ハノイの騎士の計画により壊滅的なダメージを受けたリンクヴレインズは機能不全にまで陥った。だがSOLテクノロジー社がすぐさま復旧作業に取り掛かり、数日後にリンクヴレインズをリニューアルオープンした。
生まれ変わったデュエルの世界に人々は歓声を上げ、新生リンクヴレインズは活気に満ち溢れた。
大きく変わったところは、スピードデュエルが解禁されたことだろう。今、リンクヴレインズの空はちょっとした渋滞まで起こっている。
だがそんな混雑とは無縁の世界もある。
この風のワールドはSOLテクノロジー社の監視網に引っ掛からず、ひっそりと存在している。
「平和だねぇ」
思わず言葉が漏れる。中空のモニターには、イベントエリアでデュエルを楽しむ人々が映し出されている。やはりデュエルは笑顔でやるものだとつくづく思う。
「むっ」
「どうしたウィンディ?」
「Aiからメッセージが来た」
「ほう、なんて?」
「会って話がしたいだと。あいつ相当慌ててるな。イグニスプログラムじゃなくて、普通に送ってきやがった。後始末が面倒だってのに」
ブツブツ言いながらも、その顔にはどこか喜色が見える。やはり同郷の友人に会えるのは嬉しいのだろう。
Aiはここに向かって来ているらしい。
この風のワールドは規模こそ小さいものの、英国風の洒落た造りになっている。それなりの広さの庭には、雨も降らないのに屋根付きのテーブルが設置されており、俺たちはそこでAiの到着を待った。
それから程なくして、黒い影が飛び込んできた。
「ウィンディ、てーへんだ! サイバース世界がしっちゃかめっちゃかになってた!」
しっちゃかめっちゃかって今日日聞かねぇな。てかそんなことより。
「リングリボーが二人いる?」
「Aiが乗ってる方はリンクリボーだな。リングリボーの元になったやつだよ。サイバース世界から連れてきたのか?」
「おう、あんなとこに置いとけないからな。つか聞いてくれよウィンディ! サイバース世界が崩壊してたんだよ! おまえ何か知ってるか?」
「崩壊? そんなことありえねぇだろ。おまえがサイバース世界を隠した後は、光のイグニスが防衛プログラムを更に強化したんだぞ。カオス理論で構築したプログラムだ。人間には絶対破れないって豪語してたぞ」
「けど実際に崩壊してたんだって!」
Aiは大仰に両手をバタバタさせて、自分が見たサイバース世界を語った。それを聞いたウィンディも表情を硬くさせる。
「…………いや、まさかな。だとしてもだ。あいつらも容易くやられたりはしないだろ。こっちに来てるんじゃないか?」
「――ッ!? それもそうだ。なら探してやらなくちゃな」
「探し回るのはおまえに任せるよ。僕はイグニスにしか分からないメッセージをそれとなくネットワークに散布しておこう。気付いたならここに来るさ」
「おまえ、俺に面倒なこと押し付けようとしてないか?」
「役割分担だよ。効率的だろ? それに……おっと、Ai。面白い情報がネットに流れてるぜ。賞金首のプレイメーカーがリンクヴレイズに現れたってよ」
「プレイメーカーが? ちょっとまて、賞金首ってなんだよ!」
「言葉通りだよ。SOLテクノロジー社がプレイメーカーに賞金をかけたのさ。狙いはプレイメーカーというよりは
「行くに決まってんだろ! プレイメーカーは俺の相棒だ。行くぜ! リンクリボー!」
「クリクリンク!」
リンクリボーに跨り、Aiは勢いよく飛び出して行った。
Aiは無事にプレイメーカーのところまで辿り着いたようだ。デュエルディスクに小さく姿が映っている。マスコミも頑張ってプレイメーカーを追いかけているようだが、スピードに追い付けていない。
「……遠いな」
「仕方ないさ。プレイメーカーのDボードは最新型だ。そうそう追い付けるものじゃない」
ハノイの塔事件から沈黙を保っていたプレイメーカーが突如現れ、見たこともないアバターとデュエルしていることは、瞬く間にネットに拡散した。デュエルの内容はいまいち把握しきれなかったが、プレイメーカーが勝利を収めたようだ。
その後、新たに二人の敵が現れたようだが、時を同じくして炎の渦の中から暖色系の衣装に身を包んだ男が現れる。
「なぁ、あの赤いアバターのデュエルディスクにいるの、イグニスじゃないか?」
「そうだな。あれは炎のイグニスだ。Aiといい、あいつといい、何で堂々と姿を現してるんだ? リンクヴレインズは常時中継されてるってのに」
ウィンディが大きくため息を零す。確かにわざわざ姿を見せる必要はない。ネットリテラシー的にもあまり褒められた行為ではないな。
「アカウント名はソウルバーナー。デッキは
「探すまでもなかったな。早速コンタクトを取ってみよう」