PSYCHO-PASS Shepherd of the Sun 作:キラトマト
#01 謎の世界
それは、僕らが渚輪区を脱出した後のことだった。僕らは船に乗って、本州をめざしているのだが、一昼夜たっても着かないからか、姫片は苛立ちが積もって、梨花に催促する。
「おい梨花、まだつかねぇのか?」
「すみません姫片さん。ナビ通りに動いてるんですが……」
なんだって? 二日間ぐらい動かしてんのにまだ着かないのか?
「まぁ梨花、ちょっと地図、見せてくれないか?」
僕は梨花に少し地図を見せてもらうが、この距離ならもう本州は見えてきているはず。そう思わずにはいられない距離であった。
「なにも間違いはない、か」
すると、突然波が激しくなり、船ごと揺れる。
「なんだよこんなときに?! 嵐か?!」
「……サン、あれ」
ひさぎが指さした方向には、少し黒がかった大きい人型の影が見える。
「ちょっとサン、あれ近付いてきてない?」
「あぁ、見間違えじゃない、確かにこちらに向かって近付いてきている……!」
「リカッチ! なんとか避けられない!?」
アドは梨花に回避命令を下すが時すでに遅し。黒い影が僕らの船を覆い尽くす。
「ん……あぁ、ここは……どこだ?」
僕が目を覚ましたのは、病院のような真っ白なベッドに、隣に点滴が置いてある個室であった。
「僕は……なんでここにいるんだ?」
なんとか思い出そうとしてみるが、船が大きな黒い影に覆われるところまでしか思い出せない。
すると、個室のドアが開けられ、桃色の髪をした老婆と、警察が着ていそうな服を着た女性が入ってきた。
「療養中のところ失礼だが、加賀美三夜くん。君は、監視官になる気は無いかね?」
加賀美三夜? 監視官? この人は一体何を言っているんだ? 加賀美三夜は恐らくだが僕の名前だろう。でも監視官ってなんなんだ? 僕は疑問に思ったことを目の前の老婆に問いかける。
「あの……失礼ですが、監視官とは一体なんなんですか?」
「まさか、知らない者がいるとはな。では常守監視官。説明してやれ」
老婆の隣にいた女性は常守、と言うらしい。彼女も監視官らしい。
「はい。監視官と言うのはですね……」
そこから、長い長い説明が始まる。なんでも僕たちは漂流していたところを救出され、この病室に寝かされていたそうだ。で、監視官っていうのは警察官みたいな職だそうだ。そしてどうやら、見つかったのは、僕とひさぎと礼音さんの三人だけらしい。しかも、ひさぎは潜在犯だそうだ。
まぁ、潜在犯でも執行官っていう職に就けることもあるのだとか。しかし疑問に思ったことが幾つかある。
「あの、すみません常守さん。質問いいですか?」
「えぇ、どうぞ」
「三人の中で、執行官とか、監視官になれた人ってどれくらいいるんですか?」
「あぁ、そのことね。調べるからちょっと待ってね」
そう言って常守さんは腕に着けた時計のようなもので検索をし始めた。
「えぇっと、まず来栖崎ひさぎさん。彼女はもう執行官になっているわ」
「えぇ?! ひさぎ、執行官になったんですか?! ッ──」
僕は驚きのあまり、急にベッドから起き上がってしまい、背中を痛めてしまう。
「大丈夫?! そんなに驚かなくてもいいのに……」
常守さんは僕のことを気遣ってくれる。
「あとは、貴方の他にもう一人、監視官適性が出ていたのだけれど、三静寂礼音さん。あの人はまだ目を覚ましていないんですよね」
礼音さんは目を覚ましていないのか……
「じゃあ、僕は監視官になることにします」
「えぇ! いいんですか?! てっきり断るかと思っていました」
常守さんが大声をあげる。
「はい。もちろんです。要は市民の安全を守る仕事ですよね? だったら大歓迎です」
「ふむ、では、本日付けで加賀美三夜を、公安局刑事課一係に任命する。では、傷も治っているだろう? 早速一係の部署に行ってもらう。いいな?」
いや、さっき痛めてたけど……と、言いたいが、恐らくこの老婆はお偉いさんかなにかだろう。反論したら、最悪クビになるかもしれない。なので、僕は
「はい、もちろんです」
そう言って、腕の端末を見ながら、一係の部署へと向かう。
こうして、僕は今日から公安局刑事課一係で働くこととなった。
「し、失礼します!」
「あなたが新人執行官?」
僕が挨拶をすると、ポニーテールの女性が僕に話しかけてくる
「は、はい、そうです。貴方は?」
「私は霜月美佳。私もつい最近配属されたばかりなんだけどね」
ほぅ、結構優しそうな人だな。周りを見渡していると、見知った顔がいた。
「ひさぎ……か?」
「サン?!」
そうか、ひさぎは執行官になったって言っていたな。僕より早く配属されたってことは先輩ってこと……だよな?
「やっぱりひさぎか! いや、ひさぎ先輩か?」
「ん? 二人は知り合いなのか」
と、髪を後ろに束ねた男性が話しかけてくる。
「いや、まぁ、色々ありまして」
「漂流していたところを救出されたというのは君たちのことなのか?」
「えぇ、まぁ、僕ら以外も、ですけど」
その他人行儀な口調で察したのか、男性は名前を名乗る。
「おっと、すまない。名前を言っていなかったな。俺は宜野座伸元、執行官だ」
「宜野座先輩、よろしくお願いします!」
「執行官と聞いて、何も反応しないのか?」
「何も、とは?」
「ふっ、これは面白い監視官が来たものだ」
どういうことだろう。執行官って、そんなに怖がられる職業なんだろうか?
「ていうか、こんなに少ないんですか? 一係って」
「違うわよ。あと四人いるんだけど、多分、自分の部屋にいるんじゃないかしら」
「四人ですか、楽しみです」
「楽しみって、潜在犯なのよ?」
「潜在犯だからなんなんですか?」
正直、潜在犯とかよく分からないけど犯罪起こしてないんだからいいんじゃないのか? とは思ったけど、口には出さない。
「はぁ……あなたも常守監視官と同じなのね……」
霜月さんは呆れてどこかへと行ってしまった。僕なんかおかしいこと言ったか?
「放っておいてやれ。気持ちの整理が必要なんだろう」
「気持ちの整理、って、何かあったんですか?」
「あぁ、そうか、君は知らないんだったな。昨日監視官が行方不明になったんだ」
「へぇ、そんなことが……」
行方不明ってだけで、そんなになるって、友達だったのかな? まぁ僕には関係ないことだけど。