内在性乖離。
それは耐え難いほどのストレスを感じたときに、潜在意識の中に「別人格」を創ることで自分を守るという一種の防衛本能だ。
辛い感情を引き受ける「別人格」にとってはたまったものではないが、その状況に耐えられるように創られているので、ある意味問題はないともいえる。
記憶も受け継いでいる。
それに耐え切れず家を飛び出したところで、また別の誰かに拉致監禁された。そしてこの状況に耐えられずに防衛本能が発動した。
そういった経緯で俺という存在が生まれたわけだ。
で、だ。
今の状況を説明すると、俺は窓もない小部屋に監禁されて
冗談と思うなかれ、これがマジな話なんだな。ゴーグルを付けて1日に3回、VR空間でAIとデュエルする。勝てば食事が豪華になり、負ければ簡素なものになる。ついでに電流も流される。
俺が体験したわけではないが、我が事のような実感がある。考えることは色々とあるが、刻限が迫っている。
VR上のデータを操作して、自身のデッキを表示する。ふむ、これはかなり混乱していたようだな。パッと見た限りでも、あまり勝てそうなデッキではない。
これを組み直す。とりあえず使えそうなカードを見つけたので、それを軸にデッキを組んでいく。
とそこでアラームが鳴った。デュエル開始の5分前だ。
時間がなかったので完成とは言い難いが、
ゴーグルをかぶると、正面にヌボーッとした黒い人影が現れた。
カウントダウンが始まる。
『デュエルッ!』
「ワタシの先攻デス。スタンバイからメインへ。《切り込み隊長》を召喚して効果を発動シマス。手札からもう1枚の《切り込み隊長》を召喚。ターンエンドデス」
AI LP4000 手札3 モンスター2 伏せ0
――――――――――――
「俺のターン、ドロー」
伏せカードはなし。切り込み隊長は、他の戦士族モンスターを攻撃対象に選択できない効果か。これを2体並べることで、相手は攻撃できなくなる……であってるよな。
「なら1体だけにすればいい。手札を1枚捨てて、魔法カード《ブラック・コア》を発動。《切り込み隊長》をゲームから除外する」
突然現れた黒い穴に剣士の1体が吸い込まれていく。これでロックは崩れた。
「コストで墓地に行った《サイバー・ドラゴン・ヘルツ》の効果発動。デッキから《サイバー・ドラゴン》を手札に加える。そして《融合》発動。手札の《サイバー・ドラゴン》2体を融合する。来いッ! 《サイバー・ツイン・ドラゴン》!!」
《サイバー・ツイン・ドラゴン》
星8/光属性/機械族/攻2800/守2100
轟音を立てて現れる双頭の機械龍。凄い迫力だ。
「サイバー・ツイン・ドラゴンは2回の攻撃が可能。切り込み隊長に攻撃、続けてダイレクトアタック。ツイン・エヴォリューション・バースト!」
破壊の力を秘めた一条の光が空を裂く。それは切り込み隊長を吹き飛ばし、2度目の攻撃で相手のライフを全て削り切った。