PSYCHO-PASS Shepherd of the Sun 作:キラトマト
桒島から鹿矛囲についての情報を聞き出した僕たち。そして、車に向かうとそこには、
「ひさぎじゃないか。行かなかったのか?」
そう、ひさぎが待っていたのである。
「行ったわよ、ホロの、だけどね」
「いや、そんな技術いつの間に……」
「あのメガネ……錫木とか言ったかしら。そいつがあんたの為だからって、やってくれたわ」
錫木さん……あいつ、成長したな……
「ほら、話はあとにして、早く行くわよ!」
「あぁ、すみません常守さん。ほら、ひさぎ行くぞ」
「りょーかい」
車内では、常守さんと鹿矛囲が取引をしていた。
「鹿矛囲桐斗ね? 私は公安局刑事課、一係所属 常守朱」
「シビュラは乗客ごとあなたを口封じする。それにもうすぐそこには公安が来る」
「人質を解放するなら、私があなたの望みを叶える。地下のマップデータを送るわ」
「ちょ────」
ひさぎがなにか言い出しそうだったので、慌てて口を塞ぐ。
「目的の地点まで来なさい。そこで──」
「何を考えている」
そこに、禾生局長が割り込んでくる。
「全能者のパラドクス。鹿矛囲の目的はシビュラシステムを裁くこと」
「あなたたちは免罪体質者という裁くことの出来ない例外を取り込むことで完全な裁きを実現させてきた」
「しかし新たな例外が生まれた。個人ではなく、集合体として形をなす鹿矛囲」
「彼を裁くには彼を成り立たせている存在をシビュラが認める他ない」
常守さんは局長に話す隙を与えず、矢継ぎ早に話していく。
そして、常守さんの話が終わると同時に、局長が言葉を紡いでいく。
「君は何を口にしているか分かっていない。あれを裁くには集団としてのサイコパスを計測させる必要がある。だがそうなれば──」
「集合体であるシビュラシステムも裁きを与える必要がある。それが鹿矛囲の狙いだった」
は? シビュラが集合体? シビュラって集団で行動してるってこと?
「そして集合的サイコパスを認めさせ、あなたたちをパラドクスに追い込んだ末に裁く」
「ならば余計に奴をシビュラに近づけるわけにはいかないな」
「そして都合の悪い物を見ないようにする。そんな社会でいいんですか? 禾生局長」
僕はつい、言葉を発してしまう。
「君たちは目先の目的にとらわれ事の重大さに気づいていない。集合的サイコパスを認めた社会がどのようなものになるかを」
「個人個人がクリアでも集団として裁かれる可能性のある社会。そのリスクは理解しているわ」
「でも今まで目を背けてきたその問題を直視することはあなたたちの進化にも繋がるはず」
「逆にこの問題から目を背け、鹿矛囲の処分という逃避を選ぶなら、あなたたちに未来はない!」
「君たちの御託は聞き飽きた」
「独走する気なら、君たちの刑事権限を剥奪する。そして常守、君をこの社会から抹消することも考えねばな」
「あなた個人の見解はどうでもいいと言っているの、東金美沙子!」
東金美沙子?! まさか、東金の血縁者なのか?!
◇◇◇
「本当に、いいんでしょうか?」
三係の監視官、錫木萌は苦悩していた。果たして、この爆弾を起爆させることで事件が解決できるのかどうか。
「やっちまえよ監視官」
「ふむ。では私がやるとしよう」
そう言って、堂本の穴埋めで配属された監視官。三静寂さんが起爆のスイッチを押す。
「この犠牲が、この世界の平和に繋がることを願って」
しかし、カチリ、という音が響き渡るだけで、爆発の音が聞こえない。
「ぐッ……」
うめき声とともに、隣にいた執行官が破裂する。
「誰だッ?!」
僕は慌ててドミネーターを放たれた方向に向ける。
「あなたは……!」
「酒々井元監視官か?」
三静寂監視官がその女性の名前を言う。
すると、その酒々井元監視官が言葉を放つ。
「その爆弾、喜多沢のでしょ? 喜多沢の爆弾は、こちらでコントロール出来るようになっているの」
「だから言ったのにッ!」
「ハァ ハァ もう少しで鹿矛囲が世界をクリアにしてくれる」
そう言いながら、彼女は首筋に注射をする。
◇◇◇
現場に到着した僕達は、鹿矛囲から人質の解放を知らせる連絡が来たことにより、僕らは地下線路へと向かう。もちろん、ひさぎを宜野座さんところに連れて行ってからだ。そして地下線路に到着すると、そこには東金が待っていた。
「監視官。禾生局長からあなたたちがここに来ることを聞きました。私も同行させてください」
「なんのつも──」
「少し黙ってて加賀美監視官」
常守さんは語気を強めて、僕に命令する。
「東金執行官、あなたの経歴を見ました。隠匿していた本当のデータを」
「きっかけは霜月監視官の報告書です。あなたの経歴と矛盾する部分が多々あった。それでファイルを調べ直したんです」
そう言って常守さんは僕に東金の経歴を見せる。
(監視官を五人も殺害? ちょ、これマジか?)
「監視官を次々と潜在犯へと陥れてきたその経歴。正直信じたくなかった」
「もしくは意図してやってるものでは無いと、そう思っていた」
「でも加賀美監視官の報告を受けて確信したわ。あなたは私を黒く染めたかった」
「報告、とは?」
「あなたが私の祖母、常守葵を殺害した疑いがあるという報告よ」
その言葉を聞いた東金は僕を無言で睨みつける。
そしてそこに、背後から声が聞こえてくる。
「彼女は君程度では染められないよ」
その声の主を見た東金はカッターナイフを懐から取りだす。
「ふっ、丁度いい。お前は母さんを貶める存在、ここで消えてもらう」
鹿矛囲は東金にドミネーターを向ける。そして一言
「散れ、漆黒」
だが、そのドミネーターから球が発射されることはなく、東金は常守さんが取り押さえる。
「ぐぁっ……」
「待てッ! 貴様たちに母さんを汚させるものかぁッ!」
東金は負け惜しみのようなことを言っているが、僕はそれを気にせず、常守さんと鹿矛囲に着いていく。
◇◇◇
「もうやめろ酒々井ッ!」
「来栖崎ッ!」
私は酒々井にドミネーターを発射する。そして、その弾は当たるが、神経薬を投与しているのか、気絶することはない。
「ちいぃッ!」
「もうよせ酒々井ッ!」
宜野座さんがボウガンの矢に当たるが、それを腕で弾く。
しかし、酒々井は起爆用のスイッチを取りだし、私たちを脅す。
「三係が丁寧に設置してくれた爆弾よ! あなたたちの方こそここで終わるの!」
「よせ!」
そして、爆弾のスイッチを押す直前、酒々井の体が宙に跳び上がる。
そして近くの列車から須郷が出てくる。ほんと、いいとこだけ持っていくなんて……
「間に合ってよかったよ」
「……あぁ」
そして雛河くんが酒々井さんに近寄り、脈を測る。
「大丈夫生きてる」
「よかったわね、青柳監視官」
私は青柳に労いの言葉をかける。
「えぇ……本当に……良かったわ」
青柳は今にも泣きそうな声でそう答える。