ウィンディたちが消えてから数分後、奥からふたりの男がカツカツと歩み寄ってきた。
「ライトニング様に呼ばれて来たものの」
「ご本人がいないではないか」
赤と青、もはや見慣れた量産型が訝し気にこちらを覗き込む。
「この人間、知っているか? ブート」
「もちろんだとも、ビット。彼はウィンド。風のイグニスのパートナーだ」
「だが風のイグニスはいないようだが?」
「かといって見逃すという選択肢はない。侵入者は排除する。既に多くの同胞がやられているわけだしな」
「なるほど。全面的に同意しよう」
「というわけだ、人間」
示し合わせたようにデュエルディスクを構えるビットとブート。ふむ、2対1か。
「いいだろう。だが2対1だ。条件を対等にするため、私の初期手札は10枚とさせてもらう」
「好きにしろ。では――」
「待てビット。その条件は対等とはいえない。こちらが不利だ」
「所詮人間だ。調整された我らの敵ではない」
「キミの意見にも一理ある。だがよく考えてみれば、数に頼んで叩きのめすというのは美しくない。ならば、正々堂々と1対1で戦うことを提案する」
「1対1? そうか、アレだなブート。だが、アレはライトニング様に禁じられているはず」
「あの時とは状況が違う。ライトニング様も納得されるだろう」
ブートの提案にビットが頷く。どうやら同意するらしい。
ふたりがガッと手の平を握り合うと、カッと閃光がほとばしった。
「うぉッ! まぶしッ!」
その光の中からひとりの合体戦士が現れる。
「我らはビット。我らはブート。そして我らはビットブート。では始めよう、人間。さあ始めよう、ウィンド。いざ尋常に――」
『デュエルッ!』
「先攻は我らのもの。まずは魔法カード《九字切りの呪符》を発動。手札のレベル9モンスター《虚の王 ウートガルザ》を墓地に送り、カードを2枚ドローする。《召喚僧サモン・プリースト》を召喚。召喚時このカードは守備表示になる。手札の魔法カード1枚をコストに効果発動。デッキから《トレジャー・パンダー》を特殊召喚し、効果発動。墓地の魔法カード1枚を裏側表示で除外し、デッキから《ウォーター・スピリット》を特殊召喚する」
僧侶がパンダを呼び出し、パンダが氷水の精霊を呼び出す。チューナーを含むモンスターが3体。さて、リンクかシンクロか、はたまたエクシーズか。
「レベル4の《召喚僧サモン・プリースト》と《トレジャー・パンダー》に、レベル1の《ウォーター・スピリット》をチューニング。現れろ、シンクロレベル9。《飢鰐竜アーケティス》!」
《飢鰐竜アーケティス》
星9/水属性/魚族/攻1000/守1000
「アーケティスの効果により、デッキからカードを2枚ドローする。アーケティスを対象に、速攻魔法《星遺物の胎導》を発動。見せてやろう、我らが得た新たなる力、王の力を! デッキから《死の王 ヘル》、《光の王 マルデル》を特殊召喚!」
顕現する2体の
「マルデルの効果により、デッキからフィールド魔法《
《真竜皇
ランク9/闇属性/幻竜族/攻3000/守3000
「カードを1枚伏せてターンエンドだ」
ビットブート LP4000 手札3 モンスター2 伏せ1
□□□□■
虚□□□□舞
皇 □
虚:虚の王ウートガルザ 守備力2700
皇:真竜皇V.F.D. 攻撃力3000
舞:王の舞台
■:伏せカード
――――――――――――
「私の……ああ、もういいや。俺のターン、ドロー!」
「相手がデッキからカードを手札に加えた時、《王の舞台》の効果を発動できる。デッキから《氷の王 ニードヘッグ》を守備表示で特殊召喚。さらに相手ターンに「ジェネレイド」モンスターを特殊召喚したことで、《王の舞台》の第2の効果が発動する。我らのフィールドに「ジェネレイドトークン」(天使族・光・星4・攻/守1500)を攻撃表示で可能な限り特殊召喚する」
氷の王に付き従うように、宝玉のようなトークンが揺らめきながら出現した。攻撃力はさほど高くない。考えようによっては良い的だが……。
「これで特殊召喚は封じた。さらに
ビットブートが高らかに光属性を宣言する。だが属性変更の効果はフィールド上のモンスターのみ。手札や墓地には影響しない。突破口はそこだ。
「まずはご自慢の王の力を排除させてもらおうかな。《虚の王 ウートガルザ》と《氷の王 ニードヘッグ》をリリースして、《溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム》を特殊召喚する」
「なんだとッ!?」
特殊召喚を無効化できるといっても、本体がリリースされれば無意味だよな。
「だがこれで通常召喚はできなくなった」
「そうだな」
通常召喚ができないなら、特殊召喚すればいいじゃない。
「魔法カード《予想GUY》を発動。デッキから《エンジェル・トランペッター》を特殊召喚。続けて《限界竜シュヴァルツシルト》を特殊召喚。レベル8のシュヴァルツシルトに、レベル4のエンジェル・トランペッターをチューニング。現れろ、《炎斬機ファイナルシグマ》!」
《炎斬機ファイナルシグマ》
星12/炎属性/サイバース族/攻3000/守 0
「やるな。だが
「知らなかったのか? EXモンスターゾーンにいるファイナルシグマは「斬機」以外のカード効果を受けない。よってその効果は無意味だ」
「な、なんだとッ!?」
「ファイナルシグマに《斬機刀ナユタ》を装備して、バトルだ。ファイナルシグマでジェネレイドトークンに攻撃!」
「バカめッ! 手札から《オネスト》の効果発動。このカードを墓地に送り、戦闘する相手モンスターの攻撃力を加える!」
ジェネレイドトークン 攻撃力1500 → 4500
やっぱり握ってたか。光属性を宣言したから、もしやと思っていたが。まあ問題はない。オネストの発動タイミングはダメージ計算前までだから。
「ダメージ計算時、装備魔法《斬機刀ナユタ》の効果を発動する。デッキから「斬機」モンスターを墓地に送り、その攻撃力を加算する。俺は《斬機マルチプライヤー》を墓地に送る」
炎斬機ファイナルシグマ 攻撃力3000 → 3500
「ふっ、たかが500のアップ。大したことないな!」
「それはどうかな。墓地に送られたマルチプライヤーの効果発動。EXモンスターゾーンにいる自分のサイバース族モンスターの攻撃力を、ターン終了時まで倍にする」
炎斬機ファイナルシグマ 攻撃力3500 → 7000
「な、7000だとぉッ!? だ、だがラヴァ・ゴーレムのダメージを考慮してもライフは残る。次のターンで――」
「次のターンはない! ファイナルシグマがEXモンスターゾーンでバトルする時、相手に与える戦闘ダメージは倍になる!」
「ぐっ、ならば必殺のミラーフォースを――ハッ!?」
「焦りすぎてバグったか? 言ったはずだ。ファイナルシグマはEXモンスターゾーンにいる限り、「斬機」以外のカード効果を受けない。そもそも「攻撃宣言」はすでに終わっている。ミラーフォースが発動できるタイミングじゃない。潔く散れ! 一撃必殺! 紅蓮羅斬!」
「バカな……我らが人間如きにーーーッ!!」
ビットブート LP4000 → 0
「ブートのせいで負けてしまったではないか!」
「それはこちらのセリフ」
「合体などするのではなかった!」
「それもこちらのセリフ」
うるせぇなこいつら。
しかし、ウィンディがまだ戻らない。何かあったのか?
……いやな予感がする。