イベストを元にした話とかも描きたいなとは思ってます。ただ喧騒の掟に関しては元のままで完成されているので描くことは無いと思います。でもバイソン君は出してあげたい……
クロワッサンが女の子の家のインターホンを押すとすぐに中からドタドタと足音がした。やがて勢いよく戸が開き女の子がヒョイと顔をのぞかせた。
「あ!ゆうびんやさんのおねぇちゃんだ!もしかしてパパからおへんじがきたの?」
「その通りや!ようわかったな!」
「ほんとに!?やったー!」
少女は喜びの余り今にも飛び跳ね始めそうだった。しかしここで彼女に満足されてしまってはいけない。クロワッサンは次の一手を打った。
「なぁお嬢ちゃん、せっかくパパからお返事貰えたんや、会いに行きたいと思わへんか?」
そう言うと少女の顔が少し曇った。大方いつか帰ってくる母にバレないか心配しているのだろう。
「大丈夫、ママが帰ってくる前にここに帰ってくればただのおつかいとやってることは変わらへん。」
「でも、もしバレちゃったら……?」
震えた口調で怯えるように少女は言った。
「そん時は……うちも一緒に怒られたるわ!どや?これで怖くないやろ?」
クロワッサンの言葉に安心したのか少女の顔が明るくなった。
「ほんとに?やくそくだからね!」
「で、お嬢ちゃん。お母さんはいつくらいに帰ってくるんや?」
アパートの階段を並んで降りながら尋ねた。
「うーん、なんじかはわかんないけどだいたいゆうがた!」
正確な時間じゃないのはまだ時計を読める年齢じゃないからだろう。その事に若干の不安を覚えつつもクロワッサンは腕時計に目をやった。長針はまだ二時を指している。時間は余裕だ。
「こんなとこ誰かに見られたら通報じゃすまないよ。ほんとにバレてないんだよね?」
アパートを後にして車に乗った時、運転席のエクシアが心配そうに聞いてきた。どうもまだ不安なようだ。
「大丈夫やって、それにこんな美少女が誘拐なんかするような顔に見えるか?」
「そういう問題じゃないってば!」
そう言いつつもエクシアも元々は少女とお父さんを会わせたかったわけでそれ以上は何も言わずにアクセルを踏み込んだ。
向かうは龍門の裏市街、マフィアの巣窟だ。
最近はやりの龍門地下アイドルのアルバムが一枚、終わらない内に車は目的地に到着した。
「ここにおとうさんがいるの?」
陰鬱とした雑居ビルを前に女の子は少し怖気づいている様子だった。そんな彼女の手をクロワッサンは優しく握った。
「安心しい、うちらの会社は運んだものを絶対に落とさんことで有名なんや。お嬢ちゃんだって例外ちゃうで!」
そう言うと安心したようでぎゅっと手を握り返してきた。
事務所の前のインターホンを押すと前回とは違いボスが直々に出迎えに来てくれた。
「おう、待ってたぜ。手紙は……」
男はそこで言葉を失った。眼下に写る少女の顔を見てただ静かに涙を流していた。
「お前たち、この子をどうして……」
「いちいち往復すんのも面倒やからな、直接連れてきてもうたわ!あ、ここに来るまでちゃんとバレんように来たから安心してな。ペンギン急便の名にかけて。」
そう言うと男は人目も憚らず少女を抱き上げた。
「どうもそっとしてあげた方がよさそうだね。」
エクシアが静かに言ったので二人は男の部下に頼んで別室に移動した。
それから親子が入室してきたのは一時間ほどしてからの事だった。
「もうええんか?」
「あぁ会えただけでも大満足だ。」
そう言った男の表情はとても幸せそうであった。
「みてみて!これパパからもらったの!」
満面の笑みで駆け寄ってきた少女の手には封筒が握られていた。
「じゃあ、その子を安全に返してやってくれよ。」
男が部屋を後にしようとした時女の子が駆け寄っていって男の足を掴んだ。
「パパ!また遊ぼうね!」
「……ああ、またな。」
娘の頭を撫でる男の顔はただの親の顔だった。
「おねぇちゃんたち、きょうはありがとう!」
何事も無く女の子を家に送り届けた頃にはすでに日が暮れていて制限時間ギリギリだった。
「いえいえ、これくらいお安い御用やで!」
そう言ってクロワッサンは女の子の頭を撫でた。
「これからもペンギン急便をよろしくな!」