誘拐されてから4ヵ月くらいが経った。
この部屋には時計もカレンダーもないのだが、1日3回、おそらく決まった時間にデュエルを行うので、たぶんあっているだろう。
この状況も慣れてしまえばそれなりに楽しみはある。色んなデッキを試せるというのは思いのほか楽しいものだった。
AIのレベルも上がってきており、最近は良い勝負が続いている。
「さて、今日も一日頑張るぞい」
『デュエルッ!』
「私のターン、スタンバイからメインへ。《ワン・フォー・ワン》を発動。手札の《フォーチュンレディ・ウォーテリー》を墓地に送り、デッキから《フォーチュンレディ・ライティー》を特殊召喚。続いて《ルドラの魔導書》を発動。フィールドのライティーを墓地に送り、カードを2枚ドロー。ライティーの効果でデッキから《フォーチュンレディ・アーシー》を特殊召喚。《死者蘇生》を発動。墓地のウォーテリーを特殊召喚して、効果でカードを2枚ドロー」
目まぐるしく魔法少女たちが入り乱れる。AIのレベルが上がったせいか、話し方も随分と流暢になった。
「《召喚師アレイスター》を通常召喚。効果でデッキから《召喚魔術》を手札に加えます。そしてアレイスターをリリースして、手札から《沈黙の魔術師-サイレント・マジシャン》を特殊召喚。続いて《召喚魔術》を発動。墓地のアレイスターとライティーを融合素材として除外。召喚条件は召喚師アレイスターと光属性モンスター。《召喚獣メルカバー》を融合召喚!」
呼び声に応え、
「墓地の《召喚魔術》をデッキに戻し、除外されているアレイスターを手札に戻します。《フォーチュンフューチャー》を発動。除外されているライティーを墓地に戻し、カードを2枚ドロー。《タイムパッセージ》を発動。ウォーテリーのレベルを3つ上げます」
フォーチュンレディは共通効果として、レベルとステータスは密接な関係にある。タイムパッセージはそれによりコンバットトリックを狙うカードだが、バトルを行えない先攻1ターン目に発動するメリットはない。シンクロを狙うにしてもチューナーはいないし、EXモンスターゾーンも埋まっている。
と思っていたら、AIは1枚のモンスターカードを提示した。
「このカードは自分フィールドのレベル6以上の魔法使い族モンスター2体をリリースした場合にのみ特殊召喚できます。レベル6のアーシーと、レベル7になったウォーテリーをリリースして、手札から《
2つの魔力によって呼び出されたのは、黒衣の魔導師。なるほど、そういうことか。
「ターンを終了します」
AI LP4000 手札3 モンスター3 伏せ0
□□□□□
黒□□□サ
メ □
黒:黒の魔法神官 攻撃力3200
メ:召喚獣メルカバー 攻撃力2500
サ:沈黙の魔術師-サイレント・マジシャン 攻撃力2500
――――――――――――
「俺のターン、ドロー」
ふーむ、これは中々面倒な盤面だ。改めて相手のフィールドを確認する。
《
《沈黙の魔術師-サイレント・マジシャン》は自身の効果により、攻撃力は2500にまで上昇し、1ターンに1度、魔法カードの発動を無効にする。
《召喚獣メルカバー》は相手が発動したカードと同種の手札コストを必要とするものの、あらゆるカードの発動を1ターンに1度だけ無効にする。
確定札は《召喚師アレイスター》。
「俺は、そうだな。まずは《E・HERO エアーマン》を召喚して効果を発動したい」
「駄目です。メルカバーの効果を発動。手札の《召喚師アレイスター》を墓地へ送り、その効果を無効にして除外します」
「初動を止めに来たか! だがさらにチェーンして手札から速攻魔法《超融合》を発動。手札を1枚捨て、フィールドの《E・HERO エアーマン》と《沈黙の魔術師-サイレント・マジシャン》を融合する。このカードの発動に対して、あらゆるカードはチェーンできない。現れろ、《E・HERO シャイニング》!」
破壊された場合に後続を呼び出せるサイレント・マジシャンだが、融合素材にされれば無意味だ。
「メルカバーの効果は対象を取らない効果です。エアーマンの効果は無効化されます」
「だがフィールドから墓地に場所を移したことで除外はされない。そして手札コストで捨てた《E・HERO シャドー・ミスト》の効果を発動するぜ。デッキから《E・HERO ソリッドマン》を手札に加える。《悪魔への貢物》を発動。フィールドの《召喚獣メルカバー》を墓地に送り、手札の《E・HERO クレイマン》を特殊召喚する。アローヘッド確認。召喚条件は「HERO」モンスター2体。《E・HERO シャイニング》と《E・HERO クレイマン》をリンクマーカーにセット。現れろ、《X・HERO ヘル・デバイサー》!」
《
リンク2/闇属性/悪魔族/攻1700
【リンクマーカー:左下/下】
「ヘル・デバイサーの効果発動。EXデッキの《E・HERO エリクシーラー》を公開し、そのモンスターにカード名が記されている融合素材モンスターを2体までデッキから手札に加える。俺は《E・HERO フェザーマン》と《E・HERO バブルマン》を手札に。続けて《融合》を発動。手札のリキッドマンとフェザーマンを融合。現れろ、《E・HERO サンライザー》!」
日輪の輝きを背負って登場した英雄は、真紅の衣装に身を包み、紺碧のマントを翻しながら拳を握る。
「チェーン1でサンライザー、チェーン2でリキッドマンの効果を発動だ。リキッドマンの効果でカードを2枚ドローし、その後手札を1枚捨てる。サンライザーの効果でデッキから《ミラクル・フュージョン》を手札に加えるぜ。そして《ミラクル・フュージョン》を発動。墓地のリキッドマンとフェザーマンを融合。現れろ、《E・HERO アブソルートZero》!」
《E・HERO アブソルートZero》
星8/水属性/戦士族/攻2500/守2000
「サンライザーの効果により、俺のフィールドのモンスターの攻撃力はモンスターの属性の種類×200アップする」
俺のフィールドには光、闇、水のモンスターがいる。それぞれの攻撃力は600アップだ。
「バトルフェイズに入る。ゼロで《黒の魔法神官》を攻撃、そして攻撃宣言時、サンライザーの第3の効果を発動。《黒の魔法神官》を破壊する!」
日輪の輝きが漆黒の魔術師を焼く。攻撃の巻き戻しが発生し、ゼロの攻撃はダイレクトアタックとなる。
AI LP4000 → 900
「続けてサンライザーでダイレクトアタック! 必殺のサン・アタック!」
「この瞬間、手札の《バトルフェーダー》の効果発動。このカードを手札から特殊召喚し、その後バトルフェイズを終了します」
「それにチェーンして手札から速攻魔法《抹殺の指名者》を発動だ。俺は《バトルフェーダー》を宣言し、デッキから《バトルフェーダー》を除外する。ターン終了時まで、この効果で除外したカード及びそのカードと元々のカード名が同じカードの効果は無効化される」
勢いよく飛び出したバトルフェーダーのベルは、バトルフェイズの終了を告げることなく霧散した。
AI LP900 → 0
「へへっ、俺の勝ちだ。楽しいデュエルだったぜ!」
「……楽しい?」
お、初めてデュエル後に反応があったな。今まではデュエルが終わったらサッと消えてたからなぁ。
「俺は楽しかったぜ。おまえは楽しくなかったか? それとも悔しかったか?」
「楽しい……? 悔しい……?」
AIはしばらく楽しいと悔しいを繰り返し、そのままフッと消えた。