、行為としては可能です」

 

「倫理を無視した完全な違法行為だ。しかも連中は、己共の不始末を晒してまで、彼女の返還を我々に要求して来おった」

 

「どうします?」

 

「彼女が人でないとなると、学院は彼女を守る根拠を失うことになる」

 

「……」

 

「……っ! チャームメイカー、グランギニョルの総帥は、楓・J・ヌーベルの父親です」

 

「……理事長代行」

 

 ずっと黙っていた悠斗が、咬月へ視線を向ける。彼はずっと、右手を首筋に伸ばしていた。

 

 それは、HUGEを探知する時の為の()()であった。

 

「分かっておる。彼女がHUGEでは無いことは、既に悠斗くんが確認済みじゃ……百由くん、解析を頼む」

 

「お任せ下さい。必ずみつけます。結梨ちゃんが人である証拠を」




マジでゲヘナ許さんからなオメェ………

ついに出てきた結梨ちゃん!分岐ですが………?

  • 結梨ちゃん生存ルートに決まってんだろ!
  • ゲンサク、ダイジ
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