オーバーロード単発短編集   作:セパさん

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あるマジックアイテムの話

 ――Cheating Massively Distributed System――

 

 俗に【ゴーストプレイツール】とも呼ばれ、本来プレイヤーが行うべき操作をAIに記憶させて自動狩り・簡単なPKやPKK・自動生産を行わせたり、アイテムの湧くマップなどで目的の品を自動入手、一定数を超えると強制ログアウトとなる脳内ナノマシーンの脳外排出量データを操作する、いわゆる【効率プレイ】を行う違法チートツールの1つだ。

 

 ログインさえしていれば寝ている間だろうが、片手間で別の遊びをしていようが後は勝手に動いてくれるので、単純なレベル上げやアイテムの素材集めを目的として数多のDMMORPGで悪用されている。ユグドラシルも例に漏れず、アカウントBANを覚悟で使用している猛者(おろかもの)が少なからず存在していた。

 

 もちろん運営に発見されれば問答無用で公式ホームページ上に違反者の個人情報を公開の上アカウントを抹消され、他のDMMORPGを運営する他社にも注意喚起として情報が渡り、使用した愚かなプレイヤーは二度とネット世界に入る事が許されない。下手をすれば現実世界(リアル)で後ろに手が回る……そんな代物だ。

 

 このチートツールの厄介な点は能力値が異常に上がったり、動作が本来の許容を超えた速度になったり等の〝俗語として用いられるチート〟機能はなく、データ上では解りやすい違法性がみられない事だ。

 

 ユグドラシルはプレイヤーの自由度を謳っていた理由もあり、【異形種アバターの非可動部位もしくはNPC可動のため組んだツール】と言い訳されれば、むやみやたらに取り締まる事も出来ず、運営と違法改造ツール制作業者でいたちごっこが行われていた事情がある。

 

 しかしながら電脳法にガッツリ抵触しているだけでなく、粗悪な違法チートツールによる重篤な健康被害が問題になったことから、ガチ勢からすればR-18など比ではない――バレれば本人だけでなく、使用者の所属していたギルドやクランのメンバーにもペナルティが課される――禁忌(タブー)中の禁忌(タブー)であり、俗にいう【ギルドクラッシャー】の警戒に、各ギルドやクランの長は対応を迫られる羽目になった。

 

 気に食わないプレイヤーやギルドを〝違法改造使用者だ!〟と運営に通報するのは、結構ありがちな嫌がらせ(ハラスメント)行為なのだ。

 

 いくらユグドラシルではDQNギルドの名声?を恣にした【アインズ・ウール・ゴウン】の面々とて、一皮むけば生活のある社会人だ。違法改造ツールに手を染める愚か者など一人としていなかったが……

 

「これはまた、懐かしいものが出てきたな。」

 

 それは銀の天秤で造られ、片方の皿に小さな羽が1つ乗ったマジック・アイテム。

 

 本を正せばギルド長のアインズ(当時モモンガ)に運営から配布された【相手が〝違法チートツール使用者〟か判断するアイテム】でしかないのだが、タブラ・スマラグディナが着想し、大学教授だった死獣天朱雀が知識を提供、ガーネットが魔改造し、ヘロヘロ、ホワイトブリム、ク・ドゥ・グラースも悪乗りしてプログラミングに協力し改造を重ねた結果、独自の進化を遂げたマジック・アイテムだ。

 

「シズ……いえ、ガーネット様の部屋より発見された代物であり、シズでも用途が解らず、我々では手が付けられないと恥ずかしながら御身の手を煩わせる判断をいたしました。」

 

 臣下の礼をとるのはユリを筆頭とするプレイアデス達。てっきり宝物殿あたりに仕舞ったと思っていたが、ガーネットの研究室に眠っていたらしい。

 

「そう恐縮するな。報告はとても大切だとルプスレギナにも散々言っていることだからな。」

 

「御多忙を極める御身を煩わせるわたしたちを御赦しください。」

 

「なに、今日は偶然時間が空いていた、その幸運に感謝……」

 

 その瞬間、天秤の片方……空の皿がカツンと音を立てて傾いた。その瞬間、アインズの自律神経――そんなものないが――が乱れて内心が冷や汗で濡れる。

 

 ……このマジック・アイテムは簡単に言うと【嘘発見器】であり、偽りの言葉を話すと天秤が傾くように構成されている。

 

 つまり、常に暇であるアインズが〝今日は偶然暇だった〟の言葉に反応し、起動してしまったわけだ。プレアデスたちは自分たちの前では何一つ起動しなかったマジック・アイテムの挙動に大きな関心を示している様子だ。

 

「こ、これは言霊を計るマジックアイテムだ。言葉には魂が宿る、その重さを……計測するマジックアイテムだったはずだな。」

 

 アインズが噓八百を並べている間も、天秤はカツンカツンを音を鳴らし続けている。これが【嘘発見器】だとバレれば今まで築き上げた支配者ロールの全てが台無しになりそうだ。

 

「そんな……では私たちの忠誠の言葉は、御身に届くことの無い紛い物であったと……。」

 

(ああああ!そっちに話が行っちゃうか!)

 

 プレイアデスだけでなく本日のアインズ当番である一般メイドまでもが血相を変え、慚愧の念を宿している。【言葉の重み】なんて大層なワードを使ったのは失敗だった。NPC(仲間たちの子供)の忠誠が足りないと取られてもおかしくない。アインズはがらんどうの脳内で上手い言い訳を探しだす。

 

「いや、このアイテムは我々……お前たちが至高の御方と呼ぶ41人にしか通用しない代物だ。我々の仲間である証ともいうべきか。シズ、このマジックアイテムは見なかった事にして元あった場所に戻しておきなさい。もし仲間がこの世界にきていたら使う日もあるだろう。存在についても他言無用だ。」

 

 アインズの口八丁にカンカンカンカンと警報のように噓発見器が反応するが、確かめる手段はない。これ以上はボロが出る。早々にアインズはこの修羅場を潜り抜けたかった。

 

「…………畏まりました。博士たちが戻るときに。また。」

 

 シズは恭しくアインズから【至高の41人を識別するマジックアイテム】を受け取った。アインズはなんとか乗り切れただろうかと、心の中で深呼吸の真似事をしていた。

 

 

 

 

 ●

 

 

 

「ねぇシズ。なにやら面白いマジックアイテムがあると噂に聞いたのだけれど、見ることは出来ないかしら?」

 

「…………何の話かわかりません。」

 

「そう?何でも至高の御方々の所在が解るアイテムだとか。」

 

「…………何の話かわかりません。」

 

「アインズ様が望まれる捜索隊の構想でとても大切になるなのだけれど……。早く皆を至高の御方々にお逢いさせたい、そのために必要なのよ。」

 

 シズの部屋に封印された、既に音を聞く者がいないマジック・アイテムがカツン、カツン、カツンと3度音を鳴らした。2度はシズの白を切る言葉に反応して。

 

 もう一つは……

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