やはり俺がソードオブロゴスにいるのはまちがっている。 作:断空我
「え、今なんて?」
「それが告白の依頼はなくなったの」
「あははは」
奉仕部のメンバーと合流するためにやってきたのだが、俺が向かうと二人から衝撃の展開を伝えられる。
「私、隼人君たちといたんだけどね?そこにゆきのんを助けてくれた男の人がやってきて、戸部っちに色々とお説教したんだ」
ゆきのんをこの前助けた人って、
「(尾上さん!?何をやっているんですかぁ!?)」
心の中で叫ぶ。
あの人の事だから胸ぐらをつかみ上げて、熱血展開なことが起こったんだろう。
「あの人がどうしてそういう行動をしたのかはわからないけれど、戸部君から依頼そのものが取り下げられたのよ」
「つまり、俺達は何もせずに済むわけか」
「そういうことよ。予期せぬ展開だったけど……余計な火種に巻き込まれずに済んだというところは感謝すべきなのかもしれないわ。次からはしっかり断るようにするわ」
「だな」
「あの、ヒッキー」
「なんだ?」
振り返ると由比ヶ浜が申し訳なさそうにこちらを見る。
「その、ヒッキーに言われたこと、あたしが戸部っちに告白されたらって考えたんだ。そうしたら、嫌だから絶対に断るって気づいたの」
「お、おう」
哀れ戸部は絶対に振られてしまう運命にあるらしい。
まぁ、あんなチャランポランなことをしていたらモテないだろうな。
「ごめんね。ヒッキーの言っていること、ちゃんとわかっていなくて」
「別にいい。わかったのならな」
「うん!依頼がなくなったんだしみんなで楽しく観光しよう!」
泣きそうな顔から一転して笑顔になる由比ヶ浜。
「由比ヶ浜さん」
「……由比ヶ浜は泣いているより笑っている方がいいな」
「チョッ!ヒッキー!いきなりすぎるし!」
「あ?」
「な、なんでもない」
ぷいっと顔を背けると由比ヶ浜は歩き出していく。
俺は変なことを言っただろうか?
「無自覚谷君、行くわよ」
呆れた表情で雪ノ下も由比ヶ浜に続く。
残された俺は頭に?マークをいくつも生やしながら二人を追いかけることにした。
まぁ、依頼はとにかく終了したからよかったことにしよう。
まさか、尾上さんの手によって問題が解決したことは驚いた。
京都土産、尾上さんの分も買っておこう。
そんなことを考えながら俺は先を歩く二人を追いかけることにした。
同時刻。
「これは中々……」
結界を破壊しようとしていたストリウスは祠から手を放す。
彼の手は黒焦げになっていた。
「当時の最強と言われた剣士が施した結界だけあって手ごわいものです」
ストリウスが本気を出せば瞬く間に破壊することができるだろう。
しかし、あまりに強大な力を使えばソードオブロゴスの連中に気付かれる。
今は計画の為の準備段階。
余計な戦闘を引き起こすべきではないと考えたストリウスは傍にいるカリバーへ視線を向ける。
「お願いしてもよろしいですか?」
カリバーは無言で自身の聖剣を構える。
一閃。
振り下ろしたカリバーの一撃は瞬く間に結界を破壊してしまう。
音を立てて崩れ落ちる祠。
瓦礫の一部を退かしながらストリウスは保管されていた筐から一冊の本を取り出す。
アルターライドブックをみつけてストリウスは微笑む。
祠があった場所を出たストリウスは周囲をみて、アルターライドブックを握りしめる。
「使うつもりか?」
「えぇ、このメギドの力を確認したい……それに、餌が豊富ですからねぇ」
ストリウスは残忍な笑みを浮かべながら手の中のアルターライドブックを開く。
開かれたページからたくさんの本が飛び出して存在が形作られる。
頭頂に二つの角を生やし、肥満のお腹、病的と思えるほどに白い肌。
黄色い瞳は不気味な輝きを放っている。
【女食いの鬼物語】
アルターライドブックから紡がれた言葉と共に現れたオニメギドはポンと腹をたたく。
「あぁ、ようやく外に出られたぜぇ」
解放されたことが嬉しいのかはしゃぎながら近くの木をへし折る。
ストリウスは懐から白いワンダーライドブックを差し出す。
「暴れたくてうずうずしているようですね。どうです?」
「おぉ、いいねぇ!腹も減っているから丁度いい!」
差し出された白いワンダーライドブックを手に取るとそのままページを開く。
「え、なにこれ?」
「これは」
「っ!」
目の前で白い光が発すると同時に切り取られていく。
あの時の光景と同じだ。
メギドの手によって俺達の世界の一部が無理やりワンダーワールドに繋げられた。このまま放置してしまうと現実世界がメギドによる浸食を受けてしまう。
どこかにメギドがいるということだろう。
俺が息を飲む前で周囲が切り取られて、そのままワンダーワールドに繋がってしまう。
「これは、いったい」
「みて!ゆきのん!」
由比ヶ浜が空を指さす。
ドラゴンやワイバーンが空を飛び交い、周囲をシャボン玉がふわふわと浮いている。
不思議な空間、それがワンダーワールド。
「ドラゴン?そんな、空想上の生き物がどうして」
「でも、あれ、本物だよね?うわぁ、可愛い!」
「かわいい……のか?」
俺は疑問を浮かべながら周りを見る。
メギドの姿がみえない。
どこかで様子をうかがっているのだろうか?
「由比ヶ浜、雪ノ下、何が起こっているかわからない。来た道を戻ろう」
「その方がいいわね」
「えぇ、もう少し見てみたい!」
子どもみたいなことを言い出す由比ヶ浜。
まぁ、何も問題がなければみていても楽しいだろう。
しかし、ここはそんな優しい世界じゃない。
メギドが無理やり現実世界とワンダーワールドを接続したというのなら異変が徐々に起っていく。
これだけのことを仕出かしたのだから京都へ来ている尾上さんが気付くかもしれない。
それまでは二人を安全なところへ避難しよう。
だが、事態は俺が思う以上に進んでいたらしい。
遠くから悲鳴が聞こえた。
「今の、悲鳴?」
「な、なんだろう」
怯える由比ヶ浜。
雪ノ下は表情を変えずに前をみる。
逃げ惑う人たちを追いかけるシミー。
ワンダーワールドに取り込まれた人たちは逃げるしかない。
「二人とも、こっちだ」
シミーは幸いにもこちらの動きに気付いていなかった。
今なら逃げることができる。
二人の腕を掴んで茂みの方へ隠れた。
「ヒッキー、何がどうなっているんだろう」
「……さぁ、な」
誤魔化すようにいいながら自然と手がポケットに隠しているワンダーライドブックへ向かう。
どうしようというんだ。
俺一人で異変を解決できるのか?
「お、おいしそうなにおいがすると思ってきてみれば!」
バキバキィと木々が倒れる音がして、顔を上げると転がるように怪物が現れた。
いや、違う!
「さ、猿!?」
「なんで……」
「なんだ?まだ、こんなところに人がいたのか」
「二人とも逃げるぞ!」
首をコキコキ鳴らしながら猿の怪物は手の中の棒を構える。
「まずは一人っと~」
由比ヶ浜の悲鳴。
気付けば俺は宙を舞い、地面へ叩きつけられてしまう。
「ガハッ!」
受け身をとることもできず、全身を激しい痛みに襲われる。
「ヒッキー!」
「比企谷君!」
少し離れたところに二人の姿が見える。
あの棒が伸びて空へ投げ飛ばされたのだろう。
痛みで顔を歪めながらも頭は冷静に動いていた。
メギドだ。
ワンダーワールドに京都の一部を無理やり接続したんだろう。
このままだと、この場所はメギドの作り出そうとする世界に侵食される。
尾上さんがくれば。
待て、なんで俺は尾上さんを頼るんだ?
俺に戦う力だってあるだろう?
それなのに……。
「ヒッキー!ヒッキー!」
「ダメ、ダメよ……由比ヶ浜さん」
倒れている俺に駆け寄ろうとする由比ヶ浜を必死に止める雪ノ下。
今、駆け出してしまえば猿の前へ出ることになる。
そうなれば、猿の餌食になるのは由比ヶ浜だ。
まだ、冷静な雪ノ下はその状況をわかっているから必死に彼女を止めている。
俺の目は泣いている由比ヶ浜の姿が写った。
「あ?」
メギドがこちらをみる。
「……」
「お前、まだ動けたのか?頑丈な奴だなぁ、これは楽しめるかぁ?」
「ヒッキー……?」
「比企谷君?」
あれ、俺、なんで立っているんだ?
困惑しながら俺は顔を上げている。
こちらをみているメギド。
呆然とした表情でこちらをみている由比ヶ浜と雪ノ下の二人。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
手が制服の中へ伸びてドライバーを取り出す。
覇剣ソードライバーを装着する。
「それは、聖剣!お前……剣士かぁ!」
メギドが俺のドライバーをみて、驚きの声を上げた。
非常時だ。
「剣士?」
「比企谷君、貴方、何を」
二人がみているけれど、二人を守るために俺は変身することを選ぶ。
片方の手でワンダーライドブックを開く。
【かつてから伝わる不死鳥の伝説が、今現実となる】
覚悟を決めろ。
本を開いた以上、俺は変身しなければならない。
変身した姿を見られたら後戻りはできない。
いや、あいつらを失うわけにいかないんだ。
ならば、今の俺にできることは!