「さて、やるぞ皆」
首を回し、コキッコキッと骨を鳴らした悠斗。貞花が抜け、AZの空いた枠に悠斗が入るのだが、なんとAZは悠斗のワントップのみ。
恋町とアルテアも一応AZの位置にはいるが、殆ど位置はTZで、アロンダイトを存分に生かせるフォーメーションである。
「道は俺が切り開く。皆はただ着いてくればいい」
「ひゅー! かっこいいよ悠斗!」
「天葉! 今はふざけてる場合じゃないわよ!」
天葉の茶々に、夕七がツッコミを入れる。最終戦に突入するというのに全く緊張感が存在していない。
「……ま、任せたよ浅野さん。期待してるよ」
「貴方の実力、存分に見させてもらいますわ」
恋町がひらひら~と手を振り、アルテアは真面目な顔で悠斗を見た。
「それじゃ……行くぞ!」
「「「「「「「「了解!!」」」」」」」」
悠斗の掛け声に、全員が体にマギを回して跳躍する。目標は、巣なしのアルトラ目掛けて一直線。
「邪魔っ!」
途中、横から下からヒュージが出てくるが、ヒュージを感知できる悠斗に対しては不意打ちにすらならない。出てきた瞬間にアロンダイトによって真っ二つにされるため、出落ち感が半端ない。
「すごい……これが悠斗さんの……!」
「圧倒的ね」
「へっへーん。でしょ? 私達の悠斗は凄いんだよ」
椛と麻嶺が悠斗の強さに感心した声を出すと、後ろにいた天葉がめちゃくちゃドヤ顔で胸を張った。
「どうして天葉が威張ってるのよ……」
冬佳が左手で頭を抑え、やれやれと言った感じで頭を振る。
「でも、実際冬佳も悠斗が褒められると嬉しいでしょ?」
悠斗の後ろにいる都々里が少しだけ口角を上げて冬佳を見た。
「……そりゃそうよ。だって、悠斗は
その後も、悠斗による活躍で無傷で進軍を進めた第二部隊。途中、ラージ級やギガント級もいたような気がするが、殆ど悠斗が1太刀で斬り伏せたので、そもそも第二部隊の面々は気づいてすらいない。
依奈率いる第三部隊も、悠斗達の消耗をできるだけ抑えるために、ヒュージを狩っていた。そのおかげで、悠斗が相手するヒュージ減っており、悠斗のマギもまだまだ潤沢にある。
そして、そんな第三二隊の目の前に現れる、巣なしのアルトラ。
「これが、アルトラ級……っ」
「大きい……っ! それに、なんという威圧……」
初めて戦うアルトラ級に、無意識のうちにしり込みしてしまう第二部隊。あの天葉でさえ、頬に一筋の冷や汗を浮かべている。
「…………っ、待避!」
そして、睨み合いはそう長く続かず、アルトラ級の攻撃によって決戦の火蓋は切られた。巨大な腕を振り上げ、悠斗真っ直ぐに狙って振り落とされる一撃。流石に受け止めることはせずに飛んで回避した。
「……ちいっ! 相変わらず馬鹿げた攻撃力を持ってやがる……っ」
「こうなれば短期決戦を狙うしかないわね……みんな! ノインヴェルト戦術をやりましょう!」
夕七の言葉に、全員が無言で頷く。
「ファーストは私がやるわ! 行けそうな人に渡すから! 色々と陽動よろしくっ!」
「っ、最初は私ね!」
夕七のチャームから飛び出たマギスフィアを、しっかりと冬佳が受け止める。流石にその不味さに本能的に気づいたのか、ヒュージが悠斗を無視して冬佳を狙う────が、冬佳はそれを華麗に躱してジャンブした。
「そうね……それじゃ恋町さん!」
「おっと、私ね!」
三人目。恋町が危うげもなくそれを受け止めるが、ヒュージの逆の手の攻撃が恋町を襲う。
「ふふっ、失敗する訳には行かないからね……っ『ゼノンパラドキサ』!」
レアスキル。ゼノンパラドキサ。無限と分割のパラドックスの名を持つレアスキル。 「縮地」と「この世の理」のサブスキルの複合スキルであり、「速く動ける上に、敵の攻撃を簡単に見切る」戦闘特化のスキルである。
それを利用して、ヒュージの魔の手から逃れた恋町は、次の人に照準を合わせる。
「それじゃ……行っちゃって!」
「っ! 俺か!」
四人目は悠斗。アロンダイトを分割させ、一旦破片で受け止めてリフティングの容量でマギスフィアを跳ねさせる。次の瞬間、マギスフィアを狙って放たれた小さな触手が空を切り、無事に悠斗の元へ。
「おっと、俺に対してだけいつも通り過激な攻撃だな……ま、今日はまじで調子いいから当たる気しないけど」
レアスキルによって影響が出ている赤い髪をなびかせながら、触手ラッシュを乗り越えた悠斗。
「よし、行けっ! 都々里!」
「おまかせ!」
五人目は都々里。見事なチャーム捌きでマギスフィアを受け取ると、ヒュージが攻撃をする前にマギを込めた。
「狙われるのは嫌だからね! お願い!」
「ここで私ですか!」
六人目は麻嶺。五人分のマギが篭ったマギスフィアに一瞬、持っていかれそうになったが何とか耐える。だがしかし、その間にヒュージは既に麻嶺に向けて攻撃を放っていた。
「……っ、まずっ」
「シッ!」
回避が間に合うか怪しいところで、その腕に四方八方からチャームの破片が突き刺さる。勿論その破片はアロンダイトであり、その攻撃が攻撃速度を少しであるが遅らせた。
「っ、感謝するわ悠斗さん! お礼に私が一から作るチャームをプレゼントするわ! 椛!」
「はい!」
七人目は椛。彼女にマギスフィアが渡ると、悠斗が即座に椛のフォローに着く。メンタルが折れやすいというのは事前に天葉から教えて貰っていたため、その措置である。
「感謝します悠斗さん……私、あなたの傍なら————アルテアさん!」
「お任せ下さいな!」
八人目はアルテア。しっかりとマギスフィアを受け取る。
「ここまで繋いでくださった皆様の想い……っ! 無駄にはしませんわ! 『ファンタズム』!」
マギスフィアを保持したままヒュージの攻撃を華麗に交わしていく。彼女の目には、数先の未来が見えており、最善の選択を勝ち取り続けている。
「ラスト……お任せしますわ!」
「任せて!」
そして、今までずっと影を潜めていた天葉が宙を飛ぶ。マギの橋に乗ってヒュージまで一直線。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ヒュージの意識外からの完全なノーマークの一撃。天葉のフィニッシュショットは、誰にも邪魔されることなく、アルトラ級ヒュージの脳天にぶち当てたのだった。
そして、次の瞬間ヒュージを中心とした大爆発が起きる。
「回収!」
「えへへ、ありがとう悠斗」
そして、爆心地にいた天葉は悠斗のアロンダイトのワイヤーを括りつけていたため、無傷で帰還。爆風に乗って勢いよく帰ってきた天葉は、お姫様抱っこで受け止めてくれた悠斗の首に思いっきり抱きついたのだった。
「…………しっかし、今日は本当に————」
「えぇ、とっても疲れましたわ……」
「わわっ!」
そして、第二部隊の面々は、示し合わせたかのように地面へと座り込んだ。しかし、彼女達の顔に絶望はない。
雲の切れ間からは、そんな第二部隊を祝福するかのように、柔らかく、暖かな日差しが照らしているのだった。
ついに出てきた結梨ちゃん!分岐ですが………?
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結梨ちゃん生存ルートに決まってんだろ!
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ゲンサク、ダイジ