アサルトリリィーPARASITEー   作:沼りぴょい

7 / 54
幕間―――遠藤亜羅椰との邂逅ーーー

 最初は、唯一の男だからという点で興味はあったが、それも一瞬だけで彼女の性格、性質上でそんなに頭の中には残らなかった。

 

(ヒュージに寄生され、その上でリリィとしての才能も開花させた男……ま、別に興味はないわねぇ)

 

 とあるリリィが死んで、話題となり、後に甲州撤退戦という名前になった戦闘の際に、運悪く命を失い、そのせいでヒュージに捕食され、寄生されてしまった男。

 

 その程度の認識だった。彼女────遠藤亜羅椰にとって、浅野悠斗とはその程度の認識だったのだ。

 

 そんな彼女が悠斗に初めて本格的に興味を持ったのは一年後。ようやく悠斗も百合ケ丘の雰囲気に若干慣れ、女子の友人もそこそこにでき始めた頃────なんと、亜羅椰が密かに狙っていた田中壱と江川樟美と何やら楽しそうに談話しているではないか。

 

(……なになになに? なに&なになのよあの光景……)

 

 普段、悠斗が女子と喋る際、彼を救った番匠谷依奈と天野天葉以外の女子とは対面でそこそこ距離を離してから話しているイメージが強かったのだが……! 

 

(昨日を境に、何をどうしたらあんな両手に花状態になっているというのよぉ!)

 

 亜羅椰の心の声と同様に、カフェテラスにいた他のリリィ達もその姿を好奇心旺盛な目で見つめていた。

 

「それでね、兄さま。私、まだまだ食べてもらいたい手料理が──ー」

 

「悠斗悠斗、私もこの前手料理に挑戦したんだけど────」

 

「待て待て、俺は聖徳太子じゃないんだなら一人ずつ……な?」

 

 隣同士────というより、壱と樟美は既に悠斗に密着しているし、樟美に至っては何故か悠斗のことを兄さまと呼んでいるし、壱に至っては下の名前で呼んでいる。

 

 亜羅椰には分かってしまう。あれは、好きな人を狙っている目だとハッキリと分かってしまう。なぜなら、亜羅椰だって壱と樟美を見る時はあんな目になってしまうから。

 

 男を掴む時は胃袋から。それをしっかりと実践しようとしている二人。突然、亜羅椰は嫉妬をした。

 

(許さない……許さないわ! 浅野悠斗!)

 

 亜羅椰的には取られた(別に壱と樟美は亜羅椰のではない)と勝手に思っており、樟美に関してはこの前までとある事件によってクラスメイトからいじめを受けていたので、隙を見て優しくすれば勝手に堕ちてそのままぐふふまで持ち込んでいけると、そう思っていたのに。

 

 だから、亜羅椰は悠斗と接触をした。悠斗と接触をして、仲良くなれば壱と樟美に近づけるから。そう思った。

 

「ごきげんよう」

 

「ん?」

 

 一人になるタイミングずっと見計らい、中庭にて猫と戯れていたので声をかけた。

 

「君は?」

 

「遠藤亜羅椰と申します。実は、貴方には興味があって、いつ声をかけようかとずっとタイミングを見計らっていたのですわ」

 

「…………ふーん。ま、それでもいいけど」

 

 どっこい、と猫を持ち上げた悠斗。猫を顔の辺りまで持っていった。

 

「僕は浅野悠斗だにゃあ、よろくしだにゃあ」

 

「…………一体何をしているのかしらぁ?」

 

 その光景に、思わず亜羅椰は呆れた目を向けてしまった。にゃあ、と猫の呑気な声が響いた。

 

「ね、遠藤さん。俺の事は当然知ってたよね?」

 

「勿論よ、ヒュージに寄生されて生き長らえてしまった哀れな少年。そう説明されたわ」

 

 世間一般には隠している悠斗の存在だが、百合ケ丘の生徒にはしっかりとその事情も知らせてある。リリィのみんなは心優しいので特に拒絶されずに受け入れてくれたのは悠斗にとってもありがたかった。

 

「寄生されたせいでさ、色々と身体も強化されて、マギも扱えるようになったんだけどさ…………視線にも敏感になったんだ」

 

 猫を持ち上げるのをやめて、胸辺りで抱きしめた。

 

「君は、()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「っ!?」

 

「ああやってやればよく見える。君の瞳は、俺を写してはいない」

 

 猫を下ろして、悠斗は亜羅椰へと近づく。亜羅椰はその謎の威圧に押され、1歩ずつ下がってしまうが、それをよしとしなかった悠斗に、一気に距離を詰められた。

 

「っ、キャッ!?」

 

 足払いをされ、右腕を掴まれながら地面に尻もちをつく。足の間に膝をつかれ、亜羅椰の顎に悠斗の右手が添えられた。

 

「別にいいよ。打算があって俺に近づくのは。俺だってみんなと仲良くはしたいし、これからも親交を深めたい。そう思っているけど────」

 

 驚く程に近い距離、亜羅椰は悠斗の目から逸らさずには居られなかった。

 

「俺の大切な友人に手を出すなら、いくら同じリリィでも、俺は容赦しないよ」

 

「あうっ」

 

 バチコーンと、優しくデコピンをおでこに喰らい開放された亜羅耶。

 

「それじゃあね、遠藤さん。次話しかけてくる時はちゃんと俺を移してからおいで」

 

 立ち去っていく悠斗に、にゃーと先程まで戯れていた猫がその後を負い、上手く悠斗の体を上り頭の上に収まった。それを最後まで見届けた亜羅椰、咄嗟に自身の体を抱きしめる。

 

「っ!?」

 

 頬は紅潮しており、呼吸も少し早い。彼女の状態を表すのならば、『ゾクゾクした』という表現が正しいだろう。

 

 元々Mっ気もあった亜羅椰だ。先程強引に押し倒され、迫られた悠斗に、どれだけ自分が女が好きだと言っても、女の本能を刺激されれば否応にも意識せざるを得ないだろう。

 

 だから、亜羅椰は()()()と思った。もっとあんな視線で見つめられたい。もっとさっきみたいに強引に迫られたいと。

 

「浅野、悠斗」

 

 名前を出すだけで、身体が熱くなり、顔自体にも熱がたまる。

 

 あぁ、これは────

 

「ゾクゾク、しますわぁ」

 

 その夜。百合ケ丘のリリィが寝泊まりしている寮から少し離れた一軒家──ー悠斗の為に作られた家で、とある男の悲鳴が響き、偶然悠斗とお茶をしようと近くに居た理事長代行が慌てたそうな。




亜羅耶ちゃんSっ気と一緒にMっ気もあると思うのよね(願望)。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。