宝物殿の談話室。護衛の
とはいえここには……
「如何なされました!?父上!」
「いや、何でもない。思索に耽るので静かにしろ。」
――アインズはパンドラズ・アクターを改めて横目で眺め、ガックリと項垂れる。何しろこの鬱陶しいほどのハイテンションや痛々しいポージングの全ては自分が創り出した設定なのだから。
〝ほら、モモンガさん小学校卒業して、社会人2年目みたいですから。〟
まだユグドラシルの新参だった時分、かつての仲間の言葉が想起される。何を言っているのか当時は理解出来なかったが、恐らくは自分が今パンドラズ・アクターに抱いている感情と同じようなものを周りに与える行動をしていたのだろう。そう考えるとじわじわと羞恥心が込み上げ、沈静化される。
(しょうがないじゃないか!あの頃はカッコいいと思っていたんだもの!……実際軍服は今でもカッコいいと思うし。)
<
……ふと、アインズはいくつかの実験を思いつく。
「パンドラズ・アクター。モモンに変身しろ。」
「かしこまりました!!」
敬礼こそしないが歌劇学生のようなオーバーリアクションの後、グニャグニャと姿が変わり、真紅のマントを靡かせ、金と紫の紋様が入った漆黒に輝く全身鎧で身を包んだ巨躯が漆黒の双剣を構えて現れる。
「幻術を用いず、
命令が実行され素顔が晒される。そこには見慣れた三つ穴の埴輪顔があった。
(そうそう、パンドラズ・アクターは一度俺になって<
「パンドラズ・アクター、〝血の狂乱〟を発動させたシャルティアに変身しろ。」
「意見具申を失礼いたします。父上!その変化は現時点でストックに入っておらず、またこの宝物殿で変化した場合、自分で制御が行えない可能性が高く、至高の御方々の秘宝を破壊してしまう恐れが御座います。」
「ふむ。では問いを変えよう。条件が揃えば変身は出来るのか?」
「最初から〝血の狂乱〟を発動させた状態で変身出来るかは不明ですが、こちらは条件を整えた上ですので不可能だったとしても、シャルティア嬢が行うより容易に〝血の狂乱〟の発動が可能であるかと愚考いたします。」
(自分で造っておいてなんだが、相変わらずめちゃくちゃだなこいつは。)
とはいえパンドラズ・アクターが万能かというとそうでもない。例えばパンドラズ・アクターは【たっち・みー】の姿に変身出来るが、公式チートと名高い<
だがナザリックが転移したことで様々な変化が起こっている現在、アインズでさえ知らない能力や使い道を秘めている可能性がある。未知は最大の敵だ。
特にこの世界ではユグドラシルにはなかった職業クラスや、ユグドラシルとは違う習得方法が見られ、中でも<武技><
まぁそれらの実験はおいおいやるとして、今は一室で出来る実験だ。
「ではパンドラズ・アクター。最近ナザリックへやってきたあの頭のおかしい女に変身しろ。」
グニャグニャと再度姿が変わり、後ろに
「……人間だった頃に変化できるか?」
「
「ほう。では……」
段々と面白くなってきたアインズは、パンドラズ・アクターに次々と変身を命じていく。ストックに上限があるので、すぐに会いに行けるナザリックの面々が主だが、階層守護者や領域守護者、プレイアデスやペストーニャやエクレア、料理長や副料理長、果てはPOPするアンデッドまで……
「申し訳ございません。父上、そろそろMPが尽きかけております。」
「うむ。無茶をさせたな。褒美を取らせる、何か考えておけ。」
「幸甚の至りに御座います。……そう言えば父う、ああ。」
パンドラズ・アクターが一礼した時には既にアインズの姿はそこになかった。
「まぁ父上でしたらとっくにお気づきでしょう。無粋な真似をするところでした。」
そのままパンドラズ・アクターは至高の御方々の遺された秘宝に触れるべく鼻歌交じりに歩み出す。
「ハムスケ嬢に変身した際、わたくしがまさか父上の叡智を以ってしても謎に包まれる<武技>を扱えるとは! 外の世界にも興味が出てきましたね。デミウルゴス殿やラナー嬢へ色々と聞いてみましょうか。」