「これより、デモストレーションデュエルを行う」
僕が文月学園に入学して2年目……。試験召喚システムは一時的に使われなくなり、そのシステムは遊戯王デュエルモンスターズのために使われていた。
「デモストレーションデュエルでは、代表としてAクラス、Fクラスから2名ずつ出てもらう」
ちなみに、今は体育館で鉄人が授業を受持ち、2学年全員が揃ってデュエルについての授業を受けているところだ。
「この中の大半は、すでにルールぐらいわかってると思うが……。未だにルールがわからないやつもいるだろう。この授業は実際にデュエルを見てもらい、覚えてもらうためにする。……わかったな吉井?」
「だってさ、雄二」
「なんで俺に話をふるんだ……」
「お前ら、ふざけるとどうなるか、わかっているだろうな?」
はたして教師が生徒を脅していいのだろうか?
「ていうか、なんで僕たちがデモストレーションでAクラスとやらなきゃいけないんですか?普通はAクラス同士でやらせるもんじゃないんですか~」
少し嫌がってみる。実際は別にどっちだっていい。国語とか英語とか数学とか……勉強と比べれば屁でもない。むしろ選ばれて嬉しいぐらいだ。暇だったし。
「黙れ吉井。これは学力を競うものじゃないんだぞ。カードゲームにAクラスもFクラスも関係ないだろう?違うか?」
「あぁ……」
まあ、そうなんだけど……。
「バカのお前もわかってくれたか」
「バカは余計じゃないですかね!?」
「諦めろ明久。誰がどう見たって『バカ』にはかわりねぇよ」
あれ?なんだろう。周りを見ても味方がいない気がする。……泣いてなんかないよ?ちょっと、目から汗が流れてきてるだけなんだ……。
「まあ、そんなことは置いといてだな。Fクラスからは坂本と吉井が代表として出てもらう。Aクラスからは……」
「……私と優子」
「げっ、翔子……っ!」
「……手加減はしない」
雄二が逃げそうだったので、襟首を掴み阻止する。
「そんな小さな声で『マジむり勘弁して』って連呼されてもね~」
「まったく、そんなので大丈夫なのかしら」
「ああ、気にしないで木下さん」
鋭い目付きで雄二を睨み付ける。
「やるときはやるからさ」
「ふぅん。まあいいわ。アタシの相手は吉井くんだからね」
「お手柔らかにね……」
全てにおいて優秀といわれている木下優子さん……。きっと、デッキの構成もあまり無駄がないはず……。そう思うと次第にやる気がなくなってきた。
「それでは前に出てお互いにシャッフルするように」
鉄人に指示され、僕は木下さんと。
雄二は霧島さんとデッキをシャッフルする。
「……雄二?」
「な、なんだ翔子……」
「……私が勝ったら即結婚」
「なぜそうなる!?」
「雄二が勝ったら……」
「ん?なんだ?もしかして諦めて……」
「……私と幸せな家庭を築ける」
「待て!変わってねぇよな!?おい、顔を赤らめるんじゃねぇ!!」
そんな会話が隣から聞こえてくる。僕を含め、Fクラスメンバーから殺気が溢れ出したのを感じる。鉄人がいなければすぐさま処刑にしてやったものを……。
「それじゃあ、よろしくね吉井くん」
「あ、うん。よろしく木下さん」
おっと、とりあえず今は、雄二の処刑のことは考えないようにしよう。
「では、準備はいいな」
シャッフルを終え、距離をとり、四人の声が合わさった。
「「「「デュエル!」」」」
「吉井くん、先攻はあなたにあげるわ」
「それじゃ、有り難く先攻を貰うよ!」
と、言ったものの。先攻ドローなしでのスタートというのはやりづらい……。
そう思いつつ、初手の5枚を確認。
「ですよね~」
つい口に出してしまうほど、微妙な手札だった。
「……僕はモンスターをセットしターンエンド」
「あら?それだけなんだ。それじゃ、ドローするわね」
木下さんはドローしたカードを確認、その後手札の5枚の間に挟んだ。
「私は《トリオンの蟲惑魔》を召喚。なにかあるかしら?」
「なにもないよ」
「なら、このまま効果を発動!このカードが召喚に成功した場合、デッキから《ホール》もしくは《落とし穴》と名のついた、通常罠カードを手札に加えることができる。私はデッキから《奈落の落とし穴》を手札に加えるわ」
木下さんのデッキは……蟲惑魔…?いや、トリオンは結構出張できるからなぁ。まだわからないか。
「バトル!トリオンで裏側のモンスターに攻撃よ!」
トリオン → 黄泉ガエル
ATK 1600 → DEF 100
「…黄泉ガエルか。私はメインフェエズ2に移るわ。カードを2枚セットしてターンエンド」
モンスター×1
伏せ×2
手札×4
「僕のターン、ドロー。スタンバイフェイズに墓地の黄泉ガエルの効果発動!自分の場に魔法、罠がない場合このカードは特殊召喚できる。僕は黄泉ガエルを特殊召喚し、メインフェイズに移行する」
改めて、引いたカードを合わせて手札を確認。
「……あ、いけるかもしれない」
「え?」
「いくよ!僕は手札の《ビック・ワン・ウォリアー》の効果を発動。手札のレベル1モンスターを1体を墓地に捨てて特殊召喚することができる!僕は《イービル・ソーン》を捨てて特殊召喚」
二学年生徒たちの視線がなぜか強く感じられる。
「……?まあ、いいや。とりあえず、黄泉ガエルとビック・ワン・ウォリアーでエクシーズ召喚!現れろ《ゴーストリック・デュラハン》!」
「少し厄介なのが出てきたわね……」
「まだ終わらないよ」
「え?」
「まだ僕には召喚権が残っている。僕は手札から《金華猫》を召喚し効果発動。墓地のレベル1モンスターを特殊召喚する。僕は墓地のイービル・ソーンを特殊召喚!」
まだここでは終わらない!
「さらに、イービル・ソーンの効果。このカードをリリースし相手に300のダメージを与え、自分のデッキからイービル・ソーンを2体まで特殊召喚することができる。僕はリリースし、デッキから2体のイービル・ソーンを特殊召喚!」
優子 LP 8000 → LP 7700
「レベル1モンスターが、また3体も!?」
周りから、おいおいあれマジかよ?本当に、あのバカな吉井なのか!?と、聞こえる。言っておこう。これは僕の嫌いな勉強ではない。これは僕の大好きなゲームの1つなんだと!
「イービル・ソーン2体を素材にエクシーズ召喚!現れろ2体目のゴーストリック・デュラハン!デュラハンの効果によりゴーストリックカード1枚につき200ポイント攻撃力がアップしている。よって、2体のデュラハンの攻撃力は1400だよ」
「厄介なのが2体に増えたわね……。ま、別にいいわ。絶対に潰してみせる」
「それはちょっと困るなぁ……」
後ろの罠カードが《聖なるバリア》とか全体除去カードじゃないことを祈ろう。
「バトルフェイズ。デュラハンでトリオンに攻撃」
「どうぞ、何もないわよ」
「なら、ダメージステップにデュラハンの効果を発動!エクシーズ素材を1つ取り除き、対象モンスター1体の攻撃力を半分にする。僕は素材の黄泉ガエルを取り除き、トリオンの攻撃力を半減させるよ」
トリオン ATK 1600 → ATK 800
デュラハン → トリオン
ATK 1400 → ATK 800
「くっ……」
優子 LP 7700 → LP 7100
「そして、2体目のデュラハンと金華猫でダイレクトアタック!」
ゴーストリック・デュラハン ATK 1400
金華猫 ATK 400
優子 LP 7100 → LP 5700 → LP 5300
「結構ライフを削られたわね……」
「まだまだこんなもんじゃないよ……って言いたいけど、僕のデッキってあんまり動きようがないんだよね。僕はこのままエンドフェイズ。フィールドの金華猫は手札に戻る」
吉井明久
モンスター×2
手札×3
「私のターン、ドロー。スタンバイ、メインフェイズに移るわ。私は2体目のトリオンを召喚して効果を発動。デッキから《蠱惑の落とし穴》を手札に加えるわ」
「……ちょ、それはキツいかもしれない」
金華猫で墓地から特殊召喚されたモンスターの効果を発動しにくくなってしまった……。後々残すと厄介だし、できる限り処理しておきたいところ……。
「リバースカード発動《リビングデットの呼び声》。墓地からトリオンを特殊召喚。トリオンの特殊召喚時の効果は発動しないわ」
「レベル4が2体かぁ……」
嫌な汗が出てきた。
「トリオン2体を素材にエクシーズ召喚。《NO.101 S・H・Ark Knight》!」
ですよねー。ダイヤモンド・クラブキングかもとか思ったりもしたけど。
「アークナイトの効果を発動。エクシーズ素材2つを取り除き、相手フィールドにいる特殊召喚された攻撃表示のモンスター1体をエクシーズ素材とする。私はゴーストリック・デュラハンを選択する」
「……僕はその効果にチェーンして、選択されたデュラハンの効果を発動!素材のイービル・ソーンを1枚取り除き、アークナイトの攻撃力を半減させる」
S・ H ・ Ark Knight ATK 2100 → ATK 1050
「さあ、そのままじゃまだ残っているデュラハンに勝てないよ!」
「……私はカードを1枚セットしてターンエンド」
木下優子
モンスター×1
伏せ×2+リビングデット
手札×4
「ドロー。スタンバイ、黄泉ガエルを墓地から特殊召喚。……えっと、することが無さすぎる」
えっと、とりあえずダメージステップに、特殊召喚されたモンスター(僕の場合デュラハン)が効果を使ったら、蠱惑の落とし穴は発動できなかったはずだよね。
「……よし。僕は金華猫を召喚し、効果で墓地のイービル・ソーン1体を特殊召喚。僕は黄泉ガエルとイービル・ソーンを素材に3体目のデュラハンを召喚する!」
「……鬱陶しいわねぇ。まったく」
「バトル!僕はゴーストリック・デュラハンでアークナイトに攻撃!」
ゴーストリック・デュラハンがArk Knight に斬りかかった。が、その時僕は、彼女の表情に気がついた。
やばい、これ罠だ!?
「掛かったわね!攻撃宣言されたことにより、私はリバースカード《聖なるバリア・ミラーフォース》を発動するわ!」
しまった。蠱惑の落とし穴を警戒しすぎた……ッ!そうだ。別のカードを伏せる可能性を忘れてた!?
「あなたのフィールドのデュラハン2体と金華猫を破壊」
デュラハンの斬撃がミラーフォースにより跳ね返され。僕のフィールドのモンスターたちが斬り刻まれた。
「これでがら空きね?」
「そんな簡単に一掃されたら……あぁもう!僕は墓地に送られた2体のうちの1体のデュラハンの効果を発動!それにチェーンして、手札のゴーストリック・スペクターの効果も発動させる!まず、スペクターの効果!」
チェーン処理により、先に手札から裏側守備表示でスペクターが特殊召喚される。
「……なんか、カード裏からスペクターの白い布がはみ出してないかしら?」
「あぁ、まあ気にしないであげてくれないかな?特殊召喚時には相手に確認させてるし……もう、そんなに隠れる気がないんじゃないかな」
「そんなものなのかしら?」
「そんなことより、デュエル続行だよ。スペクターの効果により、スペクターを裏側守備表示で特殊召喚。その後に、デッキからカードを1枚ドローするよ。そして、墓地に送られたデュラハンの効果により、効果を発動しなかった方のデュラハンをエクストラデッキに回収する」
「あら、そんなことができるんだ。それじゃあ、いくら処理しても2体はほぼずっとエクストラデッキに戻っていくのね」
「そうだね。デュラハンの効果は『このカード以外のゴーストリックと名のついたカード』を墓地から回収する効果だから、破壊されたデュラハンの前に、先に送られたデュラハンがいればそのデュラハンは回収できるんだよ」
と、会話しつつもこれはキツい
「僕はターンエンドだよ」
吉井明久
フィールド×1
手札×4
さて、どうしよう……。
僕は嫌な汗をかいた。