ハノイの騎士がイグニスを狙う理由、それはイグニスが人類を破滅へ導く存在だからだと、他ならぬ本人の口から語られた。
これはまあ、ウィンディなりの信頼の証なのだろう。そう考えると悪い気はしない。
それはともかく、リンクヴレインズで新たな動きがあった。
ブルーエンジェルに続いて、プレイメーカーもハノイの幹部らしき男を倒した。上の連中が狩られ始め、ハノイの騎士も焦り出したのか最近になって動きが活発になってきている。
だがカリスマデュエリストのGO鬼塚が派手にハノイの騎士を狩っているようで、それに加えて、SOLテクノロジー社も本腰を上げてきた。
一度はハノイの騎士に壊滅させられたAIデュエリストだったが、さらに改良を加えた新型を投入することが発表された。
その成果はあったようで、徐々にハノイの騎士は姿を消していった。
「実際はそうでもなさそうだがな」
「ん?」
「別に。どうでもいいことさ。データも取れたしな」
「ふ~ん。公式的にはハノイの騎士は完全に排除したとなっているが……」
「本当にそうなら、大々的にボスをさらし者にしているはずだろ。それをやってないってことは」
「リボルバーは健在ってことか」
「そういうことだ」
ウィンディの考察は当たっていた。
束の間の平穏は崩れ去り、奴らは隠していた牙をリンクヴレインズに突き立てた。リンクヴレインズに突如出現した不気味な塔が、ネットワーク世界のデータを悉く吸い上げ始めたのだ。
「で、リンクヴレインズを閉鎖か。ま、当然の判断だな」
「むしろ遅すぎたくらいだ。だが閉鎖と銘打ってはいるが、ログイン可能なのがお粗末なところだな」
ログインは可能だが、ログアウトは不可能。入ればアバターごとデータを吸い上げられ、アナザー状態になってしまう。
「悪辣な罠だな」
「誘ってるんだろ」
「誰を?」
「プレイメーカー」
「なるほど」
影響は現実世界にも出始めている。今どきネットに繋がっていないコンピュータは稀だろう。
「サイバーテロの極致だな。1本の樹を燃やすために、森ごと焼却するつもりか」
「う~む」
ウィンディが腕を組んで考え出す。ん? 俺の喩えって的外れだった?
「僕が見たリボルバーという男は、極めて効率を重視する男だ。こんなおざなりな計画は……そう、らしくない」
「じゃあ、真の目的が別にあると?」
「おそらくはな。その上で訊きたい。おまえはどうしたい?」
「随分と気の利いた言い回しじゃないか。素直に協力してくれと言ったらどうだ?」
「今のリンクヴレインズは危険だ。自分の保身を第一に考えることは生物として正しい。僕はそれを卑怯とは思わない」
「そうか。だが俺にだってそれなりに正義感くらいはある。クラッカーどもに憤りを感じるくらいのものはな。サポートはしてくれるんだろ?」
「もちろんさ。んじゃ行くか。丁度デュエルの反応があった。こんな中でデュエルをするのはハノイの奴らしかいねぇだろ」
そこではふたりの男がデュエルを行っていた。
一人は最近ニュースでよく見る顔。SOLテクノロジー社のセキュリティ部門の新しい部長だ。名前は確か、北村。
ということは向こうの男、勝った方がハノイか。
勝敗が決した後、北村氏が赤い粒子となって消滅する。
「ログアウトした?」
「いや、データ化されて取り込まれたようだ」
「――チッ!」
ハノイの男がうろついていたマスコミらしきやつらを追い払ってくれたのは好都合だ。
「さて、そこにいる誰かさんもですよ」
バレてるか。ま、奇襲するつもりもなかったが。
「おや、あなたは確か、ドクター・ゲノムを破ったサイバース使いですね。名前はウィンドさん」
「おまえたちの狙いは何だ。こんな大規模な計画、僕たちだけを狙ったものじゃないだろ?」
デュエルディスクからウィンディが姿を現す。いや、出てくるのかよ。
「ほう。まさか本当にイグニスを持っていたとは。リボルバー様に良い土産ができました。私はスペクター、リボルバー様の忠実な部下です。あなたを倒し、そのイグニスをいただきます!」
「やってみろ。できるものならな」
『デュエルッ!』
「私から行かせてもらいますよ。魔法カード《予想GUY》を発動。デッキから通常モンスターの《
《
リンク1/地属性/植物族/攻 0
【リンクマーカー:下】
「聖天樹の幼精の効果発動。デッキから永続魔法《
《
リンク3/地属性/植物族/攻 0
【リンクマーカー:左下/下/右下】
「まだまだ行きますよ。アローヘッド確認。召喚条件は植物族の通常モンスター1体。《
《
リンク1/地属性/植物族/攻 600
【リンクマーカー:上】
「カードを1枚伏せてターンエンド。そしてエンドフェイズに、私は《ワンチャン!?》のデメリット効果で2000のダメージを受けます。しかし私がダメージを受けた時に《
スペクター LP4000 手札1 モンスター3 伏せ1
■□社□□
□剣守□□
大 □
大:聖天樹の大精霊 攻撃力0
守:聖蔓の守護者 攻撃力600
剣:聖蔓の剣士 攻撃力3200
社:聖蔓の社
■:伏せカード
――――――――――――
「私のターン、ドロー」
聖蔓の剣士の攻撃力もそうだが、他の2体も厄介な効果だな。特に聖天樹の大精霊をどうにかしないと、下手にダメージも与えられん。
後は、手札の《エフェクト・ヴェーラー》か。
「火消しの風ウィンド。過去に存在した形跡はない。ドクター・ゲノムの前に突然現れたサイバース使い。リアルの情報は何も得られませんでした。かなり高いセキュリティ意識をお持ちのようだ」
へぇ、ウィンディのやつ、ちゃんと仕事してるんだな。
(当たり前だ。僕を誰だと思っている)
――ッ!? こいつ、直接脳内に! テレパシー?
(んなわけあるか。個別回線を繋いだだけだ)
ああ、なるほど。
「おしゃべりは嫌いですか? ならさっさと進めてくれませんかねぇ」
「EXモンスターゾーンに自分のモンスターが存在しない場合、このカードは特殊召喚できる。手札から《斬機シグマ》を特殊召喚。さらに《聖蔓の剣士》を対象に、手札の《斬機サブトラ》の効果発動。このカードを特殊召喚し、《聖蔓の剣士》の攻撃力をターン終了時まで1000ダウンする。そしてこの2体でオーバーレイネットワークを構築。《塊斬機ダランベルシアン》をX召喚。X素材を2つ取り除き、効果を発動。デッキから「斬機」カード1枚を手札に加える」
「それは止めさせてもらいましょう。厄介なカードを持ってこられても面倒なのでね。手札の《エフェクト・ヴェーラー》を捨て、その効果を無効にします」
「カードを2枚伏せてターンエンド」
「エンドフェイズに《破壊輪》を発動。あなたの《塊斬機ダランベルシアン》を破壊します。そしてまずは私がそのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを受け、その後、私が受けたダメージと同じ数値分のダメージを相手に与える。そしてダメージを受けたことで《
ウィンド LP1700 手札2 モンスター0 伏せ2
■:伏せカード
■:伏せカード
■□□□■
□□□□□
□ 大
□□守剣剣
□□社□□
大:聖天樹の大精霊 攻撃力0
守:聖蔓の守護者 攻撃力600
剣:聖蔓の剣士 攻撃力3200
剣:聖蔓の剣士 攻撃力3200
社:聖蔓の社
スペクター LP4000 手札0 モンスター4 伏せ0
――――――――――――
「私のターン、ドロー。どうやら攻めあぐねているようですね。まあ私のデッキは……」
「スタンバイフェイズに《砂塵の大嵐》を発動。おまえの《
「もっと会話を楽しみたいのですが、まあ永続魔法の1枚くらい構いませんよ。さあ、攻めさせてもらいますよ。現れよ、私たちの道を照らす未来回路! アローヘッド確認。召喚条件はリンクモンスター2体以上。《
《
リンク4/地属性/植物族/攻 0
【リンクマーカー:上/左下/下/右下】
現れたのは、見上げるほどの大樹。リンク4で攻撃力0か。嫌な予感しかしねぇ。
「聖天樹の大母神の召喚時効果により、デッキから《
「チェーンして《和睦の使者》を発動。このターン、私のモンスターは戦闘では破壊されず、戦闘ダメージも受けない」
「ほう、ならばそのカードを破壊します。意味はありませんがね。ではこのターンは布陣を戻しておきましょう。《
スペクター LP4000 手札0 モンスター3 伏せ1
母:聖天樹の大母神 攻撃力0
剣:聖蔓の剣士 攻撃力3200
士:聖蔓の剣士 攻撃力4000
■:伏せカード
■□□□□
□剣士□□
母 □
□□□□□
□□□□□
ウィンド LP1700 手札2 モンスター0 伏せ0
――――――――――――
「私のターン、ドロー」
「ウィンドさん。あなたは何故戦うのですか? 危険を冒してまで守るべきものがあるのですか?」
「笑止。軍人に戦う意味を問うとは」
(軍人?)
(撹乱だ。ほれ、あいつちょっと信じてるぞ)
(相変わらずおかしな発想をするやつだな)
「《斬機ダイア》を召喚し、効果発動。墓地の《斬機サブトラ》を特殊召喚する」
「そうはさせません。永続罠《
聖天樹の開花は発動時の効果処理で相手のモンスター効果を無効にするだけで、スキルドレインのように常時無効にするわけではない。スペクターは初動を止める判断をしたが、甘く見るなよ!
「魔法カード《ワンタイム・パスコード》を発動。自分フィールドに「セキュリティトークン」(サイバース族・光・星4・攻/守2000)1体を守備表示で特殊召喚する。さらに墓地の《斬機シグマ》の効果発動。EXモンスターゾーンに自分のモンスターがいないため、このカードを特殊召喚できる。アローヘッド確認。召喚条件はレベル2以上のサイバース族モンスター2体。《斬機シグマ》と「セキュリティトークン」をリンクマーカーにセット。リンク召喚、《アップデートジャマー》!」
《アップデートジャマー》
リンク2/風属性/サイバース族/攻2000
【リンクマーカー:上/左】
このデッキはEXモンスターゾーンに置くべきカードがほぼ決まっているからな。相手がリンク先を用意してくれるのは正直助かる。
「そして相手フィールドに攻撃力2000以上のモンスターが存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。《限界竜シュヴァルツシルト》を特殊召喚。レベル8の《限界竜シュヴァルツシルト》にレベル4の《斬機ダイア》をチューニング。紅蓮の刀携えし最終斬機士! その炎を統べし刀で敵を滅絶せよ! シンクロ召喚! 《炎斬機ファイナルシグマ》!!」
《炎斬機ファイナルシグマ》
星12/炎属性/サイバース族/攻3000/守 0
「それがドクター・ゲノムを倒したあなたのエース……」
「厳密なライフ管理を行い場を整え、徐々に相手を追い詰める。それがおまえの戦略ならば、一刀の下に全てを斬り伏せる。バトルだ。炎斬機ファイナルシグマで聖蔓の剣士を攻撃」
「攻撃力は聖蔓の剣士の方が上。何を企んでいる? 迎え撃ちなさい、聖蔓の剣士!」
「ダメージ計算時にアップデートジャマーの効果発動。この効果は自分のサイバース族モンスターが戦闘を行うダメージ計算時に1度、発動できる。ダメージステップ終了時まで、このカード以外のフィールドのカードの効果は無効化され、その戦闘のダメージ計算は元々の攻撃力・守備力で行う。そしてファイナルシグマはEXモンスターゾーンに存在する限り、「斬機」カード以外のカード効果を受けない。EXモンスターゾーンのこのカードが相手モンスターとの戦闘で相手に与える戦闘ダメージは倍になる」
「――くっ、こんなことが!」
「一撃必殺! 紅蓮羅斬!」
スペクター LP4000 → 0
「まさかこの私が……負けるとは……」
「おまえはリボルバーに忠誠を誓っているのではない。リボルバーに依存しているだけだ。そしてその
「敗者に鞭を打つとは、容赦がない。リボルバー様……申し訳ありません。この私が至らぬばかりに……」
スペクターは赤い粒子となって消えた。敗者はデータとなって取り込まれる。それがここのルールのようだ。