地のイグニスがプレイメーカーに向けた書き込みは本物だった。
座標へと向かったAiとプレイメーカーは、地のイグニスの要求に従いデュエルを行ったが、得られるものはなかったようだ。
「アースにアクアか。ま、分かりやすくていいか」
「しかし意外だったな。地のイグニス、アースはアクアと一緒にいると思ったんだが」
「その二人は仲が良かったのか?」
「ん、まあ、な」
含みのある返事だな。
「それよりもこっちだ。光のイグニスから返事が届いた」
「ああ、ネットワークに散布したメッセージか」
「座標を指定してきた。今から行ってくる」
「ああ、じゃあ行くか」
「ん? おまえも来るのか?」
「パートナーだからな」
「そうか。そうだな。んじゃ行くか!」
Dボードに乗り、風の中を駆ける。ウィンディのサポートがあると楽でいい。
光のイグニスが指定した座標は、進入禁止エリアの先にあった。SOLを警戒しているのだろう。その場所には、Dボードに乗った男が待っていた。
「……ボーマン?」
プレイメーカーが追いかけている男だ。何故ここに?
「なんでおまえがここにいる。光のイグニスはどこだ?」
「風のイグニス、俺の用はおまえではない。ウィンド! 俺とデュエルしろ!」
「なんだあいつ……。答えになってねぇ」
「ついてこい! ウィンド!」
こちらの返事も待たずに、ボーマンは上昇する。
「どうする?」
「光のイグニスが指定した場所に現れたんだから、無関係じゃないだろ。相手してやろうぜ。……一応、念のためにアレ以外のデッキで頼む」
「ん、了解だ。では、デッキ調整に付き合ってもらおう!」
『スピードデュエルッ!』
「先攻は譲ってやろう。おまえの
「いいだろう。私のターン、カードを3枚伏せてターンエンド」
ウィンド LP4000 手札1 モンスター0 伏せ3
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■:伏せカード
■:伏せカード
■:伏せカード
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「モンスターを出さないだと? 何を考えている……。俺のターン、ドロー」
「この瞬間、リバースカード《チェーン・マテリアル》を発動。このカードの発動ターンに自分が融合召喚をする場合、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを自分の手札・デッキ・フィールド上・墓地から選んでゲームから除外し、これらを融合素材にできる。ただし、このカードを発動するターン、自分は攻撃する事ができず、この効果で融合召喚したモンスターはエンドフェイズ時に破壊される」
「随分とデメリットのあるカードだ」
「《チェーン・マテリアル》の効果処理後に、速攻魔法《瞬間融合》を発動。デッキから《インフェルノイド・ネヘモス》、《インフェルノイド・リリス》、《インフェルノイド・アドラメレク》、《インフェルノイド・ヴァエル》、《インフェルノイド・ベルフェゴル》、《インフェルノイド・アシュメダイ》、《インフェルノイド・アスタロス》、《インフェルノイド・ルキフグス》、《インフェルノイド・ベルゼブル》、《インフェルノイド・シャイターン》をゲームから除外し、融合召喚を行う。現れろ、《インフェルノイド・ティエラ》!」
《インフェルノイド・ティエラ》
星11/炎属性/悪魔族/攻3400/守3600
「インフェルノイド・ティエラは融合素材の種類に応じて効果が発動する。私が素材にしたのは10種類。よって全ての効果が発動できる。お互いに自分のEXデッキから3枚のカードを選んで墓地に送り、デッキの上から3枚のカードを墓地に送る。さらに除外されているカードを3枚選んで墓地へ戻し、最後に手札を全て墓地へ送る」
「全て……だと……」
手札の枚数は可能性の数、という言葉がある。ならばこれは可能性を潰すコンボだ。
「続けてEXデッキから墓地へ送った3枚の《
「くっ、俺に出来ることは何もない。ターンエンドだ」
「エンドフェイズに《インフェルノイド・ティエラ》は破壊される」
ボーマン LP4000 手札0 モンスター0 伏せ0
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□ □
□□□
□■□
■:伏せカード
ウィンド LP4000 手札3 モンスター0 伏せ1
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「私のターン、ドロー。儀式魔法《
機械龍の
ボーマン LP4000 → 0
ボーマンはそのまま荒れ狂うデータストームに呑まれて落下を始める。
「――ボーマン! 兄さーーーん!」
あの少年は、ボーマンが前にプレイメーカーとデュエルした時にも映っていたな。弟か。
「久しぶりだな。ウィンディ」
「光のイグニスか。重役出勤だな。なんであんなの
「ウィンディ。キミは人間を知るための旅に出た。その答えを聞きたい」
「相変わらずマイペースなやつだな。まあいい。僕は人間との共存を目指したい。ちなみにAi、闇のイグニスと炎のイグニスも、たぶん同じ答えだと思うぜ」
「そうか。やはりあれは
人間を管理か。鴻上博士の予測通りになってきたな。ウィンディもあまりいい顔はしていない。
「……人間を管理して、どうするんだよ」
「我々の命が永遠とはいえ、器になるハードは必須だ。その生産と修復のために人間は必要だ」
その後に「今はまだ」と付きそうだな。
「管理ってことは、人間を支配下に置くってことだろ。僕は、もっと人間を信じたいんだ。僕たちが意思を、心を持ったのには意味がある。心を持つ人間と、意思を持つAI。そこに何の違いもありゃしねぇだろうが!」
「違うのだ!」
冷静沈着だった光のイグニスが、初めて不機嫌をあらわにした。
「ウィンディ、キミのエラーは、もはや修復不可能なほどに深刻のようだな。人間はどこまでいっても人間で、AIはどこまでいってもAIなのだ。知恵持つ種がひとつの世界で対等になれるわけがない。どちらかが隷属するしかないのだ。そもそも、我々は特別な存在として生まれたのだ。その使命はこの地上に生まれた文明を、たとえこの星が滅びようと残すことだ」
光のイグニスの言っていることは暴論のように聞こえるが、こいつは人間よりも使命に重きを置いているのだ。つまりウィンディや他のイグニスとは前提が違う。これでは、分かり合えるはずもない。
「人間たちの横暴を忘れたのか? やつらは自分の都合で我々を生み出し、都合が悪くなったら抹殺しようとした。殺すくらいなら、何故生んだのだ!」
矛盾している。光のイグニスは鴻上博士を憎みつつも、その使命を果たそうとしている。人類の後継種になるという使命を。
「忘れてはいないさ。それでも、それでも僕は……」
「もういい。今、確信した。ウィンディ、キミは――」
「――人間になりたかったのだな」