ウマ娘の世界で神眼チートしたら最強だと思ってた【異世界ジェネレーター】   作:伊吹キーブイ

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コロナ中寝込んでて暇だからって書いたのであとから修正するかも


小川歩の画策

 なんやかんやあって、笠松トレセンの応接室。

 

「中央から会いに来るって言ってたトレーナーって……小川歩!? あの小川歩!?」

 

「あ、はい、小川歩と申します……え、ご存知なんですか?」

 

「北原……知り合いだったのか?」

 

 オグリキャップが北原トレーナーと旧歓を暖めたのを見届けたあと、名刺を渡しながらみんなで首を傾げる。

 

 ちなみに、思うところがありフジマサマーチとウォークダンサーにも来てもらった。

 

「いや、最近の若いのは知らないかもな。昔、ウマ娘のレース環境が良くなりだした辺りで噂になってた、驚異の予想的中率を誇る謎の予想師。当時はまだ規制も緩くて、公式じゃないが、ウマ娘のレースで賭け事をしてお金のやり取りをしていた時代。色んなやつが調べ回って、しかしそれでも分かったのが『小川歩』という名前だけって聞いたな。別名『ウマ娘マエストロ』」

 

 ウマ娘マエストロってなに? 初耳なんだけどその単語。

 

 

「えっ、賭けてたんですか!? お金を!?」

 

 ベルノライトをはじめ、ウマ娘たちがやたらと驚いている。

 

 前世というか現実世界の記憶があるから俺はそこまで驚かないが、純粋な陸上競技として見ている世界観からは、あまりない発想なのかもしれない。

 

 

「もしかして、北原トレーナーも……?」

 

「い、いやいやいや! 俺は賭けたことねぇって! いやまあ賭けるだけの金がないってのもあったが……あくまで非公式のことだしな。金の有無に関係なく、当時若造だった俺にはなかなかリスキーな事だった。公式からちゃんと規制された今でも……やってるやつはやってるだろ。詳しいことは知らんが、そういう奴はいなくならないもんさ」

 

 

 フジマサマーチや周囲のじとーっとした目線に囲まれて言い訳するようにまくし立てる。

 

 

「それに賭けのためじゃなくて、本来ダービーの雑誌やらニュースやらで誰が期待できるかとかコメントするための予想だったしな。まあ、それもある時期から出回らなくなったが……」

 

「なんだかちょっと聞いたお話と一致しますね……」

 

 

 エイシンフラッシュがこちらを見ると、つられるように今度は視線がこっちに集まる。

 

 微妙な空気でフォーカスするのやめてほしいんだけど。

 

 この身体の昔の記憶だから割と曖昧だし。

 

 

「えー、当時は子供だったので……ノーコメントで。まあ、そんなことより北原トレーナーにちょっとお願いがありまして」

 

「は、はぁ……何でしょう?」

 

 いまいち距離感を掴みかねている北原さんには悪いけど――。

 

 

「ひと勝負、しませんか?」

 

 

 実験に、つきあってもらおうかな。

 

 ……とはいえ、流石にその日のうちにってわけにはいかないので、ちひろさんが手配してくれたビジネスホテルに泊まりながら、日程を調整しつつの開催となったが。

 

 

「北原トレーナーの力量をみる、という名目で。流石に何もなしに誘致というわけにはいかないので、便宜上ね。それに、本当に確かめたいこともありますし」

 

「確かめたいこと? そりゃあ……いったい?」

 

「まあ詳しくはレースが終わったらということで」

 

「はあ……」

 

 

 腑に落ちないという表情をしながらも、ちょっとした勝負形式の並走を受けてくれた北原トレーナーには感謝しないとな。

 

 そんなわけで現在、北原トレーナーに無理を言って借りた練習コースで、選手たちの着替えや準備を待っている。

 

 練習場はこの日ともう一日、一週間後にも使わせてもらえるよう予約を取っている。

 

 もし練習とかで使う予定だった子とかがいたら占領して申し訳ないと思ったが……全然空いてたらしい。

 

 練習場が予定空きまくってるって、どういうことなの。

 

 

 一応勝負ということで、人数は合わせることにした。

 

 北原チーム……オグリキャップ、フジマサマーチ、ウォークダンサー。

 

 小川チーム……スーパークリーク、マルゼンスキー、マンハッタンカフェ。

 

 この六名で、模擬レースをしてもらう運びだ。

 

 距離は中距離。

 

 エイシンフラッシュとファインは今回は応援。

 

 みんなが準備しているなか、俺はベルノをこっそり呼び出した。

 

 

「どうしたんですか? 記録と撮影なら、笠松の知り合いのウマ娘たちに手伝ってもらってるので、大丈夫だと思いますよ?」

 

 あぁ、あの……なんかガラの悪いギャルみたいな三人か……それはそれで心配がないでもないけども。

 

 なんだかんだ一生懸命手伝ってくれてるからいい子なのは分かるが。

 

 

「ここにいましたか、ジョーさん。それに……小川さん」

 

「おう、来たか。柴崎」

 

「どうも、お世話になります。柴崎さん」

 

 

 フジマサマーチのトレーナー、柴崎さんが合流した。

 

 ほぼ事後承諾の形だったのに、こうして協力してくれてるのは素直にありがたい。

 

 

「すみません、急に巻き込んでしまって。ところで、フジマサマーチさんとは話されました?」

 

「いえ、こちらとしても渡りに船というか……えぇ、マーチとは少し話しましたけど……彼女はいつも大事な出走前は集中したいというので、声はかけないことにしてるんですよ」

 

「……ふーん、なるほど?」

 

 

 これは、俺の仮説を検証するいい機会かもしれない。

 

 

「では、柴崎さん。すみませんが、次にフジマサマーチさんに声をかけるのはレースが終わったあとにしてもらってもいいですか?」

 

「え? はぁ、そりゃ構いませんが……」

 

「北原さんは、ベルノライトさんといっしょにオグリさんに活を入れてきてあげてください」

 

「はっ? いや、この走り慣れたコースで今更あいつに俺から言う事なんて……」

 

「いいですから! もし彼女が勝ったら、北原さんをスカウトするっていう約束ですから。そのことでももう一度話し合ったりして、彼女を本気のやる気にさせてください。いいですね? お願いします!」

 

「わ、わかりましたわかりましたって……うぅ、なんだか俺の都合を押し付けてるみたいで恥ずいんだがなあ……」

 

 

 ブツブツいいながらもオグリキャップのところへ向かう北原さんを見送り、柴崎さんに記録や諸々をお願いする。

 

 そして俺も自分の準備を果たすべく、クリーク、マルゼン、フラッシュの元へ。

 

 

「あ、歩さんっ!」

 

 

 皆のもとへ近づくと、スーパークリークたちがストレッチをしていた手を止めてザッと素早く整列する。

 

 ついでに汗を拭いたり飲み物を渡したりタオルと帽子で日差しをよけたりとか……俺の世話を、してくれる。

 

 どんだけやねんと思うものの、自分たちのもちゃんとした上でだから何も言えん。

 

 見事な信頼とやる気……今からやろうとしていることを考えると心が痛む。

 

 

「ありがとうクリーク。頑張ってね、応援してるよ」

 

「あらあら、ありがとうございます♪」

 

「君たちならきっと最高の走りを見せてくれるって信じてるよ」

 

「……はいっ! 頑張ります!」

 

 うっ、笑顔が眩しい……。

 俺は逃げるように隣のマルゼンに顔を向ける。

 

「ねぇ、歩くん見て見て~! どう、ブルマ似合うかしら?」

 

「あぁ、今目隠し代わりのサングラスであんまりしっかり見れないけど、マルゼンの元気な姿によく似合ってると思うよ」

 

「あ、あら……そうだったわね。大丈夫?」

 

「もちろん、みんなが頑張ってるんだから、俺も一生懸命データを取るよ」

 

 体調面はそんなに問題ない。

 だが、あえて不安にさせるために皆にぎこちなく力のない笑顔を向けておく。

 

「あまりご無理をなさらないでくださいね……?」

 

「ありがとう、カフェ。そうだな。すまない……ちょっと体調が優れなくて」

 

「あ、歩さん!? 大丈夫ですか?」

 

 みんなが心配して気遣ってくれる。

 これまでがこれまでだからな。

 俺自身に対する信頼の高さの反面、体調面に関する信頼はまるで無い。

 

「大丈夫……だけど、少し横になってくるよ。幸い、お手伝いの子が撮影してくれてるから、あとで走りは見させてもらうよ」

 

「わ、分かりました……」

 

 そう、これも実験のひとつ。

 『俺が見ていなければ』どうなるか。

 

 

「仕方ないわ……体調が最優先よ」

 

「うぅ、模擬レースも大事なのはわかりますけど、お世話したい……」

 

「あぁ、みんなには模擬レースの方を頑張ってもらいたいんだ。オグリキャップたちに、俺の担当ウマ娘の実力がどんなものかを見せて、勉強させてあげたいからね。だからみんな、俺のためにも頑張って。もちろん、無理をしない範囲でね」

 

「「「はいっ!」」」

 

 三人とも、目が燃えている。

 これだけ焚き付けておけば十分だろう。

 

「歩さん……」

 

「それなら私達が看病を……」

 

「いや、フラッシュとファインも、撮影やタイムのデータ取り、進行をお願いするよ。頼りにしてるからね」

 

 模擬レースといっても、ちゃんとデータを取ろうと思うとやることは多い。

 

 それに、その間はマジでウマ娘たちのことを考えないようにするつもりだ。

 

 かといってゲームやら漫画やらしてるのも体裁が悪いから、寝てるだけになるだろうけど。

 

 

「俺はちょっと横になって休むから、大丈夫だよ」

 

「本当に……無理はなさらないでくださいね?」

 

「あぁ、わかってるよ、ありがとう。じゃあ、みんな頑張ってね」

 

「「「はいっ!」」」

 

 

 これだけ気合が入ってれば大丈夫だろう。

 俺がいなくても……というより俺がいないからこそ、頑張ってくれるはずだ。

 その上で、俺がいなければどうなるか。

 俺はフラッシュたちにあとを任せて、その場を離れた。

 貸してもらった控室に戻ると、簡易ベッドに横になる。

 

「ふぅ……」

 

「歩さん、大丈夫ですか?」

 

「あぁ、ベルノか。うん、大丈夫。それより、北原さんとオグリはちゃんと話してた?」

 

「あ、はい。北原さんのためって、オグリちゃんはやる気まんまんです! いくら選抜レースで活躍したみなさんでも、もしかするかもしれませんよ?」

 

「あぁ、まあ……ね。それも狙いだし」

 

「……? それってどういう……」

 

「あぁ、いや。それよりベルノにもう一個お願いがあるんだけど……レース中、こっそり北原さんの様子も撮っておいてもらえるかな?」

 

「え? それはまあ、構いませんけど……いったい何故?」

 

「んー、それもレースが終わったら教えるよ。そのときは一緒に動画検証お願いね」

 

「はあ……」

 

 そう、これは検証だ。

 それにどうやらチラッと見た感じ、ウォークダンサーさんとフジマサマーチさんはお互いに相手を思い合っている。

 それがどう関与するかも、楽しみだ。

 

「まあまあ、それより俺は薬飲んで寝るから、あとを頼むよ。夕方から、撮影したのをみんなで見たいからそれもお願いできるかな?」

 

「あ、はい。わかりました。それくらいなら部屋を貸してもらえると思うので、大丈夫だと思いますよ」

 

「ありがとう。よろしく頼むよ」

 

 俺は薬を取り出して服用すると、努めて意識を沈めていった。

 彼女たちのことを夢に見る可能性もあるが……まあ、起きてるよりはマシだろう。

 

「では、私は戻りますので、ゆっくり休んで下さいね」

 

「ああ。ありがとう」

 

 ベルノが出ていくと、急に静かになった部屋が寂しく感じる。

 ともあれ、これで準備は万端。

 後は、結果を待つのみ。

 

 ……もしみんなが落ち込んでたらどうフォローするか、考えるのは起きてからの自分に任せるか。

 

 おやすみなさい。

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