やはり俺がソードオブロゴスにいるのはまちがっている。   作:断空我

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修学旅行一日目の夜、俺は周りに誰もいないことを確認すると携帯端末を取り出す。

 

ガトライクフォンと呼ばれるこの端末はソードオブロゴスから支給されたもので他の剣士と連絡を取ることができる。

 

「あ、どうも、比企谷です」

 

「おう!学生か!久しぶりだな!」

 

電話の向こうから聞こえる大きな声に一瞬、ガトライクフォンを遠ざける。

 

「お久しぶりです。尾上さん」

 

耳に触れつつも、俺は本題に入ることにした。

 

「尾上さん。任務で京都にいますか?」

 

「おう!そういえば、そらの件、すまないな!お前の家に預けてしまって」

 

「いえ、小町が面倒を見ていますから。小町へ感謝を伝えてください」

 

「わかった!遠方に行くことになったからな。誰かに頼めないかって考えていたら賢人が良い案をだしてくたから助かったぜ

 

「ところで、京都の任務ってどれくらい危険なものなんですか?尾上さんが派遣されるってことはかなりヤバイですよね?」

 

「学生、なんでそんなことを気にするんだ?」

 

「……修学旅行で京都に来ているんですよ。何かが起こるなら知っておきたいなと」

 

「学生、時間はあるか?」

 

「今、いいかな」

 

 後ろから声をかけられて俺は咄嗟にガトライクフォンをしまう。

 

 振り返ると葉山隼人がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「尾上さん、遅くなりまして申し訳ありません」

 

 あの後、尾上さんと話をするために指定された場所へやってきたのだが。

 

 「どういうことだ!さっきの話はなんだ!」

 

 なぜかわからないが尾上さんは激怒していた。

 

「あの、なんで怒っていらっしゃるんですか?」

 

「怒るに起るに決まってんだろうが!なんだ、あの話は!男らしくねぇ!」

 

激怒している尾上さんは今にも背中の激土を抜きそうな気迫がある。

 

これ、シャレじゃないよ?本当の話。

 

「電話越しにお前と葉山とかいう奴の会話を聞いた!今の関係を壊したくないぃ?自分勝手な都合にお前を巻き込んでいるだけじゃねぇか!そもそも、失敗しない告白だぁ?それも気に入らない!」

 

今の会話でわかった。

 

ガトライクフォンの通話をOFFにしていなかったから俺と葉山の会話が尾上さんに駄々洩れだった。

 

「あの、それはなんとかするので、その、任務の件を、お願いします」

 

「ったく、お前は本当に理性が固いというか、鈍いというか、まぁいい!」

 

ドスンと近くのベンチに腰掛ける尾上さん。

 

少し離れたところへ腰かけようとすると隣へ座るように言われた。

 

ほんの少し距離を開けて座ると尾上さんは話を切り出す。

 

「この地に危険なメギドを封印した本がある」

 

「本?」

 

「俺達より前の代の剣士達の手によって封印された危険なメギドってことしか、俺も知らねぇ。その封印をカリバーが狙っている可能性がある」

 

「カリバー?」

 

「俺達の仲間だった剣士だ。十五年前に組織を裏切って姿を消している」

 

「そんな剣士が……」

 

長い歴史を持つ組織っていうことなら裏切り者が出るなんてことはありえる。

 

ただ、尾上さん程の人が捕まえられないっていうことは相手の逃走スキルが高いということだろうか?

 

「わかっていると思うが、お前は偶然力を手に入れた学生だ。余計なことに首を突っ込むんじゃねぇぞ」

 

「わかっています。俺だってまだ死にたくないですから」

 

念を押してくる尾上さんは俺の事を学生と呼ぶ。

 

他の剣士達と違って俺は偶然に聖剣を手にした一般人に過ぎない。

 

剣士になると誓って富加宮師匠に鍛えてもらっていても未熟。

 

聖剣の力を満足に引き出すこともできない。

 

そんな俺が彼に協力するなんて言っても足手まといしかない。何より、俺は小町や家族といった最低限の人が守れればいいんだ。

 

世界の均衡を守るなんて俺に荷が重すぎる。

 

「ならいい。お前は学生なんだ。修学旅行を楽しめ」

 

ポンと尾上さんは俺の肩をたたくと聖剣を背負って去っていく。

 

俺は自販機でマッカンの代わりを購入して宿へ戻る。

 

宿に戻って近くのソファーに腰掛けていると目の前の雪ノ下が通り過ぎた。

 

一瞬、目が合ったようだがそのまま土産物コーナーへ入っていく。

 

土産物コーナーに京都限定のパンダのパンさんのキーホルダーがあり、それをみて若干、頬を緩めていた。

 

雪ノ下さん、可愛いもの好きだなぁ。

 

心の中で思いながらぼーっとしていると俺の視線に気づいた雪ノ下さんがこちらへやってくる。

 

「あら、比企谷君、こんなところにいたのね。気付かなかったわ」

 

「そうだな。俺もお前がこんなところにいるなんて気づかなかったわ」

 

不用意な発言は控えよ。

 

命が惜しければ。

 

心の中で思いながら話をする。

 

「……その、依頼の方はどうなのかしら?貴方と由比ヶ浜さんに任せきりだけど」

 

「依頼の方だが、クラスが違うんだから仕方ない。由比ヶ浜が奮闘はしているが空回りしているな」

 

「その言い方だとあなたは何もしてないように聞こえるんだけど」

 

「戸部のフォローはしていない。ただ、観察はしていた」

 

「……貴方の見解は?」

 

「告白はうまくいかない。戸部は失敗するだろう」

 

「その根拠は?」

 

「観察していたからの意見だが、戸部のアプローチを海老名は避けている。おそらく戸部が何か行動をしようとしている事に気付いて回避している。あと、本人の情報が少ないからなんともいえないが、告白されても断るだろう。外部の人間も告白がうまくいくことを望んでいない」

 

「そこまで……でも、由比ヶ浜さんは」

 

「アイツは、きついことをいうようだが、告白ということしか頭に入っていなくて……失敗した場合のデメリットに気付いていない。そのことを伝えるつもりでいるが……この依頼、どう転んでもうまくいかないぞ」

 

「比企谷君の話を聞いている限り、厳しいわね。今更だけど、断りを入れるべきかしら」

 

「列車は走り出した。止めるのは厳しい。形はどうあれ結果がでないと止まらないだろう」

 

「……そう」

 

雪ノ下は視線を逸らす。

 

「結果の想像、きっと、私もそれが足らなかったわ」

 

溜息を吐きながら雪ノ下は俺を見る。

 

「人間関係というものはややこしい。まさに、それだな」

 

「……えぇ」

 

雪ノ下は小さく頷いた。

 

その後、打開案はでないまま俺達は解散する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

 

「ヒキタニ君!話があるんだけど!」

 

「俺にはないのでパス」

 

「キミに依頼がしたいの」

 

待ち構えていた海老名氏が俺にアプローチを仕掛けてくる。

 

「依頼については奉仕部の氷姫にいってくれ。俺にその権限はない」

 

「じゃあ、ヒキタニ君にお願い!」

 

了承する暇もないまま、海老名は俺に要領の読めない話をしてくる。

 

男同士の絡みがいいとか、なんとやら。

 

そして、戸部のアプローチに気付いているからそれを阻止してほしいというものだ。

 

海老名自身が気付いているのかわからないが、明らかに誰かの入れ知恵がある。

 

アイツの仕業か。

 

俺が断れない状況を作り始めているな。

 

面倒だ。

 

「頭の隅っこに入れておくけど。俺は了承する気はないから」

 

「うんうん、よろしく!」

 

人が了承したみたいに答えるのやめてくれないから?

 

嬉しそうに去っていったけど、思い通りになるとは限らないからな。

 

はぁ、とため息を吐いているとポケットの中の携帯端末が鳴りだす。

 

個人携帯じゃない方の端末だ。

 

「ヒッキー、どうしたの?」

 

「いや、それより由比ヶ浜。もう一度、よく考えてくれ。戸部の告白の件だ。戸部が海老名さんへ告白したらどうなる?」

 

「くっついたら幸せ」

 

「じゃあ、くっつかなかったら?」

 

「う~ん、う~~ん。どうなるの?でも、そうならないようにするのがあたし達の仕事じゃないの?」

 

「違うだろ、あくまでサポートだ」

 

ダメだな。

 

誘導してみたがすぐに答えは出ないらしい。

 

これは色々と覚悟しなければならないのか?

 

「ヒッキー!昼からの自由時間、どうするの?ゆきのんと一緒に回ろうよ」

 

「悪いが予定があって、16時に嵐山へいくから勘弁してくれ」

 

「えぇ?どこいくの」

 

「女子禁制の寺だ」

 

「えぇええええ!」

 

「すぐに予定を終わらせたら行く。それで勘弁してくれ」

 

嘘だけど。

 

由比ヶ浜へ嘘をつくことは申し訳ない気持ちはあるが、こればっかりは仕方ない。

 

「絶対だよ!ヒッキー、折角、奉仕部で一緒にいられる時間なんだから」

 

「……わかった」

 

約束を交わして俺は指定された場所へ向かう。

 

海老名さんと話をしていた時にガトライクフォンにメッセージが届いていた。

 

指定の場所へ来るようにということだ。

 

送り主は不明。

 

「誰も、いない?」

 

「やっはろ~、比企谷君」

 

「どうして、ここに」

 

振り返ると雪ノ下の姉である雪ノ下陽乃さんがいた。

 

雪ノ下の姉でパーフェクトビューティーみたいな印象があるけれど、俺は苦手だ。

 

自身の感情を笑顔というの名前の仮面で隠しているような気がして不気味。

 

だが、なぜここに?

 

「へぇ、京都に剣士がいるって聞いたんだけど、まさか比企谷君だったんだ」

 

「雪ノ下さん、どうしてここに」

 

「これをみせれば、納得かな?」

 

笑顔を浮かべながら雪ノ下さんが懐から取り出したのはブックゲート。

 

「ブックゲート、まさか、雪ノ下さんはソードオブロゴスの関係者?」

 

「まぁね。でも、キミ達実働部隊であるノーザンベースじゃなくて私が所属しているのはサウザンベースなんだけど」

 

「雪ノ下さんも、剣士……」

 

「残念ながら違うんだなぁ。私は剣士じゃないんだ。剣士をサポートする立場なんだぁ」

 

ブックゲートを閉まって雪ノ下さんは笑顔で話しかけてくる。

 

「じゃあ、雪ノ下も」

 

雪ノ下さんがソードオブロゴスに属しているというのなら、雪ノ下も?

 

「残念ながら雪乃ちゃんは何も知らないんだよねぇ」

 

俺の考えに気付いたのか、雪ノ下さんが否定する。

 

「雪ノ下家は代々、ソードオブロゴスを支えてはいるけど、雪乃ちゃんは素質がないから秘匿しているの。何も知らない一般人が知っても恐怖に繋がるかもだからねぇ」

 

「事情は分かりました。俺は確かにソードオブロゴスに属してはいますが、任務を受けているわけじゃないです。呼ぶなら尾上さんじゃ」

 

「あぁ、バスターかぁ、ベテランの剣士だったねぇ。ま、それはいいんだ」

 

いいのか?

 

「比企谷君はこの地に封印されているメギドのことは知っているかな?」

 

「尾上さんから聞いています。過去に多くの剣士を犠牲にしながらも封印したメギドがいるって」

 

「正確にはメギドのアルターライドブックなんだけどねぇ?実は、鬼のメギドなんだ」

 

「鬼?」

 

「そうそう、バスターはこの地のメギドをカリバーが狙っているかもしれないってことで調査に来ているみたいだね」

 

「カリバー……雪ノ下さんは封印されているメギドについて知っているんですか?」

 

「剣士達よりかは知っているかなぁ」

 

「だったら、それを尾上さんへ伝えてあげてください。情報が多ければ、その分、尾上さんが有利になる」

 

「いいけど、一つだけ条件があるの」

 

「条件、ですか?」

 

この人が俺に条件を突き出してくるときは警戒しなければならない。

 

過去の経験からして碌な目にあったことは数知れず。

 

顔に出ているのだろう、雪ノ下さんは「ひどいなぁ」と微笑む。

 

「別に悪いことじゃないよ。今度、比企谷君がドライバーとワンダーライドブックを手に入れた経緯を聞かせてくれたらいいよ」

 

「……別に、それくらいでしたら」

 

「約束だよぉ、じゃーねー」

 

雪ノ下さんはそういうと手を振りながら去っていく。

 

後でちゃんと尾上さんに情報を伝えてくれるのだろうか?

 

疑問を抱きながら時間を確認するとそろそろ嵐山へ向かわないといけない時間だった。

 

 

 

 

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