アサルトリリィーPARASITEー   作:沼りぴょい

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雨中の救出作戦~③

「ヒュージ反応……なし。この付近にはいないみたい、です」

 

 ヘルヴォルと百合ケ丘。合同で任務に当たることにし、隊を幾つかに分けることに。揺と梅は索敵を行っていたが、反応はなし。

 

「ふむ、こっちも同じくだ」

 

「一葉たちの方はどうでしょう……。隊を混同して分割とか、大丈夫かな……」

 

 少し不安顔を見せる揺だが、梅は全く心配はしていない。

 

「まぁ、何とかなるんじゃないか? ああ見えてうちの連中もそれなりの修羅場は超えてきてるし────」

 

 その理由の一つとして、コミュ力化け物の梨璃が、百合ケ丘には存在する

 

「あとはあれだな。純粋に仲良くなりたいんだろ、そっちの子達と」

 

 そう朗らかに笑う梅。

 

「仲良く……ですか」

 

「あぁ、うちのリーダーは人懐っこいところがあるからな」

 

「えぇぇーっ!? 本当ですかーっ!?」

 

 噂をすれば影というやつか。遠くの方から梨璃の声が聞こえてくる。

 

「ほら、早速始まったようだゾ……ふふふ」

 

 視点移り、梨璃、千香瑠、夢結の隊。何やら梨璃が嬉しそうな顔をしている。

 

「千香瑠様も山梨のご出身なんですかっ!?」

 

「はい、そうです。住んでいたのは中学までですが」

 

「そうだったんですね! わー、同郷の方とお会いできるなんて嬉しいです」

 

 まさかの同郷出身に喜びを隠しきれない梨璃。ピンクのサイドテールがびょこぴょこと揺れた。

 

「……いい雰囲気のレギオンだね」

 

 それを見て、柔らかく口元が緩む揺。そこに、闖入者が。

 

「リーダーがリーダーですもの。わたくしたちの絆は絶対ですわ! ねぇ、梨璃さん?」

 

 勿論、正体は梨璃スキーである楓・J・ヌーベルである。

 

「あははは……頼りないリーダーですけど、みんなに助けられてなんとか頑張ってます!」

 

「信頼し合えるというのは大事な事だと思いますりその繋がりこそ、レギオンの……リリィとしての強さなんでしょう」

 

「えへへ……」

 

 千香瑠の言葉に、少し照れる梨璃。ふと夢結は、別働隊にいる藍のことを思い出す。

 

「そういえば、佐々木藍さん……あの子のレアスキル────」

 

「ああ、夢結と同じ『ルナティックトランサー』のようだな。あの小さなら身体であの破壊力、相当なものだゾ」

 

 ルナティックトランサー。今も尚、『神宿し』の影響により、夢結自身まだまだ制御が出来てない狂気のスキル。

 

「えぇ……あの子のリリィとしての素質は素晴らしいものです。ですが、少し……」

 

「少し……なんですか?」

 

 言い淀む千香瑠に、疑問を投げかける梨璃。

 

「扱いが難しいね。放っておくと勝手に突撃、しちゃうし……浅野さん、大丈夫かな」

 

 別れる前に、悠斗と結梨になつきになつきまくった藍。悠斗に肩車されて別れたのは記憶に新しい。

 

「あのお方なら大丈夫でしょう。面倒見もよろしい事ですし……」

 

「そうだね! 結梨ちゃんもすごく懐いてるし!」

 

「悠斗は小動物の扱いが上手いからな!」

 

「小動物……」

 

 梅の言葉に少し引っ掛かりを覚えたが、否定できないのも事実だった。

 

 そして、鳴り響くヒュージ出現の警報。みんなの警戒心レベルが上がる。

 

「っ……!?」

 

「ヒュージの反応、多数! これは……恐らくケイブが近くにありますわ!」

 

「ケイブ……ヒュージたちかま通り道に使う異次元ワームホール。放っておいたらこの辺りがヒュージだらけになっちゃいます!」

 

「二水ちゃん、悠斗くんたちに連絡を! 別働隊と合流後、ケイブを総力で叩きましょう!」

 

 ケイブからヒュージが現れる。パッと見ではスモール級のヒュージだろうか。

 

「まずは敵の正確な位置と規模を知りたいですわね……お願いできますか、梅様」

 

 

 

 

 

 

 

「…………うん、うん。分かった。すぐに向かう」

 

 二水からの通信を受け取った悠斗は、すぐに端末を切って全員へと目線を向けた。

 

「梨璃から連絡が来た。皆は一度梨璃と合流することを優先してくれ」

 

「悠斗さんは、どうしますか?」

 

「俺は特型ヒュージの所に偵察しに行った梅様の支援をしてくる」

 

 肩車をしていた藍の脇に手を差し入れてプラーンと持ち上げた悠斗。

 

「結梨。藍の面倒を頼んだ」

 

「うん! 任せて!」

 

「よし。またな」

 

 藍と結梨の頭を撫でた後に、項から読み取れる反応を頼りに特型ヒュージを探す悠斗。

 

 マギを利用し、木から木へと飛び移り、最短で悠斗は梅の元へ。

 

「……っ! 梅様!」

 

「……っと」

 

 ヒュージの攻撃に当たりそうだった所を、咄嗟に悠斗が梅を脇に抱えて無事に回避。その直後、後ろからマギ弾が特型ヒュージへと当たり、怯みさせる。

 

「……ふふっ、絶好のタイミングだな、悠斗」

 

「梅様……無茶しすぎですよ」

 

 悠斗が現れたことにより、特型ヒュージの目線が完璧に悠斗へロックオン。それに当然気づいた悠斗は、梅を離して直ぐにアロンダイトを構える。

 

「よっと」

 

「無事か、梅様」

 

「当然」

 

 きちんと着地したのを見届け、ガチン! ガチン! と音を立てながらアロンダイトの刃が分裂していく。

 

「フッ────」

 

 羽の一撃を、チャームの柄を一振するだけで防ぐ。四方八方から分裂したアロンダイトの刃が突き刺さり、羽は悠斗の目の前で一時停止。

 

「……まるで天使のようだな」

 

 頭に輪っか。背中には二枚の羽があり、その様子はまるで天使のようである。

 

「悠斗くん! 私達は特型ヒュージを狙うから!」

 

「了解!」

 

 悠斗以外の一柳隊の皆は、あの特型ヒュージに集中することになった。確かに、圧倒的一対多の方が得意とする悠斗としては、あの九人の連携に入ったら逆に邪魔になるまである。

 

「悠斗さん! 一緒に露払いお願いします!」

 

「結梨! お前もこっちだ!」

 

「うん!」

 

 こうして、ヘルヴォル+悠斗と結梨の共同戦線が敷かれた。

 

「いいか結梨。敵を纏めて相手とる時に、こちらに纏めて倒す手段が無ければ常に一対一(デュエル)の状況に持ち込むんだ」

 

「デュエル?」

 

「……まぁ結梨は見て覚えさせた方が早いか」

 

 複数に分裂させていたアロンダイトを戻し、見本を見せる。

 

「まず一番重要なのは、敵に背後を取られないことだ。視界のどこかに入れておけば、反応できるし、次の対処もしやすい」

 

「分かった、じゃあわたしはこっちのヒュージを倒せばいいの?」

 

 くる、と悠斗と背中合わせの状態になる結梨。

 

「正解だ────お前の後ろは俺が殺る。だから、結梨も遠慮せずに、怪我せずに暴れろ」

 

「うん! よーし、いっくよー!!」

 

 

 

 ────『縮地』────

 

 

 なんとも可愛らしい気合いの入る声を上げて、ヒュージへと突っ込んでいく結梨。目に見えないスピードで細かく動いて、ヒュージを細切れにしていく。

 

 ────あれは、『縮地』か? 随分と使いこなしているな

 

「特型ヒュージ、活動停止しました! そのままケイブに攻撃を集中────」

 

「いえ、まだです!」

 

 二水の声が聞こえて、悠斗そちらに目を向ける。ソイツは確かにまだ生きていた。

 

 その時、悠斗の項にビリっ! と一際強い反応と、嫌な予感が同時に襲い掛かり、背中がブルっと震えた。

 

 そして、その予感を表すかのように、ヒュージは復活を果たした。新たに、二枚の羽を添えて。

 

「ヒュージ反応……いまだ健在! そやつ、まだ動くぞ!」)

 

「は、羽が……増えた……」

 

「形状変化……いえ、進化……? 戦闘中に姿を変えるヒュージなんて……」

 

 見たことが無いヒュージの特性によって、全員の攻撃が一旦止んだ。そして、そのヒュージはその隙を見逃さないように夢結へと攻撃を仕掛ける。

 

「っ……!?」

 

「お姉様、危ない……!」

 

「たぁぁぁぁーっ!!」

 

 しかし、それは藍の突撃によって止められ、その隙に悠斗と結梨が背後から迫る。

 

「結梨! 合わせろ!」

 

「うん!」

 

 息のあった完璧なタイミングの攻撃。それは、二人のCHARMが弾き返されることが答えとして帰ってきた。

 

「なっ!?」

 

「そんなっ!?」

 

「悠斗さんと結梨さんの攻撃が……っ!」

 

「トランスフォームに伴う外殻の硬質化、といったところじゃな。おまけに、増えた羽にあるあの目玉……」

 

「っと、目が増えている分火力が増してるな。大丈夫か、結梨」

 

「うん」

 

 ヒュージの目から放たれる無数のマギで出来た弾丸が無造作に飛び散る。悠斗は、それを結梨を抱えながら空中で身を捩り回避した。

 

「天使なんかじゃなかった……あれは、堕天使」

 

「四枚羽の堕天使か。百由様が喜びそうじゃな……よいしょっと」

 

「ん? 何してんの、それ?」

 

「百合ケ丘に、マギもCHARMもヒュージにも詳しいアーセナルかまおってな。データを送っているのじゃ。今頃、リアルタイムで解析中じゃろ」

 

「そんな事よりも皆!」

 

「ヒュージが増殖してます! 囲まれないように気をつけて!」

 

 悠斗と一葉の言葉を表すかのように、森の奥からゾロゾロとヒュージがやってくる。

 

「ほ、ほんとだ……さっきより増えてる!」

 

「ケイブから次々と湧いてきているようて。このままでは、数で押されてすり潰されてしまうわ」

 

「かと言って、あの特型ヒュージを放置して戦うのは危険ですわ」

 

「雑魚だったら俺が一蹴できるんだけどな……」

 

 悠斗の武器は殲滅に向いているのだが、ここはリリィ達が密集しすぎている。これだと、思う存分に武器の性能を活かすことができない。

 

「ノインヴェルト戦術で一気に片付けちゃいましょう!」

 

「それはちょっと難しいな……」

 

「梨璃さんの気持ちは尊重したいのですが、ノインヴェルト戦術を展開するには敵が密集しすぎています。まずは他のヒュージを一掃しなければ……」

 

 現在の状況で、特型ヒュージを倒すのは非常に至難。いい作戦が出ないまま、皆の眉が顰めそうになる前に、ヒュージが動いた。

 

「っ……!? 待ってください、特型ヒュージが移動を開始しました!」

 

「移動、ですって……?」

 

「ケイブの方へ向かっています……。も、もしかして逃げる気でしょうか……?」

 

「ケイブはヒュージだけが移動可能な異次元ワームホール。一度逃したら、次はどこに出現するかわからんぞ……!」

 

「そんなことはさせない……!」

 

「よし、なら皆はあのヒュージを追ってくれ。俺はここで雑魚を殲滅させる」

 

 カシャン、カシャン、と音を立てて刃を分裂させる。

 

「頼んだぞ、梨璃」

 

「うん! 皆さん! 急いであのヒュージを追いましょう!」

 

「悠斗さん! ご武運を!」

 

 悠斗を除いた全員が特型ヒュージを追っていく。周りのヒュージは、それを追っていくかに思えるが、全ヒュージの視線は悠斗に釘付けだ。

 

「全く……ヒュージなんかにそんな見つめられてもなんも嬉しくねぇっての」

 

 まぁリリィに見つめられても何も思わないんだけどな、と軽口を叩く悠斗は、腕を振るう。それだけで、分裂した刃がヒュージを切り裂いた。

 

「さて、こいよ雑魚共。ここから先は一方通行だぜ? あの世行きのな」

ついに出てきた結梨ちゃん!分岐ですが………?

  • 結梨ちゃん生存ルートに決まってんだろ!
  • ゲンサク、ダイジ
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