アサルトリリィーPARASITEー   作:沼りぴょい

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四話

「…………う──ーん」

 

 アールヴヘイム控え室にて。昨日は入学式だったのだが、学園の意向で入学式の次の日は休みとなっている。本来なら、アールヴヘイムにて、朝の任務があるのだが、戦力である依奈のCHARMは全壊寸前、悠斗のCHARMにはヒビが入ってしまい使い物にならないため、別のレギオンに代わってもらったのだ。

 

「……悠斗のこの様子どうしたの?」

 

「なんでも、昨日のリリィ新聞に載ってた子の顔に見覚えがあるんだって、いっちゃん」

 

 贅沢に支給されているソファ1つを陣取り、横になっている悠斗を見つめる壱、樟美、亜羅椰。

 

「新聞って、これのことよね。『週刊リリィ新聞』こっちが夢結様で、こっちが楓・J・ヌーベル──ーあら」

 

 その顔は、亜羅椰にとっても見覚えがあった。思い出すのは、昨日の入学式前のこと。夢結にシュッツエンゲルの契りを結ばせようとCHARMも交え、どさくさに紛れて性的にもまじわろうとしていた時に現れたピンク髪の女の子。

 

「…………へぇ?」

 

 興味が湧いた。亜羅椰の顔がどんどんあくどい笑みになっていき、指をペロリと舐めた。

 

「…………亜羅椰、余計なことしたらダメだよ」

 

 それに気づいた壱が亜羅椰に釘を指したが、果たして聞こえてたのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、ごきげんよう梨璃さん」

 

「?」

 

 朝、トイレにて諸々な用事を済ませ、手を洗っていた少女──ー一柳梨璃(ひとつやなぎりり)は自分の名前を呼ばれたので後ろを振り返ると、そこには見覚えのある顔がいた。

 

「あ、どうも────じゃなくて! ごきげん、よう……」

 

 いつもの感じで挨拶を返そうとしたが、ここがお嬢様学校ということを思い出し、直ぐに訂正をした梨璃。

 

 そこに居たのは、勿論ちゃんと待ち伏せをしていた亜羅椰だった。壱の忠告はなんの意味もなさなかった。

 

「そんなありきたりなのじゃなくて、もっと本質的なことをしない?」

 

「本質的?」

 

 なんの事か分かっていない梨璃に、亜羅椰は近づくと、梨璃の左脇に自身の右腕を滑り込ませ、少し体重を掛け、梨璃を押し込む。とうぜん、後ろは洗面所なのでそこに梨璃を逃げないように押し込むと、左手を梨璃の顎に添える。

 

「ふふっ……」

 

 悠斗が居るのに何してるんじゃと思うだろうが、これこそが亜羅椰クオリティ。やはり可愛い子にはとりあえず手を出したくなるのが亜羅椰なのだった。

 

 顔が近づく。相変わらず梨璃はほげーっとしたまま。だがしかし、ここでトイレのドアがガタン! と勢いよく開き、二人の顔がそちらに向いた。

 

「ちょっとそこ! わたくしの梨璃さんから離れなさい!」

 

 楓・J・ヌーベル。グランギニョルの総帥を父に持つ優秀なリリィで、昨日のヒュージ騒動の際に、梨璃に二重の意味で落とされたガチ百合のリリィである。

 

「またあなた? ターゲットは夢結様かと思ったら……とんだ尻軽さんね」

 

「運命の出会いがありましたの。この私が抗えないほどに、劇的な」

 

「ほほぉう? その運命のお相手とやらは、それほどでもないようだけど?」

 

「ふえ?」

 

 その間にも、亜羅椰は右手を梨璃の頬まで持っていき撫で始める。

 

「梨璃さんも少しは抵抗なさい!」

 

(…………リリィって、みんなこうなのかな?)

 

 んなわけあるかい、と一応突っ込んでおこう。亜羅椰は、梨璃の体から一旦離れると楓の元に近づく。

 

「もし、梨璃さんが本当に運命のお相手と言うなら、きちんと縛り付けておかないと────」

 

 ────喰っちまいますわよ? 

 

 楓の顔を覗き込み、堂々と宣戦布告。

 

「ご心配なく」

 

 しかし、楓は別に苛立ちもしないで亜羅椰の肩に両手を置いた

 

「梨璃さんとわたくしはそんなやわな関係では──────あら?」

 

 居ない。楓が亜羅椰を押し退けて梨璃の元へ行こうとしたが、そこに肝心の梨璃は居らず。楓の反応を見て後ろを見た亜羅椰も「ん?」と思わず声を上げてしまった。

 

 そして、肝心の梨璃は二人の横を気配を殺して走り去っていた。

 

「梨璃さん!?」

 

 居なくなったことに気づいた楓が声を上げた。

 

 そして、そこを偶然通りかかった悠斗。

 

「…………お前ら何してんの?」

 

 トイレの前で放心している二人を見れば、当然その第一声が出てくるだろう。

 

「あら、悠斗」

 

「と、殿方ですの!?」

 

 当然、中等部から居る亜羅椰にとって、悠斗は既に百合ケ丘では公然の認識なのだが、楓は高等部編入組なので、悠斗のことは知らない──ーというか、悠斗のことについては全力で理事長代理が情報を塞いでいる。全ては、G.E.H.E.N.A.に存在を知らせないために。

 

 悠斗の姿を見つけた亜羅椰は、すぐさま悠斗の隣に移動すると、するりとさも当然のように悠斗の腕を抱き締め、他者よりも数段成長している女性の象徴を惜しげも無く押し付けた。

 

「…………おい亜羅椰。少しは自重したらどうだ? 一応俺、この人と初対面なんだけど」

 

「い・や・よ。それに──ーほら、向こうの反応が面白いじゃない?」

 

 と、亜羅椰が顎でクイッと楓を示すと、そこには顔を真っ赤にして指をプルプルと震えさせている楓の姿が。

 

「は、ハレンチですわっ! 人の腕に抱きつくなんてハレンチですわ!」

 

 今現在、楓の頭に特大ブーメランがぶっ刺さった。昨日の行動をお忘れなのだろうかこのぽんこつお嬢様は。

 

 このままじゃ妙な誤解をされたままだなと一瞬で結論付けた悠斗は、しっかりとホールドされている亜羅椰の手──ーではなく、手首をグリン! と動かして亜羅椰の脇腹を掴んだ。

 

「! ひゃあん!?」

 

 突然の刺激でびっくりした亜羅椰の一瞬のスキをついて腕を解放。それに気づいた亜羅椰は少しは顔を赤らめさせてブーと頬に空気を入れた。

 

「コホン、申し遅れたが、浅野悠斗だ。一応この百合ケ丘にはやむをえない事情があってここに居る。1年生だ。同じクラスになったらよろしく」

 

「……こ、こほん! 楓・J・ヌーベルと申します。よろしくお願い致しますわ、悠斗さん」

 

 きちんとした挨拶には挨拶を、握手には握手をの精神の元、楓は差し出された悠斗の手を嫌な顔ひとつもしないでそれに応じた。

 

「もう! その女ばかりじゃなくて私も構ってよ!!」

 

「ちょ! バカっ! 今挨拶中だから抱きつくのやめろ!!」

 

 自分以外に視線に行っている。アールヴヘイムのみんなにならまだ何となく許せるのだが、別の女に悠斗の視線が向くのには納得いかない。意外と可愛らしい嫉妬を顕にした亜羅椰が、悠斗の背中にダイブした。

 

「ちょ……ごめん、楓さん。今から俺はこのわがまま姫の機嫌取ってくるから……また後でゆっくり話せると嬉しいな」

 

「えぇ、機会がありましたら是非」

 

 くるん、と一度振り返って亜羅椰のことを米俵のように持ち上げた悠斗は、首だけを回して楓に向かって笑って言った。楓もそれに応え、悠斗と担がれてる亜羅椰の姿を見送った────あ、おんぶになった。

 

「……不思議な殿方ですね、悠斗さん……さて! わたくしも梨璃さんを探してあんなふうに……ぐふふ、どこに居らっしゃるんですの! 梨璃さーん!!」

 

 …………おい、ご令嬢。




亜羅耶可愛くない?書いてて思ったわ。
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