みんなが見守る中で、オレンジ色のゴツゴツとした体躯が浮かび上がる。その瞳に空色の光が灯ると、周囲から快哉が上がった。
「アースゥーー! 無事でよかったぜー! 心配させやがって、このこのッ!」
「むっ、闇のイグニスか。アースとは私のことか?」
「へ? なんだよ、前に言っただろ。ボケてんのか?」
「アース、僕のことは分かるか?」
「ウィンディか、久しぶりだな」
「何でこいつの名前は憶えてんだよ!」
Aiが憤慨して地団駄を踏む。ウィンディは10年前から名乗ってるからな。確かAiは遊作が名付けたんだっけか。
「ふむ、これは
「でもさ、不霊夢。おまえ前に言ってたじゃないか。イグニスのアルゴリズムを人間が解析するのは不可能だって」
「それは……」
「彼の仕事だろうな」
言葉に詰まった不霊夢の代わりに、草薙さんが尊の問いに答える。モニターにはグレーのスーツ姿の男が映っていた。
「
「へぇー、でもその割にはあっさりアースを取り返せたよな」
Aiがウィンディに視線を向ける。
「ロック自体は普通だったぞ。おそらく解析と抽出にリソースを割いていたんだろうな。あるいは、こいつには全容を明かしていないか、だな」
なるほどね。協力を仰いでも、美味しいところは独り占めしたいわけだ。SOLテクノロジー社の上層部はよほどの利己主義のようだな。
「敵もさるもの引っ掻くもの、ということだ、尊。アース、キミの一番新しい記憶を聞かせてくれ」
「記憶? サイバース世界が何者かに襲われ、みなが散り散りになって……そうだ! 水のイグニスを探さなければ!」
「落ち着けって、アクアならおまえの後ろにいるぜ」
Aiに促されて、アースは後ろを振り返る。
その人物と目が合うと、感極まったように肩を震わせた。
アースを復活させる間に、アクアからおおよその事情は聞いている。アースはライトニングに幽閉されていたアクアを救出した直後に襲われたらしい。
そしてアクアを逃がし、自分は時間を稼ぐためにデュエルを受けた。無論、負けるつもりはなかったのだろうが。
「水のイグニス、無事でよかった」
「だからアクアだって。おまえが名付けたんだぞ」
「ええ、あなたも」
「聞いてる?」
「黙ってろ、Ai」
「……はい」
遊作に叱られ、しょぼんとするAi。あの二人も手を取り合って独自の世界を作っているが、そろそろ現実に引き戻した方がいいだろう。
「こっちに来てからの記憶が抜き取られてるな。それにところどころに隙間もできてる。かなりスペックダウンしてるぞ、アース」
「そうなのか? まあ、しばらくすれば治るだろう。私には自己修復機能が付いているからな」
「えッ!? おまえそんなん持ってたのかよ。Aiちゃん初めて聞いたよ」
「アースの特性だろ。僕のデータストームを操る力と同じようなもんだ。とりあえず全快するまではここにいろよ。おまえと同居なんて正直嫌だけど、何かあっても寝覚めが悪い。間借りさせてやるよ」
「その上から目線はどうかと思うが、一先ずはその厚意に甘えておこう。アクア、キミはこれからどうするのだ?」
「わたしには、行くべき所があります」
「行くべき所? ならば私も一緒に……」
「いえ、これはわたしの問題なのです」
そう言ってアクアはネットの中へと消えて行った。
「ううむ、やはり信じられん。光のイグニス、ライトニングがサイバース世界を滅ぼしたなど」
「いいかげん信じろよ。映像見ただろ? 本人が言ってんじゃん」
「うむ。認めて、立ち向かわなければな。戦うにしろ、話し合うにしろ」
「不霊夢、おまえまだ諦めてなかったの?」
「ウィンディのように、直接話した訳ではないからな。Ai、おまえだってそうだろう?」
「そりゃそうだけどさぁ」
「甘い考えは捨てた方がいいぜ。ライトニングはやる気満々って感じだったろ?」
「あいつはアース以上に融通が利かないからなぁ。それよりも、ププッ。まさかおまえが人間になりたいなんて思ってたなんてな」
「それはライトニングの勝手な思い込みだ。僕は共存すべきとは言ったが、人間になりたいなんて一言も言ってない」
「またまたそんなこと言って。照れなくてもいいじゃん」
「うっぜぇ。そんなことより、大規模スキャンの要点は抑えたのか?」
「ああ、俺たちがリンクヴレインズに散って、全域をスキャンするやつね。でも今のおまえらってニコイチじゃん。どうすんだよ?」
「ニコイチは意味が違うだろ。まあ、僕が単独行動するしかないだろうな」
「おいおい、ひとりで大丈夫か?」
「データストームの扱いは僕が一番上手いんだ。逃げるだけならなんとでもなるさ」
「そういうのフラグっていうらしいぜ」
「フラグをフラグだと認識してればフラグにはならないんだよ。おっと、アクアからメッセージだ。用件は終わったらしい。これから合流したい、だってよ」
「へぇー、ってちょっとまて。なんで俺じゃなくておまえに送るんだよ!」
「そりゃ僕がおまえたちのリーダーだからだろ」
「何言ってんだ! リーダーに相応しいのは、どう考えたって俺だろ!」
「はっ?」
「はっ?」
「はっ?」
「そ、総ツッコミかよ……」
「Ai、おまえはにぎやかし担当だ」
「不霊夢の言う通りだ。だが私たちのリーダーはアクアこそが相応しいと思う」
「彼女は前に出るタイプじゃないだろ。補佐というか調整役というか、サイバース世界でもそういった立ち位置だったじゃないか」
「むむ、確かに言われてみれば……」
「話が逸れたな。アクアと合流して、彼女にも手伝ってもらう。5人でリンクヴレインズの全域をスキャンして、ライトニングの根拠地を見つけ出す。行くぞ、翼。――ん? どうした、翼」
「いや、おまえら仲いいなと思っただけだ」