オーバーロード単発短編集   作:セパさん

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注)特に山無し・オチなしの会話劇です


二人の女子会

 シャルティアは自室で読書をしながら良い香りの漂う紅茶を時折口にしていた。その様子だけをみれば、花の(かんばせ)深窓の令嬢という表現がピッタリであり、〝ナザリック最強の守護者〟〝周りを時々困らせるおバカさん〟だなんて誰もが夢にも思うまい。

 

「シャルティアー!入るよー。」

 

 コンコンとノックの音が鳴り、回覧板を持ってきたアウラが入室し、少し驚いた様子で目を開く。

 

「あらチビ助、回覧板でありんすか?そこに置いておいてくんなまし。」

 

「あれ?いつもは理解してるのかわからないような難しい本読んでるのに、今日は随分趣が違うね。」

 

「喧嘩売ってんのか、ああ”!?」

 

「何々……【いい上司になるための10カ条】……。シャルティア、頭でも打った?」

 

「決定、喧嘩売ってるでありんすね。表へ出ろコラぁ!」

 

「いやいや、シャルティアにしては凄いと思っただけだよ。でも何でこんな本を読んでるの?」

 

「ドラゴンを使った空輸業務に際し、アインズ様は反逆者には容赦する必要はないが、それ以外は慈悲深く扱えと仰りんした。そしてドラゴンたちは吸血鬼の花嫁(わらわの眷属たち)と違い〝配下〟に当たらないから扱いに留意せよとも。」

 

「まぁ八つ当たりで殺したりなんてすればアインズ様は失望なさるだろうね。いい心がけじゃない。それで、具体的に勉強の成果はどんな感じ?」

 

「正直言うと下等種族の思考はわかりんせん。ただ優しく扱えばいいのかと思えばそうでもなく、悩み事を聞いたり適度に休みを与えたり……。面倒極まりないでありんす。アウラはビーストテイマーでありんす、少し意見をくんなまし。」

 

「ドラゴンにも通用するかはわからないけれど、飴と鞭の使い分けは大事だね。適度に休みが欲しいというのは……至高の41人に創造されていない憐れな存在と割り切るしかないよ。常にアインズ様へ献身する幸福もわからないだなんて本当に憐れだね。」

 

「本当、すぐ怠惰へ流れたがるものを魔導国……ひいては栄えあるナザリックになど、とはいえアインズ様のお考え、ああ、わらわもデミウルゴスやあの大口ゴリラみたいに至高の御身のお考えへ指先でも届きたいでありんす!!」

 

「そのための勉強でしょう。まずは与えられた任務をしっかりこなさないと。」

 

「いわれんでも分かっているでありんす!!」

 

「それにしても……」

 

「どうしたのチビ助?」

 

「……この本から微かにアインズ様の御香りがするような……しないような。」

 

「はぁ!?完璧を形になされたような至高の御身がこんな本読むわけないでありんしょう!」

 

「それもそうだね。わたしの勘違いだった。……で、シャルティアは〝いい上司〟になれそうなの?」

 

「なんでありんす、そのニヤニヤ顔は!ドラゴンたちとは定期的に面談し、的確な輸送運輸の指示ができるよう何度もルートやドラゴン各自の力量を見直しているでありんす。」

 

「へー、シャルティア成長したねー。」

 

「……なんか上から目線なのがムカつくでありんすが、素直に受け取っておきんしょう。そう言うチビ助はどうなんでありんすか?」

 

「超広域警戒網の運営管理機関の作成?そうだね~、どうしても暗号通信なんかを扱う機関だからアルベドやパンドラと共同して仕事してるんだけれど……最近ナザリックにきたあの頭のおかしい女がいるでしょう?あいつも頭脳労働担当だから一緒に仕事しないといけないんだけれど、わたしあの女苦手なんだよね。」

 

「ああ、ラナーでありんすか。ペットに執着する理由はわかりんせんが、中々話のわかる女じゃありんせんか。」

 

「……た、確かに二人ともわたしじゃついていけないところがあるかな。いろいろと。」

 

「ま、チビ助には1000年早い話でありんすからなねぇ。」

 

「1000年経ってもわかりたくはないかな……あはは。」

 

「ふん、チビ助が生意気でありんすね。その様子ではやはりわらわがアインズ様の寵愛を受けるに相応しい……。」

 

「はいはい、戯言言ってないの。守護者たちの仕事が増えてきた今、本来であればこうしておしゃべりしていることも不敬なんだからね。」

 

「とはいえ、アインズ様のお決めになった〝週休3時間制度〟の真っただ中でありんしょう?至高の御身がお考えになった制度に反することこそ不敬。……しかし、どうしてアインズ様はこうも我々に休みを与えたがるのでありんしょうか、まさか我々の存在が不要だと!」

 

「そんなわけないじゃん!アインズ様は優しいから忙しい中でもこうして休みをとるよう制度を整えてくださっているんだよ!実際メイドに至っては丸一日の休みがあるらしいじゃない。」

 

「丸一日御身に仕えることが許されないなど……わらわはとても耐えられる気がしんせん。」

 

「それはわたしも同じだよ。とはいえメイド達は〝アインズ様当番〟の前日だから〝休んで心身ともに万全にする〟ことが仕事だから。」

 

「アインズ様当番……ああ、なんと甘美な響き。わらわも至高の御身に丸一日付き添い学ぶ機会が欲しいでありんす。」

 

「それには同意するかな、アインズ様の一挙手一投足を学んで……いい子だって褒めてくれて、えへへへへ。そうだ!シャルティア、回覧板をみてよ!」

 

「え~なになに、〝最近となり益々多忙を極め、ナザリックの利益のため働く各階層守護者へ一日の休暇と褒美を与える。何か考えておくように〟!?」

 

「これはさ、チャンスなんじゃない!」

 

「そうでありんすね!正に降ってきたような祝福!」

 

「「アインズ様当番を是非わたし(わらわ)も!!」」

 

「……いくらシャルティアでもこの権利は渡さないよ。」

 

「ほぅチビ助がいい度胸でありんすね。」

 

 ……その後もギャアギャアと喧嘩しながら、二人の女子会は休憩が終わるまで続いていった。

 

 

 




・シャルティアとアウラの関係はネイアちゃんとシズ先輩の次くらいに大好きです。
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