その後、今日は隊室に近寄らないでね、毒だから。と天葉に言われた悠斗は、百合ケ丘内を歩いていたのだが、梨璃からメールで隊室に来てくれと言われたので、一柳隊の隊室へ向かったのだが────
「ごきげんよう。梨璃さん、きた…………ぞ」
コンコンと四回ノックして扉を開けると、そこには夢結と梨璃が幸せそうな顔で抱きしめあっている最中で、その他の周りのメンバーがいつぞやのように野次馬化していた。
「…………すまん。どうやら間違えたみたいだ」
「何も間違えてはおらんぞい。というか、呼び出して直ぐに帰るではないぞ」
部屋を間違えたフリをして見なかったことにしようとしたが、それは近くにいたミリアムによって止められた。
「……はぁ、幸せです夢結様」
「……そう。ならよかったわ」
「ねぇ、俺本気で帰っていい?」
「気持ちはわかるが、もう少し待て」
何やら夢結と梨璃の邪魔できない雰囲気に充てられ、隣に座りドーナツを頬張っている鶴紗へ聞いたが、断られたし袖を掴まれた。
「……はぁ、堪能しました! お姉様!」
「えぇ、それならよかったわ」
「……終わったか?」
「あ! 悠斗くん!」
桃色のサイドテールをぴょこんぴょこん動かしながら悠斗に近づく梨璃。すると、ノーモーションでそのまま悠斗に抱きついた。
「……? これどういう状況?」
「今日はハグの日らしいからナ。梨璃がこうしてレギオンメンバー全員に抱きついるんダ」
「暖かくて、ふわふわしてた……」
疑問に答えたのは梅と雨嘉だった。この二人は既に抱きつかれたあとのようだ。
「……じゃあもしかして俺が最後?」
「そういうこと…………梨璃のハグよ。拒否なんてしたら許さないわ」
「…………っ!?」
顔の上半分を影に染め、悠斗を睨んだ夢結。それに恐怖心を感じた悠斗だった。
「……堪能しました!」
「……おう、そうか」
「悠斗くんはどうでしたか?」
「生きた心地がしなかったわ……」
「?」
梨璃に抱きつかれている最中は夢結がものすごい形相で悠斗のことを睨みつけていたため、ずっと背筋が凍るような思いだったので、抱きしめ返す余裕すらなかった。
「それじゃあ次は私ね」
「ん?」
「あら、私がこのまま我慢すると思いましたか?」
梨璃の次は神琳が悠斗の前に立ち、悠斗の手を握った。
「え、神琳も?」
「嫌ですか?」
「別に、構わないけど……」
特に拒否する理由はないし、神琳の頼み事は基本なんでも聞いてあげたい悠斗。悠斗の頭の中には『拒否』という二文字は存在しない。
「ありがとうございます悠斗さん。それでは、失礼しますね」
「おおおお!! 神琳さん大胆ですぅ! 熱い抱擁ですぅ!?」
「神琳……嬉しそう」
二水が持っているタブレットでパシャパシャ! と写真を撮り、雨嘉はニッコニコ笑顔の神琳を見て笑顔を浮かべる。
しかし、神琳の様子がおかしくなったのは悠斗が抱き締め返してからである。
「…………んっ!?」
(こ……これは……少しマズイですね……っ)
「ありがとうな神琳。いつも世話になっている」
「っ、い、いえ……亜羅椰さんの行動は普段から目に余りますから、当然のことを……っ」
(悠斗さんの声が……耳元で……!)
例に漏れず、身長差のせいで悠斗の口元が神琳の耳へ────というか、なんなら吐息までもがセットで神琳へと襲いかかっている。
(こ、これは……私、耐えきれません……っ)
「…………ふぅ」
「うおっ!? ……神琳?」
そして、遂にキャパを超えた神琳は静かに気絶をした。恐るべし、この天然リリィキラー。
「…………ハグだけで気絶」
「……一体どんな原理だ……?」
「お、おぅ……悠斗、恐ろしいやつだナ……」
「……あれ? 私なんにも……」
リクエストにお応えして…………
「悠斗くん悠斗くん。ハグしない?」
「……いきなり何を言うんだ? 叶星ねぇ」
これは、あったかもしれないパラレルな世界の物語。
「今日はハグの日らしいわ悠斗。叶星にもした後、私にもお願いね?」
「高嶺姉さんまで……いや、まぁ別にいいけど」
もし、悠斗を見つけたのが天葉と依奈ではなく、まだ御台場にいた叶星と高嶺が悠斗を見つけた世界線の物語である。
「……ほら、おいで叶星ねぇ」
「うん!」
悠斗が手を広げると嬉しそうに叶星がその腕の中に収まる。座っている状態のため、叶星は悠斗に体重を完全に預けていた。
「相変わらず、甘えん坊ですね叶星ねぇは」
「悠斗くんと高嶺ちゃんの前でだけよ。普段ならこんな姿見せないわよ」
悠斗の肩に顎を乗せた叶星は嬉しそうに回している腕に力を入れる。
その時、高嶺が悠斗の後ろに座ると、少し体を伸ばしてそのままゆっくりと悠斗の体に手を伸ばすと叶星ごと悠斗の体を自身の方向へ倒し始めた。
さすがは幼馴染か何をするのか一瞬で判断した叶星は、頭の位置を悠斗の胸へと変更する。そして、そのまま悠斗の頭は高嶺の膝に落ち着いた。
「……高嶺姉さん?」
「膝枕。一度こうしてやってみたかったのよね」
微笑みを浮かべながら高嶺は悠斗の頬を撫でる。
その時、グラン・エプレの隊室のドアから三人の少女たちが現れた。
「こんにちはー☆たかにゃん先輩いる────あー! 三人でくっついてる! ぼくもまぜろー☆」
「こら灯莉! 急に走ったら危ない────なっ、何してるんですか三人とも!?」
「土岐は……土岐は……」
この陽だまりの咲く学園で、少年少女達はどのような物語を紡ぐのだろうか。
それは、作者のみぞ知る…………。
ついに出てきた結梨ちゃん!分岐ですが………?
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結梨ちゃん生存ルートに決まってんだろ!
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ゲンサク、ダイジ