遊戯王VRAINS 風翼のバディ   作:乾燥海藻類

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第07話 再会

財前さんの欠席が続いている。

何でも屋上で倒れているのをクラスメイトの藤木が発見し、そのまま救急車で搬送されたらしい。

しばらく意識不明の状態が続いていたが、最近目覚めたと聞いた。だが、登校にはもう少しかかると担任の先生は言っている。

「やっぱ華がないと寂しいなぁ~」

「確かにムサいな」

島の愚痴には全面的に同意だ。部室では4人の男子がそれぞれの作業に勤しんでいる。やはり女の子の存在は偉大だ。いるだけで場が華やかになる。

「しかし偏ったデッキだな。妨害札が全くない。全て展開や強化のためのカードか」

「おう。俺の目指すデュエルは前進! 後に退かない常に前へ出るデュエル! だからな!」

「なるほど、随分と思い切ったな。《灰流うらら》とか入れてみたらどうだ。腐ることはまずないぞ」

「それだと《一族の結束》が腐るじゃねぇか」

ぶっちゃけ800程度攻撃力を上げたところで、打開できる状況ってあんまりないような気もするんだがな。奇襲性もないし。それよりも汎用カードを入れた方が良いと思うが、獣族に拘りでもあるのだろうか。

「ふむ、それなら《神の宣告》とかはどうだ?」

「それってコストがライフの半分だろ。確かに強力な効果だけどさ、どこで使っていいか分かんねぇんだよな」

「マストカウンターの見極めは玄人でも難しいからな。初動を潰すか、エースモンスターを潰すか。ドローカードを潰すパターンも考えられるな」

「そういうの苦手だからな。俺は俺のやりたいことをやる!」

「結局そうなるのか」

振り切ったデッキでも勝てる時は勝てるが、やはり安定性に欠ける。ま、デュエルは楽しんでやるものだ。本人が納得してるなら、俺が口を挟むのも野暮だろう。

その日は雑談だけで解散となった。

 

 

 

 

 

「よう。久しぶりだな、翼」

声はデュエルディスクから聞こえてきた。通信……じゃないな。搭載されているAIか? 昨日までは如何にもAIって感じの堅い口調だったが、今朝はやけに軽い口調だな。

それに、久しぶり?

「おいおい、僕のことを忘れたのか? 人間はこれだから困る。AIは一度記憶したことは忘れないってのに。ヒントは10年前だ」

「10年前? AI……ああ、もしかしてウィンディか?」

「正解だ。本当ならもっと早くに来るつもりだったんだが、こっちにも色々と都合があってね」

デュエルディスクからニュッと姿が現れる。それは緑色の小人だった。

「おまえもあの時に保護されてたんだな」

「保護? ああ、相変わらずおまえはちょっとズレてんな。それより訊きたいんだが、おまえはあの事件のこと、どう思ってるんだ?」

「ロスト事件か? まあ、終わったことだろ」

後にロスト事件と呼ばれた、子供たちを拉致監禁し、デュエルを強要した事件。うむ、改めて確認しても意味不明だな。あの事件の犯人は捕まっておらず、うやむやのうちに風化してしまった。国家が隠匿したという噂もあるが、真偽のほどは定かではない。

「終わったことねぇ。まあいいや。おまえにとっては終わったことでも、僕にとってはまだ終わってないんだ。だから、手を貸してほしくてやってきたのさ」

「ふむ。まあ知らない仲じゃないし、協力するのは(やぶさ)かじゃない。だが具体的には何を?」

「サイバース族って知ってるか?」

「確か新しい種族だよな。今リンクヴレインズで話題になってるプレイメーカーってのが使っているとかいう……」

「そう、それだ。そしておまえにもサイバースデッキを使ってもらう。サイバースはサイバースでしか倒せないからな」

「は? サイバース族ってそんな厄介な共通効果持ってんの? というかその言い方だと相手はプレイメーカーか?」

「いや違う。悪い、語弊があったな。まあ念のためだ。プレイメーカーとは戦わないよ、たぶん。敵はハノイの騎士だ。今からそのデッキを取りに行く。とっとと仕度しな」

ウィンディに急かされて出かける準備を始める。おいおい、テロリストを相手にするのかよ。

色々と思うところはあったが、勢いに押されて俺は流されるままに山の中腹にある寂れた神社にやってきた。

「学校サボって登山か。せめて休日に来てくれよ」

「AIに休日なんてねぇよ。そら、その神棚の奥だ」

神棚の奥ね。確かに人間は無意識に漁るのを避ける場所だな。てかここがすでに禁足地だしな。発想が実にAIっぽい。

「お、あったあった。これがサイバースデッキか。ふむ、なるほどなるほど、悪くない。多少調整が必要だが、使えそうだ」

「上から目線なのが気に喰わないが、まあいいや。気に入ったか?」

「でもさー。こんなの使ってたら目立つんじゃねぇか?」

「何当たり前なこと言ってるんだよ。ハチミツに群がったアリ共を一網打尽にするのが目的だろ」

「ああ、そういやそんな話だったな」

まあ相手はサイバーテロをやらかすような奴らだから、同情の余地はない。

「だが俺はそこまで強いってわけじゃないぞ」

「よく言うぜ。10年前の時点で大人顔負けだったじゃねぇか」

あー、それが基準になってるのか。そりゃあれだけデュエルやってればいやでも上達はするだろ。

「まあいいや、なんとかなるだろ。しばらくは付き合ってやるさ」

 

 

 

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