やはり俺がソードオブロゴスにいるのはまちがっている。 作:断空我
ちなみに仮面ライダーセイバーは本編開始から数か月前の出来事になります。
多分。
どうして、俺が仮面ライダーになったのか。
それは二年と少し前。俺と小町はある異変に巻き込まれた。
後になってわかったことだが、その異変はメギドの幹部がワンダーライドブックを手に入れるために多くの人達を巻き込んだ計画だったらしい。
計画とやらに俺と小町は巻き込まれた。
シミーと一緒に現れたメギドに俺は小町だけは絶対に守ろうと奮闘する。
けれど、相手は怪物。
普通の人間でぼっちの俺は一方的にやられるだけだった。
本当に死というものを意識した瞬間、俺は「死にたくない」と思った。
死ねば小町は一人になってしまう。
何より俺は死にたくないと、理由はわからないけれど、生きることを渇望したのだ。
その時、俺の前に地面に突き刺さった聖剣が現れた。
呼ばれている気がして俺は地面から引き抜いた。
あれが始まりの日。
俺が仮面ライダーになった日。
「なーんて、昔の事を試しに思い出してみたけど、我ながらちゅうにびょう全開過ぎて泣けてくる」
建物の屋上であの日の事を思い出した俺は自虐的な笑みを浮かべた。
手の中に俺が変身に使用するワンダーライドブックがある。
「しかし、この力は何故、俺を選んだんだろうか、俺以外にもあの場にはいたはずだろうに」
「これは憶測だけど、八幡の強い思いに惹かれたんだろう」
「……師匠」
振り返ると笑みを浮かべている俺の師匠がいる。
魔法の絨毯に乗って宙に浮いていた。
「いつも思いますけど、そういう登場ありですか?」
「楽しいじゃないか」
爽やかな笑顔を浮かべて俺の師匠は魔法の絨毯から降りる。
富加宮賢人、彼はソードオブロゴスに属する雷の剣士であり俺の師匠だ。
登場するときはどうしてか魔法の絨毯に乗って現れる。
まぁ、カッコイイけどさぁ。
「八幡も楽しめばいいだろう?不死鳥の背中に乗るとかして」
「いや、ちょっと」
何とも言えない表情を浮かべて話を切り替えることにした。
「そういえば、話があるんじゃなかったですか?」
「あぁ、昨日の戦いはお疲れ様、体の方は大丈夫かい?」
魔法の絨毯から降りて師匠は俺にねぎらいの言葉をかけてくれる。
「えぇ、前みたいに気絶することはなくなりました」
「良かった。八幡も剣士としてこれから一人でメギドと戦っていくことになる。昨日の戦いを見る限り大丈夫だね」
「……みていたんですか?」
師匠がみていたことに気付かなくて驚いてしまう。
「八幡は無茶ばかりするからね。独り立ちするとはいえ、師匠としては心配だったのさ」
「師匠的に、今回の戦いは?」
「合格だよ。これから一人で、他の剣士と共に行動をすることになるけど、八幡なら戦える。剣士としてね」
二年と少しだが富加宮師匠に教えてもらったことはしっかりと身についているつもりだ。
教えてくれた師匠に合格と言われることは素直に嬉しいと感じる。
「後は、一緒に物語とか付き合ってくれたらね」
「それは恥ずかしいので勘弁してください」
富加宮師匠は少し変わっているというか、絵本とかの物語が大好きだ。
なんでも幼馴染と一緒にそういうことをやっていて、初めてできた弟子である俺ともそういうことをやっていきたいということらしい。
あれは恥ずかしいので少し抵抗がある。
ピーターパンの真似もそうだが、まさかトム・ソーヤをこの年齢でやるとは思わなかった。
「つれないなぁ、師弟関係なんだから師匠の頼みはきいてくれたらいいのに」
「別の事でお願いします。てか、そういうことならアイツを呼べばいいでしょ?」
師匠一筋なアイツなら喜んで参加するだろう。
そして、俺に挑発してくる。
断言できる。
俺の言葉に首を傾げる師匠。
本当にわかっているのかどうなのか怪しい。
「さて、行こうか」
「え?どこへ」
「ノーザンベースだ。八幡の聖剣とドライバーのことで大秦寺さんが調べたいそうだ」
「わかりました」
師匠が開いたブックゲートを通って俺はソードオブロゴスの本拠地“ノーザンベース”に移動する。
そもそも、ソードオブロゴスとは何か。
世界は一冊の本でできていたという。
だが、本を奪おうとする者と守ろうとする者の間で戦いが起こり、その本はバラバラになってしまった。
本を悪意ある者から守り、世界の均衡を人知れず守るための組織がソードオブロゴス。
そして、最前線で戦う剣士達が集う本拠地がノーザンベース。
もう一つ、サウザンベースというのもあるそうだが、あちらはあちらで別の役割があるらしい。
あの日、聖剣とワンダーライドブックを手にした俺は富加宮師匠に助けられて、小町と一緒にノーザンベースで手当を受けた。
手当を受けた後に俺は仮面ライダーに変身する力を得たこと、世界の秘密ともいうべきメギドとソードオブロゴスの戦いの話。
この時、ドライバーとワンダーライドブックを託して質の悪い夢だったということで済ますこともできた。
けれど、それは逃げの様に思えた俺は仮面ライダーとして戦うことを選んだ。
多くの人の為というわけではなく小町や家族を守るために。
理由としては最低かもしれない。
俺は目を背けることは間違いだと感じて仮面ライダーとして戦っている。
それが正しいのか間違っていたのか答えは出ていない。
ブックゲートを通ってノーザンベースに到着する。
ドアをくぐると左右にある階段、正面にあるソードオブロゴスの紋章。
奥には複数の本棚。
部屋の通信には本を模した端末(なんに使うのか知らない。そもそも使ったことがない)がある。
ここがソードオブロゴスの本拠地、ノーザンベースなのだ。
「おかえりなさい」
俺達を出迎えるのは白いドレス姿の妙齢の女性。
本の守護者であるソフィア様だ。
最初はさん付けで呼んでいたのだが、一応、ソードオブロゴスに属している以上、上司にあたるので様付けすることにした。
「単身の戦闘、お疲れ様です。体に異常はありませんか?」
「あ、は、はい、大丈夫です」
「これから剣士として戦うことになります。怪我をせぬように気を付けてください」
笑みを浮かべるソフィア様。
少し前の俺なら告白していたレベルだ。
だが、この俺はそんなことをしない。
戸塚に並ぶレベルの癒しであることは否定できなくなっているが。
「待っていたぞ」
「うぉっ!?」
ずぃっ!と目の前に現れた長身の男性。
富加宮師匠も長身だが、この人はそれよりも高い。
彼の名前は大秦寺さん。
ソードオブロゴスに所属している鍛冶師だ。
何でもドライバーや聖剣のメンテナンスをしている。
後、人見知りらしい。
今も俺と目線をあわせないように目を手で隠している。
「なんです……?」
かくいうぼっちの俺も目線を合わせないので問題はない。
あれ、問題ある?
「さぁ、ドライバーと聖剣を渡せ。メンテをする」
「三日前にもしましたよね?」
後、かなりの変わり者だ。
「聖剣がメンテを求めている!その声を無視することは俺にできない!」
そういうと懐にしまっていたドライバーとワンダーライドブックを奪って奥に引きこもってしまう。
「しばらくは休業?」
「そういうことになるな」
隣にいた師匠は肩をすくめる。
大秦寺さんがドライバーのメンテナンスとやらにどれだけの時間をかけるのかわからないが、その間、剣士としての活動はお休み。
「ブラック企業かと思っていたのに、ホワイト企業みたいだ」
「八幡の思考って独特だよね」
師匠の言葉に俺は沈黙で答えた。
賢人君が師匠という立場になりました。
つまりは?
八幡の聖剣とワンダーライドブックはギリギリまで隠します。
予想ついた人がいたらすごいな。