ウマ娘の世界で神眼チートしたら最強だと思ってた【異世界ジェネレーター】 作:伊吹キーブイ
「っちゅーわけで連れてきたで! 安心せえ、ちゃんと自分からの希望者や!」
というわけで、目の前に並んでいるのは――。
「エントリーナンバー1! ファインモーションだよ! これが噂の日本の庶民の味、ヤキニクなんだね! 連れてきてくれてありがとう、感動しちゃった!」
「エントリーナンバー2……マンハッタンカフェです……今日は出走せず見学だけ……だったんですけど……私まで、ありがとうございました……」
濃ゆっ!
えーと、この高貴な雰囲気の美人さんが、ファインモーション。
それでこっちの大人しい子がマンハッタンカフェ?
っておい。
「エントリーナンバーってどゆこと?」
「私が説明してあげるわ」
マルゼンスキーがマンハッタンカフェの背中をさすりながら腰をおろす。
「この子たち、お礼もそうだけど、歩くんの担当ウマ娘になりたいんですって」
「えぇ?」
このタイミングで?
別にエントリーを受け付けて無いわけではないが……めっちゃ後ろ見られてる!
「さっきは何やえらいバタバタしとったしなあ、明日になってからまた声かけんのもしんどいやろ? なら、ここが最後のチャンスっちゅー話をしとったみたいでな?」
「タマちゃんさん……」
「ちょい待てなんでそうなった???」
さて、タマモクロスでちょっと間を置きつつ。
「さて。じゃあまずはファインモーションさん?」
「はい! ファインモーションだよ!」
元気だなあ。
テンション高っ!
「資料です。どうぞ」
「あぁ、ありがとうエイシン」
ちゃんと自分の目にはファインモーションのデータが見えないように渡される。
さすが、きっちりしてる。
ところでエイシンはそのポジション定位置?
気に入ってるの?
「ん? 今、庶民とかって言ってたけど、結構良い所のお嬢さん?」
「あ、私、アイルランドからの留学生なの! 向こうでは……まあそれなり、かなー?」
なるほど、実家については触れられたくないと。
まあ、気にしないし言いたくないなら別に良いかな。
「ほう、留学生! 日本語上手だねえ」
「うん! 私、日本大好きなんだ! 特に日本の食べ物! 美味しいものがいっぱい! スシ! テンプラ! ヤキニク! だから今日夢がひとつ叶っちゃった! ただお肉を焼いて食べてるだけなのにこんなに美味しいなんて、不思議だね!」
お手軽な夢だなあおい。
ただまあ、確かに。
高級料理店でオシャレなソースをかけたような肉なのとはまた全然違う美味さがあるわな。
「でも、私はレースのために留学してることになってるから……結果を出さないと連れ戻されちゃう。だから私は、早くトレーナーさんを見つけて、勝たせてもらわないといけないんだ」
決意に満ちたその目。
そこには確かな覚悟とやる気の炎が――。
「日本のラーメンを全種類食べ尽くすために!」
「結局食欲かいッ!」
えっ、まさかの食いしん坊キャラ!?
この上品な見た目で!?
オグリキャップだけでお腹いっぱいなんですけど!
色んな意味で。
「でも、選抜レースじゃなかなか結果を残せなくて……だからチャンスがあればモノにしたいなって!」
「チャンス?」
資料に書いてある今日のレースでの順位は……五位か。
確かにそんなにアピールできるタイミングではないと思うが――。
「うん! 私おっぱいがそんなに大きくないから諦めてたんだけど、別にあんなにバインバインじゃなくても大丈夫だって聞いたから! 私でもイケるかなって!」
「そうだね? そこを基準にしたことは一度もないね? 他にも色々あると思わない? 足とかさ」
「……足フェチ?」
「え、なに俺そんな好色な風に見られてんの? 結構実力派アピしてきたつもりなんだけど」
資料的には……ふむ、確かに留学するだけのことはある。
「ポテンシャル自体は悪くない。勝負勘もある。問題は……作戦と、敢えて言うなら精神力か。どうペース配分をして、どこで仕掛けるかに迷いがある。あとは周りに影響されすぎて自分の走りが出来てない。なるほど、トレーナーを欲しがるわけだ」
ふと、気配を感じて資料から顔を上げると、エントリーナンバー2のマンハッタンカフェがめっちゃ至近距離で顔を見つめていた。
「うおっ!?」
「はぁ……その眼、素敵……」
うっとりした表情で顔を……いや、目をじっと凝視して離れない。
ぼそぼそとしゃべっているのに何故かハッキリ耳まで届く。
「カフェちゃん、どうどう」
マルゼンスキーにズルズルと元の位置まで引っ張られるも、その間ずっと目が釘付けになっている。
こわっ。
「えーと、マンハッタンカフェさん?」
「はい……神様」
「神様!?」
いや、流石に異世界ジェネレーターのことを言ってるわけでは無かろうけど。
また別の意味で濃ゆい!
あとファインモーションとの温度差、風邪引くわ!
「はい……全てを見通す神の目を持つおひと……私の全てを分かってくれる、唯一無二のひと……」
んん?
今までの子は資料に書かれた内容を介して神眼の片鱗を見ていた形だが、この子はマジで目の方から直接異常性を読み取っている……?
どうにも今までの子と毛色が違う。
「え、俺の目そんな何か見てわかるような何かなってるの?」
「はい……すごくピカピカしていて、神々しいです……」
「えっ!? マジで!? エイシン、そうなの!?」
近くにいたエイシンフラッシュにも見てもらう。
あ、顔近っ、美人だなあ……おっと、違う違う。
「いえ、私には普通の目に見えますけど……少なくとも光ってたりとかはしないかと」
「ふふ、他の子には分からない……でも私には、私だけには分かる。そして、私のことも、この人だけは分かってくれる」
あっ、これやべー案件だ。
何も聞かずに外から見ると、黒い髪のクールかわいい美人だけど……ヤバい系のデレのやつだ。
それに、神眼の異常性自体を感じ取っている、なんかちょっと霊感的なのがある子なのだろうか。
……なんか肩に影が観える気がするけど深くツッコむのはやめておこう。
「あっ、ごめんなさい。目の前で見ちゃったら、つい……。そんなに怖がらないで下さい。何も酷いことしたりしませんから、絶対です。誓います」
怖がってるのバレてるー!?
本当にこちらのことも分かるのか……?
いや、でもまあ、悪い子ではない、かな?
今も、本当に申し訳無さそうにして、危害を加えるとかそういうつもりでないことがはっきり伝わってくる。
その代わり、うっとり頬を赤らめながら……めっちゃ見てくる。
穴が空きそうなくらい、めっっっちゃ見てくる。
「まあ、熱意はこれ以上ないくらい伝わったけども……」
「あの、でも私もそんなにおっぱい大きくなくて……大丈夫でしょうか? あ、そうだ……! その代わりいくらでも触って良いですっ。お好きなようにしていただいて良いので、だから、お願いします」
「まてまてやめろやめて女性陣の目がほんと怖いことになってるから一旦ステイ」
何? 胸の話しないといけないみたいなノルマでもあるわけ?
ファインモーションさんもマンハッタンカフェさんも。
いい加減おハナさんあたりの目がもうほんと変質者を見る目だから。
ちなみに、マンハッタンカフェのは確かに他と比べると……ではあるが、別に無いわけでは――。
あ、違うんです何も強要してないんです信じてください通報しないでスマホ一回仕舞ってお願いします。
「す、すみません……興奮しすぎてしまいました。でも、それくらいの気持ちなのは、本当です。神様のお役に立ちたくて……」
なんだろう、スーパークリークと言ってること同じはずなのに全然違う。
「うん、まずその神様ってのやめようか一旦ね? トレーナーね?」
「あっ……はい。ありがとうございます……!」
とにかく執着がやばい。
まだ何もしてないのに。
触って良いって言われて嬉しいけど嬉しくないなんだこれもう、わけわかんねーな。
刃物やら監禁やらの方面には心配無いって出てるけど、信じていいんだよな?
大丈夫だよな?
何がヤバいって、ここまで走りの話が一切無しで目の話しかしてない。
「……歩さん、歩さん。言質とられてますよ」
「えっ? ……ハッ!」
トレーナーと呼べって言ったってことはもう担当するって言ったようなものだって?
まさかあれやらこれやらは動揺させるための作戦……!?
「あっ、いえ、ごめんなさい。呼び方を訂正してほしくて勢いで言っちゃっただけなのは分かっているので、大丈夫です。変な呼び方してしまってすみません。ええと、では私も、歩さま……歩さん、と」
……いい子だった!
一瞬何か聞こえたけど気のせいな、うん!
「ちょっと」
振り向くと、神妙な顔でおハナさんに背中を叩かれた。
ここまで静観していたが、流石に口を挟まずにはいられなくなったようだ。
「ここは外だからね? わかってる? あまり学園の評判を下げるような行いをしないようにしなさいね?」
「あ、はい……」
「すみませんでした……」
おハナさんに叱られて俺とカフェで揃って頭を下げといた。
事ここにきて何故俺までとは言うまい。
「それにしても凄いわね。初日で五人も担当するなんて、流石天才さんってところかしら」
「あー、普通はしないですか」
「ええ、異常だわ。私のチーム、リギルでも今は入部テストをしないといけないくらいだけど、実績のない新人の頃は四苦八苦したものよ」
「入部テスト?」
そういえば、アニメの第一話。
スペが日本一になりたいって言って笑われたあたりのやつ、あったなー。
あのレース、あれで一気に引き込まれたと言っても良い、素晴らしい走りだった。
「ええ、入部希望者に意気込みを聞いたり、レースをさせて走りを見たりして、どうするか決めるのよ」
「なるほど……」
ぐるりとひとりひとりを見渡す。
こちらの世話をする機会を狙っているスーパークリーク。
側で秘書みたいな顔をして時間を気にしているエイシンフラッシュ。
一連のやりとりを面白そうに見ているマルゼンスキー。
自分のアピールタイムを取られて不服そうなファインモーション。
そして、何かを察したのか不安そうなマンハッタンカフェ。
「ふむ、やりますか」
「え? やるって何を――」
「ん? 決まってるでしょ」
困惑するスーパークリークを見て、宣言する。
「入部テストだ!」