柚瑠「どうも、乙野柚瑠です。ライバルかぁ……たしかにそういう関係の人がいたら、色々頑張ろうっていう気になるよね」
政実「そうだね。まあ、自分自身は本当にまだまだだけど、いつかそうやって切磋琢磨し合える仲になれるような相手と出会えたら良いなとは思ってるよ」
柚瑠「ふふ、そっか。さてと、それじゃあそろそろ始めていこうか」
政実「うん」
政実・柚瑠「それでは、第二話をどうぞ」
陸斗さん達の息子さんである柚希君と会う予定の日、陸斗さん達が用意してくれた服に着替え、身嗜みにおかしなところがないかを確認していると、その様子を見ていた
「柚瑠君、そんなに確認しなくても大丈夫ですよ。身嗜みはしっかりとしていますから」
「そ、そうですか……?」
「うむ。それよりもその緊張を早く解しておけ。変に緊張をしている方が怪しく見られるぞ?」
「あはは……それはわかってるんですけど、陸斗さん達が頑張ってる中、僕が変な事を言ったり動揺したりするわけにはいかないと思って……」
「まあ、気持ちはわかるがな。じゃが、お主は今は一人の幼子じゃ。今回は儂らは手助け出来んが、何かありそうな時にはシフル達も助けてくれるのだから、あまり心配せずに行くと良い」
「景光さん……わかりました」
景光さんの言葉に頷きながら答えていた時、部屋のドアがコンコンとノックされ、僕がドアをゆっくりと開けると、そこには外出の準備を終えたらしい陸斗さん達の姿があった。
「柚瑠、準備は出来たか?」
「はい。天斗さん達はもうあちらに着いているんですか?」
「うん。さっき、連絡があったよ」
「それならそろそろ行かないといけませんね」
「そうだな。それじゃあ……明志さん、景光の爺ちゃん、行ってくるな」
「はい、行ってらっしゃい」
「留守は儂らがしっかり守っておるから、安心して行ってくると良い」
「わかりました」
「それじゃあ、行ってきます」
それに対して明志さん達が頷いた後、僕は部屋を出て陸斗さん達と一緒に歩きだし、そのまま玄関に向かう。そして、玄関のドアをゆっくりと開けると、そこにはにこにこと笑うシフルさんの姿があった。
「皆さん、おはようございます」
「あ、おはようございます。シフルさん」
「天斗さん、おはようございます」
「おはよう、兄さん。柚希の調子はどうだ?」
「健康面精神面共に良好です。ただ、少し緊張しているみたいです」
「まあ、そうだよな。アイツからしたら、俺達は初めて会う相手だし、一応アイツの方が立場は強いとしても性格的に緊張するか」
「そうですね。とりあえず今は家の中で待ってもらっているので、そろそろ参りましょうか」
その言葉に揃って頷くと、シフルさんはゆっくりと背後を向く。すると、シフルさんの目の前に突然銀色に輝くドアが現れ、僕は心から驚いた。
「え……ド、ドア……?」
「ふふ、こんな物が突然出てきたら驚きますよね」
「兄さんはこうやって色々な場所に瞬時に移動出来るんだよ。だから、このドアをくぐったらすぐに下界の俺達が住んでいた家の前に着くはずだ」
「そ、そうなんですね」
「さて、それでは参りましょうか」
その言葉に頷いた後、僕達は靴を履いて外に出てから銀色のドアをくぐった。すると、目の前には緑色の屋根に茶色のドア、少し広めの庭などがある大きな家があり、僕がその家をボーッと眺める中、陸斗さんと七海さんは懐かしそうな様子で話し始めた。
「……俺達が死んでからまだそんなに経ってないけど、この家がなんだか懐かしく感じるな」
「そうだね。つい二ヶ月前くらいまでは柚希と一緒にここで暮らしてたわけだから」
「陸斗さん……七海さん……」
「さて、それじゃあ早速我が息子との再会と行くか。柚瑠、今から俺は
「わかりました」
「よし……それじゃあ行こうぜ、みんな」
緊張しながらも僕は七海さんと一緒に陸斗さんの言葉に頷く。そして、シフルさんがスッと玄関の前に立ち、ゆっくりとドアを開け始める中、僕の心臓がドクンドクンと大きな音を立てていると、僕の手が突然優しく握りこまれた。
「え……?」
それに驚きながら視線を向けると、七海さんがにこりと笑いながら僕に視線を向けていた。
「七海さん……」
「大丈夫。たしかに緊張はするかもしれないけど、柚希は悪い子じゃないし、気遣いなんかも出来る子だから、何かに気づいても騒ぎ立てるような事はしないはず。だから、今から同い年の子に会うくらいの気持ちでいても大丈夫だよ」
「……はい、ありがとうございます」
「どういたしまして」
七海さんと笑い合った後、完全に開けられたドアをくぐってシフルさんと陸斗さんが家の中に入っていくのに続いて僕達も家の中に入っていった。
「柚希君、ただいま戻りました」
「はーい」
家の中に向けて言ったシフルさんの言葉に対して返ってきたのは、僕と同じくらいの幼い子供の声だった。恐らくこの声が柚希君の声なのだろう。
でも、なんだか不思議だなぁ……柚希君の声は初めて聞いたはずなのに、どこか懐かしくて落ち着くような感じがする……。
そんな事を考えながら廊下を歩いていくと、シフルさんは穏やかな表情のままでリビングのドアを開けた。そして、そのまま中に入っていくと、リビングの中央にある五人分のお茶が載せられたテーブルの横にはとても同い年とは思えない程落ち着いた一人の男の子の姿があった。
短い黒髪に雪のように白い肌、幼い子らしい
この子が柚希君……でも、やっぱり不思議だ。初めましてのはずなのに、初めましてじゃないような感じがする……?
僕がそんな事を考え、柚希君も僕を見ながら少し不思議そうな表情を浮かべる中、シフルさんはにこりと笑いながらその子に話しかけた。
「お待たせしました、柚希君。一人で待っているのは退屈では無かったですか?」
「あ……いえ、大丈夫ですよ。そんなに待っていたわけじゃないですし、一人の時間というのもたまには良い物ですから」
「ふふ、そうですか。さて、それでは紹介しますね。こちらが私の友人で乙野陸久さんと乙野南海さん、そしてお二人のお子さんである乙野柚瑠君です」
「初めまして、柚希君」
「柚希君、初めまして」
「は、初めまして……」
「……初めまして。遠野柚希といいます。どうぞよろしくお願いします」
僕達の挨拶に対して柚希君は優しい笑みを浮かべながら答えていたけれど、その笑みはどこか哀しそうな物であり、波動にもそれがしっかりと現れていた。
でも、それは仕方ないと思う。柚希君からすれば僕達は赤の他人で、柚希君にとって思い入れのあるこの家に住もうとしている人間達だから。そして、柚希君が望んでももう手に入らない家族の形を目の当たりにしているのだから。
……正直な事を言えば、もう全部柚希君に話してしまい、柚希君には陸斗さん達との幸せな日々を取り戻してもらいたい。
でも、それは陸斗さん達への裏切りになる。陸斗さん達だってそうしたい気持ちでいっぱいな中でも柚希君の事を想ってこの決断をしたんだ。だから、僕もここはグッとこらえよう。
そう思いながら話したい気持ちを抑え込んでいると、シフルさんはにこりと笑いながら僕達に話しかけてきた。
「さて、それでは早速お話に入りましょうか。皆さん、椅子にお座りください」
その言葉に対して僕達は頷き、僕達三人と柚希君達で向かい合うような形で椅子に座る。そして、シフルさんはお茶を一口飲み、にこにこと笑いながら僕達を見回した後、静かに口を開いた。
「まず、柚希君にお訊きしたいのですが、実際にお会いしてみての乙野さん達の印象はどうですか?」
「……はい、とても良い方々だなと思いましたし、乙野さん達ならこの家を大事に使ってくれそうだと感じました」
「ふふ、それならよかったです。実際、乙野さん達はとても良い方ばかりですし、私としても問題はないと思います。そもそも乙野さん達が悪い人だと感じていたのなら、この話も最初から考えていませんしね」
「はは、そうだろうな。天斗は結構分け隔てなく接する方だけど、相手に悪意があると感じた時は初めからあまり関わらないようにするからな」
「ええ、そうですね。それでは、柚希君も正式にこのお家を乙野さん達に一時的に使って頂くという事で良いですか?」
「はい、大丈夫です。皆さん、この家の事をよろしくお願いします」
柚希君が僕達に向かってゆっくりと頭を下げる。その姿から柚希君が本当にこの家の事を大切に想っている事が伝わってきた。
……ここまでの想いがある家を僕達に使わせてくれようとしているんだから、僕達もこの家をしっかりと管理しないといけないな。
頭を下げている柚希君を見ながらそう思っていると、陸斗さんは七海さんと一緒にとても誇らしげな表情を浮かべた後、にっと笑いながら柚希君に話しかけた。
「もちろん。ちゃんと大切にさせてもらうよ。まだ会って間もない俺達の事を信用してくれた君の信頼を損ねるわけにはいかないからさ」
「そうだね。天斗さんからもこのお家を柚希君達がどんな風に大切にしてきたのかは聞いていたし、使わせてもらう私達もそれに負けないくらい大切にしていこう。ね、柚瑠」
「……うん!」
「よし、良い返事だ、柚瑠。さて……それじゃあこれから俺達がここを使わせてもらう間の事についての話を天斗としようと思うんだけど、柚希君と柚瑠はその間どうする? 正直、話を聞いていても二人にとっては退屈になりそうな気はするんだけど……」
「いえ、そんな事は……」
「そうですね……では、その間二人には二階のお部屋でお話でもしていてもらいましょうか」
「え、天斗伯父さん……?」
シフルさんの言葉に柚希君が驚く中、シフルさんは柚希君を見ながらクスリと笑う。
「こうして同い年の子と接する機会が出来たのですから、柚希君もこの機会を大切にして、色々話をしてみて下さい。一応、幼稚園でも色々な子とお話はしているようですが、その子達とはまた違ったお話を出来るかもしれませんから」
「……わかりました」
「ありがとうございます。では、お話が終わり次第報せに行きますので、柚希君は柚瑠君と一緒に二階のお部屋に行っててください」
「はい。えっと……それじゃあ行こうか、柚瑠君」
「う、うん」
返事をしてから目の前のお茶を飲み干して席を立つと、柚希君は同じようにお茶を飲み干してから席を立ち、スッと僕の横まで移動した。そして、柚希君と頷き合った後、僕は陸斗さん達に向かって静かに頭を下げた。
「それじゃあ行ってきます」
「ああ、行ってらっしゃい」
「柚希君と仲良くね、柚瑠」
「うん」
微笑む陸斗さん達に対して頷きながら返事をした後、僕は柚希君の後に続いてリビングを出て、近くにあった階段を気をつけながら上り始めた。そして二階に着くと、柚希君は壁際にあった踏み台を近くの部屋のドアの前に置き、それを使ってゆっくりとドアを開ける。
「よし、開いた。さあ、入ってくれ」
「うん」
部屋に入ると、そこには勉強机やシーツが綺麗に敷かれたベッド、多くの本が入れられた本棚などがあり、その様子からこの部屋の持ち主がきっちりとした性格なのがはっきりとわかった。
「ここは……」
「俺が使ってた部屋だ。まあ、これからは柚瑠君の部屋になるんだろうけど、本棚の本はそのままでも良いかな?」
「うん、それは大丈夫だけど、柚希君こそ大丈夫? 結構綺麗に並べられてるし、大切にしてた本なんじゃ……」
「まあ、大切にはしてるけど、ここにあるのは向こうに持っていけなかった分だし、本も誰かに読まれるためにあるわけだから、俺としては問題ないよ」
「そっか。それじゃあありがたく読ませてもらうね」
「ああ」
僕の言葉に柚希君がにこりと笑った後、僕が本棚の中の本に視線を向けてみると、本の多くに
「柚希君って、もしかして妖怪とか神様の話が好きなの?」
「ん、まあな。そういうのが出てこない話ももちろん好きだけど、俺はやっぱり妖や異国の怪物、神獣や神様といった人ならざるモノ達が出てくる話の方が好きかな。柚瑠君はどうだ?」
「柚瑠、で良いよ。そうだね……僕もそういうモノ達は好きかな。中には僕達人間に対して敵意があったりよく思っていないモノ達もいるかもしれないけど、もしそういうモノ達と出会えたら仲良くしたいなとは思ってるよ」
「そっか。なんだか俺達、結構気が合いそうだな」
「ふふ、そうだね」
柚希君の言葉に僕は小さく笑いながら返事をする。すると、柚希君は少し不思議そうな表情を浮かべながら静かに口を開いた。
「……なあ、変な事を訊くようだけど、俺達って本当に初めましてだよな?」
「うん、そうだけど……もしかして柚希君もなんだか初めましてじゃない感じがした?」
「ああ。さっき初めて会った時、柚瑠から少し懐かしさみたいなのを感じたんだ。まるで昔の知り合いに久しぶりにあったような感じの懐かしさを」
「そうだね……それに、柚希君の話を聞いた時、何故だか深く関わっていかないといけないような気がしたんだ」
「そうか……もしかしたら、俺達はお互いに覚えていないところで
「覚えていないところ……」
「ああ。まあ、正確なところはわからないけどな」
笑いながら言う柚希君を見ながら僕は柚希君の言葉について考え始めた。少なくとも、僕は今日会うまで柚希君とは会った事がないし、そもそも僕はこの間まで転生の影響で眠っていた。つまり、僕が柚希君の事を懐かしく感じるのは結構不思議な事なんだ。
……という事は、もしかしたら前世の僕が関係してるのかな? 僕には前世の記憶は無いけど、もしかしたら前世で柚希君らしい人と出会っていて、その事を魂が覚えていたみたいな事もあり得るのかも。
そう考えた僕は柚希君に話しかけた。
「柚希君」
「ん、何だ?」
「柚希君は前世ってあると思う?」
「え……まあ、あると思うけど、いきなりどうしたんだ?」
「すごく不思議な事を言うようだけど、もしかしたら前世で僕達は会っていて、その事を魂が覚えていたみたいな事ってあり得ないかな?」
「……なるほど。それなら、納得出来る部分はありそうだな。少なくとも今日会うまでお互いに会った事が無いのは間違いないし、話を聞いたのもつい最近だ。
もし、本当に前世で俺達が会っていて、こうしてお互いの存在を知った事で前世でのその出会いの記憶が呼び起こされたとすれば、納得出来るかもしれない」
「まあ、僕には前世の記憶は無いから、断言は出来ないけど、あり得るとしたらそれくらいかなって」
「たしかにな。でも、そうだとしたら本当にすごいし、俺的にはなんだか嬉しいかもしれない。本来ならもう会えなかったかもしれない二人がこうしてまた出会えたのは奇跡みたいな物だからさ」
「そうだね。だから、僕はこの出会いを大切にしたい。柚希君とは小学校での学区は違うらしいから、学校で会うのは難しいかもしれないけど、柚希君が時々でも良いからここに来て僕達と話をしてくれるだけでも嬉しいから」
その言葉を聞いた瞬間、柚希君の波動に哀しみの色が浮かび、それを見た僕はやってしまったと思った。今日来るだけでも柚希君は結構な覚悟と気持ちの整理を必要としたはずで、そんな柚希君がここに来るのは本当に難しい事だ。
それなのに、僕は柚希君になんて事を……。
自分の言葉に強く後悔し、僕はゆっくりと俯いた。すると、僕の頭に何かが置かれ、ハッとしながら顔を上げると、柚希君は優しく笑っていた。
「柚希君……」
「別に自分を責めなくて良いぞ、柚瑠」
「で、でも……」
「……お前も何となく感じてると思うけど、たしかに俺は今日ここに来るまで結構色々考えたし覚悟も決めてきた。ここは父さん達との色々な思い出がある場所で、ここに来る事でそれを思い出すと同時にもう父さん達には会えない事を実感して辛くなるからな」
「うん……」
「でも、そんな弱い自分のままじゃダメなのもわかってる。いつまでも引きずっていても俺のためにならないし、父さん達だって浮かばれないからな。たとえ、辛くてもそれを我慢して頑張らないといけないんだ」
「…………」
「まあ、ここに来れるのは年に一回、それかもっと少ないかもしれない。でも、いつかはそんな事を気にせずにここに来れるように強くなる。それが俺に出来る唯一の事だからな」
そう僕に言う柚希君の顔はどこか大人びてはいたけれど、波動からも感じるように哀しみの色は隠しきれていなかった。
……ここまでの覚悟と想いを持ってる柚希君に対して僕が出来る事は、殆んど無いのかもしれない。でも──。
「……柚希君」
「ん、どうした?」
「たしかに強くなるのは良い事だし、そんな風に考えられる柚希君はカッコいいと思う。でも、もしも何か困った事や辛い事があったら、僕にも頼ってほしい」
「柚瑠……」
「出会ってまだ間もない僕にこんな事を言われても困るかもしれないけど、これ以上君のその哀しそうな笑顔は見てられない。そんな自分を抑え込んでまで誰かに笑顔を見せたって、その人の事を完全に笑顔には出来ないと思う。気持ちっていうのは、色々なところに表れて、それは
「…………」
「だから、次会う時までには僕も強くなるよ。柚希君が何も気負わずに頼ってくれる程に」
「……そっか。それじゃあお互いに頑張らないとだな、柚瑠」
「うん」
そして、僕達は笑い合った。柚希君の笑顔や波動には未だに哀しみの色が見えたけれど、さっきよりは少しだけ本当の笑顔や嬉しさのような物が見えた気がして、僕は心から安心していた。
こう言ったからには、明志さんや景光さんにも手伝ってもらいながら色々な面で強くなろう。柚希君だけじゃなく、色々な人から頼ってもらえるような強い人間になるために。
胸の奥で静かに燃えるやる気の炎を感じながら決意を固めていたその時、部屋のドアがコンコンとノックされ、ガチャリという音を立てて開いたかと思うと、そこには優しい笑みを浮かべるシフルさんがいた。
「天斗伯父さん……話は終わったんですか?」
「はい、バッチリと。なので、そろそろ解散しようと思いまして。このままもう少しお話をしても良いのですが、お互いにこの後も予定があるかもしれませんから」
「……そうですね。それじゃあそろそろ一階に行きましょうか」
「はい。ところで、お二人は仲良くなれましたか?」
そう訊くシフルさんに対して柚希君はしっかりと頷きながら答える。
「はい。趣味も合うみたいですし、なんだか初めて会ったとは思えない程気も合うので、また会う時があったら、その時はもっと色々な話をしたいと思いました」
「僕も柚希君と話すのは楽しかったですし、もっと仲良くなりたいと思いました」
「ふふ、それはよかったです。では、そろそろ参りましょうか」
「「はい」」
揃って返事をして部屋を出た後、僕達はそのまま玄関に向かった。すると、そこには笑みを浮かべる陸斗さん達の姿があり、僕が近づいていくと、陸斗さんは笑みを浮かべたままで僕に話しかけてきた。
「柚瑠、柚希君とは仲良く出来たか?」
「うん。僕なんかよりもすごく大人びた子で、雰囲気もすごく落ち着いていたから、僕もあんな風になりたいなって思えたよ」
「そっか。それじゃあ柚瑠も色々な事を勉強しながら精神面も強くなっていかないといけないね」
「うん」
僕が頷きながら返事をし、陸斗さんがそれに対して嬉しそうに笑う中で、シフルさんは柚希君の方を向く。
「それでは、私は陸久さん達をそこまで送ってきますので、柚希君は少し待っていて下さい」
「わかりました。それじゃあ後片付けをしながら待ってますね」
「はい、お願いします」
頷きながら返事をした後、柚希君は僕の方へ向いてにこりと笑った。
「それじゃあまたな、柚瑠」
「うん。柚希君、次会う時までにはお互いに強くなろう」
「そうだな。柚瑠、強くなった俺を見て腰を抜かすなよ?」
「ふふ、それはこっちの台詞だよ」
そう言いながら笑い合っていると、その様子を見ていたシフルさんはとても嬉しそうににこりと笑う。
「……どうやら今回の出会いはお互いに良い刺激になったようですね。さて、それでは参りましょうか」
その言葉に僕達は頷き、靴を履いてドアを開けた後、そのまま家の外に出た。そして、シフルさんがあの銀色の扉を出現させている間、僕は柚希君との会話を思い返していた。
……今回の出会いはとても不思議だけど、とても貴重な物だった。結局、お互いに感じていた物について詳細な事はわからなかったけど、いつか僕達がまた出会った時にはきっと何かわかるはずだ。だから──。
「……約束した通り、強くなろう。たとえどんな真実が明らかになってもそれを受け止められるくらい強くなって、それを乗り越えた上で更に強くなる。そして、僕達側が隠している真実を柚希君が知った時に少しでも支えられるようになるんだ」
そう決意を固めながら拳を軽く握り締めた後、僕達の目の前に現れた銀色の扉を僕は陸斗さん達と一緒にゆっくりとくぐり始めた。
政実「第二話、いかがでしたでしょうか」
柚瑠「今回の話で僕と柚希君が出会ったわけだけど、お互いに感じているあの感覚の正体はいずれ明らかになるんだよね?」
政実「そうだね。まあ、かなり後にはなるけどね」
柚瑠「わかった。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします」
政実「さて……それじゃあそろそろ締めていこうか」
柚瑠「うん」
政実・柚瑠「それでは、また次回」