ウマ娘の世界で神眼チートしたら最強だと思ってた【異世界ジェネレーター】   作:伊吹キーブイ

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千川ちひろ

「改めまして、千川ちひろと申します。役職としては、歩さんの専属アシスタント……まあ、秘書のようなものだと思っていただければ結構です。普段は本社の方にいるので、用事があるときはいつでもお呼び出し下さいね。給料は社長……歩さんのお父様から頂いているので、お気になさらず。何か他に質問があれば、遠慮なくどうぞっ」

 

 笑顔で手を合わせるちひろさんを前に、チームの面々がそれとなく顔を見合わせる。

 

 チームレグルスを結成し、部室をもらうことができたその日。

 久々に学園に顔を出したにもかかわらず、部室に最低限の机やら椅子やら冷蔵庫やらテレビやら、既に色々と揃っていたのは、この人の手腕らしい。

 

 千川ちひろ……完全に他作品だった別のゲームのナビゲートをしてくれる、ウマ娘におけるたづなさんポジションのひと。

 それが何故この世界にいるのか……割と本気で謎。

 見た目は件のアイドルゲームと同じく、蛍光グリーンの事務服にネームプレートで「ちひろ」と書かれている。

 髪型も、俺の知っている通りの編み込んだサイド三編みとなっている。

 かわいい。

 

 仕事ができる女性……ということでたづなさんと競合するかと思ったが、経費やら何やらの手続きが分かっていてすごくやりやすいということて、泣いて感謝していた。

 いつもお手間かけてすみません。

 

 そんなわけで、部室で改めて挨拶していた。

 ちひろさんを取り囲む形で。

 

 最初は「うっわかわいい」くらいにしか思っていなかったが、この圧の中涼し気な顔で笑っていられるあたり、なかなかの傑物なのは間違いない。

 

「それで、歩さんとはどのようなご関係なのでしょうか? お仕事ではなく、その、今までは」

 

「あら、ふふっ。心配なさらなくても、初対面ですよ」

 

 ちらりと視線があつまったので、頷いて同意をしておく。

 いや、知ってるかどうかでいうと名前も容姿も完全にあのゲームの人なのだが、ぶっちゃけそのせいで更に謎が深まってるまである。

 本人に「なんでアイドル事務所じゃないんですか?」と聞くわけにもいかないし……っていうか、それ以前にそもそもゲームが違うし。

 

「でも、私は歩さんのことは幼少の頃から一方的に存じておりまして」

 

「えっ?」

 

 全員で揃って頭を捻る。

 

「直接のやりとりをしていたのは、ご両親とでして……歩さんの、ウマ娘さんを見る才能をどう活かしたらいいかと、知人だった私に相談をされたのがきっかけですね。商品化やブランド立ち上げの相談や、レース予想の情報等を買い取っていました」

 

 初耳なんだが?

 いやまあ、ざっくりと知らない間にあれこれしてたのは聞いたとはいえ、詳細は知らないからなあ。

 

「レース予想の情報?」

 

「はい。主な用途は、ウマ娘専門雑誌の編集部さんに売ったり、新聞記者さんやその他この情報を必要としていた色々な方々にお渡ししておりました。守秘義務のために詳しくは話せませんが……」

 

「え、じゃあ情報屋みたいなことをしてたってことですか?」

 

「そこまで大層なものではありませんが……写真なんかを記者さんにお売りするのと似たようなものですよ。その他にも、情報を欲しがる方は大勢いらっしゃるということです。悪い人には渡していないので、ご安心ください。私以外にも売ってる方は多少いたようなので、そちらは与り知りませんが……」

 

 なるほど……あのとき秋川理事長が「レースの予想で儲けた」って言ってたのは、それのことか。

 現実世界でいう馬券みたいな制度がなく、どちらかというと野球やサッカー、あるいはそれこそ普通のマラソンみたいな陸上競技の観戦に近いポジションになっているが、何番人気というのがある以上、事前予想や投票があるのは間違いない。

 そもそも、犯罪でない程度の非公式の賭けはどうしたって存在するものだ。

 詳しいことはこわいから聞かないが……。

 

「しかし歩さんがこうしてトレセン学園のトレーナーさんに正式にご襲名されたことで、もうその活動もできなくなってしまいまして。私としても、歩さんのことを秘匿したまま業界にはいられないので……。こうして、社長に拾っていただき、歩さんのお役に立ちたいなと、そう思ってこの二年間準備して参りました」

 

「歩さんの役に……?」

 

 何やらワードに引っかかりを覚えているスーパークリークはともかく。

 二十歳で成人するまで待ってくれって、もしかしてそういうこと?

 いやでも確かに、会社の手伝いみたいな雰囲気であれこれウマ娘の情報とか予想のデータ渡してたわ……記憶さんによると。

 

「そんなわけでもう元の界隈にはいられないので、これからよろしくお願いしますね?」

 

「ええー……? まあ、悪い人じゃなさそうだし、正直助かるから良いけど……」

 

「ありがとうございます! よろしくお願いしますね?」

 

 うっわ、かわいい。

 ウマ娘でなく純粋な人間だから、神眼さんで読心術みたいなことはできないが、だからこそ神眼の負担なく見ることができる点は地味にありがたい。

 

 それに今更いらないですとも言えないしね。

 なんだかんだ実家の会社に世話になることもありそうだから、事務的な手続きができる人は確かに必要不可欠。

 父さんも、それを見越して会社との繋がりとして寄越してくれたんだろう。

 今のを聞く限りでは、立候補というか自分から提案した可能性もあるが。

 

 仕事ができて器量よしで人当たりも良い……愛嬌だって、うちのウマ娘たちにも劣らない。

 たづなさんとも何やらシンパシーみたいなのを感じてるのか、早速仲良くなってたし。

 

 いや、目の前のこの人が何故俺のアシスタントになったのかは分かったけど、結局それがアイドルゲームのアシスタントさんの名前と見た目なのかは何も解明されていないが……異世界ジェネレーターさん、バグったりしてないだろうな?

 

「こちらこそ、よろしくお願いいたします〜!」

 

 スーパークリークも、ひとまず温和な表情を浮かべて受けいれることにしたようだ。

 

「まあ、歩さんが受けいれるというのであれば、私も特に問題はありません」

 

 エイシンフラッシュについては、何かあれば自分が……みたいに、受け入れつつも油断しない方針にしたらしい。

 

「確かに、歩くんにはトレーナー業に集中して取り組んでもらいたいものね」

 

 マルゼンスキーは頭の中で色々天秤にかけ、その価値を認めている。

 

「わー、お友達がいっぱい増えて楽しいな! よろしくね!」

 

 ファインモーションは、聞いていたのかいないのか、分かっているのかいないのか……楽しんではいるものの、ちひろさん自身へ言うほど関心はなさそうだ。

 

「私は、歩さんの決めたことに従うだけですから」

 

 マンハッタンカフェは、相変わらずブレない。

 なんだか前よりも妄信さが顕著になってる気がするんだよなあ。

 大丈夫だとは思うが……何かあるといけない、注意はしておこう。

 

「では、早速ですが歩さん」

 

「えっ、はい?」

 

「オグリキャップさんの元トレーナーの方のいる地方のトレセン学園にいくのですよね? 先方にアポを取りまして、電車のチケットもオグリキャップさん達を含めて人数分確保済みですが、全員で参られますか? 日程は、ある程度の期間内ならいつでも大丈夫ですので。ホテルも確保して、滞在する期間は多めに取ってあるので、ごゆっくりどうぞ」

 

 いや、うん。

 仕事できる人すぎてこっわ……!

 間違いなく頼りにはなるけれども。

 

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