PSYCHO-PASS Shepherd of the Sun 作:キラトマト
「ここが、軍事ドローン実験場ですか? なんか、思ったより質素ですね」
政府が関わってるって言うからすごく整備された場所なのかなと思っていたのだが、想像とは違い、普通の工業地域といった風貌であった。
「あなたどんな期待していたの。それより、ドミネーター使うの初めてだったよね?」
「ドミネーター? あぁ、ひさぎが持ってた銃ですか?」
「ええ、そうよ。とりあえずそれ、手に取ってみて」
常守さんはそう言って、ドミネーターを指差す。
僕はそれを手に取ると、音声が流れる。
『携帯型心理診断 鎮圧執行システム ドミネーター 起動しました 刑事課所属 加賀美三夜監視官 使用許諾確認 適正ユーザーです』
突然銃から音が流れたことにより、僕は驚く。
「安心して。その音声はあなたにしか聞こえないようになっているから」
「あぁ、そうですよね。突然でビックリしました」
「それを対象に向けると、犯罪係数がわかるの。それで対象の犯罪係数によって、モードが変わるんだけど」
「いや、そこら辺は実践で試してみます。ま、使わないことに越したことはないんですけどね」
僕はえへへ、と笑いかける。
「そんなことより、早く合流するわよ。ただでさえ遅れてるんだから」
ひさぎはそう言って、僕を引っ張ってみんなのところへと走る。
「ばっ、いきなり引っ張るなって」
「では、これより調査を開始します。各自、自分の担当監視官に拘らず、適切と判断した監視官に同行してください」
「「了解」」
そう言って、僕たち刑事課は調査を開始する。
「ったく、何張りきってんだか。たかが調査だろ?」
「そんなの、張り切ってる一係に任せとけばいいんだよ。俺らは車で待機」
一部、不真面目な者もいるが。
ふと、見知った顔を見かける。
「おっ、蓮池さんに須郷さんじゃないですか!」
「昨日の新人か。世話になったな」
「須郷、まったく。で、新人、刑事課ってのはキツい仕事なんだ。覚悟は出来てんだろーな?」
蓮池さんはそう言って僕に確認をする。
「勿論です。それと、新人じゃなくて加賀美です」
「新人くんは新人くんだろう。なぁ、蓮池」
「そうっすよ、ま、時が経ったら名前で呼ばねーこともないけどな。ハハッ」
蓮池さんはそう言うと、現場の調査に向かう。
「じゃあひさぎ。まずはこの施設の人達に聞き込みに行こうか」
「りょーかい」
「あの、ここにカムイって人はいますか?」
僕は直球でその名を出す。
「ちょバカサン! そんなやり方で見つかるわけないじゃない!」
「カムイ……? そんな人物。この実験場にいたっけなぁ……」
作業服を着た男性が奥へと入っていく。そして、その男性は戻ってくるが、「そんな人物、ここでは働いていないけど……」と言う。
「あ……そうですか。捜査にご協力頂き感謝します」
僕は礼を言い、その場を立ち去ろうとする。
だが、その直前
「ど、ドローンが勝手に……うわぁぁああ!」
奥で働いていた男性が肉片へと化す。
◇◇◇
「おっこのゲーム新作来てたんだ」
「ん? ゲームか、そこそこにしておけよ」
「分かってますよ」
口ではそう言うが、三係の監視官、錫木萌はゲームを開始してしまう。
錫木はゲームを難なくクリアしていく。そして、敵MOBを前にして一言
「死ね、ザーコ」
◇◇◇
次々と撃ち殺されていく従業員たち。
「ど、どうなって……とにかくひさぎ! 逃げるぞ!」
「……ッ、了解ッ!」
僕たちは、サボっている刑事課の人たちに警告をしに行く。
「皆さん、戦闘態勢をッ! ドローンが……無差別に人を襲い始めましたッ!」
一人、ゲームをしているメガネの子のスマホを取り上げる。
「おいメガネッ! 死にたくなかったら早くこっから降りろッ!」
僕がそう言うと彼は、すぐさま車から降りて他の執行官たちに命令を下す。
僕は彼が遊んでいたゲームの画面を見て疑問を抱く。
「おいひさぎ。これって……」
僕はひさぎに画面を見せる。
「これは……!」
ひさぎは画面を見た瞬間、何かを察したのか、一人来た道を引き返す。
「ちょ待てッ!」
僕はそれを追いかける。ひさぎはある地点で足を止める。
それは、先程ドローンの暴走が発生した場所であった。
そして、ゲームの画面と実際の現場の様子を見比べてみると、ある事実に気付く。そう、ゲームではかなりデフォルメされているものの、死体の位置と、倒されていた敵キャラの位置が一致しているのだ。
「やっぱり、やっぱりよ! 早くみんなに知らせないとッ!」
ひさぎがみんなに連絡を取ろうとするが、それより先に、常守さんから連絡が入ってくる。
「皆さん、単独行動は絶対にしないでください。執行官は監視官と同行するように! 敵の目的は……ドミネーターよ」
ドミネーター、だと?
すると、すぐ近くでドミネーターを構えている女を見かける。
「お前ッ! 単独行動は控えろと言われただろう!」
僕はその女へと走りよる。だが、彼女は動くこうとせず、ドミネーターを構え続けていた。視線の先を見ると、そこには……血を流して倒れている蓮池さんがいた。
「蓮池さん?!」
僕は急いで蓮池に駆け寄り、血を飲ませる。が、血が止まることはなく、ドクドクと溢れ出したままだ。
「おい新人……気付けろ……あいつらは……敵だ……」
そして、女が持っているドミネーターから光の玉が発射され、蓮池さんへと着弾する。すると、蓮池さんの体はみるみるうちに膨れ上がり、そのまま粉微塵になってしまう。
「えっ……?」
突然の出来事に、僕は呆然と立ち尽くしてしまう。さっき仲良く話した蓮池さんが、粉微塵に。嘘だ。ありえない。なんで僕の血が効かなかったんだ?
「お前が……お前がぁぁぁあああ!!」
僕は女にドミネーターを向けるが、
『犯罪係数54 執行対象ではありません。トリガーをロックします』
「クソがッ!」
僕は蓮池さんのドミネーターを拾い、ひさぎと一緒にその場から逃げる。
すると、車の前でへたり込むメガネの子を見かける。
僕はそれに近づくドローンをドミネーターで破壊し、彼を救出する。
「大丈夫かッ!? 仲間はどこに行ったんだよ!?」
「アイツら、先行っちゃって、俺の命令、聞かなくて……」
「助けたいの?」
ひさぎがメガネに問う。
「え?」
「仲間、助けたいのって聞いてるの」
「もちろんですよッ! でもッ……」
僕は彼の心境を理解し、三係の仲間を救出することに決める。
「ひさぎ」
「言われなくてもわかってるわよ」
三係の仲間を探していると、連絡が入る。
「し、至急応援を求む!」
そして、救難信号が腕の端末に示される。
「とにかく行くぞ! お前の仲間、助けたいんだろう?」
「加賀美……さん」
救難信号へと向かった僕達。だが、そこに居たのは変わり果てた姿の男だけであった。
「堂本……?」
どうやらこのメガネは彼のことを知っているらしい。
「堂本だよね? なぁ、返事しろよッ! なぁ!」
「やめろ。これ以上は……」
「あなたに何がわかるって言うんですかッ!?」
「分からない……けどッ!」
「コイツは……最期まで……戦ってた。これを見ろ」
そう言って彼の向いている方向を指さす。そこには、破壊されたドローンが三体、転がっていた。
連絡がかかってくる。どうやら常守さんのようだ。
「作戦は……終わったわ……至急、港に集合して」