アサルトリリィーPARASITEー   作:沼りぴょい

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二十六話

「君は眠らなくてもいいのかい?」

 

「…………あなたは、一体どうして俺の目の前に」

 

「理由なんてないよ。まぁ、強いて言うならば運命と言ったところかな……冗談だけど」

 

 夜、校舎の屋根上にて腰を下ろしている悠斗に、背中合わせの状態で座る美鈴。

 

「まぁ、あえて言うならば忠告をしに来た……かな」

 

「忠告?」

 

「気をつけて」

 

 次の瞬間、背中の重さが消える。

 

「視る、ということは影響を受けることでもある……夢結達を頼む」

 

 季節外れのソメイヨシノの花びらが散った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────結局、美鈴様はなんのために俺の目の前に現れたのだろうか。

 

 ここ最近、ずっとそのことを考えているが答えはまったく出てこない。あれが幻なのか、それとも霊となって悠斗の前に現れたのかすら分からないのだ。

 

 唯一、分かっていることがあるとすれば……。

 

「……俺が、HUGEに寄生されているからかなぁ……」

 

「どうしたの、いきなり」

 

「……依奈様?」

 

 中庭で猫と一緒に寝転がっていると、突如として依奈の顔が写りこんだ。

 

「どうしたんです?」

 

「それはこっちのセリフよ。最近、上の空じゃない?」

 

「……いや、まぁそうですね。少し気になることがあって」

 

「気になること?」

 

「はい……まぁ、強いて言うならコイツの事ですかね」

 

「コイツ……?」

 

 依奈が首を傾げると、悠斗は自身の胸をトントンと親指でつついた。

 

「どうして、こいつは俺に寄生したのか……どうして、俺に力を貸してくれているのかとか……まぁ色々」

 

「それは……確かに不思議よね。でも、今まで全く気にしてなかったじゃない」

 

「そう、なんですけど……けど、最近はどうしても意識をしないといけないことが多くて────」

 

 チラリ、と悠斗が依奈へ視線を向けると、そこには美鈴の姿が映る。

 

「依奈か。随分と多くのリリィに好かれているようだね。それは君の魅力によるものか、それともまた別の要因があるのか……どっちだと思う?」

 

「…………悠斗? どうしたの急に、私の顔を見つめて……ちょっと恥ずかしいんだけど……」

 

「……そうですね、相変わらず美しいなと」

 

「ちょっ! ちょっとバカ! あんまり先輩からかったらダメよ! ……べ、別に悪い気はしないけれど……

 

 ごにょごにょとそっぽを向き、自身の薄紫色の髪を指で弄る依奈。そういうのも可愛いんだよなぁ……と思いつつ、上体を起こそうとした瞬間、悠斗に激痛が走る。

 

「あっ……がぁ……!」

 

「悠斗……? ちょ! 悠斗!」

 

「ぐっ…………がっ……あああああああああああ!!!!」

 

 悠斗が、項に手を当てながら痛みで吠える。

 

「悠斗! しっかり! しっかりなさい悠斗!」

 

「グッ……うぅ……来るっ……HUGE……飛んでっ!」

 

「HUGE!? 一体何────うそ……」

 

 HUGEと言ったら、由比ヶ浜の海にある由比ヶ浜ネスト。そこからは、青白い光がまるでロケットのようにネストから打ち出されようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 突如として由比ヶ浜ネストから射出された三体のHUGEは、一度、地球を一周した後に、百合ケ丘近郊に墜落する。その時の衝撃は計り知れない為、咬月はすぐさま百合ケ丘の生徒たちに避難区域まで撤退する指示を出した。

 

 生徒たちは、不満覚えながら自身のCHARMを持って撤退をしている。その顔には、誰にも母校である百合ケ丘を心配する顔もあるが、それよりももっと心配な存在がある。

 

「ほらしっかり……もうちょっとで休憩できるからね」

 

「キツくなったら直ぐに言うのよ?」

 

「悠斗さん、飲み物欲しくなったら言ってくださいね」

 

「CHARMなら辰姫が持ってあげるから」

 

「大丈夫? いざとなったら私が背負うからね」

 

「兄さま……」

 

 両脇を壱と、めずらしく真面目に心配している亜羅椰に肩を借り、樟美が背中から悠斗の事を押しており、月詩が体温が上昇している悠斗の体のチェック。辰姫と弥宙が周りの確認と介護のされようが凄いことになっている。

 

「はぁ……はぁ…………」

 

 ────クッソ……体が重いしだるいし熱いし……マジでなんなんだこれ……。

 

「わ、るい……みんな……」

 

「別に大丈夫よ! 困った時はお互い様!」

 

「私達、皆兄さまに助けられた。だから、今日は私達が兄様を助けるの」

 

「安心なさい。悠斗は大船に乗った気で入ればいいのよ」

 

 その悠斗の髪の毛先は、少しだけ狂気の赤色が混じっていた。

 

 そして、ようやく避難区域まで下がり、リリィ全員の足が止まる。ようやく悠斗を休憩させられる壱達は、すぐ様悠斗に腰を落とさせた。

 

「はぁ……はぁ……」

 

「体温が熱い……どんどん上がってる」

 

「これ、40度以上は超えてるんじゃないの?」

 

「はわわわ! こ、氷! 氷ありましたっけ!」

 

「……っ、来るっ!」

 

 ズキン! と項が酷く傷んだ後に心臓が一際強くドクン! と鼓動をする。その瞬間、強烈な音と振動が百合ケ丘のリリィ達を襲う。

 

「これ……どうやらHUGEが着地したみたいね」

 

「見たいね……ここまで離れているのになんて衝撃……」

 

「! いえ、それだけではないわ!」

 

 暫くしないうちに、負のマギが可視化され、それが波紋状になって広がり、退避しているリリィ達の元に向かう。

 

「……んっ……はぁ、なんか楽になってきた……」

 

「悠斗!」

 

「兄さま!」

 

 頭を手で抑えながらフラフラと立ち上がろうとするのを、樟美と壱がすぐ様支える。

 

「ちょっと、本当に大丈夫なの!?」

 

「あぁ、心配かけたな壱……それと、皆もありがとう」

 

「いえ、これは当然のことですから!」

 

 右手をグーパーグーパーしたりして体の調子を軽く見た悠斗、まだ少し体がだるい様な気はするが、全然さっきとは違って楽だし、体は全然熱くない。

 

「とりあえず、天葉様たちに報告しましょう」

 

「そうね。それじゃあ辰姫達は報告に────え!?」

 

「なに、どうしたの?」

 

「CHARMが……動かない!?」

 

「……なんだって?」

 

 身体能力を強化するために、CHARMで地面に円を描くとその円が青白い光を放つのだが、光どころか、マギクリスタルコアにルーン文字すらも浮かんでいない。

 

「……俺のは動くんだが?」

 

 突如としてリリィ達を襲った巨大なHUGE。そのHUGEの頭上には、美鈴のルーン文字を示す光が淡く揺れ動いていた。




11話はそこまで悠斗君を混ぜれなかったから短め。次回の全員ヴェルトでは何処に悠斗君を組み込もうかしら

ついに出てきた結梨ちゃん!分岐ですが………?

  • 結梨ちゃん生存ルートに決まってんだろ!
  • ゲンサク、ダイジ
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