朝からテンションが高いやつはいるもので、どうやら島もそういうタイプらしい。
ニヤニヤしながら話しかけてきた。
「おい工藤。アザナーって知ってるか?」
「アザナー? いや、知らんな」
「へっへっへ、おまえみたいな情報弱者がいるから俺みたいな情報通が必要になるんだよな。アザナーってのはリンクヴレインズに行ったまま戻ってこない奴らのことなんだよ。最近学校に来ない奴らが増えただろ? あれ多分アザナーになっちまったんだぜ」
「へぇ、ネットワークに魂を縛られてしまったのか」
それから島は呪いのデュエルディスクがどうたら、深夜0時に白い手に引っ張られて強制的にリンクヴレインズに引き込まれたやら、残された身体は生きる屍になったなどと語った。
「で、どうなんだ?」
「リンクヴレインズが最近騒がしい理由だな。おそらく電脳ウイルスだ。第一候補がハノイ。第二候補がSOLテクノロジー社」
「SOLって運営だろ? そんなことするか?」
「どこの組織も一枚岩じゃない。可能性の問題さ」
「なるほどねぇ」
「少し本腰入れてみるか。しばらく待ってな」
そう言い残して、ウィンディは電子の海へと潜っていった。
ウィンディが帰ってきたのは帰宅してからだった。
「けっこう時間がかかったんだな」
「おまえの都合に合わせてやったのさ。それと、ひとつ訂正してやろう。アザナーじゃなくてアナザーだ。そしてアナザーとなった人間の共通項は、旧型のデュエルディスクを使っていることと、ハッカーであることだな」
「ハッカーって、被害者全員がか?」
「そうだな」
マジかよ。ハッカーがそんなありふれたものだったとは。まあハッカー=悪とはならないが。
「犯人はハノイの騎士で間違いない。データの一部が一致した。座標は設定済みだ。時刻もOK。狩るぞ」
「へいへい。イントゥザヴレインズ」
出現したのは荒野。目の前には男がいた。ハノイの騎士と同じような白い衣服に身を包んでいるが、仮面はかぶっていない。その代わり、珍妙な
「ハノイの騎士だな」
「ほぅ、捕捉されたのは初めてですよ。まあこれも一興。あなたはプレイメーカーですか?」
「そう見えるか?」
「見えません」
「ならそういうことだ」
「ではもうひとつ。あなたのAIはイグニスですか」
「そうだ」
「――ッ!? まさかイエスとは。拝見させていただけますか?」
「キミが勝てればその望みは叶うだろう。だが私が勝てば、アナザーの除去プログラムをもらう」
「ふっ、いささか訝しいですが、いいでしょう。ではこちらのデッキでお相手します。私の名はドクター・ゲノム」
「火消しの風、ウィンド」
『デュエルッ!』
「私が先攻でいかせてもらいます。う~ん、良い手札だ」
ドクター・ゲノムは初期手札の5枚を眺めて恍惚の表情を浮かべる。
「《呪眼の死徒 サリエル》を召喚して効果を発動します。デッキから「呪眼の死徒 サリエル」以外の「呪眼」カード1枚を手札に加える」
「チェーンして《灰流うらら》の効果を発動する。このカードを手札から捨て、その効果を無効にする」
「やってくれますねぇ。ですが、その程度では止まりませんよ。《セレンの呪眼》をサリエルに装備。続けて《喚忌の呪眼》を発動。手札・墓地から「呪眼」モンスター1体を選んで特殊召喚する効果ですが、自分の魔法・罠ゾーンに「セレンの呪眼」が存在する場合、デッキから特殊召喚できるのです。私は《呪眼の眷属 カトブレパス》を守備表示で特殊召喚。そして《セレンの呪眼》の効果でサリエルの攻撃力は500アップし、私は500のライフを失う。続けて《セレンの呪眼》を対象にカトブレパスの効果を発動。次のターンの終了時まで、そのカードは1度だけ相手の効果では破壊されない。カードを1枚伏せてターンエンドです」
ドクター・ゲノム LP3500 手札1 モンスター2 伏せ1
セ□□□■
サ□□□カ
□ □
サ:呪眼の死徒サリエル 攻撃力2100
カ:呪眼の眷属カトブレパス 守備力1900
セ:セレンの呪眼(対象:呪眼の死徒サリエル)
■:伏せカード
――――――――――――
「私のターン、ドロー。《斬機シグマ》を特殊召喚。このカードはEXモンスターゾーンに自分のモンスターが存在しない場合に特殊召喚できる」
「サイバース族……なるほど、ハッタリではなさそうですねぇ」
「シグマの攻撃力を1000ダウンし、手札から《斬機サブトラ》を特殊召喚。シグマとサブトラでオーバーレイ。現れろ、《塊斬機ダランベルシアン》!」
《塊斬機ダランベルシアン》
ランク4/地属性/サイバース族/攻2000/守 0
「ダランベルシアンの効果発動。X素材を2つ取り除き、デッキから「斬機」カード1枚を手札に加える」
「そう好き勝手にはさせません。永続罠《死配の呪眼》を発動。相手がモンスターを攻撃表示で特殊召喚した時、そのモンスターより高い攻撃力を持つ「呪眼」モンスターが自分フィールドに存在する場合、そのモンスターのコントロールを得る」
ダランベルシアンが呪眼の力に取り込まれ、その姿を相手のフィールドに移す。
「そして「呪眼」魔法・罠カードを発動したことで、《セレンの呪眼》の効果が発動します。サリエルの攻撃力は500アップし、私は500のライフを失う」
「ダランベルシアンの効果で、デッキから《斬機方程式》を手札に加え、そのまま発動だ。墓地の《斬機シグマ》を特殊召喚し、攻撃力を1000アップする。そして、私はまだ通常召喚を行っていない。《斬機ダイア》を召喚し、効果発動。墓地の《斬機サブトラ》を特殊召喚。ではいくぞ、シグマは「斬機」SモンスターのS素材とする場合、チューナー以外のモンスターとして扱う事ができる。レベル4の《斬機シグマ》と《斬機サブトラ》にレベル4の《斬機ダイア》をチューニング。紅蓮の刀携えし最終斬機士! その炎を統べし刀で敵を滅絶せよ! シンクロ召喚! 《炎斬機ファイナルシグマ》!!」
《炎斬機ファイナルシグマ》
星12/炎属性/サイバース族/攻3000/守 0
「くっ、レベル12だと!? こんなモンスターを軽々と呼び出すとは……。「斬機」以外のカード効果を受けない!? タイミングを逸したか」
「バトルだ。ファイナルシグマでダランベルシアンを攻撃、紅蓮羅斬!」
塊斬機と炎斬機がぶつかり合う。カトブレパスは守備表示。サリエルは戦闘破壊できない。ライフを大きく削るにはダランベルシアンに攻撃するしかない。
ドクター・ゲノム LP3000 → 1000
「ファイナルシグマがEXモンスターゾーンにいる場合、相手に与える戦闘ダメージは倍になる。私はカードを1枚伏せてターンエンドだ」
ウィンド LP4000 手札1 モンスター1 伏せ1
炎:炎斬機ファイナルシグマ 攻撃力3000
■:伏せカード
■□□□□
□□□□□
□ 炎
カ□□□サ
□□□□セ
サ:呪眼の死徒サリエル 攻撃力2600
カ:呪眼の眷属カトブレパス 守備力1900
セ:セレンの呪眼(対象:呪眼の死徒サリエル)
ドクター・ゲノム LP1000 手札1 モンスター2 伏せ0
――――――――――――
「炎斬機ファイナルシグマ。なるほど、強力なモンスターだ。素晴らしい! あなたのDNA、是が非でも欲しくなった! 私のターン、ドロー」
セレンの呪眼の攻撃力アップとライフを失う効果は必ず発動する強制効果。ヤツの行動はかなり制限される。
「《呪眼の死徒 メドゥサ》を召喚し、効果発動。墓地の《喚忌の呪眼》を手札に加えます。アローヘッド確認。現れたまえ、我らの未来回路! 召喚条件は「呪眼」モンスター2体以上。サリエル、カトブレパス、メドゥサをリンクマーカーにセット。リンク召喚、《呪眼の王 ザラキエル》!!」
《呪眼の王 ザラキエル》
リンク3/闇属性/悪魔族/攻2600
【リンクマーカー:上/左下/右下】
呪眼の王か。2回攻撃できるようだが、攻撃力はファイナルシグマに及ばない。手札の不明カードは1枚。あれが鍵か。
「《ゴルゴネイオの呪眼》をザラキエルに装備します。このカードは魔法・罠ゾーンに存在する限り、「セレンの呪眼」として扱い、装備モンスターの攻撃力は私のライフが相手より少ない場合、その差の数値分アップする」
《呪眼の王 ザラキエル》 攻撃力2600 → 5600
「セレンの呪眼を装備したことで、ザラキエルの効果が発動できます。その伏せカードを破壊!」
「ならばチェーン発動だ。《斬機超階乗》! 墓地の《斬機シグマ》、《斬機サブトラ》、《斬機ダイア》を特殊召喚し、そのモンスターのみを素材として「斬機」Xモンスター1体をX召喚する。現れろ、《塊斬機ラプラシアン》!」
「なっ!? くっ、ザラキエルのリンク先に……」
「ラプラシアンの効果発動。X素材を2つ取り除き、効果を2つ発動する。相手の手札をランダムに1枚選んで墓地に送る効果と、相手フィールドのモンスター1体を選んで墓地に送る効果だ」
手札の《喚忌の呪眼》、フィールドの《呪眼の王 ザラキエル》が墓地に送られる。ドクター・ゲノムの手札は尽き、フィールドは空になった。
「……ターンを終了します」
「私のターン、ドロー。ファイナルシグマでダイレクトアタック!」
ドクター・ゲノム LP1000 → 0
「まさか、この私が完封されるとは……。恐ろしい男だ」
「約束通り、除去プログラムはもらっていく」
デュエルディスクが明滅を始め、ウィンディが姿を見せぬままデータを吸い上げた。
ドクター・ゲノム
原作では悪魔族のカテゴリ【
残念ながらOCG化はされてないので【呪眼】を使いました。
主人公は
ウィンドのアバターは、そのまんま火消しの風ウィンドさんです。
細かいことを言うなら、あっちはウィンドではなくウインドみたいですが。