ウマ娘の世界で神眼チートしたら最強だと思ってた【異世界ジェネレーター】   作:伊吹キーブイ

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スーパークリーク

 

「……おー!」

 

 まず目に入ったのは、広大な芝生。

 それもただの芝生ではなく、学校の校庭のような運動場。

 囲うようにぐるっと広い学園側からの階段を降りると、さくさくと足に芝の感触が伝わってくる。

 陸上競技のトラックのような雰囲気に、砂利ではなく芝生が敷かれているという摩訶不思議な絵面。

 

 そして何より目を引いたのは、トレーナーと思われる人たちと……頭にケモミミ、お尻に尻尾を生やした『ウマ娘』たち。

 ぴょこぴょこと動く耳と尻尾は、それが作り物ではないことをはっきりと伝えてくる。

 そしてウマ娘たちをその目に入れた途端、神眼チートが暴れる。

 

『やる気あり』

『不安』

『緊張』

『絶好調』

『調子普通』

『脚質不安定』

『発展途上。トレーニング次第』

『柔軟性○』

 

「ぬぉあっ!」

 

 情報量多い!

 神眼チートで目に入る何人ものウマ娘たちの色々な情報が入り込んできて処理が追いつかない!

 もうちょい感動に浸らせて!

 思わず目を塞いで顔を背ける。

 

「歩さん!? 大丈夫ですか!?」

「だ、だいじょーぶです……」

 

 たづなさんにベンチに座らせてもらい、なんとか落ち着いた。

 やばい、ちょっとこのチート能力に振り回されてるな。

 制御できるようにならないと、折角のウマ娘の世界を楽しめないかも知れない。

 そうだ、俺はこの世界を楽しみに来たんだ。

 こんなところでめげてなんていられない。

 

「私、理事長に報告に行かないと行けないんですけど……おひとりにして大丈夫ですか? 保健室までご案内しましょうか?」

 

「あー……いえ、ありがとうございます。ちょっと休めば平気ですので、どうぞご用事を済ませて下さい」

 

 いやだ!

 俺はここに残るぞ!

 早くウマ娘を見たいんだ!

 

「そうですか? それではまた選抜レースが終わったくらいに迎えに来ますので……ご無理なさらないで下さいね?」

 

「はい、ありがとうございます。あ、すみません。ちょっと用意してほしいものが」

「はい、なんでしょう?」

 

「サングラス的のものって何かありますか?」

 

「サングラスですね、分かりました。急ぎご用意いたします。しばらくお待ち下さいね」

 

「ありがとうございます。用事のついででいいので……」

 

 とりあえず、注視の度合いで情報量が変わる感じがする。

 なので、サングラスで視界を調節すればコントロールできるかも知れない。

 

 たづなさんがその場から離れた気配がしたので、思い切りため息をついてついでに深呼吸する。

 試しにちらりと視界をあけて目の前に見えるウマ娘たちだけを見てみる。

 

『驚き』

『何事?』

『新しいトレーナー?』

『ちょっとイケメンかも』

『興味なし』

『選抜レースに集中』

『優しくしたらデビューさせてくれるかな?』

『トレーナーとしての腕はどうなんだろう?』

 

 先程の様子を見ていたのだろう、こちらをちらちらと伺っているのが数名、我関せずも数名。

 

「ぐっ……!」

 

 やはりすぐに頭がパンクしそうになり目を覆う。

 こりゃだめだ。

 顔を覚える暇もない。

 しかしまあ、回復すれば多少は見れるような感じもする。

 目を塞いだまま、ベンチに横になる。

 とっとと回復してウマ娘の子たちを拝みに――。

 

「あの、大丈夫ですか? 具合がよろしく無さそうですけど……」

 

 む、誰かに声をかけられたようだ。

 流石にあからさまにぐったりしてたら心配させるか……いや、でもさっきちらっと見えた好感度稼ぎの下心ありの子かも知れない。

 視界を少しだけ開けて、声のした方を見る。

 

「あっ、お辛ければお返事はしなくて大丈夫ですよ、何かして欲しい事ないですか? 木陰にお連れしましょうか?」

 

 位置が悪かっただろうか、視界にまず飛び込んできたのは学生服につつまれてなお存在感を放つそのたわわなお胸。

 

『90』

 

 90!?

 でっか!

 

『さらに成長の余地あり。最低でも97』

 

 マジで!?

 いや、じゃなくて、顔よ顔。

 

 鹿毛の柔らかな印象、優しそうな顔を不安そうに歪めてこちらを見つめている。

 頭で心配そうに垂れてるお耳を見た感じ、やはりウマ娘の子のようだ。

 

『心配』

『胸から顔をそらした』

『かわいい』

『お世話したい』

『ちからになりたい』

『甘やかしたい』

 

 んん!?

 裏とか下心は無いようだけど純粋に心配だけではないというか……いや、裏とか下心かこれ?

 と、とにかく取り入ろうとかそういう邪な感情は無さそうだ。

 

「あの、冷たいお茶、いかがですか?」

「あ、ああ……ありがとう。いただくよ」

 

 ゆっくりと身体を起こして、差し出されたコップを受け取ろうとする。

 

「あっ、無茶しちゃダメですよ。飲ませて差し上げますから、じっとして下さい」

 

「えっ、いや、流石にそれは……」

 

 コップを受け取ろうとする俺と飲ませようとするウマ娘さんですったもんだして余計に疲れたかも知れん……でもまあ、冷たいお茶を飲んで楽になったのは素直にありがたい。

 

「助かったよ、ありがとう。君は、今日出る予定の子? 高校生?」

 

 お胸の大きさをさておいても、なかなか大人びた空気がある。

 しかし選抜レースってアニメの最初の方でチーム加入のときにやってたあれだよね?

 高校生になってもやるものなんだろうか。

 

「いえ、私は今年入学したばかりで……中学生です」

 

「中一!? えっ、中一!?」

 

「はい〜、よく間違えられます」

 

「あ、ご、ごめん!」

 

「いえいえ、気にしないで下さい〜」

 

 思わず胸を二度見してしまった。

 露骨に視線を向けてしまったにもかかわらず苦笑して許してくれた、良い子だ。

 あるいはマジで言われ慣れてるのか……言われ慣れてるんだろうなあ、神眼もそういってる。

 

 しかしこれが去年までランドセル背負ってたのか……想像できない。

 

「今日からトレーナーになった、小川です。よろしく」

 

 懐からさっきの名刺を一枚取り出し、手渡す。

 変な意味はない、ちょっとまた今度お礼とかで会えたらなと思っただけだ。

 いやごめん、ちょっと変な意味だったわこれ。

 

「小川……さん? 新人トレーナーさんなんですね。あらあら、まあまあ、本当に? すごい偶然です〜」

 

「え? 何が?」

 

 俺から受け取った名刺をじっと見つめたかと思うと、にっこりと眩しい笑顔で顔をあげた。

 

「申し遅れました。私、スーパークリークって言います。クリークって、小川っていう意味なんですよ。今は小さな川でも、いずれ大河のように……っていう名前らしいです。運命みたいですね!」

 

『嬉しい』

『運命的』

『ロマンチック』

『トレーナーさんになってほしいな』

『甘やかしてあげたい』

 

 え、笑顔が眩しい!

 巨乳艦隊作りたいなとか思ってた邪な心が浄化されてしまいそうだ!

 

 っていうかちょいちょい何か変なの混ざってない? 

 

 

 

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