「ヒュージ反応……なし。この付近にはいないみたい、です」
ヘルヴォルと百合ケ丘。合同で任務に当たることにし、隊を幾つかに分けることに。揺と梅は索敵を行っていたが、反応はなし。
「ふむ、こっちも同じくだ」
「一葉たちの方はどうでしょう……。隊を混同して分割とか、大丈夫かな……」
少し不安顔を見せる揺だが、梅は全く心配はしていない。
「まぁ、何とかなるんじゃないか? ああ見えてうちの連中もそれなりの修羅場は超えてきてるし────」
その理由の一つとして、コミュ力化け物の梨璃が、百合ケ丘には存在する
「あとはあれだな。純粋に仲良くなりたいんだろ、そっちの子達と」
そう朗らかに笑う梅。
「仲良く……ですか」
「あぁ、うちのリーダーは人懐っこいところがあるからな」
「えぇぇーっ!? 本当ですかーっ!?」
噂をすれば影というやつか。遠くの方から梨璃の声が聞こえてくる。
「ほら、早速始まったようだゾ……ふふふ」
視点移り、梨璃、千香瑠、夢結の隊。何やら梨璃が嬉しそうな顔をしている。
「千香瑠様も山梨のご出身なんですかっ!?」
「はい、そうです。住んでいたのは中学までですが」
「そうだったんですね! わー、同郷の方とお会いできるなんて嬉しいです」
まさかの同郷出身に喜びを隠しきれない梨璃。ピンクのサイドテールがびょこぴょこと揺れた。
「……いい雰囲気のレギオンだね」
それを見て、柔らかく口元が緩む揺。そこに、闖入者が。
「リーダーがリーダーですもの。わたくしたちの絆は絶対ですわ! ねぇ、梨璃さん?」
勿論、正体は梨璃スキーである楓・J・ヌーベルである。
「あははは……頼りないリーダーですけど、みんなに助けられてなんとか頑張ってます!」
「信頼し合えるというのは大事な事だと思いますりその繋がりこそ、レギオンの……リリィとしての強さなんでしょう」
「えへへ……」
千香瑠の言葉に、少し照れる梨璃。ふと夢結は、別働隊にいる藍のことを思い出す。
「そういえば、佐々木藍さん……あの子のレアスキル────」
「ああ、夢結と同じ『ルナティックトランサー』のようだな。あの小さなら身体であの破壊力、相当なものだゾ」
ルナティックトランサー。今も尚、『神宿し』の影響により、夢結自身まだまだ制御が出来てない狂気のスキル。
「えぇ……あの子のリリィとしての素質は素晴らしいものです。ですが、少し……」
「少し……なんですか?」
言い淀む千香瑠に、疑問を投げかける梨璃。
「扱いが難しいね。放っておくと勝手に突撃、しちゃうし……浅野さん、大丈夫かな」
別れる前に、悠斗と結梨になつきになつきまくった藍。悠斗に肩車されて別れたのは記憶に新しい。
「あのお方なら大丈夫でしょう。面倒見もよろしい事ですし……」
「そうだね! 結梨ちゃんもすごく懐いてるし!」
「悠斗は小動物の扱いが上手いからな!」
「小動物……」
梅の言葉に少し引っ掛かりを覚えたが、否定できないのも事実だった。
そして、鳴り響くヒュージ出現の警報。みんなの警戒心レベルが上がる。
「っ……!?」
「ヒュージの反応、多数! これは……恐らくケイブが近くにありますわ!」
「ケイブ……ヒュージたちかま通り道に使う異次元ワームホール。放っておいたらこの辺りがヒュージだらけになっちゃいます!」
「二水ちゃん、悠斗くんたちに連絡を! 別働隊と合流後、ケイブを総力で叩きましょう!」
ケイブからヒュージが現れる。パッと見ではスモール級のヒュージだろうか。
「まずは敵の正確な位置と規模を知りたいですわね……お願いできますか、梅様」
「…………うん、うん。分かった。すぐに向かう」
二水からの通信を受け取った悠斗は、すぐに端末を切って全員へと目線を向けた。
「梨璃から連絡が来た。皆は一度梨璃と合流することを優先してくれ」
「悠斗さんは、どうしますか?」
「俺は特型ヒュージの所に偵察しに行った梅様の支援をしてくる」
肩車をしていた藍の脇に手を差し入れてプラーンと持ち上げた悠斗。
「結梨。藍の面倒を頼んだ」
「うん! 任せて!」
「よし。またな」
藍と結梨の頭を撫でた後に、項から読み取れる反応を頼りに特型ヒュージを探す悠斗。
マギを利用し、木から木へと飛び移り、最短で悠斗は梅の元へ。
「……っ! 梅様!」
「……っと」
ヒュージの攻撃に当たりそうだった所を、咄嗟に悠斗が梅を脇に抱えて無事に回避。その直後、後ろからマギ弾が特型ヒュージへと当たり、怯みさせる。
「……ふふっ、絶好のタイミングだな、悠斗」
「梅様……無茶しすぎですよ」
悠斗が現れたことにより、特型ヒュージの目線が完璧に悠斗へロックオン。それに当然気づいた悠斗は、梅を離して直ぐにアロンダイトを構える。
「よっと」
「無事か、梅様」
「当然」
きちんと着地したのを見届け、ガチン! ガチン! と音を立てながらアロンダイトの刃が分裂していく。
「フッ────」
羽の一撃を、チャームの柄を一振するだけで防ぐ。四方八方から分裂したアロンダイトの刃が突き刺さり、羽は悠斗の目の前で一時停止。
「……まるで天使のようだな」
頭に輪っか。背中には二枚の羽があり、その様子はまるで天使のようである。
「悠斗くん! 私達は特型ヒュージを狙うから!」
「了解!」
悠斗以外の一柳隊の皆は、あの特型ヒュージに集中することになった。確かに、圧倒的一対多の方が得意とする悠斗としては、あの九人の連携に入ったら逆に邪魔になるまである。
「悠斗さん! 一緒に露払いお願いします!」
「結梨! お前もこっちだ!」
「うん!」
こうして、ヘルヴォル+悠斗と結梨の共同戦線が敷かれた。
「いいか結梨。敵を纏めて相手とる時に、こちらに纏めて倒す手段が無ければ常に
「デュエル?」
「……まぁ結梨は見て覚えさせた方が早いか」
複数に分裂させていたアロンダイトを戻し、見本を見せる。
「まず一番重要なのは、敵に背後を取られないことだ。視界のどこかに入れておけば、反応できるし、次の対処もしやすい」
「分かった、じゃあわたしはこっちのヒュージを倒せばいいの?」
くる、と悠斗と背中合わせの状態になる結梨。
「正解だ────お前の後ろは俺が殺る。だから、結梨も遠慮せずに、怪我せずに暴れろ」
「うん! よーし、いっくよー!!」
────『縮地』────
なんとも可愛らしい気合いの入る声を上げて、ヒュージへと突っ込んでいく結梨。目に見えないスピードで細かく動いて、ヒュージを細切れにしていく。
────あれは、『縮地』か? 随分と使いこなしているな
「特型ヒュージ、活動停止しました! そのままケイブに攻撃を集中────」
「いえ、まだです!」
二水の声が聞こえて、悠斗そちらに目を向ける。ソイツは確かにまだ生きていた。
その時、悠斗の項にビリっ! と一際強い反応と、嫌な予感が同時に襲い掛かり、背中がブルっと震えた。
そして、その予感を表すかのように、ヒュージは復活を果たした。新たに、二枚の羽を添えて。
「ヒュージ反応……いまだ健在! そやつ、まだ動くぞ!」)
「は、羽が……増えた……」
「形状変化……いえ、進化……? 戦闘中に姿を変えるヒュージなんて……」
見たことが無いヒュージの特性によって、全員の攻撃が一旦止んだ。そして、そのヒュージはその隙を見逃さないように夢結へと攻撃を仕掛ける。
「っ……!?」
「お姉様、危ない……!」
「たぁぁぁぁーっ!!」
しかし、それは藍の突撃によって止められ、その隙に悠斗と結梨が背後から迫る。
「結梨! 合わせろ!」
「うん!」
息のあった完璧なタイミングの攻撃。それは、二人のCHARMが弾き返されることが答えとして帰ってきた。
「なっ!?」
「そんなっ!?」
「悠斗さんと結梨さんの攻撃が……っ!」
「トランスフォームに伴う外殻の硬質化、といったところじゃな。おまけに、増えた羽にあるあの目玉……」
「っと、目が増えている分火力が増してるな。大丈夫か、結梨」
「うん」
ヒュージの目から放たれる無数のマギで出来た弾丸が無造作に飛び散る。悠斗は、それを結梨を抱えながら空中で身を捩り回避した。
「天使なんかじゃなかった……あれは、堕天使」
「四枚羽の堕天使か。百由様が喜びそうじゃな……よいしょっと」
「ん? 何してんの、それ?」
「百合ケ丘に、マギもCHARMもヒュージにも詳しいアーセナルかまおってな。データを送っているのじゃ。今頃、リアルタイムで解析中じゃろ」
「そんな事よりも皆!」
「ヒュージが増殖してます! 囲まれないように気をつけて!」
悠斗と一葉の言葉を表すかのように、森の奥からゾロゾロとヒュージがやってくる。
「ほ、ほんとだ……さっきより増えてる!」
「ケイブから次々と湧いてきているようて。このままでは、数で押されてすり潰されてしまうわ」
「かと言って、あの特型ヒュージを放置して戦うのは危険ですわ」
「雑魚だったら俺が一蹴できるんだけどな……」
悠斗の武器は殲滅に向いているのだが、ここはリリィ達が密集しすぎている。これだと、思う存分に武器の性能を活かすことができない。
「ノインヴェルト戦術で一気に片付けちゃいましょう!」
「それはちょっと難しいな……」
「梨璃さんの気持ちは尊重したいのですが、ノインヴェルト戦術を展開するには敵が密集しすぎています。まずは他のヒュージを一掃しなければ……」
現在の状況で、特型ヒュージを倒すのは非常に至難。いい作戦が出ないまま、皆の眉が顰めそうになる前に、ヒュージが動いた。
「っ……!? 待ってください、特型ヒュージが移動を開始しました!」
「移動、ですって……?」
「ケイブの方へ向かっています……。も、もしかして逃げる気でしょうか……?」
「ケイブはヒュージだけが移動可能な異次元ワームホール。一度逃したら、次はどこに出現するかわからんぞ……!」
「そんなことはさせない……!」
「よし、なら皆はあのヒュージを追ってくれ。俺はここで雑魚を殲滅させる」
カシャン、カシャン、と音を立てて刃を分裂させる。
「頼んだぞ、梨璃」
「うん! 皆さん! 急いであのヒュージを追いましょう!」
「悠斗さん! ご武運を!」
悠斗を除いた全員が特型ヒュージを追っていく。周りのヒュージは、それを追っていくかに思えるが、全ヒュージの視線は悠斗に釘付けだ。
「全く……ヒュージなんかにそんな見つめられてもなんも嬉しくねぇっての」
まぁリリィに見つめられても何も思わないんだけどな、と軽口を叩く悠斗は、腕を振るう。それだけで、分裂した刃がヒュージを切り裂いた。
「さて、こいよ雑魚共。ここから先は一方通行だぜ? あの世行きのな」
ついに出てきた結梨ちゃん!分岐ですが………?
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結梨ちゃん生存ルートに決まってんだろ!
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ゲンサク、ダイジ