PSYCHO-PASS Shepherd of the Sun 作:キラトマト
時を巻き戻す。この時ほど俺はこの能力が欲しいと思ったことは無かった。
「須郷、お前は……逃げろ……」
今の状況は2対3ドミネーターはフル充電だ。何とか倒せるだろう。でも、須郷を守りながらじゃ、やれるもんもやれねぇ。
「で、でもそれじゃあ堂本監視官はッ……!」
須郷の言う通りだ。今の俺の体は傷だらけで、戦闘なんてやってる場合じゃない。でも、ここで意地はらなきゃ、いかねえんだよ。
「俺を……甘く見るんじゃねぇ。部下を守んのが……監視官の仕事だ」
「でも……その傷……」
「いいから早く行けぇ!」
俺の気迫に押され、須郷はその場から退避する。
「ったく、俺ってバカだなぁ……」
その日、堂本秀一郎は、名誉の死を遂げた。
◇◇◇
常守さんの指示通り、港に集まった僕たち刑事課。ここに来たのは僕達以外は宜野座さん、常守さん、東金さん、須郷さん、青柳さんの四人だけであった。
「残りの……みんなはどうなったんですか……?」
分かりきったことだが、僕は事実を認知する義務がある。知らないフリなんて出来ないんだ。
「みんなは……もう……」
常守さんは、言いづらそうにそう答える。
「そう……ですよね」
「じゃあ堂本監視官はどうなった!?」
須郷さんはみんなに問いかける。それに真っ先に反応したのは、あのメガネであった。
「堂本さんは……間に合いませんでした……」
「……そうか、取り乱して済まない……」
そうして僕達は、多大な犠牲を払いながらも、カムイを捕まえられないまま、本部へと帰還する。
「蓮池さんを……救えませんでした……僕が……もっと早く行っていたら……」
僕は帰還途中、船内で声が出なくなるまで泣きじゃくった。
「サン……アンタは悪くない。悪くないから」
ひさぎは僕を慰めてくれるが、その言葉は、今の僕にとってはノイズにしかならなかった。
僕達は、帰還してすぐ、雛河くんが調査していたカムイのホロについて、説明を受けた。
「飛行機事故の被害者……」
「あんた、カムイに同情してんじゃないでしょうね?」
「いや、そういう訳じゃないんだけど、でも、これでカムイの顔は分かったってことですよね?」
「ええ、そうなるわねそして、それと同時に、彼の攻撃対象は医療関係の場所に限定されている」
「そこまでして何をしたいんだ?」
「……分からないけど、とにかく、このすりかえられた人達の元へ行ってみるしかなさそうね」
そして僕達は、すりかえられた人達へと向かうが、すでにもぬけの殻であった。
そして数日後、鹿矛囲桐斗を手術したという枡嵜という男の確保に成功したのだが、後日、檻の中でドミネーターを使い、殺害されてしまう。
その日、僕は怪しげな会話を見かける。霜月さんと東金さんが会話をしている。
「枡嵜は知りすぎた。母さんの秘密に触れるものは排除しなければならない」
知りすぎた? 母さん? どういうことだ?
「やっぱりあなたが……」
「俺が怖いのか?」
その問いかけに、霜月さんは無言で頷く。
「ならばその感情は誤りだ。なぜなら俺は母さんの……シビュラの申し子なのだから」
「俺の意思は社会の意思。俺の目は社会の目。順法精神を誓う以上お前は俺を否定することは出来ない」
「たとえどんなに潜在犯を嫌悪していたとしてもな」
「……要件はなに?」
「お前に調べて欲しいことがある。常守朱の祖母の居場所だ」
常守さんのおばあちゃん? それを見つけてどうするつもりなんだ? 東金さんは。
「彼女には鹿矛囲を殺す役目を担ってもらう」
は? 意味がわからない。これは……報告をするべきなのか?
いや、あの老婆も胡散臭かったし……。ひさぎには話しておくか。
そして、ひさぎに事の概要を伝える。途中、東金さんを探してぶっ殺す。とか言って走り出そうとしたが、僕が、「あの人、まだなにか裏がありそうだから、もう少し様子を見ておこう」と言うと、大人しくなってくれた。
話が終わると、僕たち二人は一係の部署へと向かって歩き出す。
一係の部署内に着くと、六合塚さんがなにかを発見したようで作戦会議が開かれていた。
「ここ最近国交相の役人が頻繁に会合を開いています。名前は、桒島浩一。23歳」
「例の飛行機事故の1週間前に転校しており、そのことが原因で色相悪化。現在は回復し、政治家をやっている」
「そして、鹿矛囲が潜伏していた港の管理会社の株主でもあった」
「クロってことですね」
僕はそれを聞いて納得する。
「彼の現在位置を。直ちに桒島浩一を確保します」
常守さんの命令とともに、桒島浩一確保作戦。アド的に言うと、『悪の役人逮捕大作戦』が開始された。